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第三王子殿下の恋Ⅰ
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ラフェールが私室に呼び出したのは、黄金の髪にターコイズブルーの瞳のラフェールと同じ色を持つこの国の第三王子エドアール。十六歳でラフェールと面差しは似ているものの、まだ少年らしい無邪気な快活さがあり、周りからも可愛がられている末っ子王子である。
「今日も元気に登校して元気に下校しました。以上報告終わり」
面倒くさそうに事務的な声で言い終わると運ばれてきた紅茶を優雅な手つきで喉を潤した。甘いもの大好きなエドアールのために用意させた幾種類ものケーキを前に目を輝かせている。一通り眺め終わった後、一つ、また一つと口の中に運んでは顔をほころばせる。
幸せそうにケーキを頬張るエドアールとは対照的に、
「それだけか?」
「うん」
あっけらかんとした物言いにラフェールは不満げにため息をついた。
「あのさ、言っとくけど。僕はフロレンティーナ嬢の護衛騎士でもないし、侍女とかでもないんだよ? そこんとこ分かっててるの? 兄上」
「わかってる。でも会えないんだからティーナの様子を聞くくらい、いいじゃないか」
「……」
エドアールは手を止め黙ってジト目でラフェールを見た。
エドアールはフロレンティーナと同い年で、同じ学園に通う同級生でクラスメートでもある。入れ違いで学園を卒業したラフェールとは違い毎日彼女を見れるし、何なら話をしたり昼食を一緒に取ることだって可能だろう。王族の権限や公爵令嬢という身分を考えれば、親しく接することもできるだろう。
(それを利用して近づけってか?)
「僕だって一生徒だよ。学園には勉強しに行ってるの。だからスパイやらストーカーまがいのことをやってる暇はないんだよ。彼女だっていやでしょ? 自分の行動をいちいち報告されたら」
「……いや、別にそこまでしろとは言っていない。ただ、ちょっとティーナのことを知りたかっただけで……スパイとかストーカーとか大袈裟すぎないか?」
「大袈裟も何も、兄上が言ってることはそういうことだよ」
澄ました顔で断言すると、エドアールは止めていた手を再び動かし一口大に切ったケーキを口に運んだ。相好を崩しながらおいしそうに食べている姿を目にしながら、ラフェールはソファに深く沈み込む。
(まったく、こいつは……ああいえばこういう……小さい頃からこましゃくれたところがあったからな)
額に手を当てると困ったように左右に首を振った。
「で、協力はしたくないってことか?」
ラフェールの声にエドアールは顔をあげてジッと見つめると
「誰もそんなこと言ってないよ。さっきのはあくまでも第三者から見た見解を述べたまでで、協力しないとはいってないよ」
また、澄ました顔でそんなことを言うエドアール。
「じゃあ、最初からそう言えよ」
「えー。一応は忠告しとかないとあらぬ疑いをかけられたらいやだし」
「あらぬ疑いって何なんだ? 犯罪を犯すわけでもないのに、何言ってんだ」
「スパイとかストーカーって立派な犯罪じゃん。スパイはまあ、ここでは当てはまらないかもしれないけど」
「誰もストーカーしろとは言っていない。元気かどうかわかればいいだけだから」
「ええー」
一段と大きく叫んだ声がキーンと耳に響いて、ラフェールは耳をふさいだ。
「何かおかしいことでも言ったか?」
不可解なリアクションに驚いたのはラフェールの方なのだが、エドアールは驚愕の表情で目を見開いてラフェールの顔を見ている。
「だってさっき元気だって言ったら、それだけかって言ったでしょ? だからそれ以上の情報が必要かと思うじゃん? だからストーカーばりに張り付いとかないといけないのかなあって勘違いしちゃったよ」
てへぺろっと舌を出すエドアールにこめかみを押さえるラフェール。
こいつとまともに付き合うのが馬鹿らしくなってきた。
(最初から投げやりだったし面倒くさそうだったしな。聞く相手間違えたと思ってもエドしかいないんだよなあ)
フロレンティーナとの仲を反対されている身としては、他の貴族の子女達に聞くわけにもいかない。会えないからこそ色々心配になってエドアールに話を聞こうと思ったのだ。
「でも、尊敬する兄上のためだから、たまにはフロレンティーナ嬢の近況は報告するよ」
何を思ったのかサラッと手のひら返しをしてエドアールは爽やかな笑顔を向けた。テーブルの上にあったケーキ皿は空っぽ。見事に一つ残らずエドアールのお腹の中におさまっていた。
(尊敬する……兄上とか。どこまで本心なんだか)
吹けば飛ぶよな軽い口調で言われてもあまりうれしくはないのだが……
「ああ。お願いするよ。よろしくな」
背に腹は代えられない。誰にも頼れない以上エドアールに頼むしかない。
「うん。その代わり見れる範囲でだからね」
「それで十分だ」
四六時中見張ってもらうわけにもいかないし、少しでもフロレンティーナの様子が知れればいい。エドアールの言葉に頷いた。
「じゃあ、今度は僕の話聞いてくれる?」
「話? いいけども」
自分の頼みを了承してもらった手前、聞かないわけにはいかないだろう。
「あの、ティーアのことなんだけど」
「ティーアって、クリスのことか?」
「それ以外、誰がいるの?」
エドアールは心外とばかりにムッと口を尖らせる。
クリスティアと親しい者はクリスと愛称で呼ぶのだが、ティーアと呼ぶのはエドアールだけだった。
「それはいいとして、ティーアの結婚相手ってなんであいつなの?」
「はっ?」
思いもかけない話題がエドアールから飛び出してきて、ラフェールはしばし言葉を失った。
「今日も元気に登校して元気に下校しました。以上報告終わり」
面倒くさそうに事務的な声で言い終わると運ばれてきた紅茶を優雅な手つきで喉を潤した。甘いもの大好きなエドアールのために用意させた幾種類ものケーキを前に目を輝かせている。一通り眺め終わった後、一つ、また一つと口の中に運んでは顔をほころばせる。
幸せそうにケーキを頬張るエドアールとは対照的に、
「それだけか?」
「うん」
あっけらかんとした物言いにラフェールは不満げにため息をついた。
「あのさ、言っとくけど。僕はフロレンティーナ嬢の護衛騎士でもないし、侍女とかでもないんだよ? そこんとこ分かっててるの? 兄上」
「わかってる。でも会えないんだからティーナの様子を聞くくらい、いいじゃないか」
「……」
エドアールは手を止め黙ってジト目でラフェールを見た。
エドアールはフロレンティーナと同い年で、同じ学園に通う同級生でクラスメートでもある。入れ違いで学園を卒業したラフェールとは違い毎日彼女を見れるし、何なら話をしたり昼食を一緒に取ることだって可能だろう。王族の権限や公爵令嬢という身分を考えれば、親しく接することもできるだろう。
(それを利用して近づけってか?)
「僕だって一生徒だよ。学園には勉強しに行ってるの。だからスパイやらストーカーまがいのことをやってる暇はないんだよ。彼女だっていやでしょ? 自分の行動をいちいち報告されたら」
「……いや、別にそこまでしろとは言っていない。ただ、ちょっとティーナのことを知りたかっただけで……スパイとかストーカーとか大袈裟すぎないか?」
「大袈裟も何も、兄上が言ってることはそういうことだよ」
澄ました顔で断言すると、エドアールは止めていた手を再び動かし一口大に切ったケーキを口に運んだ。相好を崩しながらおいしそうに食べている姿を目にしながら、ラフェールはソファに深く沈み込む。
(まったく、こいつは……ああいえばこういう……小さい頃からこましゃくれたところがあったからな)
額に手を当てると困ったように左右に首を振った。
「で、協力はしたくないってことか?」
ラフェールの声にエドアールは顔をあげてジッと見つめると
「誰もそんなこと言ってないよ。さっきのはあくまでも第三者から見た見解を述べたまでで、協力しないとはいってないよ」
また、澄ました顔でそんなことを言うエドアール。
「じゃあ、最初からそう言えよ」
「えー。一応は忠告しとかないとあらぬ疑いをかけられたらいやだし」
「あらぬ疑いって何なんだ? 犯罪を犯すわけでもないのに、何言ってんだ」
「スパイとかストーカーって立派な犯罪じゃん。スパイはまあ、ここでは当てはまらないかもしれないけど」
「誰もストーカーしろとは言っていない。元気かどうかわかればいいだけだから」
「ええー」
一段と大きく叫んだ声がキーンと耳に響いて、ラフェールは耳をふさいだ。
「何かおかしいことでも言ったか?」
不可解なリアクションに驚いたのはラフェールの方なのだが、エドアールは驚愕の表情で目を見開いてラフェールの顔を見ている。
「だってさっき元気だって言ったら、それだけかって言ったでしょ? だからそれ以上の情報が必要かと思うじゃん? だからストーカーばりに張り付いとかないといけないのかなあって勘違いしちゃったよ」
てへぺろっと舌を出すエドアールにこめかみを押さえるラフェール。
こいつとまともに付き合うのが馬鹿らしくなってきた。
(最初から投げやりだったし面倒くさそうだったしな。聞く相手間違えたと思ってもエドしかいないんだよなあ)
フロレンティーナとの仲を反対されている身としては、他の貴族の子女達に聞くわけにもいかない。会えないからこそ色々心配になってエドアールに話を聞こうと思ったのだ。
「でも、尊敬する兄上のためだから、たまにはフロレンティーナ嬢の近況は報告するよ」
何を思ったのかサラッと手のひら返しをしてエドアールは爽やかな笑顔を向けた。テーブルの上にあったケーキ皿は空っぽ。見事に一つ残らずエドアールのお腹の中におさまっていた。
(尊敬する……兄上とか。どこまで本心なんだか)
吹けば飛ぶよな軽い口調で言われてもあまりうれしくはないのだが……
「ああ。お願いするよ。よろしくな」
背に腹は代えられない。誰にも頼れない以上エドアールに頼むしかない。
「うん。その代わり見れる範囲でだからね」
「それで十分だ」
四六時中見張ってもらうわけにもいかないし、少しでもフロレンティーナの様子が知れればいい。エドアールの言葉に頷いた。
「じゃあ、今度は僕の話聞いてくれる?」
「話? いいけども」
自分の頼みを了承してもらった手前、聞かないわけにはいかないだろう。
「あの、ティーアのことなんだけど」
「ティーアって、クリスのことか?」
「それ以外、誰がいるの?」
エドアールは心外とばかりにムッと口を尖らせる。
クリスティアと親しい者はクリスと愛称で呼ぶのだが、ティーアと呼ぶのはエドアールだけだった。
「それはいいとして、ティーアの結婚相手ってなんであいつなの?」
「はっ?」
思いもかけない話題がエドアールから飛び出してきて、ラフェールはしばし言葉を失った。
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