命を救った美女令嬢の家でVRMMOをプレイする。いつか彼女と付き合いたい。

茜色 一凛

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四十二話 『モーニングスターはツグミ次第』

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「君らの考えは分かった。だから何も言わなくて良い」

 魔王は俺たちのどうしようもない状態に薄々気づき始めているのかもしれない。俺たちを引っつかみながら走る。少し行くと赤い鉄の扉が見えてきた。

「この奥ならまだ誰も入れないはずだから、ここで話をしよう。本来ならストーリーを進めて扉の鍵を手に入れないとここに辿り着くことすらできない」

 魔王は低い声で俺とエリカに語りかける。扉の前で手を離してもらい後に続いて部屋の中に入る。ここは恐らく魔王の最終決戦となる部屋の中だ。

 俺は運営に相談したのが上手くいかなかったこともあり、魔王の顔を直視出来なくなっていた。そんな俺にエリカが肘でビシビシ脇腹をつついてくる。

「しっかりしなさいよ。済んだことは仕方ないでしょ。それよりこの後どうしたらいいか考えないといけないんじゃないの?」

 足元がふらつくエリカの体を支える俺は魔王に、

「本当に悪かった。もしかしたら交渉が上手くいかないんじゃないかと思ったんだ。でもあなたは人間よりも人間らしくて……。俺はそういう人が好きなんだ。今思うと、これまで生きてきたけど、まともに仕事とかしてなかったせいか周りも同じようないい加減なやつしかいなかった気がする。ちゃんとした心と心の繋がりをまさか魔王に感じられるとは思ってなかった。本当にすみませんでした」

 俺はもうただ素直に謝ることにした。このVRMMOの世界に来る前俺に足らなかったのは恐らく素直さだったのかもしれない。他人が揚げ足をとることはよくありその度に嫌な顔をして、さらに嫌われるとかよくあり、そんな世界を毎回同じように巡って生きてきたような気がする。
 
 魔王は少し微笑んで、

「もう二度とこんなことは言わないが、今回だけ特別にやられてやろうじゃないか。わしもお前のことが気に入ったから今回だけ特別だ」

 魔王は視線を自分の座る椅子の裏に向けた。何かあるのか?

 俺は足元のおぼつかないエリカをおんぶすると豪華な宝石が散りばめられた真っ赤なふんわりとした椅子の後ろに回り込む。こ、これは……。

「ユウキ! 宝箱があるわ!」

 エリカは額に汗を滲ませながら、顔が疲れてきてはいるものの、目に少し光を取り戻した。

「これ開けてもいいんですか?」

 そう言う俺の言葉に、魔王は優しそうに微笑む。

 大きな宝箱がまさか魔王の座る椅子の裏にあると誰が想像したのだろうか。俺はエリカを椅子に座らせ宝箱を開けようと手をかけた。

 重厚な金色の宝箱は光り輝いている。これは恐らくボスを倒した後に手に入れるアイテムが入っているのではなかろうか。

 ゆっくりと重い蓋を開けると中にはモーニングスターが入っていた。こ、これは誰の武器なんだ?

「その武器でワシを攻撃すれば恐らくワンパンで攻略出来るだろう。さあ! さあ! 思う存分立ち向かってくるが良い!」

 魔王は笑顔で俺に語りかけるが、ちょい待て俺は魔法使いで杖しか装備できない。エリカは戦士だから剣の装備のみ。この武器は枝のような取っ手に長い鎖が付きその先端にはトゲトゲの突起がいくつもある鉄球が付けられた武器だ。俺の仲間で装備できるのは……困った。僧侶のみ。僧侶?


 十字架のペンダントを持つもの。よりによってツグミしかいない事を思い出した。ツグミはやってくれるのだろうか? 大きな不安でいっぱいになり俺は気持ち悪くなってしまう。

「何故、かかってこんのだ?」
「それが……装備不可と出ています。俺もエリカも装備不可です」

 その言葉を聞くと魔王は細い目を更に細めて訝しげな表情をしてきた。
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