異世界に召喚されたが奴隷扱いされた私はエリート騎士様に溺愛される

つぐみ

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その10

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ハンコックさんが「お茶でも入れよう」と席を立った時だった。
けたたましい音を当てて、医務室の扉が開かれたのだ。


「『呪い子』は目覚めたか?」

「なんじゃお前さん、急に入ってくるな! ノックくらいせんか! 病人の前じゃぞ!」

「ふんっ、何が病人だ。『呪い子』を病人などと、正気か? 老衰も大概だな」


入ってきた兵士は、私を切りつけた兵士だった。
鋭い目が私を捉え、その時の焼ける痛みを思い出し体が震えた。

そんな私を無視し、兵士はハンコックさんの制止も聞かず、ずかずかと私の元に歩み寄ってきた。


「来い。アヤカ様がお待ちだ」

「馬鹿者! この子の怪我を見たじゃろ!? とても動けるような状態ではない!」

「知ったことか。アヤカ様のご命令だ」

「このぉ……! ウスラトンカチが……!」


ハンコックさんが掴みかかると、まるで子猫でも扱うように兵士はハンコックさんを突き飛ばした。


「ハンコックさん!?」

「何度も言わせるな、来い」

「だ、駄目じゃ! 行ってはならん……!」


ハンコックさんはその場にズルズルと座り込みながら、必死に私に訴えかけてきた。

兵士が舌打ちし、再びハンコックさんの元へ行こうとする。

私は声を上げた。


「い、行きます! 行きますから、もうハンコックさんに手を出さないで!」

「なら来い。アヤカ様を待たせるな」


私は痛む肩を抑えながら立ち上がり、ハンコックさんの元へ駆け寄る。


「ごめんなさいハンコックさん。私は大丈夫ですから」

「サラ、お前……」

「また来ますから。……ありがとうございました。少しでもお話できて、楽しかったです」


手短に伝え、私は兵士の後ろについて行った。
チラリと後ろを振り返ると、ハンコックさんがゆっくりと起き上がるのが見えた。

良かった。怪我はしていないみたい。
でももうお歳だろうし、心配だ。見えない所で骨とか折れてないだろうか。

医者に一度診てもらった方が……と思ったが、彼自身が医者だった。
それなら、きっと大丈夫だろう。そう思って不安をやり過ごす事にした。

兵士の後ろを、無言で付いていく。
初めて、王宮内を歩いた気がした。この世界に連れてこられた時に大広間まで歩いたけれど、あの時の事は混乱していてほとんど覚えていない。

こうして見ると、改めて自分が異世界に連れて来られたんだと痛感する。
煌びやかな王宮、真っ赤な絨毯、壁際にしつらえてある調度品。どれも日本では見られないものばかりだ。

時々すれ違う、いかにもメイドという服を着た女性達が、私の方をチラチラ見てはヒソヒソと話す。
大方、『あれが呪い子だ』とでも噂しているのだろう。そんなコソコソせず、大きな声で言えばいいものを。

やがて私は、一つの部屋の前にやって来た。



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