6 / 33
⑥
しおりを挟む
結果から言うと勉強はちっともはかどらなかった。
カラオケ店に着くや否や実琴はノートを広げる前にタッチパネルのペンを握る。この流れは完全に歌う流れだ。
友人二人も当たり前のように、次なに歌う? と選曲の話し合いをしている。
「ねえ、テスト勉強は? 勉強しに来たんだよね」
勇気を出して言うも、
「うん? そうだけどさ、歌わなきゃ損じゃん。誰かが歌ってる間に勉強する的な」
「そうそう。歌が終わるまでに単語を頭に詰めるみたいな?」
「タイムリミットあった方がはかどるっしょ」
全然はかどらないから!
なんて言えるわけもなく。
この人たち遊ぶ気満々なんだもの。
呆然とする私を余所に三人はカラオケ大会を始めてしまう。
結局盛り上がったのは私以外の三名で、私は明野さんとも円加さんとも会話もなく完全に蚊帳の外だった。
「しかも何も頭に残ってないし……」
はかどらない勉強会を終え、カラオケ店で明野と円加と別れ、姉妹で家までの帰り道を歩く。
私はやっとそこで実琴に文句を言う。しかし実琴にはちっとも響かない様子。
「カラオケ店に行って歌わないのは客としてどうよ」
それに関しては正論だがまず根本が間違っている。
「勉強場所にカラオケ店を選ぶな。図書館があるじゃん」
「図書館だと喋れないじゃん。交流が出来ないでしょ」
「交流って、勉強に必要ない……」
と言いかけて黙った。
もしかして、実琴は。
「私に友達をつくらせるために今日誘ったの?」
実琴は唇を尖らせそっぽを向いた。
肯定だ。
「余計なお世話だよ!」
「そう思っても姉としては放っておけないんですぅ」
なにが「ですぅ」だ!
「私は一人が寂しいなんて思ったことないよ」
一人が可哀相って思うのは人気者ならではの思い込みだ。憐れみだ。
私が睨むと、それに臆することなく実琴は言う。
「でもさ、なんでも一人で完結出来るのはだんだん難しくなってくるよ。皆仲良くとは言わんけどさ、コミュニケーションはとっておかないと」
「あーもう。わかった。わかりました」
突如始まる姉の説教に私は早めに折れておく。納得という名の降参。
「急にお姉ちゃんぽく諭すのやめてよ」
「姉はいつだって妹が心配なのさ」
「うざったい」
「悪態ついてるのも今のうちよ。実琴お姉様に感謝する日がいつか訪れるから」
実琴がわはは、と笑う。
まったくこの姉は気配りが出来るんだか出来ないんだか。
……取り敢えず今度アケノさんとマドカさんとすれ違った時は挨拶くらいしておこう。
カラオケ店に着くや否や実琴はノートを広げる前にタッチパネルのペンを握る。この流れは完全に歌う流れだ。
友人二人も当たり前のように、次なに歌う? と選曲の話し合いをしている。
「ねえ、テスト勉強は? 勉強しに来たんだよね」
勇気を出して言うも、
「うん? そうだけどさ、歌わなきゃ損じゃん。誰かが歌ってる間に勉強する的な」
「そうそう。歌が終わるまでに単語を頭に詰めるみたいな?」
「タイムリミットあった方がはかどるっしょ」
全然はかどらないから!
なんて言えるわけもなく。
この人たち遊ぶ気満々なんだもの。
呆然とする私を余所に三人はカラオケ大会を始めてしまう。
結局盛り上がったのは私以外の三名で、私は明野さんとも円加さんとも会話もなく完全に蚊帳の外だった。
「しかも何も頭に残ってないし……」
はかどらない勉強会を終え、カラオケ店で明野と円加と別れ、姉妹で家までの帰り道を歩く。
私はやっとそこで実琴に文句を言う。しかし実琴にはちっとも響かない様子。
「カラオケ店に行って歌わないのは客としてどうよ」
それに関しては正論だがまず根本が間違っている。
「勉強場所にカラオケ店を選ぶな。図書館があるじゃん」
「図書館だと喋れないじゃん。交流が出来ないでしょ」
「交流って、勉強に必要ない……」
と言いかけて黙った。
もしかして、実琴は。
「私に友達をつくらせるために今日誘ったの?」
実琴は唇を尖らせそっぽを向いた。
肯定だ。
「余計なお世話だよ!」
「そう思っても姉としては放っておけないんですぅ」
なにが「ですぅ」だ!
「私は一人が寂しいなんて思ったことないよ」
一人が可哀相って思うのは人気者ならではの思い込みだ。憐れみだ。
私が睨むと、それに臆することなく実琴は言う。
「でもさ、なんでも一人で完結出来るのはだんだん難しくなってくるよ。皆仲良くとは言わんけどさ、コミュニケーションはとっておかないと」
「あーもう。わかった。わかりました」
突如始まる姉の説教に私は早めに折れておく。納得という名の降参。
「急にお姉ちゃんぽく諭すのやめてよ」
「姉はいつだって妹が心配なのさ」
「うざったい」
「悪態ついてるのも今のうちよ。実琴お姉様に感謝する日がいつか訪れるから」
実琴がわはは、と笑う。
まったくこの姉は気配りが出来るんだか出来ないんだか。
……取り敢えず今度アケノさんとマドカさんとすれ違った時は挨拶くらいしておこう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】知られてはいけない
ひなこ
ホラー
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。
他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。
登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。
勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。
一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか?
心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。
(第二回きずな児童書大賞で奨励賞を受賞しました)
fall~獣のような男がぼくに歓びを教える
乃木のき
BL
お前は俺だけのものだ__結婚し穏やかな家庭を気づいてきた瑞生だが、元恋人の禄朗と再会してしまう。ダメなのに逢いたい。逢ってしまえばあなたに狂ってしまうだけなのに。
強く結ばれていたはずなのに小さなほころびが2人を引き離し、抗うように惹きつけ合う。
濃厚な情愛の行く先は地獄なのか天国なのか。
※エブリスタで連載していた作品です
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる