聖女は復讐の為なら何でもします!

茜色 一凛

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十五話 10代は一瞬

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 張り切って仲間を集めようと思ったけど、どこで募集しているかも分からない。人通りの多い場所へと向かうことにした。

 まず向かったのは、城下町の南西。ここは露店が多く人通りが多い。早速、野菜を売っているおじさんに話しかけた。

「あの……」

「お嬢ちゃん、うちの野菜を買ってくれるのかい? 今日はメロンが安いよ!」

「いえ、冒険者の募集をしたいのですが、どこへ行けばいいんですか?」
 
 おじさんはポカンと口を開けて目を丸くして私をジロジロ見てくる。

「なんだ、野菜を買ってくれるんじゃないのか。ん? その制服どっかで見た事あるな。あー、アップル調合学園の生徒さんだろ。こんなとこで油売ってていいのかい? 学校はどうしたの」

「お願いです。知ってたら教えて頂けませんか?」

 目に力を入れて八百屋のおじさんを見つめる。

 先程、年配女性が果物を買っていると、「いいよ! この辺の野菜も、プレゼントしとくよ!」と、袋に入れてあげて、気前が良く他のお客さんにも同じように接していたので、声がかけやすかった。

「まさか、冒険者になるつもりなのかい? やめときなさい。子供の目にはカッコ良く見えるかもしれないが、そんな簡単なもんじゃない。お父さんが心配するだろうに」

「父はいません。モンスターの襲撃の際、私と母を守ろうとして、サイクロプスに殺されたので」

「そう……」

 おじさんは、ハッとして申し訳なさそうな顔をする。

「まあ、いずれにせよ。やめた方がいい。女の子なんだし、危険すぎる。せっかくいい学校に通わせてもらっているんだから、そこで卒業まで頑張った方がいい」

 このおじさんの言うことは最もだ。だけど、私には悠長に卒業まで待っていられるほど時間は無い。

「そうですね。ありがとうございました」

 八百屋のおじさんと別れ、それから他の露店を回ることにする。でも誰も教えてくれない。

 幸先よくない。仕方ない。くまなく歩いて探していこう。私は露店を抜けて商店街へと向かう。すると、剣と盾のマークが描かれた看板が目に留まる。

 まさか、ここが、冒険者を募集してるとこなんじゃない?

 レンガ調の建物の窓から中を覗くと、屈強な戦士や白いローブに魔法の杖を持った魔術師がお酒を片手に真昼間からお酒を飲んで乾杯して大いに盛り上がってる。

 すごく入りにくい。これでは冒険者登録所ではなくて単なる酔っぱらいの集う酒場じゃないの。

 丁度、冒険者登録所の建物の横が酒場でビールのジョッキの看板が目に留まる。

 口をつぐんで、中へと入る。カウンターにウエーブのかかった金髪の受付嬢が立っていた。

「冒険者の募集をしたいのですが」

「あらやーねー! ここはお子様の来る場所じゃなくてよ」

 受付嬢はブラウスから見える豊満な胸をプルぷ震わせ返答する。

 凄い! こんな胸があれば、簡単に冒険者仲間なんて集められるのかもしれない。ただただ俯き、自分の胸元を見て凹む。そんなことしてる場合じゃはない。

「魔物に友達が石にされてしまったので、素材一緒に集めてくれる仲間が欲しいんです。最終目標は、魔王の討伐です!」

 人目が気になる。横にいた戦士と、武闘家のお兄さん達が私を見て、蔑んだ目で大笑いしてる。

 目に涙が溜まってくる。自分でも分かってる。大それたこといっているってこと。

「ふーん。大きく出たわよね。嘘も方便とは言うものの、そこまで大きいと、面白いわね。まだ学生さん? 冒険者になるのはまだ早いんじゃないかしら。そんなに焦らなくても卒業してからでいいんじゃないの?」

「それだと、間に合わないんです。早くしないとまずいみたいで」
 
「先生には相談したのかしら?」

「仲間を集めて冒険しなさいとおっしゃられて今こうして綺麗なお姉さんとお話させてもらってます」

「あら、嬉しいじゃないの! でもね、あなたにはまだ早すぎるわ。申し訳ないけど力になれそうもないわ」

 お姉さんは伏し目がちに声を放つ。私は肩を落としながら、その場を離れるしか無かった。ダメなものはダメらしい。上手くいかない。

「お嬢ちゃん!」

 私がとぼとぼ歩いていると、後ろから受付嬢の声がする。振り返ると。

「あのさ、ここは王国の正規の冒険者登録所だから、ここでは子供は募集できないんだけど、この通りを真っ直ぐ歩いたところにハンバーガーショップがあって、そこが冒険者に大人気なのよ! そこなら1人ぐらい力に乗ってくれる人がいるかもしれないわ。素材の採集ぐらいなら付き合ってくれる人いるかもよ。まー、独り言だけどね!」

 親切な受付嬢のお姉さんは、横を見ながら照れくさそうに教えてくれた。

「ありがとうございます。でも、どうして、そんなこと教えてくれるんですか?」

「まー、私も若い頃あなたと同じように冒険者になりたい時があったけど、親に反対されてね。そうこうしている間にもう27よ。10代なんてあっという間に過ぎてしまうわ。あなたの言葉に嘘はないのは分かるし、輝いていたから助けたくなったの!」

 お礼を言いハンバーガーショップを目指すことにした。
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