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三十八話 『扉の向こうは』
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「ふうふう、約束の時間に何とか間に合いそうね。それにしても運営の対応早いわ」
エリカは息を切らしながら、俺たちは走って魔王の住むキッチンへと続くドアの前までたどり着いた。
「運営からのメールが入ってきた。イベント扱いにしてくれるみたいだ。魔王にダメージの入った得点でランキングを競わせようとは運営も考えたものだよな」
俺はウンウンと頷きながら、エリカとツグミの顔を交互に見る。
「しかもランキング上位には特別なアイテムも手に入るみたいですね。これならプレイヤーが沢山集まりそうです」
ツグミはそう言いながらも緊張しているのがヒシヒシと伝わってくる。
それもそのはず。この扉を開ければこの『Lack the world』の魔王が待ち構えているのだから不安はどれほどのものなのだろう。交渉が失敗したとなれば、下手したらワンパンされてあの世行きということも十分考えられる。
「私がいるから、広範囲の回復は任せて下さいね」
ツグミは自信たっぷりに、胸元の十字架を掴んで見せてくる。服の胸元を少し開けてはいるものの胸が小ぶりだから何とも思えないのが残念だ。
「それじゃあ、他のプレイヤーが集まるまで時間稼ぎしに行こうか?」
そう言って扉のノブに手をかけようとすると、俺の手の上に重ねるエリカ。思わずドキッとしてしまう。先程のキスを思い出し、心臓の鼓動が早く脈打つ。
「私後衛でもいいかな。少し疲れたみたいなの。脚が動かなくなってきたみたい……」
そう話すエリカの顔は少し青ざめている。やはりリアルの体が寝たきりのような状態になっているからその影響が少しずつ出ているんだろう。
「分かった。もし戦闘になったら、エリカも後衛でいいよ」
それは前から考えてた。命の危険がある人をボスの近くに行かせるのは酷だ。しかもエリカなら尚更危険な目に合わせたくない。
「どうしてもこの扉を開けないと行けないの?」
ツグミは心配そうな顔で俺の顔を見上げてくる。できることなら俺だって逃げ出したい。でも逃げても解決できない。だったら可能性にかけるしかない。
覚悟を決めてドアをノックして部屋の中に入った。
魔王、ジャンヌ、ドラゴを始めとする各扉のボスクラスがキッチンのテーブルに着いていた。食事がちょうど終わったようで、皆椅子の背もたれに体を預けて眠りこけている。
そして奥の方からジャンヌがフルーツの入った皿を持って現れた。
「あら、いらっしゃい。ユウキ。あれから皆で話し合った結果。私たちは徹底抗戦することにしたわ。確かにあなたにはドラゴの事で色々お世話になったみたいだけど、こればっかりはどうしようもないわ。もしかしたらDNAに刻み込まれたものでプレイヤーを純滅する様に出来ているのかもしれないの」
フルーツをテーブルに置き、俺たちが震え上がる姿をジャンヌは見ている。
「それだともう間に合わないかもしれない。僕とエリカと他10名ほどは魔王を今日中に倒さないとリアルの世界の体が駄目になってしまうんだ」
俺の言葉にツグミが遮るように、
「このゲーム本当に死人が出る人もいるの! 分かって下さい。何とかして貰えないでしょうか」
その時エリカの体がどさっと床に崩れ落ちた。
「えっ、だ、だ、大丈夫ですか?」
ジャンヌがエリカの体を起こすが意識がなく目を瞑ったままだ。
「エリカあああああーっ」
俺は叫びながら、こういう場合どうしたらいいのか分からなくなってた。リアルなら余り体を揺さぶらない方がいいことは知ってたが、このゲーム内はどう対処したらいいんだ。
俺の言葉にキッチンで眠りこけていた魔王を始めとするボスクラスは起き出す。
「敵の襲来か? 目にものを見せてくれるわ」
「さてと私の出番かな」
「は? 誰か倒れてるけど、母上がやったのか?」
どいつもこいつも、寝起きなのにテンションが高すぎるだろ。ツグミは咄嗟に十字架を両手で掴み、詠唱する。
「この世に存在する聖なる神よ! かのものを癒す力を与えよ! ヒーリングシャイン!」
「最強の回復魔法か! プレイヤーの中にもうそんなレベルまで上がっているものがいるとはな」
「もうここで純滅しないとえらいことになりますよ」
「まて、どうして回復してない?」
エリカは回復の兆しが見えない。俺は口元に耳を当てるが、小刻みに震えながら息もわずかで、弱々しい。
「まて、何かがおかしい!」
魔王は椅子から立ち上がり、倒れ込んでいるエリカの元に歩んできた。
エリカは息を切らしながら、俺たちは走って魔王の住むキッチンへと続くドアの前までたどり着いた。
「運営からのメールが入ってきた。イベント扱いにしてくれるみたいだ。魔王にダメージの入った得点でランキングを競わせようとは運営も考えたものだよな」
俺はウンウンと頷きながら、エリカとツグミの顔を交互に見る。
「しかもランキング上位には特別なアイテムも手に入るみたいですね。これならプレイヤーが沢山集まりそうです」
ツグミはそう言いながらも緊張しているのがヒシヒシと伝わってくる。
それもそのはず。この扉を開ければこの『Lack the world』の魔王が待ち構えているのだから不安はどれほどのものなのだろう。交渉が失敗したとなれば、下手したらワンパンされてあの世行きということも十分考えられる。
「私がいるから、広範囲の回復は任せて下さいね」
ツグミは自信たっぷりに、胸元の十字架を掴んで見せてくる。服の胸元を少し開けてはいるものの胸が小ぶりだから何とも思えないのが残念だ。
「それじゃあ、他のプレイヤーが集まるまで時間稼ぎしに行こうか?」
そう言って扉のノブに手をかけようとすると、俺の手の上に重ねるエリカ。思わずドキッとしてしまう。先程のキスを思い出し、心臓の鼓動が早く脈打つ。
「私後衛でもいいかな。少し疲れたみたいなの。脚が動かなくなってきたみたい……」
そう話すエリカの顔は少し青ざめている。やはりリアルの体が寝たきりのような状態になっているからその影響が少しずつ出ているんだろう。
「分かった。もし戦闘になったら、エリカも後衛でいいよ」
それは前から考えてた。命の危険がある人をボスの近くに行かせるのは酷だ。しかもエリカなら尚更危険な目に合わせたくない。
「どうしてもこの扉を開けないと行けないの?」
ツグミは心配そうな顔で俺の顔を見上げてくる。できることなら俺だって逃げ出したい。でも逃げても解決できない。だったら可能性にかけるしかない。
覚悟を決めてドアをノックして部屋の中に入った。
魔王、ジャンヌ、ドラゴを始めとする各扉のボスクラスがキッチンのテーブルに着いていた。食事がちょうど終わったようで、皆椅子の背もたれに体を預けて眠りこけている。
そして奥の方からジャンヌがフルーツの入った皿を持って現れた。
「あら、いらっしゃい。ユウキ。あれから皆で話し合った結果。私たちは徹底抗戦することにしたわ。確かにあなたにはドラゴの事で色々お世話になったみたいだけど、こればっかりはどうしようもないわ。もしかしたらDNAに刻み込まれたものでプレイヤーを純滅する様に出来ているのかもしれないの」
フルーツをテーブルに置き、俺たちが震え上がる姿をジャンヌは見ている。
「それだともう間に合わないかもしれない。僕とエリカと他10名ほどは魔王を今日中に倒さないとリアルの世界の体が駄目になってしまうんだ」
俺の言葉にツグミが遮るように、
「このゲーム本当に死人が出る人もいるの! 分かって下さい。何とかして貰えないでしょうか」
その時エリカの体がどさっと床に崩れ落ちた。
「えっ、だ、だ、大丈夫ですか?」
ジャンヌがエリカの体を起こすが意識がなく目を瞑ったままだ。
「エリカあああああーっ」
俺は叫びながら、こういう場合どうしたらいいのか分からなくなってた。リアルなら余り体を揺さぶらない方がいいことは知ってたが、このゲーム内はどう対処したらいいんだ。
俺の言葉にキッチンで眠りこけていた魔王を始めとするボスクラスは起き出す。
「敵の襲来か? 目にものを見せてくれるわ」
「さてと私の出番かな」
「は? 誰か倒れてるけど、母上がやったのか?」
どいつもこいつも、寝起きなのにテンションが高すぎるだろ。ツグミは咄嗟に十字架を両手で掴み、詠唱する。
「この世に存在する聖なる神よ! かのものを癒す力を与えよ! ヒーリングシャイン!」
「最強の回復魔法か! プレイヤーの中にもうそんなレベルまで上がっているものがいるとはな」
「もうここで純滅しないとえらいことになりますよ」
「まて、どうして回復してない?」
エリカは回復の兆しが見えない。俺は口元に耳を当てるが、小刻みに震えながら息もわずかで、弱々しい。
「まて、何かがおかしい!」
魔王は椅子から立ち上がり、倒れ込んでいるエリカの元に歩んできた。
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