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ラッキーデー⁈
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テレビで見た昨日の星占い
今年一番のラッキーデー。
★ラッキーアイテム お気に入りのアクセサリー。
★ラッキーカラー ピンク。
★ラッキースポット 学校、職場。
◎今日は何事もうまくいくでしょう。素敵な出会いがあるかもしれません。積極的に行動しましょう。
いつもは見過ごしてしまう星占いは、昨日は何故か目に留まって、しかも一位だったから、あやかってみようと思ったのが運のつき。
お気に入りのピアスにサーモンピンクのパンツスーツ、今日は仕事。
これで準備万端、ラッキーさんいらっしゃいと期待に胸を膨らませて、意気揚々と出社した。
占い通りにいけば最高な一日になるはずだったのに、ラッキーどころかアンラッキー、最低な日になってしまった。
社員食堂でうどんをつつきながら一人ため息をつく。
ああ、ズキズキと傷が痛む。わたし芳村遥はガーゼに包まれた右耳にそっと手を当てた。痛い。あとで痛み止めを飲んでおこう。
昨日、出社したまではよかった。
会社に着いて思い出したのは朝一の会議の準備。早めにきて準備しなきゃいけなかったのに、すっかり忘れていた。先輩はもう来ているかもしれない。新人が遅れるわけにはいかないから、一目散に会議室へと向かった。
学生時代はバスケ部だったし、足には自信があったから、とにかく走った。走った。
ひたすら前だけを見ていたから周りなんて見えていなかった。でもまさか人にぶつかるなんて、醜態もいいとこ。
ぶつかった相手は白河櫂斗。我が社のイケメン御曹司。隣には橘部長。どちらも女性社員の憧れの的。
朝一に超VIPに会うなんて、超ラッキー!。……じゃないわよね。
よりによって、御曹司にぶつかるなんて自分が信じられない。直後に耳のあたりに引きつるような痛みがあったけれど、それもすぐに吹き飛んでしまった。ぶつかった挙句に転ぶなんて恥ずかしい。
思いがけず御曹司が手を差し伸べてくれたけれど、彼の手を煩わせるなんて恐れ多い。幸い身体は大丈夫そうだったから、自力で立ち上がった。
それよりもピアスはどこにいったんだろう。
大事なものだったのに。
ないことに気付いたのは治療が終わったあとだった。
失くした場所はあそこしか思い当らなかったから、今朝、早くに来てあの通路を時間をかけて探したけど、どうしても見つからなかった。
ピアスなんて小さいもの。
ごみと一緒に捨てられたか、どこかの隙間にでも入り込んでしまったか、誰かに踏まれて無残な姿になっているのかもしれない。だとしたら一生見つからない。
あれは本当に大切なものだったのに、片方しかないなんて。
彼になんて言おう。
就職が決まった時に、初めてのお給料で、お互いにプレゼントをしようって約束した。入社して一か月後、約束通りにわたしは彼にネクタイをプレゼント。彼はわたしにピアスをプレゼントしてくれた。
ずっと身につけられる飽きの来ないシンプルなもので、オーソドックスなデザインだったけど、とても気に入っていた。
それなのに――
どうしよう。
次に会う時に、お互いに身につけて来ようねって、言ったのはわたしだったのに。
失くしたなんて言ったら、彼はどんなにがっかりするだろう。
どうしよう。デートは今度の日曜日なのに。
いつもは占いなんて聞き流すのに。
どうして、占い通りにしたんだろう。今更、昨日になんて戻れないけど……
ペンダントだって、指輪だって、お気に入りはあったのに。どうして、あのピアスを選んだんだろう。今更、悔やんでも遅いけど。
腫れた傷口がズキズキする。
傷も痛いけど、心のほうがもっと痛い。
これからは絶対に、占いなんて信じない。
あー。もう、最悪。
今年一番のラッキーデー。
★ラッキーアイテム お気に入りのアクセサリー。
★ラッキーカラー ピンク。
★ラッキースポット 学校、職場。
◎今日は何事もうまくいくでしょう。素敵な出会いがあるかもしれません。積極的に行動しましょう。
いつもは見過ごしてしまう星占いは、昨日は何故か目に留まって、しかも一位だったから、あやかってみようと思ったのが運のつき。
お気に入りのピアスにサーモンピンクのパンツスーツ、今日は仕事。
これで準備万端、ラッキーさんいらっしゃいと期待に胸を膨らませて、意気揚々と出社した。
占い通りにいけば最高な一日になるはずだったのに、ラッキーどころかアンラッキー、最低な日になってしまった。
社員食堂でうどんをつつきながら一人ため息をつく。
ああ、ズキズキと傷が痛む。わたし芳村遥はガーゼに包まれた右耳にそっと手を当てた。痛い。あとで痛み止めを飲んでおこう。
昨日、出社したまではよかった。
会社に着いて思い出したのは朝一の会議の準備。早めにきて準備しなきゃいけなかったのに、すっかり忘れていた。先輩はもう来ているかもしれない。新人が遅れるわけにはいかないから、一目散に会議室へと向かった。
学生時代はバスケ部だったし、足には自信があったから、とにかく走った。走った。
ひたすら前だけを見ていたから周りなんて見えていなかった。でもまさか人にぶつかるなんて、醜態もいいとこ。
ぶつかった相手は白河櫂斗。我が社のイケメン御曹司。隣には橘部長。どちらも女性社員の憧れの的。
朝一に超VIPに会うなんて、超ラッキー!。……じゃないわよね。
よりによって、御曹司にぶつかるなんて自分が信じられない。直後に耳のあたりに引きつるような痛みがあったけれど、それもすぐに吹き飛んでしまった。ぶつかった挙句に転ぶなんて恥ずかしい。
思いがけず御曹司が手を差し伸べてくれたけれど、彼の手を煩わせるなんて恐れ多い。幸い身体は大丈夫そうだったから、自力で立ち上がった。
それよりもピアスはどこにいったんだろう。
大事なものだったのに。
ないことに気付いたのは治療が終わったあとだった。
失くした場所はあそこしか思い当らなかったから、今朝、早くに来てあの通路を時間をかけて探したけど、どうしても見つからなかった。
ピアスなんて小さいもの。
ごみと一緒に捨てられたか、どこかの隙間にでも入り込んでしまったか、誰かに踏まれて無残な姿になっているのかもしれない。だとしたら一生見つからない。
あれは本当に大切なものだったのに、片方しかないなんて。
彼になんて言おう。
就職が決まった時に、初めてのお給料で、お互いにプレゼントをしようって約束した。入社して一か月後、約束通りにわたしは彼にネクタイをプレゼント。彼はわたしにピアスをプレゼントしてくれた。
ずっと身につけられる飽きの来ないシンプルなもので、オーソドックスなデザインだったけど、とても気に入っていた。
それなのに――
どうしよう。
次に会う時に、お互いに身につけて来ようねって、言ったのはわたしだったのに。
失くしたなんて言ったら、彼はどんなにがっかりするだろう。
どうしよう。デートは今度の日曜日なのに。
いつもは占いなんて聞き流すのに。
どうして、占い通りにしたんだろう。今更、昨日になんて戻れないけど……
ペンダントだって、指輪だって、お気に入りはあったのに。どうして、あのピアスを選んだんだろう。今更、悔やんでも遅いけど。
腫れた傷口がズキズキする。
傷も痛いけど、心のほうがもっと痛い。
これからは絶対に、占いなんて信じない。
あー。もう、最悪。
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