大人しい村娘の冒険

茜色 一凛

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ヒョウ柄

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「マーリンと言います。これから話すことはここだけの話にしてください。でないと私が困ってしまうのです」

 背が小さくて可愛い。肌は白くうっすらと頬がピンクに染まってる。その辺の大通りでこの子を見かけたら、魔女ごっこでもして遊んでいるとしか思えない。

「何があったの?」

「実は私は見てしまったのです。勇者が勇者有るまじき行動をとっているところを」

 マーリンは大きく手を前に出して握りこぶしを作ってる。太鼓でも叩くようなそんな素振りをした。

「ごめんね。ちょっと落ち着こうね」

 私はマーリンの背中をさすりなだめてやる。

「すいません。取り乱しちゃいました。いつもはこんな感じじゃないのに」

 礼儀正しくお辞儀をする。真面目な子なんだ……。

「勇者が……、あれは真夜中のことでした。私は宿屋に泊まってたんですけど、お腹を壊して外にあるトイレに行ったら、勇者が隣のホテルから出てきたのです。横にはメイクの濃いおばさんがいて、勇者の頬には赤の口紅がしっかりと付いてました」

「そうね、勇者も人だからな、恋ぐらいするよな」

 マイは頷きながら、勇者をフォローする。まあ、あんなやつ好きになる人なんているのかな、と思いつつも先が気になる。

「うん、それで、それでっ」

「それで、トイレで用を済ませてから」

「あー、そこはいいから」

「で、ですね。勇者は二番目でもいいかって言ってたんですよ」

 私たちは顔を見合わせる。

「他にも怪しいところがあるのです。あれは朝、こっそりお菓子を食べようと勇者の鞄を探ってたら、色鮮やかな使い古した女性物の下着が出てきたのです。どれも小さくてレースが付いていて、それで遊んでたら叩かれたんです」

「勇者って男だよな?」

 マイが怪訝そうな顔になる。マーリンはいつも一緒にいたと言うからわかるだろう。

「おいっ、あれはついてたか?」
「やめなよー、 そんなことどうだっていいし」

「あれってなんです? 分かんないです。たまに酔っ払うと服を脱ぐので……でも上着だけです……」

 そんな情報いらないし。ここまででわかったことは女性物を集めてそうなことと、それはどこで手に入れたかだよね。まさか洗濯物とか?

 私はタンスを開けて枚数を確認する。うーんあるね。マドカは?

「私も有ります」

「マドカのって意外と派手だよね」

 マドカのパンツは蛍光色で、家のあかりに照らされて光沢を帯びていた。意外すぎるよ。普段大人しいのに、履いてる下着はこんなにも明るいとかびっくりしてしまった。

「マイは?」

「待ってくれ。多分あるぞ」

 マイのは地味だ。見えてもいいような所謂ミセパンと呼ばれる代物で、これってボーイズレングスじゃん。ヒップの辺りで水平にカットされて見た目は薄い生地の短パンみたい。

 これならミニスカートにしてても大丈夫そう。私は普通のショーツで大股を開いてたのを後悔した。何やらかしてんのよ……。

 ふいに、まさか……お母さん……。

「うちのお母さん気合入ったヒョウ柄とか都会に遊びに行くと買ってくるんだよね。使い道ないのに」

 急いで、バタバタと、1階に降りていくと、お母さんは呑気にお茶を飲んでいた。

「あのさ、パンツって無くしたとかないよね?」

「ん? パンツ? あーそうよ。一昨日かしら、それがねー、聞いてよ。こないだ買った赤と白のヒョウ柄のが見当たらないのよ。外に干してたら無くなってしまって、風が吹いてどこかに飛ばされたのかしら」

 それだ! まさか勇者が? 私たちは顔を見合わせた。明日は学校は休み。みんなで勇者をとっちめに行こう、そんなことを喋ってた。
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