命を救った美女令嬢の家でVRMMOをプレイする。いつか彼女と付き合いたい。

茜色 一凛

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四十三話 『魔王の頭に椅子の一撃を』

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 俺は深いため息をつく。よりにもよってツグミが重要なキャラクターだったとは。

 エリカの方を向くとまどっている。ツグミはデートに出かけたんだ。あの口先三寸男と今頃よろしくやってる頃なんだろうか?

「ツグミに連絡取れるわけないよな。難しいよな……」

 俺はエリカに小声で聞くが、エリカは肩を落としその場にぺたりと座り込んでしまった。

「諦めるしかないの? あなたゲーム三昧の毎日を送っていたんでしょ? それなら何か攻略法の一つや二つ思い浮かばないの?」

 そうだ。ツグミ意外にも僧侶はいるじゃないか? でもほぼ全てのプレイヤーを敵に回してしまった。

「俺たちこのゲームのプレイヤーを全て敵に回したよな? そんな俺たちの頼み事を彼らが聞いてくれるとは思えないし。もっと他のプレイヤーと仲良くしておくべきだったんだよ!」

 エリカは顔を上げて俺の情けない顔をまじまじと見る。

「ほんとしょうがないわね。でもそんなユウキでも一緒に居られてすごく嬉しかったよ。本心で話してくれる人が身近にいた事がこんなに私に無いかけがえのないものだったなんて」

 エリカはか細い声で俺に話しながら、俺の手をそっと握りしめる。

 魔王は頭をかきながら俺たちの方を見つめて。

「どうするんだ? 僧侶のアテはあるのか? いずれにせよ今日は特にやることもないから待ってやってもいいぞ」

 この魔王にしてもとんだお人好しだ。よくこんなんで魔王になれたもんだ。もっと魔王というものは残虐性があり、人でなしで、ワンマンなところがあっても良さそうなもんだが、人間が出来すぎてはいやしないだろうか? いや、人間ではなく魔王か?

 俺はエリカが日本にいた時、容姿に惚れたんだ。こんな彼女がいたらなんて心のどこかで考えていた。

「はぁ、はぁ、何か胸が痛くなってきたみたい。ユウキ、私もうあまりもたないかもしれない」

 エリカは胸元を抑えながら苦しそうな表情を浮かべて、真剣な眼差しで俺の目を見つめてくる。

「ほんと真っ直ぐで曇りのない目だよな。諦めるしか無いんだけど、何か最後に少し足掻いてみるか! いっその事、この魔王の椅子を持ち上げてこれでぶっ飛ばしたらどうなるんだ?」

 魔王は一瞬ビクッとしたがすぐに落ち着いた態度に戻り、

「やめとけ! 弱小な魔法使いでは叩いた方の腕が折れるだけだ」

「やってみないとわかんないだろ?」

 俺は大きな魔王の椅子を持ち上げようとしゃがみこみ椅子の脚を掴んだ。これで一撃食らわせてやるんだ。

「やめた方がいい! そんなもので叩いても意味が無いとなぜわからんのだ。人間とはほんとに愚かだ」

 魔王は呆れながら、さあかかってこいと両手を広げて待ち構えている。

 俺は椅子を頭上に振り上げためを作ってから魔王の頭目掛けて椅子を振り下ろそうとした。

 あ、またしてもやってしまった。

「ギックリだ。エリカすまない。最後の最後まで迷惑かけることになってる」

 エリカを見れば息をするのも苦しそうなのに、俺の頬を両手で包み込み、

「ゲームなのにほんとおかしいわね。なんでこうなの? ツグミに連絡する力もないよ。ユウキ後は信じてるわよ」
 
 そう言うと力なく目を閉じ、俺の方へ倒れ込んできた。俺は優しくエリカの体を両手で包み込む。

「エリカあああああああー!」

 部屋中に響く声。

 ──俺はエリカに何が出来たんだ? 何もしてあげてない。このままでいいわけない。考えろ真剣に。考えられるかよ。エリカ倒れてるし、せめてこの世界のヒーリングをかけてもらえば多少は……。
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