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第二部
ディアナside⑬
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赦されたと思い表情が緩んだビビアン様の顔が驚愕に染まる。
「どうしたの? あなたの願いを叶えてあげたのよ。もっと嬉しそうな顔をしなさいな」
「えっ? あの、二十年後とは、どういうこと、なのでしょうか?」
信じられないような不可解な顔でビビアン様が尋ねる。
「どうしたもこうしたもそのままの意味よ。あなたが男爵令嬢になるのは二十年後。それまでは公爵令嬢の肩書はそのままにしておいてあげるわ」
「どうして……」
男爵令嬢への降格くらいで罪が赦されるなんてそんなことあるわけない。罪も認めず反省もせず、娼館行きを示唆すると慌てて謝罪するなんて恥ずべき行為よ。
「だから言ったでしょう。あなたに実体験させてあげると。まずは娼館に行って娼婦として働いてごらんなさい。あなたの嘘が引き出した現実を身をもって体験なさいな。そうすれば自分の罪深さが分かるというもの。立派に娼婦として勤めあげたら、二十年後は男爵令嬢になれるわ」
二十年後は四十近く。令嬢と呼べるのか甚だ疑問だけれど、男爵家の娘には違いないわね。
「あ、あっ……イヤ。お願いです。それだけはどうか勘弁してくださいませ。どうか、どうか、お願い致します」
またもや床に頭を擦り付けて懇願するビビアン様。往生際の悪いこと。公爵一家は判決を即座に受け入れたというのに。
「あなたの願いもしっかりと聞き入れたのに、何が不満なのかしらねぇ。顔を上げてちょうだい」
動じることなく淡々と告げるアンジェラは駄々をこねるビビアン様を冷たく見つめるだけ。
言われるままにおずおずと顔を上げたビビアン様は顔色をなくし、頬には涙が流れた跡があった。
「二週間後、娼館から迎えがくるわ。その時に値段の交渉も行われる。こちらは相場の五倍の値を提示しているの。それに見合った金額かどうか、身体も含めて念入りに調べられるわ。あなたは公爵令嬢だし、その美貌と魅力的な身体とおまけに教養もあるから、もっと値が吊り上がるかもしれないわね。楽しみだわ」
ふふっと笑っていない目で笑うアンジェラ。そこには慈悲の欠片もない。
「イヤー。イヤー。イヤよ」
やっと現実を理解したのかビビアン様が叫ぶ。頭を抱えてブルブルと震えていた。
「お願いです。お願いです。それだけはどうか、考え直してくださいませ」
鉄格子を掴み一縷の望みに縋るように必死に訴えるビビアン様を蔑んだ瞳で一瞥したアンジェラは膝を折って彼女に目線を合わせた。
「あなたは何でもすると言ったわ」
「あっ!……そ、んな……」
自分の言葉を思い出したのか、ビビアン様は力なくペタンとしゃがみ込んだ。どちらにしても娼館行きは覆らない。
「十分譲歩したのよ。あなたの男爵令嬢になりたいという願いも叶えてあげると言ったでしょう? そんなわがままを言うものではないわ。それともメイドや盗賊と同じ極刑でもいいのよ」
「ヒッ……」
ビビアン様は小さく悲鳴を上げた。青白い顔が更に青くなる。死にたくはないらしい。彼女の罪を思えば十分それに値するのだけれども、それでは生ぬるいもの。
アンジェラは扇子を閉じるとビビアン様の顔に添わせた。なぞるように頬を扇子が滑る。
「一生娼婦として働けなんて言わないわ。二十年間、頑張ればいいのよ。そうすれば解放される。命はあるのだから未来も明るいわ。お給金だって支払われるのよ。あなたの身体がお金になるの。素敵なことじゃない? ただ、半分は孤児院などの施設に寄付。ノブレスオブリージュ。公爵令嬢なのだから当たり前の事ね。残りの半分はあなたのものよ。どう? なかなかいい話だと思うわ」
ボロボロと涙を流しながら首を左右に振るビビアン様。獲物をいたぶるような冷酷な目つきで眺めるアンジェラ。
「もう決定したことなの。命を取られないだけでも有難いと思いなさい。生きてさえいれば、これから先の未来はいくらでも変えられるのよ。娼婦になったからと言って絶望することはないわ。もしかしたら、あなたにとって天職かもしれなくてよ。でもそれは体験してみないとわからないものね。だからよい機会だと思うわ。自分の適性を見つけるためにも行ってらっしゃい」
子供の無限の可能性を信じて社会に送り出す母親のような口調でにっこりと笑う。内容に目を瞑れば、思わず「はい」と頷きたくなってしまうわね。
「アクセサリー類はイミテーションだけれど、ドレスや化粧品など身の回り品はあなたの持ち物を用意させるわね。あなたは公爵令嬢ですもの。みすぼらしい格好は似合わないわ。例え娼婦であっても品位を損なってはダメよ。あなたは公爵令嬢なのだから」
