10 / 39
第2章:【ナマケモノの爪の垢】
10.【Z・Z・Z】
しおりを挟む
アジトの洞窟は狭い入口から予想できないほど広かった。
湿度が高く薄暗い洞窟内には一定間隔ごとにランプが横の岩壁に設置され淡い橙の炎が揺れている。
天井は高くないものの奥行きが深く細い道がいくつも枝分かれし部屋数も多い。
等身大蟻の巣というかんじだ。
洞窟内にはランプを持った盗賊がうろうろしているため思ったように捜索できない。
「意外と広いな。人質がどこにいるのやら」
「そうですね……こっち覗いてみましょう」
入口近くの部屋を二、三室覗くとそれぞれ部屋に盗賊たちが数人たむろしている。
「一つ一つ部屋を覗き回ってたら盗賊たちに見つかるリスクも増えるな。目星がつくものでもあればいいんだけど」
「あっ」
「なんだマースくん」
「人質だから逃げられないように遠くの部屋に閉じ込めるんじゃないですか」
「なるほど奥の方探してみるか」
手前にある部屋を後にし、奥の部屋から攻めることにした。
ダミ子とマースは洞窟内を忍び足で時に走り時に分かれ道に身を隠し盗賊たちに見つからないよう慎重に進んでいく。
そして幾らか奥に進んでいくと数メートル先に一人の太っちょ盗賊が歩いているのを発見。腰元で何か光るものが揺れている。
「あれ鍵ですよ! 近くに牢屋があるんだ」
マースが小さく叫ぶ。
「かもな。追ってみよう」
太っちょ盗賊を追う。
右へ左へ奥へ奥へ、薄暗い洞窟を進んでいくと突き当たりに一番広い部屋が見えた。
そこにあったのは大きな牢屋。
牢屋手前にあった岩に身を潜め様子を伺う。
牢の中にはナマケモノが数十匹入っていた。
「間違いない町の住人のナマケモノたちだ」
「数からしてたぶん全員いますね。あんな一ヶ所に可哀想に」
牢屋に閉じ込められたナマケモノたちはぐったり檻の中で寝そべっていた。もともとそういう種族かもしれないが心なしか表情もやつれて見える。
「あの太っちょから鍵を取り上げたいところだけど」
「牢番が他にもいるのが厄介ですね」
牢屋には太っちょ盗賊の他に二人盗賊仲間がいた。三人は牢屋の前でたむろしていてこの場から退きそうにない。
さてどうやって鍵を手に入れるか……なんて迷う暇もなくダミ子は近くの助手に笑いかける。
「“こういう時”のためのマースくんだよな」
「やっぱ僕の出番ですよね」
隠密作戦は彼の十八番だ。
……失敗例あるけど。
ネズミに変身したマースは隙を見て牢番の足元を潜り抜け、ナマケモノたちが捕まる牢屋まで辿り着く。
「ふー、セーフ」
「むあ?」
檻の中のナマケモノたちがマースを見つめる。
「むあむあ」「むーあー」
「しー、今助けますからね。いやぁ久々のミッション緊張するなぁ」
ネズミ態のマースはツルツルと牢屋の檻を上る。
天井付近まで上ったところで胴体に巻きつけられた胡椒瓶の紐を解きそれを抱き締めるように両腕いっぱいに抱える。
狙いは鍵を持つ太っちょ盗賊とそのサイドの牢番二人。
「では、おやすみなされ~……」
ふりふりと。
マースくんは【ネムクナール】を振りかけた。
盗賊たちの上から純白の粉が鱗粉のように牢番たちに降り注ぐ。
「な、なんだ?」
「ふぁ……なんか眠くなってきた」
「おやすみなさい~……」
牢番はあくびをすると、たちまち眠りの世界へ誘われた。
「今のうちに、」
「とやっ」牢番たちが眠ったのを確認し天井付近からダイブと同時に変身を解く。
着地した人間態のマースは轟々とイビキをかく太っちょ盗賊に駆け寄る。
「よし、鍵ゲット!」
鍵を握り牢屋の向こう側に向けて両腕で大きなマルのサインを送る。
「(ダミ子さーん、鍵ゲットです)」
「おお、よくやった」
洞窟の岩場の陰で隠れていたダミ子がひょっこり顔を覗かせた。
「これで捕まったナマケモノたちを解放できるな」
ダミ子はナマケモノたちが捕まる牢屋へ駆けつける。
「はい。この鍵で開くはずです」
「すぐ住人たちを出口へ誘導させるぞ」
後ろ護衛頼む、そう言うとダミ子はマースから受け取った鍵を錠に差し込む。
くるりと鍵は滑らかに一回転した。
「あれ?」
しかし錠前はカチャンと小気味良い音を立てるものの牢屋の扉は開かない。
「な、なんでだ。この鍵が牢屋の鍵じゃないのか」
「あーっ!?」
マースが叫んだ。
「な、なに」
「ダミ子さんこれよく見たらダイヤルがついてます! 暗証番号があるんです!」
