淫美な虜囚

ヤミイ

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104 満員バスでの痴態⑮

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 な、なんでもない…。

 そうかわすはずだった。

 何でもないから、見ないで…。

 ぼ、ぼくを、放っておいてー。

 それなのに。

 なのにその時僕の口から飛び出したのは、まったくもって予想外の、意志とは真逆のひと言だった。

「さ、触って…」

 見知らぬ男を前にして、あり得ない台詞だった。

 しかも、相手は、翔のように超美形の青年というわけでもない。

 どう見ても冴えない、禿頭小太り眼鏡の、どこにでもいるような中年男性なのだ。

 腰を振りながら、ねだるようにそう言ってしまってから、

 な、何を言ってるんだ? 俺は?

 猛烈に後悔したけど、すでに遅かった。

「い、いいのかい?」

 男が右手を伸ばし、緊張にぶるぶる震える親指と人差し指で、僕の猛々しい膨らみをつまんだ。

「すごい…。君、完全に、勃起してる…」

 感に堪えぬようにそうつぶやいて、レギンス越しに、膨らみに沿ってゆっくりと、指を上下に動かし始めた。

「あ…。く…。くふ…ぅ」

 エネマグラによる振動に指による男の扱きが加わって、快感の四重奏に涎を垂らし、白眼を剥きかける僕。

「うわあ、どんどん濡れてくる。先っぽがもう、ぬるぬるだよ。それにこの硬さと熱さ…。君、まだ中学生か高校生ぐらいだろう? なのにどうしてこんなに大きいの?」

 男の言葉が熱を帯びた。

「い、言わない、で…」

 そ、そんな、恥ずかしい、こと…。

 ここ、満員バスの中、なのにー。

 でもー。

 い、いい…。

 抓まれたまま、男の指を味わうために、僕は一瞬、静止する。

 姉さんの熱い視線を、全身に感じながら。

「気持ちいいかい? ほうら、すり、すり、すり」

「や、やめ…」

 あう。

 僕はひくひくした。

 しび、しびれる、う…。

 脳内には、薔薇色の霞が罹っている。

「匂うよ。君、なんだか、ケモノじみた匂いがする。もしかして、出そうなの? おじさん、見てみたいな。君みたいな可愛い男の子が、熱くて新鮮な、あの白いミルクを出すところ」

 僕を扱きながら、熱のこもった口調で、男がささやいた。

 男のスラックスの前は大きく隆起し、亀頭の先端にあたる部分に黒い染みができている。

 彼も僕同様、烈しく勃起しているのだ。

「や、やめ、て…」

 すすり泣くように、懇願した。

 足が震えて、ろくに立っていられない。

 全身が性感帯と化したかのように、気持ちよくてならないのだ。

「お願い…もう、やめ…て…」

 声が裏返り、かすれてしまった。

 これ以上、無理。

 これ以上扱かれたら、僕はこの衆人環視の場で、大変なことに、なってしまう…。

 
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