命を救った美女令嬢の家でVRMMOをプレイする。いつか彼女と付き合いたい。

茜色 一凛

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七話 『戻れない』

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「お金はあるから安心して、スイートルームにだって、VIPルームにだって泊まれるわ!」

 エリカは上機嫌だ。袋に入ったジュエルをちらちら見せてくる。まだ50万もあるから初期の街だし少しぐらい贅沢しても大丈夫だ。

「私とツグミちゃんが同じ部屋でユウキは別でいいわよね?」

「その方がいいと思う。ゲームだけどそういうとこはしっかりしよ」

 ツグミは真面目な子だ。

「いいよ! もしかしたらもしかするってこともあるかもしれんし」

 ツグミは幼児体型で胸も小ぶりだ。流石に襲うこともないだろう。cカップくらいは欲しいもんだ。

 宿屋はこの街の北東に位置していた。赤レンガの建物で煙突が1つ付いて煙がもくもくと出ている。

 ドアを開けるとポッチャリした女将さんが満面の笑顔で待ち構えていた。

 これは入ったらここを利用しないと行けないパターンだ。泊まって貰えるものだと期待されると、断れない性格なのだ。

「二部屋お願いしたいのですが?」

「あいにく混んでまして、一部屋しかご用意出来ません。如何なさいますか?」

「ツグミちゃんどうする?」

 流石に男とお泊まりは嫌だよな。酷く凹み、俯いてしまっている。

「一部屋で良いわ」

 エリカはサッサと決めていく。

「なんで?」

 ツグミは納得していないのか、頬をフグのように膨らませている。

「今日はこのゲーム初日だから早くしないと部屋が無くなるでしょ」

 判断が早い。この辺りは素直にすごいと思う。

 部屋に入るとベッドは二つしか無かった。あとは丸いテーブルが真ん中に一つ。椅子もふたつだけ。これはどうしたものかと思ったけど、女性二人に譲ろうと思った。

「いいよ! 俺は床で寝転がるから」

「何でよ!」

 エリカは何故か不貞腐れている。

「なんでと言われても、二個しかベッドないし」

 容姿がリアルすぎてどちらかのベッドで一緒に寝るのはまずいだろ。これがロボットの体型とか人型でないなら迷わず潜り込んでる頃なんだけど。

 エリカに毛布を一枚分けてもらい床に寝そべる。明日の朝になればリアルの世界に戻れるんだ。

 女性二人は何やら盛り上がっているようだ。聞き耳を立ててるとツグミちゃんの彼氏がこのゲームを一緒にやりたくて買ったらしいのだが、今日は仕事があって来れなかったらしい。

 付き合い初めてまだ1ヶ月で家にも入れたことがないらしい。キスもそれ以上の事もまだらしい。

 ツグミは俺の方を指さすと、

「彼氏なの?」とか言い出している。

 エリカは顔をブンブン横に振ると、

「なわけないじゃない。ないない、天地がひっくり返っても有り得ないわよ」

 とかのたまってる。俺はと言うと、ガールズトークに付き合いきれずに、背中を向けて寝たフリをした。







 朝日が窓から差し込み眩しい。ところで今何時なんだ?

 ウインドウを開くと朝の8時。朝食でも食べに行こうと二人を起こす。

 エリカは寝相が悪い。いつの間にパジャマに着替えたのかズボンが脱げて昨日の白いパンツが見えている。上は白のブラ。この人いつも下着で寝てるのか?

 その一方でツグミちゃんは毛布にしっかりと首まで包まり育ちの良さが感じられる。

「起きて! 朝食でも食べに行こうか?」

「また見たなー!」

 エリカは訳のわかんないことを言ってる。

「見せてるのそっちだろ?」

 こんな2人をツグミは暖かい穏やかな瞳で見つめている。

 マップを開くとレストランが三箇所ある。和食、洋食、中華と日本人好みのセレクトだ。

「どこにする?」

「うーん、朝は和食にしようかしら。あっさりしたもの食べたいし」

 エリカの一声で和食『アサガオ』に行くことに決まる。

 俺とツグミは冒険者の服を着てるのにエリカはどこからパジャマを持ってきたんだ?

 宿屋の女将さんが会計の時に教えてくれた。無理やりパジャマないの? とか夜中に騒いでいたらしい。

 アサガオの食事はご飯に味噌汁。卵焼きに漬物に鮭の塩焼きだった。味まで再現されているのが凄い。

 出汁は昆布と鰹節でとったのか、香りが良く疲れた体にしみる。卵は甘めでまあまあ。鮭は塩が効いていていい塩梅だった。

「お腹も膨れたし街でも散策する?」

「あ……」

 ツグミがおもむろに声を出す。

 視線の先を見ると、金髪の長い髪に切れ目。身長は180位あるスリムだが引き締まった男性がレストランの入口でいっちにー、とストレッチしていた。こちらに気づいたのか、

「つぐちんじゃーん」

「わたるー! ゲームできたのー?」

 あぁ、この男性が例の彼氏かい。

「どうしよー! 私戻れなくなったのー」

「何言ってんのー?」

 俺は最初から説明する。

「大丈夫だよ。俺のハードは古いから俺がアパートに連絡して上手くやってやるよー!」

「良かったー。」

「一晩ツグミがお世話になったんですね。ありがとうございます」

「いえいえ、特に何も出来なくて」

「また何かあったら連絡してね」

 エリカは何やら嬉しそうだ。

「彼氏に会えたのならツグミちゃんは大丈夫そうだな。俺たちはどうなっているんだろう」

「そのうち帰れるはずよ」

「運営からのお問い合わせもまだないみたいだな」

「あれ、来てるわよ」

 ウインドウのお問い合わせのマークが赤く点滅している。

 指でタップすると、


 ロット番号3011番の身元が全員分かりました。全部で1000人ほどです。各公共機関と連携を取り一刻も早くログアウトできるように致します。この度は申し訳ありませんでした。

「これならあまり心配する必要なかったじゃない」

 昼は中華を食べにレストラン『万万亭』に行き、熱々激辛の坦々麺を食べた。餃子に炒飯と。

 それでも、いつまで経っても帰れない。

「おかしくない?」

「おかしい」

 メイドは何をやっているのか?

 ん?

「あれ、つぐちゃん Danger?」

「ふざけてる?」

「違うの、フレンドのつぐちゃんのとこにDangerって」

「もしかして、ダンジョンに潜ったか?」

「行くしかないわね!」

 このゲームはフレンドが危機にある時、要はHPが残り少なくなる時、Dangerと出る仕組みとなっている。何らかの危険がツグミに迫っているらしい。

「無理は出来ないけど行く?」

「行くに決まってるでしょ! ちなみにあの彼氏小心者なんだって」

 俺たちはあの恐怖の階段に向かって走り出した。エリカが手を伸ばし俺は自然とその手を掴んだ。

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