38 / 52
三十七話 『エリカのキス』
しおりを挟む
「どういうことなのよ! 私たちがあと二日しかもたないって言われても納得できるわけないじゃない」
エリカは興奮して声を荒らげながら、俺を責めてくる。
もう時間が無い。今までの胃の違和感はリアルの体の状態が良くなかったからだ。気にしないようにしていたが思い当たるところはあった。
「少し冷静になって何かないか考えるしかない。俺とエリカを含めた五人は何としてもリアルに戻らないといけないし。運営に問い合わせして螺旋階段から降りてボスの部屋まで来るようにしたらどうなんだろう」
「その後どうするのよ? ジャンヌの旦那さんに負けてもらうことにするの? そもそもわざと負けてくれるとも思えないし」
エリカは部屋の中で涙ぐみながら、俺の顔を覗き込んでくる。早くなにか解決法を話して欲しいそんな思いがひしひしと伝わってくる。
「そろそろ約束の九時に近ずいて来てるから向かおう。向こうも半永久的に殺され続けるのは嫌だろうし。それが1回限りなら何とかなるんじゃないか?」
「楽天的すぎませんか? 魔王からすれば死ぬ必要もないんですよ! 逃げてもいいわけですし。どうしてこんなにボスが自由に考えれるようなゲームになってしまったんでしょう」
ツグミは小首を傾げて、ポテチをパクつく。
「ほんと余裕だよな。ツグミはいいよな。負けても何度でも復活できるし。ん? 復活? あの手で行くか?」
「何? 何なの? いい方法でも見つけたの?」
エリカは目を大きく開いて期待して俺の言葉を聞いている。
「VRMMOの王道で倒そうと思う。エリカ運営に連絡して集めれるだけのプレイヤーをボスの前に飛ばせるようにお願いして貰えないか? 作戦は全プレイヤーでパーティーを組めるようにして最前線に攻撃職、後方にツグのような回復職を置き全方位から攻撃する。向こうの出方を見てからどうするか決めよう! 恐らく相手の防御力が高すぎて1しかダメージ入らないかもしれないけど、人数でその辺りは十分カバーできるはず!」
「ユウキじゃないみたい。頼もしいね」
エリカがなんだか素直で不思議だ。いつもならチクッとしたようなことを言うのにどうしたんだ。もしかして俺の胃の違和感と似たような症状がエリカに起こっているのかもしれない。
エリカは壁に掛けられた時計を見て、つぐみに声をかける。
「ツグミ、五分だけ部屋の外で待ってて」
珍しく真剣な眼差しのエリカにツグミはこくりと頷き部屋を後にした。
「ユウキ今までありがと。何とかなりそうだね。線路であなたに助けられてほんと嬉しかったよ。他にも人は沢山居たのに私を見つけて助けてくれたのはあなただけだったわね」
エリカは俺に近づいて両手で俺の顔を包みこみ、そして顔を斜めに傾けて俺の唇にそっとキスをした。髪が揺れ甘いシャンプーの香りがした。
二人して顔を赤くして見つめ合う。
「そろそろ行かないと……」
俺はすごく嬉しかったけど、それよりもなんでこの時にあの線路の話が出てくるのか、何か引っかかる物を感じていたんだ。
それを口に出してしまうと何かが壊れそうな気がして俺はエリカの手を掴み部屋のドアを開けた。
──エリカだけは何があっても守り切りたい。切実に俺はそう願った。
エリカは興奮して声を荒らげながら、俺を責めてくる。
もう時間が無い。今までの胃の違和感はリアルの体の状態が良くなかったからだ。気にしないようにしていたが思い当たるところはあった。
「少し冷静になって何かないか考えるしかない。俺とエリカを含めた五人は何としてもリアルに戻らないといけないし。運営に問い合わせして螺旋階段から降りてボスの部屋まで来るようにしたらどうなんだろう」
「その後どうするのよ? ジャンヌの旦那さんに負けてもらうことにするの? そもそもわざと負けてくれるとも思えないし」
エリカは部屋の中で涙ぐみながら、俺の顔を覗き込んでくる。早くなにか解決法を話して欲しいそんな思いがひしひしと伝わってくる。
「そろそろ約束の九時に近ずいて来てるから向かおう。向こうも半永久的に殺され続けるのは嫌だろうし。それが1回限りなら何とかなるんじゃないか?」
「楽天的すぎませんか? 魔王からすれば死ぬ必要もないんですよ! 逃げてもいいわけですし。どうしてこんなにボスが自由に考えれるようなゲームになってしまったんでしょう」
ツグミは小首を傾げて、ポテチをパクつく。
「ほんと余裕だよな。ツグミはいいよな。負けても何度でも復活できるし。ん? 復活? あの手で行くか?」
「何? 何なの? いい方法でも見つけたの?」
エリカは目を大きく開いて期待して俺の言葉を聞いている。
「VRMMOの王道で倒そうと思う。エリカ運営に連絡して集めれるだけのプレイヤーをボスの前に飛ばせるようにお願いして貰えないか? 作戦は全プレイヤーでパーティーを組めるようにして最前線に攻撃職、後方にツグのような回復職を置き全方位から攻撃する。向こうの出方を見てからどうするか決めよう! 恐らく相手の防御力が高すぎて1しかダメージ入らないかもしれないけど、人数でその辺りは十分カバーできるはず!」
「ユウキじゃないみたい。頼もしいね」
エリカがなんだか素直で不思議だ。いつもならチクッとしたようなことを言うのにどうしたんだ。もしかして俺の胃の違和感と似たような症状がエリカに起こっているのかもしれない。
エリカは壁に掛けられた時計を見て、つぐみに声をかける。
「ツグミ、五分だけ部屋の外で待ってて」
珍しく真剣な眼差しのエリカにツグミはこくりと頷き部屋を後にした。
「ユウキ今までありがと。何とかなりそうだね。線路であなたに助けられてほんと嬉しかったよ。他にも人は沢山居たのに私を見つけて助けてくれたのはあなただけだったわね」
エリカは俺に近づいて両手で俺の顔を包みこみ、そして顔を斜めに傾けて俺の唇にそっとキスをした。髪が揺れ甘いシャンプーの香りがした。
二人して顔を赤くして見つめ合う。
「そろそろ行かないと……」
俺はすごく嬉しかったけど、それよりもなんでこの時にあの線路の話が出てくるのか、何か引っかかる物を感じていたんだ。
それを口に出してしまうと何かが壊れそうな気がして俺はエリカの手を掴み部屋のドアを開けた。
──エリカだけは何があっても守り切りたい。切実に俺はそう願った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
69
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる