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18話
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「あなた冒険者? いいわこの縄で網ごとソイツを縛って頂戴!」
ピンクの髪のお姉さんは通りがかりの色気の一際凄い黒く光るボディコンを着ている女に呼びかけた。
待ち人はだいたい布の服を着ているものだから、光るボディコンなんて、誰もが目を引いてしまう。そんな怪しい街人に突然声をかける聖女様に私はびっくりしてしまった。
「はい? アタシのこと? って、これまさか勇者か? 勇者だよな!」
ボディコン女の様子がおかしい。身体を小刻みに震わせ、勇者を鋭い眼光で睨んでいるようにも見える。
「まさかこんな王宮に仇がいたとはな。こいつは冒険に出ているはずだか。ちょうど良かった。切り刻んでやる」
言うが早いか、ボディコンは腰の短剣を掴むと勇者にズカズカ近づいていく。
聖女様が、優しく微笑みながら。
「いいえ。そんな生温いことはしない方がよろしいかと。それより、これを風船で魔王城へ飛ばしましょう。群衆の前でそんなことをしては、あなたの身柄が拘束されかねませんから!」
聖女様は背中に背負っている鞄からゴムの風船を出すと、今度は粉を入れる。するとみるみるうちに風船は膨らんで浮いていた。
「あーもうっ、今すぐにでも殺りたいけど」
ボディコンはイライラしながらも、聖女様に諭されて、黒く光るムチを取り出す。両手でしならせてふる動作を繰り返している。
「いいと思うよ。思う存分やってもいいよ」
私もポツリと言ってしまう。何があったか分からないけど、このボディコンも勇者の被害に遭ったんだと思うともう同情の余地はない。
この最低な勇者の事だ。私と同じくらいのことをしでかしたんだろう。
「おい! やめろ! 鞭でどうするってんだ」
ボディコンは暴れる勇者の網を引っ張り縄で縛ってまとめる。私は風船をその網にいくつも括り付けた。
風船を括り付ける。振ると膨らんで浮いてしまうから、ゆっくりとつけないと。勇者の悲鳴が聞こえるけど構わない。
ボディコン女は腰に取り付けた黒のムチを出すと、空中に浮かぶ勇者のおしりにビシバシと慣れた打ち方で引っぱたく。
街人が集まってきて祭りのような感じになっている。そんな情けない勇者に指をさし、笑い声をあげるものや、そもそもみんな勇者の格好をした物がなにか悪さをしてやられているぐらいにしか思ってないのかもしれない。
「ほんと、みんなから慕われる勇者様のフリをして許せないわ! この人」
私はさらなる追い打ちをかけるような事を叫ぶ。勇者は痛みと、情けなさで、喚き散らし、それを聞きつけた群衆が、どっと大きな笑い声をあげる。何故か分かんないけど、心臓が少し高鳴るのを感じていた。そんな人にやり返して嬉しいなんて気持ちが私に湧くなんて信じられない。
そうよね! やっとモンスターに一泡吹かせられるんだから、少しぐらいそんな気持ちになってもおかしくは無いよね。
「メアリ、風船に粉いくついれた?」
お姉さんが、手際よく粉を調合して私に渡してくれる。
「8個です。これぐらいで足ります?」
「一個づつ振りながら風船に入れていって」
飛ばしていいんだよね? 少し良心がいたんだけど、私はこいつに殺されかけた。一度ならず二度までも。
そう考えると風船に付けられた紐を握る手に力が入る。ボディコンと一緒に風船を取り付けていく。
「そしたら萎んだ風船を振って膨らませて、空にソイツを飛ばすのよ!」
網に囚われた勇者がぷかりと宙に浮かんできた。
「あー! ゾクゾクするわ! 鍛え上げられた筋肉質の身体に網がくい込み締め付けられるの見てたらたまんないわ! そして見なさいよ。このモンスターの怯えた表情っ。何もかも最高っ。ナイフで刺したらどんな音を奏でるのかしら」
やばい! この人だけは絶対に関わってはいけないタイプだ。勇者を飛ばしたらさっさとこの場を去らないといけない。見た目はモデルみたいに背も高く容姿も綺麗なのに心の中に大きな闇を抱えている。
風船を振るボディコンの顔がみるみる赤く染まる。興奮してるのかな。私の背筋に悪寒が走る。腕を見ると寒気ボロがポツポツと出てくる。
私も風船を振ると少しづつ風船は膨らみ始める。
粉の成分は分からないけど、恐らくは二種類以上の粉を混ぜて合成する手法なのだろう。
みるみるうちに大観衆のもと勇者は叫び声を上げて空中へ浮かび上がり、すぐ側の宿屋の屋根ぐらいの高さまで上昇していく。ゆっくりとさらに雲の高さまで飛ばされ、このアップル王国から風に揺られ北の方へ飛ばされていった。
「メアリ、やったわね! 風の吹く方向からよむと一時間もすれば、魔王城の方まで飛んでいきます。アップル王国のある半島から海を越えて魔王の住む大陸へと! 風船はよっぽどの事がない限り割れないから心配いりません!」
「お姉さんが来てくれたから本当に助かりました。いつもピンチに駆けつけてくれてすみません。
「いいのよ! それとお姉さんて呼ばれ方は前から気になってたんだけどあまり好きじゃないわ。私は幼児体型だし見た目もメアリと余り変わらないじゃない? これからはマミって呼んで」
「そ、そんな。聖女様に対して気安く名前で呼ぶなんて他の人の目もありますし。どうしても名前で呼ばなければいけませんか?」
私がおずおずと、問うと、お姉さんも同じようにモジモジしながら答える。
「私はミーハーだから、同い年の人とは話が全く合わないのよ。大抵病気の話か誰か同級生が亡くなったとかで、気が滅入るわ。だからお姉さんって呼ばれると周りからこの人何歳なのってなるでしょ? 見た目は15ぐらいに見えるはずなのだから、ルナでいいわ! 私も新しい恋したいし!」
「分かりました。そんなに言うならお姉さん。じゃなかった。ルナさんの言う通りにします」
「あのさ、ルナね! それとタメ口にしなさい。」
お姉さんは私を睨みつけてくる。仕方ない。
「ルナ、ありがとう」
聖女様にタメ口使ってしまった。
「それより何! ハンバーガーショップさっき行ってきたら早速パーティーの募集してるじゃない。もしかしてもう仲間は集まったの? でも魔王を倒すなんて話についてくるような人なかなかいないわよね」
ルナは興味津々といった感じで私の顔を覗き込んでくる。
「盛り上がってるとこ悪いんだけどさ、私が入ってあげてもいいわ!」
背伸びして大きな欠伸をしながら、隣で長いスラリと伸びる脚を交差させ腕を組んだ変態がチラチラこっちを見てくる。手にはさっきの黒の鞭を持っているし。
私は思わず顔を左右にブンブン振りながら。出来るだけ関わらないようにする。
「手伝ってくれてありがとうございます。あなた名前は?」
それなのにルナは、嬉しそうな顔で聞いてる。
「クレアだ。職業は盗賊をやっている」
「良かったわね。また一人仲間増えたじゃない」
「それはそうなんですけど、クレア盗賊なのだから他のパーティーの方がいいんじゃない? 私達は魔王を倒しに行くの」
「メアリ何言ってるのよ! あなたは素材集めをしていかなきゃいけないんだから、盗賊がいれば凄く楽よ。探索能力に優れているから事前に接近するモンスターの位置も掴めるし、迷宮やダンジョンその辺の森なんかの宝箱の位置も把握できるわ」
「そんな凄い能力があるんですね! でも私のパーティーよりもっとクレアさんに合うパーティーがあると思うんです」
クレアは私の顔をジロジロ見てくる。そして顔を赤らめて舌なめずりをしている。これはよく爬虫類が獲物を見た時にする行為に似てるような気がした。
もしかして私のことを狙ってるとか? なにか狙いがないと近づかないでしょ。こんな駆け出しのパーティーに入っても旨みもないはずだし。
「いいの。前のパーティーから理由もなく追い出されてしまったから。当分行くあてもないし、次のパーティー見つかるまでの間だけでも入ってあげる!」
「メアリ。良かったじゃないの。この人見た目だけはいいから。その間にこの人目当ての強そうな人を勧誘しとけば何とかなるわよ」
耳元でルナが囁いてくる。悪魔の囁きのように感じた。
分かってる。冒険者を募っても簡単には集まらないことも。でも、この人は危険だ。性癖がおかしいし。
ルナの言ったように味方を増やした方が良いのか、それとも危ない人には近寄らないのが良いのか困ってしまう。
ルナも勇者に何かされたんだよね? しかも殺意を抱くほどの……。
私は少し考えた後、口を開いた。
ピンクの髪のお姉さんは通りがかりの色気の一際凄い黒く光るボディコンを着ている女に呼びかけた。
待ち人はだいたい布の服を着ているものだから、光るボディコンなんて、誰もが目を引いてしまう。そんな怪しい街人に突然声をかける聖女様に私はびっくりしてしまった。
「はい? アタシのこと? って、これまさか勇者か? 勇者だよな!」
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「まさかこんな王宮に仇がいたとはな。こいつは冒険に出ているはずだか。ちょうど良かった。切り刻んでやる」
言うが早いか、ボディコンは腰の短剣を掴むと勇者にズカズカ近づいていく。
聖女様が、優しく微笑みながら。
「いいえ。そんな生温いことはしない方がよろしいかと。それより、これを風船で魔王城へ飛ばしましょう。群衆の前でそんなことをしては、あなたの身柄が拘束されかねませんから!」
聖女様は背中に背負っている鞄からゴムの風船を出すと、今度は粉を入れる。するとみるみるうちに風船は膨らんで浮いていた。
「あーもうっ、今すぐにでも殺りたいけど」
ボディコンはイライラしながらも、聖女様に諭されて、黒く光るムチを取り出す。両手でしならせてふる動作を繰り返している。
「いいと思うよ。思う存分やってもいいよ」
私もポツリと言ってしまう。何があったか分からないけど、このボディコンも勇者の被害に遭ったんだと思うともう同情の余地はない。
この最低な勇者の事だ。私と同じくらいのことをしでかしたんだろう。
「おい! やめろ! 鞭でどうするってんだ」
ボディコンは暴れる勇者の網を引っ張り縄で縛ってまとめる。私は風船をその網にいくつも括り付けた。
風船を括り付ける。振ると膨らんで浮いてしまうから、ゆっくりとつけないと。勇者の悲鳴が聞こえるけど構わない。
ボディコン女は腰に取り付けた黒のムチを出すと、空中に浮かぶ勇者のおしりにビシバシと慣れた打ち方で引っぱたく。
街人が集まってきて祭りのような感じになっている。そんな情けない勇者に指をさし、笑い声をあげるものや、そもそもみんな勇者の格好をした物がなにか悪さをしてやられているぐらいにしか思ってないのかもしれない。
「ほんと、みんなから慕われる勇者様のフリをして許せないわ! この人」
私はさらなる追い打ちをかけるような事を叫ぶ。勇者は痛みと、情けなさで、喚き散らし、それを聞きつけた群衆が、どっと大きな笑い声をあげる。何故か分かんないけど、心臓が少し高鳴るのを感じていた。そんな人にやり返して嬉しいなんて気持ちが私に湧くなんて信じられない。
そうよね! やっとモンスターに一泡吹かせられるんだから、少しぐらいそんな気持ちになってもおかしくは無いよね。
「メアリ、風船に粉いくついれた?」
お姉さんが、手際よく粉を調合して私に渡してくれる。
「8個です。これぐらいで足ります?」
「一個づつ振りながら風船に入れていって」
飛ばしていいんだよね? 少し良心がいたんだけど、私はこいつに殺されかけた。一度ならず二度までも。
そう考えると風船に付けられた紐を握る手に力が入る。ボディコンと一緒に風船を取り付けていく。
「そしたら萎んだ風船を振って膨らませて、空にソイツを飛ばすのよ!」
網に囚われた勇者がぷかりと宙に浮かんできた。
「あー! ゾクゾクするわ! 鍛え上げられた筋肉質の身体に網がくい込み締め付けられるの見てたらたまんないわ! そして見なさいよ。このモンスターの怯えた表情っ。何もかも最高っ。ナイフで刺したらどんな音を奏でるのかしら」
やばい! この人だけは絶対に関わってはいけないタイプだ。勇者を飛ばしたらさっさとこの場を去らないといけない。見た目はモデルみたいに背も高く容姿も綺麗なのに心の中に大きな闇を抱えている。
風船を振るボディコンの顔がみるみる赤く染まる。興奮してるのかな。私の背筋に悪寒が走る。腕を見ると寒気ボロがポツポツと出てくる。
