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第5章:英雄の街でアルバイト!
30.憩い
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契約の一週間が過ぎ、ダミ子たちは給料を受け取った。
ジャスミンも店長の計らいで数日分の給料を渡された。
「嬢ちゃんはすぐにでも欲しいと思ったからよ」
「アーいいよ。給料なんかなくてもまた盗みまくるから」
「それは今言うんじゃねええ!」
野暮オオオォ! と店長は雄叫びをあげた。
「フフ、それは冗談ヨ。給料はいらん。タダ働きでエエよ。牢獄行きならなかっただけで有難いし。レジ盗んですまなかったナ」
店長や他の従業員たちを前にジャスミンは頭を下げた。
「盗んだ身で言うのもなんだが、楽しかった。働くのイイなってちょっぴり思えた」
「……アリガト」照れ顔を見られたくないのか声は小さくうつむいたまま頭を上げない。
店長はその下がる頭にそのまま給料封筒をぽん、とのっけた。
「なーに言ってんだ。こんくらい貰っとけ。嬢ちゃんのおかげでお客さんたちチップも料理も弾んでくれたし。大盛況だったじゃねェか」
これはとっとけ。
のせられたお給料を頭上でキャッチし、ジャスミンははにかみながらも嬉しそうに「アリガト」ともう一度礼を言った。
「良かったな。もしかして初給料?」
「ウン。なんか嬉しい」
「私も」
「僕もです」
「なんだ。全員初バイト給料記念だな」
自分もずっと薬剤研究所でしか働いてこなかったため、バイト経験はなかった。
アルバイトで給料を貰うのは初めてで新鮮で嬉しい。
「またいつでも働きに来いよ」
店長と従業員たちに店頭で見送られダミー子たちはフェアリーステージを去った。
「ダミ子お姉さん、マース」
「ん? なんだ?」
ジャスミンが二人に声をかけた。
「お給料、さっそく使いたい」
寄ったのは市場通りだった。
活気溢れる市場でジャスミンは給料で色とりどりの野菜に果実、新鮮な魚介類、さらに米を一俵購入した。
「そんなに買ってどうするんだ?」
「今日は初給料ゲット記念に、二人に我の料理をご馳走するネ!」
なんと《アジト3》は地下にあった。
これが本拠地だったらしい。
ジャスミンによると、戦争の時に使用されたシェルターを改造して作ったという。
「待ってナ。今料理を作るからー」
街でこれまた購入したフリルのエプロンをつけジャスミンは小さなキッチンに立ち食材を物色する。
「凄いな。見事なリフォームじゃないか」
「長く滞在しないから装飾は少ないんだケド」
「ベッドに丸テーブル、小型キッチンまで……よくもまあ拾い集めて……あ」
いや、盗んだのか?
「ここにあるのは拾い物ばかり。リサイクルアルよ」
察したのかジャスミンが答えた。
「秘密基地みたいでワクワクしますね!」
「ディルの漫画といい、君、こういうの大好きだな」
「ワクワクドキドキするものは誰だって大好きですよ」
少年の心を擽られたらしい。助手は興味深く部屋を見渡している。
「私は平穏がいい……」
「さ、完成! 御上がりヨー!」
「「お~っ!」」
丸テーブルの上には湯気を立てた美味しそうな料理が並べられた。
エビチリにチャーハン、水餃子。青椒肉絲に小籠包、棒々鶏……彩り豊かな品々は芳しい薫りで鼻孔をくすぐる。
「「「いただいまーす!」」」
ジャスミンの振る舞ってくれた料理はどれも舌鼓を打つほど極上な美味しさで、口の中がずっと幸せだった。
「ふーっ美味しかった~」
腹をさすり全員が幸せなため息を溢した。
「どれも美味しすぎて迷い箸しちゃいましたよー」
「な。エビチリ最高だった……君は器用なんだな。料理も躍りもできるなんて」
「どっちも趣味アルよ。ダンスや舞は妹と遊ぶ時によくしてたし、火の扱いは興味があってな。覚えるうちにレパートリーも増えたネ。知ってるカ? 中華料理は火力が命なんヨ」
食事を終えてからもジャスミンはダミ子とマースと楽しそうに喋り続けた。
ご馳走してもらったお礼に片付けはダミ子とマースが行った。
「ふぁ~眠くなっちゃった」
あくびを一つ、ジャスミンは床に敷いてあるクッションにダイブしクッションを挟むように脚を絡める。
「行儀悪いぞ。一応野郎もいるんだから」
「一応ってなんですか一応って。でもジャスミン、風邪ひくよ。毛布持ってこようか」
「……ダミ子お姉さん、マース」
「ん?」
「どうかした?」
「アリガトね」
二人に逢えて良かった。
「え……」
「先に寝てるヨ~」
そう言ってからジャスミンはぱたりと静かになった。
きっとはしゃぎ疲れたんだろう。
「まったく、自由な奴」
「起こさないように後でベッドに運んであげましょう」
自分たちは油断していた。
どうして自分たちが旅を続けているか目的を改めて突きつけられた。
ジャスミンは永眠病にかかっていた。
朝が来ても目を覚まさないジャスミンは死んだように眠っていた。
急いでフェアリーステージへ彼女を運び、店長は街医者を呼んだ。
どんなにダミ子たちがジャスミンに声をかけても、彼女が目を覚ますことはなかった。
眠る彼女の身柄は店の空いた部屋においてくれると店長は申し出てくれた。
ダミ子たちはよろしく頼むと頭を下げることしかできなかった。
「そういえば、嬢ちゃん店を出る前にこんなもん渡してきたんだ」
店長はジャスミンが置いていったという封筒を渡した。
それは一通の手紙だった。
~ダミ子お姉さんとマースへ~
『端金だが残りの金はオマエらに預けるネ。心配しなくて大丈夫。これは貸しアル。目覚めたら我が取り立てに行ってやるから、それまで少しでも足しにして頑張って世界を救ってくれヨ』
「……」
便箋と共に十万ゴールドが入れられていた。
ジャスミンは元から給料のうちから自分たちの分を振り分けてくれていたのだ。
受け取った手紙とジャスミンの手を握り締め、ダミ子は肩を震わせた。
マースは震える彼女の身体を支え、自身も唇を噛み締めた。
私たちは立ち止まっちゃいけない。
この先を進まなくてはならない。
ジャスミンが言ってたように、大切なのは今だから。
アンゼリカの街は今日も愉快な喧騒で包まれている。
一つの悲しみなど知らないように、気づかないように、明るい英雄譚が今日も云い継がれる。
「行こう」
絞り出すように声を出すと、ダミ子とマースは英雄の街を出た。
ジャスミンも店長の計らいで数日分の給料を渡された。
「嬢ちゃんはすぐにでも欲しいと思ったからよ」
「アーいいよ。給料なんかなくてもまた盗みまくるから」
「それは今言うんじゃねええ!」
野暮オオオォ! と店長は雄叫びをあげた。
「フフ、それは冗談ヨ。給料はいらん。タダ働きでエエよ。牢獄行きならなかっただけで有難いし。レジ盗んですまなかったナ」
店長や他の従業員たちを前にジャスミンは頭を下げた。
「盗んだ身で言うのもなんだが、楽しかった。働くのイイなってちょっぴり思えた」
「……アリガト」照れ顔を見られたくないのか声は小さくうつむいたまま頭を上げない。
店長はその下がる頭にそのまま給料封筒をぽん、とのっけた。
「なーに言ってんだ。こんくらい貰っとけ。嬢ちゃんのおかげでお客さんたちチップも料理も弾んでくれたし。大盛況だったじゃねェか」
これはとっとけ。
のせられたお給料を頭上でキャッチし、ジャスミンははにかみながらも嬉しそうに「アリガト」ともう一度礼を言った。
「良かったな。もしかして初給料?」
「ウン。なんか嬉しい」
「私も」
「僕もです」
「なんだ。全員初バイト給料記念だな」
自分もずっと薬剤研究所でしか働いてこなかったため、バイト経験はなかった。
アルバイトで給料を貰うのは初めてで新鮮で嬉しい。
「またいつでも働きに来いよ」
店長と従業員たちに店頭で見送られダミー子たちはフェアリーステージを去った。
「ダミ子お姉さん、マース」
「ん? なんだ?」
ジャスミンが二人に声をかけた。
「お給料、さっそく使いたい」
寄ったのは市場通りだった。
活気溢れる市場でジャスミンは給料で色とりどりの野菜に果実、新鮮な魚介類、さらに米を一俵購入した。
「そんなに買ってどうするんだ?」
「今日は初給料ゲット記念に、二人に我の料理をご馳走するネ!」
なんと《アジト3》は地下にあった。
これが本拠地だったらしい。
ジャスミンによると、戦争の時に使用されたシェルターを改造して作ったという。
「待ってナ。今料理を作るからー」
街でこれまた購入したフリルのエプロンをつけジャスミンは小さなキッチンに立ち食材を物色する。
「凄いな。見事なリフォームじゃないか」
「長く滞在しないから装飾は少ないんだケド」
「ベッドに丸テーブル、小型キッチンまで……よくもまあ拾い集めて……あ」
いや、盗んだのか?
「ここにあるのは拾い物ばかり。リサイクルアルよ」
察したのかジャスミンが答えた。
「秘密基地みたいでワクワクしますね!」
「ディルの漫画といい、君、こういうの大好きだな」
「ワクワクドキドキするものは誰だって大好きですよ」
少年の心を擽られたらしい。助手は興味深く部屋を見渡している。
「私は平穏がいい……」
「さ、完成! 御上がりヨー!」
「「お~っ!」」
丸テーブルの上には湯気を立てた美味しそうな料理が並べられた。
エビチリにチャーハン、水餃子。青椒肉絲に小籠包、棒々鶏……彩り豊かな品々は芳しい薫りで鼻孔をくすぐる。
「「「いただいまーす!」」」
ジャスミンの振る舞ってくれた料理はどれも舌鼓を打つほど極上な美味しさで、口の中がずっと幸せだった。
「ふーっ美味しかった~」
腹をさすり全員が幸せなため息を溢した。
「どれも美味しすぎて迷い箸しちゃいましたよー」
「な。エビチリ最高だった……君は器用なんだな。料理も躍りもできるなんて」
「どっちも趣味アルよ。ダンスや舞は妹と遊ぶ時によくしてたし、火の扱いは興味があってな。覚えるうちにレパートリーも増えたネ。知ってるカ? 中華料理は火力が命なんヨ」
食事を終えてからもジャスミンはダミ子とマースと楽しそうに喋り続けた。
ご馳走してもらったお礼に片付けはダミ子とマースが行った。
「ふぁ~眠くなっちゃった」
あくびを一つ、ジャスミンは床に敷いてあるクッションにダイブしクッションを挟むように脚を絡める。
「行儀悪いぞ。一応野郎もいるんだから」
「一応ってなんですか一応って。でもジャスミン、風邪ひくよ。毛布持ってこようか」
「……ダミ子お姉さん、マース」
「ん?」
「どうかした?」
「アリガトね」
二人に逢えて良かった。
「え……」
「先に寝てるヨ~」
そう言ってからジャスミンはぱたりと静かになった。
きっとはしゃぎ疲れたんだろう。
「まったく、自由な奴」
「起こさないように後でベッドに運んであげましょう」
自分たちは油断していた。
どうして自分たちが旅を続けているか目的を改めて突きつけられた。
ジャスミンは永眠病にかかっていた。
朝が来ても目を覚まさないジャスミンは死んだように眠っていた。
急いでフェアリーステージへ彼女を運び、店長は街医者を呼んだ。
どんなにダミ子たちがジャスミンに声をかけても、彼女が目を覚ますことはなかった。
眠る彼女の身柄は店の空いた部屋においてくれると店長は申し出てくれた。
ダミ子たちはよろしく頼むと頭を下げることしかできなかった。
「そういえば、嬢ちゃん店を出る前にこんなもん渡してきたんだ」
店長はジャスミンが置いていったという封筒を渡した。
それは一通の手紙だった。
~ダミ子お姉さんとマースへ~
『端金だが残りの金はオマエらに預けるネ。心配しなくて大丈夫。これは貸しアル。目覚めたら我が取り立てに行ってやるから、それまで少しでも足しにして頑張って世界を救ってくれヨ』
「……」
便箋と共に十万ゴールドが入れられていた。
ジャスミンは元から給料のうちから自分たちの分を振り分けてくれていたのだ。
受け取った手紙とジャスミンの手を握り締め、ダミ子は肩を震わせた。
マースは震える彼女の身体を支え、自身も唇を噛み締めた。
私たちは立ち止まっちゃいけない。
この先を進まなくてはならない。
ジャスミンが言ってたように、大切なのは今だから。
アンゼリカの街は今日も愉快な喧騒で包まれている。
一つの悲しみなど知らないように、気づかないように、明るい英雄譚が今日も云い継がれる。
「行こう」
絞り出すように声を出すと、ダミ子とマースは英雄の街を出た。
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