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あれから月日が経ち、私たちは中学生になった。
くーちゃんは言っていた通り県外の進学校の葵坂付属中へ、私たち双子は小学校からすぐ隣の咲桜坂中学校へ進学した。
中学に入学して私はそれまで瓜二つにしていた実琴との容姿を変えた。
双子だから何もかも同じ、そういう概念を突き放すように。一人の個人として成立していると主張するように。
私は外見を変えることによって実琴との差別化を図った。
しかし、その差別化は良くない意味で発揮された。
運動も勉強も出来て明るい性格の双子の姉と学力も運動神経も人並み以下で性格も気弱な双子の妹。
極端に言えば、スペックの高い姉とスペックの低い妹。
私たちのことを周囲の人間はこう揶揄した。
“出来る方”と“出来ない方”と。
容姿が似ていて中身が違うと、より二人の優劣が浮き彫りにされる。
いっそ外見も中身も同じだったら比べられる必要もなかったのに。
私は長く伸ばした髪を二つのお下げに。実琴は高い位置でくくったポニーテールにした。
溌剌とした姉と大人しく控えめな妹という認識が見事に完成した。
実琴は人気者だ。
それはクラスが違ってもわかった。
廊下ですれ違う時も体育の合同授業の時も、常に姉の周りには誰かがいた。
逆をいえば、実琴が学校で一人でいるところを見たことがない。
彼女は恐ろしく孤独が似合わない人間だった。
反対に私はいつも学校で一人だった。
中学校は小学校の隣にあるため、小学校の面子がそのまま中学校にくりあがることになる。
したがって、中学から心機一転、新たな友達をつくるなんてことは難しい。難攻不落。
「くーちゃんがいればなぁ」
小学生の時、まともに会話できたのは実琴を除きくーちゃんだけだ。
そのくーちゃんもここにはいない。
私が中学でひとりぼっちになるのは必然的だった。
***
放課後になると実琴が私のクラスまで来ると言った。
「真琴。明野と円加とテスト勉強するんだけどさ、カラオケ来ない?」
「え……」
突然の誘いにしどろもどろになる。
あと、何故テスト勉強でカラオケ?
素朴な疑問をぶつけたい気持ちもあるが、もっと先に聞かなくてはならないものがある。
「なんで私を誘うの?」
「んー、なんとなく?」
「なんとなくって」
実琴の後ろには友人のアケノさんとマドカさんらしき人たちが立っている。
目が合うとペコリと二人がお辞儀したのでつられてこちらも頭を下げた。
「紹介するね。こっち明野。こっち円加」
「おい紹介テキトーすぎかっての」
「百歩譲ってこっちとそっちっしょ」
「あははーごめんごめん! 真琴こいつら口悪いけど私と同じでいい奴らだから安心して」
「あはは……」
この二人の話し方やノリを見た時点で自分とは合わないタイプと察した。
「よろしく……」
「「よろよろ~」」
「じゃあ紹介も済んだし行くか!」
そう言って私の手を引っ張る。 これは一緒に行くパターンだ。
こうなると私は断れない。
実琴は私が押しに弱いことを知っている。知った上でのこの行動だ。
実琴は「本人の了承を得ましたぜ!」なんてピースサインをしている。
やっぱり、私の姉はずるい。
友人の二人も実琴と同じくノリが良く明るいタイプだ。
明るめの髪に短いスカート、鞄には派手な原色系のキャラクターのキーホルダーがいくつもぶら下がっている。
この四人の中での私は完全にアウェイ。
お呼びでない存在と感じてしまう。超がつくほど居心地が悪い。
カラオケ店に行く足取りは重かった。
くーちゃんは言っていた通り県外の進学校の葵坂付属中へ、私たち双子は小学校からすぐ隣の咲桜坂中学校へ進学した。
中学に入学して私はそれまで瓜二つにしていた実琴との容姿を変えた。
双子だから何もかも同じ、そういう概念を突き放すように。一人の個人として成立していると主張するように。
私は外見を変えることによって実琴との差別化を図った。
しかし、その差別化は良くない意味で発揮された。
運動も勉強も出来て明るい性格の双子の姉と学力も運動神経も人並み以下で性格も気弱な双子の妹。
極端に言えば、スペックの高い姉とスペックの低い妹。
私たちのことを周囲の人間はこう揶揄した。
“出来る方”と“出来ない方”と。
容姿が似ていて中身が違うと、より二人の優劣が浮き彫りにされる。
いっそ外見も中身も同じだったら比べられる必要もなかったのに。
私は長く伸ばした髪を二つのお下げに。実琴は高い位置でくくったポニーテールにした。
溌剌とした姉と大人しく控えめな妹という認識が見事に完成した。
実琴は人気者だ。
それはクラスが違ってもわかった。
廊下ですれ違う時も体育の合同授業の時も、常に姉の周りには誰かがいた。
逆をいえば、実琴が学校で一人でいるところを見たことがない。
彼女は恐ろしく孤独が似合わない人間だった。
反対に私はいつも学校で一人だった。
中学校は小学校の隣にあるため、小学校の面子がそのまま中学校にくりあがることになる。
したがって、中学から心機一転、新たな友達をつくるなんてことは難しい。難攻不落。
「くーちゃんがいればなぁ」
小学生の時、まともに会話できたのは実琴を除きくーちゃんだけだ。
そのくーちゃんもここにはいない。
私が中学でひとりぼっちになるのは必然的だった。
***
放課後になると実琴が私のクラスまで来ると言った。
「真琴。明野と円加とテスト勉強するんだけどさ、カラオケ来ない?」
「え……」
突然の誘いにしどろもどろになる。
あと、何故テスト勉強でカラオケ?
素朴な疑問をぶつけたい気持ちもあるが、もっと先に聞かなくてはならないものがある。
「なんで私を誘うの?」
「んー、なんとなく?」
「なんとなくって」
実琴の後ろには友人のアケノさんとマドカさんらしき人たちが立っている。
目が合うとペコリと二人がお辞儀したのでつられてこちらも頭を下げた。
「紹介するね。こっち明野。こっち円加」
「おい紹介テキトーすぎかっての」
「百歩譲ってこっちとそっちっしょ」
「あははーごめんごめん! 真琴こいつら口悪いけど私と同じでいい奴らだから安心して」
「あはは……」
この二人の話し方やノリを見た時点で自分とは合わないタイプと察した。
「よろしく……」
「「よろよろ~」」
「じゃあ紹介も済んだし行くか!」
そう言って私の手を引っ張る。 これは一緒に行くパターンだ。
こうなると私は断れない。
実琴は私が押しに弱いことを知っている。知った上でのこの行動だ。
実琴は「本人の了承を得ましたぜ!」なんてピースサインをしている。
やっぱり、私の姉はずるい。
友人の二人も実琴と同じくノリが良く明るいタイプだ。
明るめの髪に短いスカート、鞄には派手な原色系のキャラクターのキーホルダーがいくつもぶら下がっている。
この四人の中での私は完全にアウェイ。
お呼びでない存在と感じてしまう。超がつくほど居心地が悪い。
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