私も風船を振ると少しづつ風船は膨らみ始める。
粉の成分は分からないけど、恐らくは二種類以上の粉を混ぜて合成する手法なのだろう。
みるみるうちに大観衆のもと勇者は叫び声を上げて空中へ浮かび上がり、すぐ側の宿屋の屋根ぐらいの高さまで上昇していく。ゆっくりとさらに雲の高さまで飛ばされ、このアップル王国から風に揺られ北の方へ飛ばされていった。
「メアリ、やったわね! 風の吹く方向からよむと一時間もすれば、魔王城の方まで飛んでいきます。アップル王国のある半島から海を越えて魔王の住む大陸へと! 風船はよっぽどの事がない限り割れないから心配いりません!」
「お姉さんが来てくれたから本当に助かりました。いつもピンチに駆けつけてくれてすみません。
「いいのよ! それとお姉さんて呼ばれ方は前から気になってたんだけどあまり好きじゃないわ。私は幼児体型だし見た目もメアリと余り変わらないじゃない? これからはマミって呼んで」
「そ、そんな。聖女様に対して気安く名前で呼ぶなんて他の人の目もありますし。どうしても名前で呼ばなければいけませんか?」
私がおずおずと、問うと、お姉さんも同じようにモジモジしながら答える。
「私はミーハーだから、同い年の人とは話が全く合わないのよ。大抵病気の話か誰か同級生が亡くなったとかで、気が滅入るわ。だからお姉さんって呼ばれると周りからこの人何歳なのってなるでしょ? 見た目は15ぐらいに見えるはずなのだから、ルナでいいわ! 私も新しい恋したいし!」
「分かりました。そんなに言うならお姉さん。じゃなかった。ルナさんの言う通りにします」
「あのさ、ルナね! それとタメ口にしなさい。」
お姉さんは私を睨みつけてくる。仕方ない。
「ルナ、ありがとう」
聖女様にタメ口使ってしまった。
「それより何! ハンバーガーショップさっき行ってきたら早速パーティーの募集してるじゃない。もしかしてもう仲間は集まったの? でも魔王を倒すなんて話についてくるような人なかなかいないわよね」
ルナは興味津々といった感じで私の顔を覗き込んでくる。
「盛り上がってるとこ悪いんだけどさ、私が入ってあげてもいいわ!」
背伸びして大きな欠伸をしながら、隣で長いスラリと伸びる脚を交差させ腕を組んだ変態がチラチラこっちを見てくる。手にはさっきの黒の鞭を持っているし。
私は思わず顔を左右にブンブン振りながら。出来るだけ関わらないようにする。
「手伝ってくれてありがとうございます。あなた名前は?」
それなのにルナは、嬉しそうな顔で聞いてる。
「クレアだ。職業は盗賊をやっている」
「良かったわね。また一人仲間増えたじゃない」
「それはそうなんですけど、クレア盗賊なのだから他のパーティーの方がいいんじゃない? 私達は魔王を倒しに行くの」
「メアリ何言ってるのよ! あなたは素材集めをしていかなきゃいけないんだから、盗賊がいれば凄く楽よ。探索能力に優れているから事前に接近するモンスターの位置も掴めるし、迷宮やダンジョンその辺の森なんかの宝箱の位置も把握できるわ」
「そんな凄い能力があるんですね! でも私のパーティーよりもっとクレアさんに合うパーティーがあると思うんです」
クレアは私の顔をジロジロ見てくる。そして顔を赤らめて舌なめずりをしている。これはよく爬虫類が獲物を見た時にする行為に似てるような気がした。
もしかして私のことを狙ってるとか? なにか狙いがないと近づかないでしょ。こんな駆け出しのパーティーに入っても旨みもないはずだし。
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「メアリ。良かったじゃないの。この人見た目だけはいいから。その間にこの人目当ての強そうな人を勧誘しとけば何とかなるわよ」
耳元でルナが囁いてくる。悪魔の囁きのように感じた。
分かってる。冒険者を募っても簡単には集まらないことも。でも、この人は危険だ。性癖がおかしいし。
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