命を救った美女令嬢の家でVRMMOをプレイする。いつか彼女と付き合いたい。

茜色 一凛

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二十七話 『ヒーリングの使い方』

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「なんで私が助けなきゃいけないんですか? この歯型見てください。凶悪なモンスターなんですよ! コイツは!」

 ツグは手の甲を見せて歯型を見せてくる。

「そこをなんとかお願いします。ツグ様っ!」
「いいわ! なら靴を舐めなさい!」

 そう言ってレストランの椅子の背もたれにドカッと偉そうに座り直し足を伸ばす。

 コラコラ、ツグは何を言っているんだ。そしてエリカは床に膝立ちをするとツグの足を持ち上げて、靴を脱がす。

「そうそう、靴下も脱がせて足を舐めてください!」

 エリカは靴下を脱がせ思いっきり壁に向かって投げ飛ばすと、カバンから羽を取り出す。ツグの左足をお腹と腕でホールドして、動けなくしたらもう片方の手で羽を使って足の裏をこちょこちょしだす。

「やっ、やめて、離してええええええー!」

 恐らくこそばゆいのだろう、ツグが絶叫し、エリカは止めることなく手を動かし続ける。

「ほんとにっ、やめてよおおおおおおー!」

 なおも激しく小刻みに動き続けるエリカの右手。口がほくそ笑んでこうなってしまっては誰もエリカを止められない。

「もう一度言ってみなさいよ! 治すのか治せないのかハッキリしなさい!」

「ごめんなさい。エリカ様、治せ無いかもしれませんが、やってみます。手を止めて頂けないでしょうか、はぁ、ふぅふぅ」

 ツグは涙目になって瞳孔が開き放心状態と化している。エリカは満足したのかうっとりとした表情を浮かべてペラペラになったスラリンを足で寄せてくる。

 雑すぎないか……。

「一度説明書読んでからやった方がいいんじゃないか? そもそも読んでないだろ?」

 俺がそう言うとエリカが、

「説明書も読まずにゲームしてたなんてありえないわ。まず最初に読むものでしょ」

 と、続ける。エリカ、君も読んでないじゃないかと言いたかったのだが、それはやめといた。エリカが手を離すとツグはウインドウを開き説明書の僧侶の欄を読み始める。俺達も横から見ることにする。

「なるほど、ヒーリングのコツは助けたいと思う気持ちが回復量に依存するんですね。使い方は十字架を治療したい人に掲げてキスをしてそれからヒーリングと言えばいいんですね!」

「待て待て、キスは十字架にだろ!」
「そうでしたね!」

 まあ、ツグの様な美少女にキスされるなら悪くないが、エリカの目もあるし、ここは真面目にやらないと。

 ツグミはまな板の胸元にかけられた十字架を持つとそっとキスをして、

「ヒーリング!」

 と、唱えた。すると、スライムの穴が徐々に塞がっていく。

「ありがとー、ツグっ!」

 エリカは嬉しそうに喜んで足をバタバタさせているが下にはペロンペロンのスライムが踏みつけられている……。
 
 スライムは元の形に戻ると再びエリカの服の中に帰っていく。まー、羨ましいけど所詮モンスターだからな。俺達はテーブルを囲い椅子に座ることにした。

「俺の方も頼むよ!」
「しょうがありませんね。ヒーリングっ。あれっ。出ない。」
「ツグっ、十字架にキスした?」
「あら、私としたことが、チュッ、今一度、ヒーリング!」

 十字架はうんともすんとも言わない。もしかしてMPがないんじゃないのか?

「あのさ、もしかしてMPすっからかんか?」
「いえ、有りますよ。初級魔法なので、余り減らないのです。」

 これだけは聞きたくないなと思いながらも、エリカが代弁する。

「ユウキへの助けたい気持ちが無いってことでしょ! 安心したわ! 二人がイチャついてるシーンが多かったから心配してたのよ! これでハッキリしたから帰りましょうか。汗もかいたしシャワーでも浴びたいわ!」

「イヤイヤ困るだろ! この先戦闘は俺はどうやって回復したらいいんだよ!」

 ──ラッキースケベのスキルを使うしかないじゃないか。こんなスキル本来僧侶がいたら必要ないんだよ。あーくっそー。

 調理場の方から声がする。

「お客さん入りまーす。三名と1匹です」

 奥からコップに入った水を持ってきてくれたウエイトレスがメニュー表を俺達の座っているテーブルにおきながら、

「なんになさいますか? ご注文お決まりでしたらベルでお呼びください」

 と、言って奥に下がっていく。


 エリカはメニューを開くと、そこには三の扉ボス特性チャーハンの文字が。激辛チャーハンを食べられたらクリアらしい。

 おいおいおいっ、運営さん。戦闘はどうなっているんだよ。俺は血湧き肉躍るような戦闘がしたいんだ。仲間と力を合わせて協力しつつボスをなんとか撃破するようなそんな充実感のある戦いがしたいんだ!

 エリカはおもむろにベルを鳴らす。ピンポーン。

「うちのパーティはユウキが参戦するわ! 男なんだからしっかりやんなさいよ!」

 隣に座る背中をビシッと叩いてハッパをかける。

「よし、やってやる!」

 ツグミも嬉しそうな顔をしている。手にはカメラを用意してるところを見ると、俺がガッツリと食べ終わり勝利のガッツポーズを撮ってくれるのだろう。頑張るか!

 ──しかし俺は舐めていた。これから起こる壮絶な戦い。これに打ち勝ったアイカに大きな拍手を送りたい。
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