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十三話 聖女の回想
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入学式。校長が校内を案内してくれたが、この図書館だけは入ることはないと思っていた。
「どこにあるんだろう」
大体、本なんて普段読まないのだから、お目当ての本を探すのも一苦労だ。
でも、そんなことは言ってられない。一日でも早くジャックを元に戻さないといけない。ある種、使命感みたいなものが私の中でフツフツと湧き上がっていた。
落ち着いて、図書館の中を歩き回る。どうやら本はランダムに適当に棚に整頓されている訳ではなく種類ごとに分けられていることに気づいた。
スポーツ、調理、騎士の心得、裁縫などがあり、奥の本棚に調合のコーナーを見つけたので、聖女様の書かれた本を探していく。
それは、すぐにわかった。そう、一冊だけ、ピンクの一際目立つ背表紙が目に止まったからだ。
これだ…『熾烈を極めた冒険譚~エリクサーの素材編』」
ピンクの髪のお姉さんらしくて少し笑ってしまったけど、それを手に取り、黙々とページを捲っていく。
――目次を読み進めると、エリクサーの材料は全部で十種類必要らしい。
初級の冒険者でも集めやすい採取が簡単な薬草もあれば、危険な魔物が巣食う鉱山にある鉱石など地図入りでとても分かりやすく記述してある。
絶望的なのは、魔王を倒した際にドロップする『魔王の愛』と呼ばれるアイテムこれはどういうことなの?
――ちょっと待って! お姉さんどうやって集めたの? 魔王を一度倒したのかしら。まさかね
不思議なのはあのお姉さんの治癒の力があれば自分の足くらい治せるはずなのに……なんで治さないの? もしかして治せないのだろうか?
そんなこと本人に聞かないと分かるはずもなく。ただ、巨悪の根源である魔王を倒さないことにはいつまで経ってもジャックの命は救えないってことがわかっただけだった。
あー、もうっ、半分諦めた気持ちでこういう時は細かいこと考えてる場合じゃない。やるしかない!と、自分に激を飛ばした。
☆
――ピンクの髪のお姉さんの回想――
もう50年以上前の話になってしまいますが、私が15の時、水を汲みにウォレット山脈へと向かったのです。
その山には魔物が住んでいましたが、その日は母も妹も流行病で、私しか元気な人が居なかったので一人で向かいました。
恐ろしい魔物が私の前に現れたのです。襲われそうな私を間一髪救ったのは、同じように水を汲みに来ていた私の初恋の男の子ジャックでした。
私を庇った彼は魔物の攻撃で石に変えられてしまい、私は命からがら逃げることに成功しました。
その時、石化の魔法が脚をかすり。それで脚を少し引きずるようになってしまったんです。
男の子の石化を治そうと私は僧侶の弟子になり魔王退治のパーティーに加わる。魔力の適性もありませんでしたので、ただのお荷物要員で脚が悪いから尚更、何の役にも立ちませんでした。
でも、この勇者パーティーは計算ができる人がいなく、私が重宝されたのです。それは、ダンジョンに潜るための食材や武器防具の買い出しなどを担当したおかげで、パーティーから外されずに済みました。
あとは冒険者になるための理由を話したら、
「君には勇者パーティに加わる素質がある。だって、困っている人を助けたいんだろ。その気持ちがあれば大歓迎さ」
その時の勇者が慈愛に満ちた人だったのも運が良かったのかもしれません。私の話を真剣に聞いてくれたのですから。
それから魔王を倒して『魔王の愛』というアイテムを手に入れたのはそれから30年後の話。私は何度もいくつかの勇者パーティーに入れて貰いながら、薬草や鉱物を研究して魔法と同じくらい強い効果のある調合薬の開発を繰り返していました。
旅の途中でたまたま見つけた若返りの薬を服用して、何とかこの美貌を保っています。
ようやく魔王を倒し、胸の昂りを抑えながら、エリクサーの調合を終えると、ジャックに使ったのですが、残念ながら、彼は子供過ぎてもう現在の私とは釣り合わなくなってしまいました。
恐らく石化の魔法は、時間までもを止める効果があるのでしょう。
彼の幸せを願った私は、田舎の子供の居ない夫婦にジャックを預けたのは良いけど、記憶喪失で私のことを完全に忘れてるって知った時はショックで1年ぐらいベッドで寝込んでしまいました。
50年後の世界に一人だけ、取り残された彼。私が行ったことは今でも正しかったのかわかりません。記憶がなかったことが1つの救いなのでしょう。
何の因果か、その『ジャック』がメアリの好きな男子で、またしても魔物に石化にされるとは一体どういうことなの?!
メアリには私みたいに人生を棒にふって欲しくありません。図書館で私のエリクサーの素材の本を読んでもらえば……。私ほど時間はかからないかもしれません。もしかしたら、魔王の素材がいるとなれば普通は諦めても仕方の無いことだと思います。
「どこにあるんだろう」
大体、本なんて普段読まないのだから、お目当ての本を探すのも一苦労だ。
でも、そんなことは言ってられない。一日でも早くジャックを元に戻さないといけない。ある種、使命感みたいなものが私の中でフツフツと湧き上がっていた。
落ち着いて、図書館の中を歩き回る。どうやら本はランダムに適当に棚に整頓されている訳ではなく種類ごとに分けられていることに気づいた。
スポーツ、調理、騎士の心得、裁縫などがあり、奥の本棚に調合のコーナーを見つけたので、聖女様の書かれた本を探していく。
それは、すぐにわかった。そう、一冊だけ、ピンクの一際目立つ背表紙が目に止まったからだ。
これだ…『熾烈を極めた冒険譚~エリクサーの素材編』」
ピンクの髪のお姉さんらしくて少し笑ってしまったけど、それを手に取り、黙々とページを捲っていく。
――目次を読み進めると、エリクサーの材料は全部で十種類必要らしい。
初級の冒険者でも集めやすい採取が簡単な薬草もあれば、危険な魔物が巣食う鉱山にある鉱石など地図入りでとても分かりやすく記述してある。
絶望的なのは、魔王を倒した際にドロップする『魔王の愛』と呼ばれるアイテムこれはどういうことなの?
――ちょっと待って! お姉さんどうやって集めたの? 魔王を一度倒したのかしら。まさかね
不思議なのはあのお姉さんの治癒の力があれば自分の足くらい治せるはずなのに……なんで治さないの? もしかして治せないのだろうか?
そんなこと本人に聞かないと分かるはずもなく。ただ、巨悪の根源である魔王を倒さないことにはいつまで経ってもジャックの命は救えないってことがわかっただけだった。
あー、もうっ、半分諦めた気持ちでこういう時は細かいこと考えてる場合じゃない。やるしかない!と、自分に激を飛ばした。
☆
――ピンクの髪のお姉さんの回想――
もう50年以上前の話になってしまいますが、私が15の時、水を汲みにウォレット山脈へと向かったのです。
その山には魔物が住んでいましたが、その日は母も妹も流行病で、私しか元気な人が居なかったので一人で向かいました。
恐ろしい魔物が私の前に現れたのです。襲われそうな私を間一髪救ったのは、同じように水を汲みに来ていた私の初恋の男の子ジャックでした。
私を庇った彼は魔物の攻撃で石に変えられてしまい、私は命からがら逃げることに成功しました。
その時、石化の魔法が脚をかすり。それで脚を少し引きずるようになってしまったんです。
男の子の石化を治そうと私は僧侶の弟子になり魔王退治のパーティーに加わる。魔力の適性もありませんでしたので、ただのお荷物要員で脚が悪いから尚更、何の役にも立ちませんでした。
でも、この勇者パーティーは計算ができる人がいなく、私が重宝されたのです。それは、ダンジョンに潜るための食材や武器防具の買い出しなどを担当したおかげで、パーティーから外されずに済みました。
あとは冒険者になるための理由を話したら、
「君には勇者パーティに加わる素質がある。だって、困っている人を助けたいんだろ。その気持ちがあれば大歓迎さ」
その時の勇者が慈愛に満ちた人だったのも運が良かったのかもしれません。私の話を真剣に聞いてくれたのですから。
それから魔王を倒して『魔王の愛』というアイテムを手に入れたのはそれから30年後の話。私は何度もいくつかの勇者パーティーに入れて貰いながら、薬草や鉱物を研究して魔法と同じくらい強い効果のある調合薬の開発を繰り返していました。
旅の途中でたまたま見つけた若返りの薬を服用して、何とかこの美貌を保っています。
ようやく魔王を倒し、胸の昂りを抑えながら、エリクサーの調合を終えると、ジャックに使ったのですが、残念ながら、彼は子供過ぎてもう現在の私とは釣り合わなくなってしまいました。
恐らく石化の魔法は、時間までもを止める効果があるのでしょう。
彼の幸せを願った私は、田舎の子供の居ない夫婦にジャックを預けたのは良いけど、記憶喪失で私のことを完全に忘れてるって知った時はショックで1年ぐらいベッドで寝込んでしまいました。
50年後の世界に一人だけ、取り残された彼。私が行ったことは今でも正しかったのかわかりません。記憶がなかったことが1つの救いなのでしょう。
何の因果か、その『ジャック』がメアリの好きな男子で、またしても魔物に石化にされるとは一体どういうことなの?!
メアリには私みたいに人生を棒にふって欲しくありません。図書館で私のエリクサーの素材の本を読んでもらえば……。私ほど時間はかからないかもしれません。もしかしたら、魔王の素材がいるとなれば普通は諦めても仕方の無いことだと思います。
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