錠の隣には別のダイヤルのついた錠がぶら下がっていた。
「まさかの二重ロック!」
思わぬ厳重警備にダミ子とマースはだばだばと汗が出る。
「とととにかく適当に番号を回す!」
「適当にってA~Zまであるんですよ! ダイヤル三つ揃えるまで日が暮れますよ!」
ダイヤルは縦に三つ並びそれぞれアルファベット二十六文字が用意されている。勘で当たるものではない。
「ええとええと」
「ダミ子さんファイト!」
「な、なんだお前は!!」「侵入者か!?」「怪しい奴がいるぞ!」
「あ! 通りがかりの盗賊が五人!」
「わーッ!? ふりふりふりふり」
ダイヤル錠に苦戦する最中盗賊五人に見つかるも【ネムクナール】をふりまくり撃退。
『ぐぅ』
「ってなんで私が撃退してんだ! 護衛しろよマースくん」
「ダミ子さん早く早く!」
「えーいヤケクソ!!」
鼻提灯を浮かべ眠る盗賊を見てダミ子はダイヤルを合わせた。
【Z・Z・Z】
ピンポーン。
軽快な音が鳴ると檻はガチャンと開いた。
「えー!? 開いちゃった!」
「頭隠して尻隠さずとはこのことだな。つめが甘い連中で助かった。救出するぞ」
湿度が高く薄暗い洞窟内には一定間隔ごとにランプが横の岩壁に設置され淡い橙の炎が揺れている。
天井は高くないものの奥行きが深く細い道がいくつも枝分かれし部屋数も多い。
等身大蟻の巣というかんじだ。
洞窟内にはランプを持った盗賊がうろうろしているため思ったように捜索できない。
「意外と広いな。人質がどこにいるのやら」
「そうですね……こっち覗いてみましょう」
入口近くの部屋を二、三室覗くとそれぞれ部屋に盗賊たちが数人たむろしている。
「一つ一つ部屋を覗き回ってたら盗賊たちに見つかるリスクも増えるな。目星がつくものでもあればいいんだけど」
「あっ」
「なんだマースくん」
「人質だから逃げられないように遠くの部屋に閉じ込めるんじゃないですか」
「なるほど奥の方探してみるか」
手前にある部屋を後にし、奥の部屋から攻めることにした。
ダミ子とマースは洞窟内を忍び足で時に走り時に分かれ道に身を隠し盗賊たちに見つからないよう慎重に進んでいく。
そして幾らか奥に進んでいくと数メートル先に一人の太っちょ盗賊が歩いているのを発見。腰元で何か光るものが揺れている。
「あれ鍵ですよ! 近くに牢屋があるんだ」
マースが小さく叫ぶ。
「かもな。追ってみよう」
太っちょ盗賊を追う。
右へ左へ奥へ奥へ、薄暗い洞窟を進んでいくと突き当たりに一番広い部屋が見えた。
そこにあったのは大きな牢屋。
牢屋手前にあった岩に身を潜め様子を伺う。
牢の中にはナマケモノが数十匹入っていた。
「間違いない町の住人のナマケモノたちだ」
「数からしてたぶん全員いますね。あんな一ヶ所に可哀想に」
牢屋に閉じ込められたナマケモノたちはぐったり檻の中で寝そべっていた。もともとそういう種族かもしれないが心なしか表情もやつれて見える。
「あの太っちょから鍵を取り上げたいところだけど」
「牢番が他にもいるのが厄介ですね」
牢屋には太っちょ盗賊の他に二人盗賊仲間がいた。三人は牢屋の前でたむろしていてこの場から退きそうにない。
さてどうやって鍵を手に入れるか……なんて迷う暇もなくダミ子は近くの助手に笑いかける。
「“こういう時”のためのマースくんだよな」
「やっぱ僕の出番ですよね」
隠密作戦は彼の十八番だ。
……失敗例あるけど。
ネズミに変身したマースは隙を見て牢番の足元を潜り抜け、ナマケモノたちが捕まる牢屋まで辿り着く。
「ふー、セーフ」
「むあ?」
檻の中のナマケモノたちがマースを見つめる。
「むあむあ」「むーあー」
「しー、今助けますからね。いやぁ久々のミッション緊張するなぁ」
ネズミ態のマースはツルツルと牢屋の檻を上る。
天井付近まで上ったところで胴体に巻きつけられた胡椒瓶の紐を解きそれを抱き締めるように両腕いっぱいに抱える。
狙いは鍵を持つ太っちょ盗賊とそのサイドの牢番二人。
「では、おやすみなされ~……」
ふりふりと。
マースくんは【ネムクナール】を振りかけた。
盗賊たちの上から純白の粉が鱗粉のように牢番たちに降り注ぐ。
「な、なんだ?」
「ふぁ……なんか眠くなってきた」
「おやすみなさい~……」
牢番はあくびをすると、たちまち眠りの世界へ誘われた。
「今のうちに、」
「とやっ」牢番たちが眠ったのを確認し天井付近からダイブと同時に変身を解く。
着地した人間態のマースは轟々とイビキをかく太っちょ盗賊に駆け寄る。
「よし、鍵ゲット!」
鍵を握り牢屋の向こう側に向けて両腕で大きなマルのサインを送る。
「(ダミ子さーん、鍵ゲットです)」
「おお、よくやった」
洞窟の岩場の陰で隠れていたダミ子がひょっこり顔を覗かせた。
「これで捕まったナマケモノたちを解放できるな」
ダミ子はナマケモノたちが捕まる牢屋へ駆けつける。
「はい。この鍵で開くはずです」
「すぐ住人たちを出口へ誘導させるぞ」
後ろ護衛頼む、そう言うとダミ子はマースから受け取った鍵を錠に差し込む。
くるりと鍵は滑らかに一回転した。
「あれ?」
しかし錠前はカチャンと小気味良い音を立てるものの牢屋の扉は開かない。
「な、なんでだ。この鍵が牢屋の鍵じゃないのか」
「あーっ!?」
マースが叫んだ。
「な、なに」
「ダミ子さんこれよく見たらダイヤルがついてます! 暗証番号があるんです!」
錠の隣には別のダイヤルのついた錠がぶら下がっていた。
「まさかの二重ロック!」
思わぬ厳重警備にダミ子とマースはだばだばと汗が出る。
「とととにかく適当に番号を回す!」
「適当にってA~Zまであるんですよ! ダイヤル三つ揃えるまで日が暮れますよ!」
ダイヤルは縦に三つ並びそれぞれアルファベット二十六文字が用意されている。勘で当たるものではない。
「ええとええと」
「ダミ子さんファイト!」
「な、なんだお前は!!」「侵入者か!?」「怪しい奴がいるぞ!」
「あ! 通りがかりの盗賊が五人!」
「わーッ!? ふりふりふりふり」
ダイヤル錠に苦戦する最中盗賊五人に見つかるも【ネムクナール】をふりまくり撃退。
『ぐぅ』
「ってなんで私が撃退してんだ! 護衛しろよマースくん」
「ダミ子さん早く早く!」
「えーいヤケクソ!!」
鼻提灯を浮かべ眠る盗賊を見てダミ子はダイヤルを合わせた。
【Z・Z・Z】
ピンポーン。
軽快な音が鳴ると檻はガチャンと開いた。
「えー!? 開いちゃった!」
「頭隠して尻隠さずとはこのことだな。つめが甘い連中で助かった。救出するぞ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結
まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。
コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。
「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」
イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。
対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。
レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。
「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」
「あの、ちょっとよろしいですか?」
「なんだ!」
レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。
「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」
私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。
全31話、約43,000文字、完結済み。
他サイトにもアップしています。
小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位!
pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。
アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。
2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる