命を救った美女令嬢の家でVRMMOをプレイする。いつか彼女と付き合いたい。

茜色 一凛

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三十九話 『ツグミの逃走。死ぬのは嫌』

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「こんなの見たことないぞ。何故、回復魔法で回復しない? これはもしや我々に有利な展開なんじゃないか? 神が我々に力を与えてくださっているとしか思えぬ! この流れに続こうぞ!」

 そういうと、他のボス達も恍惚とした表情で椅子から立ち上がり、

「そうだ、そうだ俺たちに天啓がきてるんだ」
「プレイヤーが回復出来ないってことは今から全ての街を破壊しに行った方が早くないか?」
「そうだな。こんなとこで寝てる場合じゃないぞ」
  
 等と、恐ろしい事を話している。完全にやばい状況になってます。

「お前ら各町に散らばり殲滅してこい! 今がチャンスの時よ!」

 魔王が叫びながら赤のビロードのマントを翻すと皆ワラワラと各々の武器を取り扉から外へと出ていく。

 俺達にはもうなす術も残されていないのか?

「ここは俺が始末するから、女二人と男一人か?五分もいらんな」

 エリカの衰弱する様子を見て、舌なめずりをする魔王。こいつ一体何を考えているんだ? あーそうだこいつ女にだらしのないやつだった。

 しめしめ、ここは、俺は唐突に口に出す。

「ジャンヌさん魔王がエリカの胸を触ってます。浮気です」

 丁度ジャンヌはテーブルの奥の方にいるから、こちらが良く見えていない。

 その言葉と同時にジャンヌの体が瞬間移動し、ミカンを握った手で魔王の頬に勢いのある拳骨が入った。

 飛び散るミカンの汁。またしても魔王は食器棚にクリーンヒットした。

「よっしゃー! いけるかこれ。少しでも時間を稼がないと」

 俺は小声でツグミに話しかけたが、

「ごめんなさい。私、用事思い出したので帰ります。今彼氏からデートするって、メールが来てたので、ほんとすみません」

 そそくさと部屋から出ていこうとする。俺は慌てて待ってくれと手を伸ばすと、ツグミの小ぶりな胸を引っ掴んだ。

「やめてください。これはあなたのものではありません」
「こんな状況なのに逃げるとかありえないだろ」

 俺も必死だ。この手を離したらもう回復役がいないから即死になってしまうじゃないか。羞恥心よりもすけべ心よりも大切なものがあるのだ。命のためなら体裁など構ってられるか。

「私の胸なんです。やめてください」

 ツグミは頬を赤らめて俺の顔を涙ぐみながら見るが、意外と取っ手のように少し固めでつかみ心地も良い。不安もあり絶対にこの手を離してはいけないような気がしてくる。

「あ、エリカさんが目を覚ましましたよ。エリカさーん」

 俺は後ろを振り返り、思わず手を離してしまう。ツグミはドアに向かって「ばーかっ」という捨て台詞を吐きながら逃げ出した。

「あの野郎っ!」

「グホッ。何するんだジャンヌ! 敵は俺じゃない。あの男だろ」

 ミカンの汁と鼻血まみれになりながら魔王は太く渋い声を上げて立ち上がる。ヒットポイントバーは9割残っている。あと九発魔王にお見舞いすれば何とかなりそうだ。──いや無理だろう。

「いえ、その男はしっかりと揉んでましたよ。油断も隙もあったもんじゃありません。嘘に嘘を重ねてきた男によくあるいいわけです。ジャンヌさんここは徹底的にやっちゃいましょう」

 ジャンヌはヒステリックのようになり、奇声を上げて、魔王を踏んずけている。いいぞ! このままやってしまえ!

「待て待て、俺はお前が最後の女と言っただろうが」

 そういうと、マントの裏ポケットから懐中時計を出す。中には写真が入っていて、よく見るとこ、これはめぐニャンだった。しかもメイド服のパンツが見える位置からこっそりこいつ隠し撮りしてやがる。

「あなたもしかしてメイド喫茶行ったの? 何して遊んでるのよ!」

 ジャンヌの蹴りあげる力がだんだん強くなる。いつの間にメイド喫茶に行ったんだよ。しかもめぐニャンの写真を入れるとか、ドラゴの父親だから趣味も似てるからか。

 懐中時計は割れ、めぐニャンの写真の下にジャンヌの笑顔でおにぎりをパクつく写真が出てきた。

「これはどういうわけなのよ! 何で私の写真が下に入ってんのよ。私は他の女のパンツに負けてるってことなの? パンツ以下の存在ってことなの?」

 ジャンヌは興奮してメグのパンチラ写真を破り魔王の顔に向かって投げ捨てた。

「うおー! 俺のお宝をー! なんてことしてんだよ。でもな、でもな、これには深いわけがあって……俺にとって萌え萌えキュンキュンのアイドルなんだよー」

 あーこんなに渋いおじ様がパンチラ写真を家宝にしていたとは、ボスが馬鹿で何とかなりそうだ。残りのヒットポイントバーは5割。ここからは更に厳しい戦いが待っている。
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