旅立つ子供にあれこれ世話を焼き注意を促し気遣うような口振りが何気に笑いを誘う。
ビビアン様は何度も何度も首を横に振った。
涙でぐしゃぐしゃになった顔は化粧が剥げて悲惨な状態になっている。
蝶よ花よと大切に育てられ淑女の鏡だと謳われた誉れ高き公爵令嬢が娼婦に落ちる。こんな屈辱的なことはない。
「一つ言っておくわ。自分の身体を傷つければ娼館行きがなくなるなんて思わないことね。商品価値がないと判断されれば、小間使いか下女に落とされるだけよ。売れっ子娼婦になって館主に大事にされるか、下働きや娼婦達の世話係でこき使われるか。選ぶのはあなたね」
最後の通達。
アンジェラはビビアン様を見据えた後ゆっくりと立ち上がった。
「イヤ、それだけはイヤ。イヤよ」
涙で濡れた瞳で追い縋るビビアン様。力の限り掴んだ鉄格子が揺れてガチャガチャと音を鳴らす。その様子を静かに見つめるわたしたち。今となっては何の感情も浮かんでこない。
しばらく眺めたのちにくるりと背を向けて出口へと歩いていく。
「ディアナ。助けて。お願いよ。助けて」
やっと存在に気づいたのか去りゆくわたしに助けを求める声。彼女の悲痛な願いは冷え切った心にちっとも響かない。
「ああ、そういえば……『フローラさえいなければ、わたくしがレイニー殿下と幸せになれたのに』って言ったそうね」
ふと振り返り思い出したように投げかけられたアンジェラの言葉にしばし時間が止まる。
空白の時間。
少しの間固まっていたビビアン様の顔から血の気が引いていく。見開いた目が嘘でないことを物語る。
「それがメイドの犯行の真の動機よ」
「あ、あっ……そんな……う、そ……なんで……あれは……」
爪を噛みながら、ブツブツと呟くビビアン様。
そんなに噛んだら、爪が痛んでしまうじゃないの。あとでメイドに念入りにケアさせなければ。商品に瑕疵を作っては価値が落ちてしまう。
それにしても、心当たりはあるようね。
忠義心に厚い者ほど頼もしくて厄介なものはない。メイドも主人のためだとしても犯罪に手を染めてはいけなかった。目の前の幸せに満足して手を打っておけばよかったのよ。ビビアン様もメイドも。せっかく婚約もしたのにね。すべてが水の泡。
それも自業自得だから同情もしないし情状酌量の余地もないわ。
今度こそ、わたしもアンジェラも一言も口を開くことも振り返ることもなく部屋を後にした。
♢♢♢
部屋に残されたビビアン様は発狂乱になって泣き喚く。
「イヤー。イヤよ。行きたくない。ここから出してー。イヤー」
断末魔のような叫びと泣き声がいつまでも部屋の中にこだました。
「どうしたの? あなたの願いを叶えてあげたのよ。もっと嬉しそうな顔をしなさいな」
「えっ? あの、二十年後とは、どういうこと、なのでしょうか?」
信じられないような不可解な顔でビビアン様が尋ねる。
「どうしたもこうしたもそのままの意味よ。あなたが男爵令嬢になるのは二十年後。それまでは公爵令嬢の肩書はそのままにしておいてあげるわ」
「どうして……」
男爵令嬢への降格くらいで罪が赦されるなんてそんなことあるわけない。罪も認めず反省もせず、娼館行きを示唆すると慌てて謝罪するなんて恥ずべき行為よ。
「だから言ったでしょう。あなたに実体験させてあげると。まずは娼館に行って娼婦として働いてごらんなさい。あなたの嘘が引き出した現実を身をもって体験なさいな。そうすれば自分の罪深さが分かるというもの。立派に娼婦として勤めあげたら、二十年後は男爵令嬢になれるわ」
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「あ、あっ……イヤ。お願いです。それだけはどうか勘弁してくださいませ。どうか、どうか、お願い致します」
またもや床に頭を擦り付けて懇願するビビアン様。往生際の悪いこと。公爵一家は判決を即座に受け入れたというのに。
「あなたの願いもしっかりと聞き入れたのに、何が不満なのかしらねぇ。顔を上げてちょうだい」
動じることなく淡々と告げるアンジェラは駄々をこねるビビアン様を冷たく見つめるだけ。
言われるままにおずおずと顔を上げたビビアン様は顔色をなくし、頬には涙が流れた跡があった。
「二週間後、娼館から迎えがくるわ。その時に値段の交渉も行われる。こちらは相場の五倍の値を提示しているの。それに見合った金額かどうか、身体も含めて念入りに調べられるわ。あなたは公爵令嬢だし、その美貌と魅力的な身体とおまけに教養もあるから、もっと値が吊り上がるかもしれないわね。楽しみだわ」
ふふっと笑っていない目で笑うアンジェラ。そこには慈悲の欠片もない。
「イヤー。イヤー。イヤよ」
やっと現実を理解したのかビビアン様が叫ぶ。頭を抱えてブルブルと震えていた。
「お願いです。お願いです。それだけはどうか、考え直してくださいませ」
鉄格子を掴み一縷の望みに縋るように必死に訴えるビビアン様を蔑んだ瞳で一瞥したアンジェラは膝を折って彼女に目線を合わせた。
「あなたは何でもすると言ったわ」
「あっ!……そ、んな……」
自分の言葉を思い出したのか、ビビアン様は力なくペタンとしゃがみ込んだ。どちらにしても娼館行きは覆らない。
「十分譲歩したのよ。あなたの男爵令嬢になりたいという願いも叶えてあげると言ったでしょう? そんなわがままを言うものではないわ。それともメイドや盗賊と同じ極刑でもいいのよ」
「ヒッ……」
ビビアン様は小さく悲鳴を上げた。青白い顔が更に青くなる。死にたくはないらしい。彼女の罪を思えば十分それに値するのだけれども、それでは生ぬるいもの。
アンジェラは扇子を閉じるとビビアン様の顔に添わせた。なぞるように頬を扇子が滑る。
「一生娼婦として働けなんて言わないわ。二十年間、頑張ればいいのよ。そうすれば解放される。命はあるのだから未来も明るいわ。お給金だって支払われるのよ。あなたの身体がお金になるの。素敵なことじゃない? ただ、半分は孤児院などの施設に寄付。ノブレスオブリージュ。公爵令嬢なのだから当たり前の事ね。残りの半分はあなたのものよ。どう? なかなかいい話だと思うわ」
ボロボロと涙を流しながら首を左右に振るビビアン様。獲物をいたぶるような冷酷な目つきで眺めるアンジェラ。
「もう決定したことなの。命を取られないだけでも有難いと思いなさい。生きてさえいれば、これから先の未来はいくらでも変えられるのよ。娼婦になったからと言って絶望することはないわ。もしかしたら、あなたにとって天職かもしれなくてよ。でもそれは体験してみないとわからないものね。だからよい機会だと思うわ。自分の適性を見つけるためにも行ってらっしゃい」
子供の無限の可能性を信じて社会に送り出す母親のような口調でにっこりと笑う。内容に目を瞑れば、思わず「はい」と頷きたくなってしまうわね。
「アクセサリー類はイミテーションだけれど、ドレスや化粧品など身の回り品はあなたの持ち物を用意させるわね。あなたは公爵令嬢ですもの。みすぼらしい格好は似合わないわ。例え娼婦であっても品位を損なってはダメよ。あなたは公爵令嬢なのだから」
旅立つ子供にあれこれ世話を焼き注意を促し気遣うような口振りが何気に笑いを誘う。
ビビアン様は何度も何度も首を横に振った。
涙でぐしゃぐしゃになった顔は化粧が剥げて悲惨な状態になっている。
蝶よ花よと大切に育てられ淑女の鏡だと謳われた誉れ高き公爵令嬢が娼婦に落ちる。こんな屈辱的なことはない。
「一つ言っておくわ。自分の身体を傷つければ娼館行きがなくなるなんて思わないことね。商品価値がないと判断されれば、小間使いか下女に落とされるだけよ。売れっ子娼婦になって館主に大事にされるか、下働きや娼婦達の世話係でこき使われるか。選ぶのはあなたね」
最後の通達。
アンジェラはビビアン様を見据えた後ゆっくりと立ち上がった。
「イヤ、それだけはイヤ。イヤよ」
涙で濡れた瞳で追い縋るビビアン様。力の限り掴んだ鉄格子が揺れてガチャガチャと音を鳴らす。その様子を静かに見つめるわたしたち。今となっては何の感情も浮かんでこない。
しばらく眺めたのちにくるりと背を向けて出口へと歩いていく。
「ディアナ。助けて。お願いよ。助けて」
やっと存在に気づいたのか去りゆくわたしに助けを求める声。彼女の悲痛な願いは冷え切った心にちっとも響かない。
「ああ、そういえば……『フローラさえいなければ、わたくしがレイニー殿下と幸せになれたのに』って言ったそうね」
ふと振り返り思い出したように投げかけられたアンジェラの言葉にしばし時間が止まる。
空白の時間。
少しの間固まっていたビビアン様の顔から血の気が引いていく。見開いた目が嘘でないことを物語る。
「それがメイドの犯行の真の動機よ」
「あ、あっ……そんな……う、そ……なんで……あれは……」
爪を噛みながら、ブツブツと呟くビビアン様。
そんなに噛んだら、爪が痛んでしまうじゃないの。あとでメイドに念入りにケアさせなければ。商品に瑕疵を作っては価値が落ちてしまう。
それにしても、心当たりはあるようね。
忠義心に厚い者ほど頼もしくて厄介なものはない。メイドも主人のためだとしても犯罪に手を染めてはいけなかった。目の前の幸せに満足して手を打っておけばよかったのよ。ビビアン様もメイドも。せっかく婚約もしたのにね。すべてが水の泡。
それも自業自得だから同情もしないし情状酌量の余地もないわ。
今度こそ、わたしもアンジェラも一言も口を開くことも振り返ることもなく部屋を後にした。
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