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第二章
第十七話
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――「知ってる天井だ……」
目が覚めると俺は見覚えのある病院にいた
「悟!」
「美羽……よかった、無事だったか」
俺はそう言いながら抱き着いてきた美羽の頭を撫でる
すると美羽は一瞬、嬉しそうに目を細めた
「ごめん……な、さい……ちゃんと、守ってあげられなくって……ごめんなさい……ごめんなさい……」
美羽は涙を流しながら、再び強く俺を抱きしめる
俺は何度も謝罪の言葉を繰り返す美羽を抱きしめ返した
病室を見渡すと朱莉姉さんと由梨と結衣と美月もいた
美月以外は泣いていたのか目を赤く腫れあがらせながら俺を見つめていた
「お兄ちゃん、ごめんねっ……由梨がもっと、ちゃんとしていれば……」
俺は泣きながらそう謝ってくる由梨の頭を撫でる
「いや、悪いのは頼りない俺だ……由梨は何も悪くないから気にしないでくれ」
俺が由梨の頭を撫でながらそう言うと由梨は更に泣き出してしまった
朱莉姉さんが寄り添って由梨の背中を優しく擦って落ち着かせている
暫くすると、由梨は普通に呼吸ができるくらいに安定した
「弟くん、ごめんなさい……私の監視が甘かったせいで、弟くんにこんな大怪我をさせてしまうなんて……」
朱莉姉さんは申し訳なさそうに頭を下げた後、自分の唇を強く嚙んでから意を決したように顔を上げ、潤んだ目で俺を見てくる
「姉さん、俺のことを大切に思ってくれるのは嬉しいけど、監視は程々にしてくれ」
「本当にごめんなさい、こっそりと後ろから着いて行ってでも、私は悟くんが無事に家に帰るまで護衛するべきだった」
結衣はそう言いながら悔しそうに顔を歪めた
「いや、結衣もそんなに責任を感じる必要は無いからな?一人で帰ったのは俺の責任だし、それに……俺はこうして無事に生きている訳だし」
俺がそう言うと皆の表情が少し和らいだ気がした
「それでね、悟……幸いにも体に残る傷とか、後遺症の心配はなかったし、ミホあいつはその場で逮捕されたんだけど……実は……」
美羽が神妙な面持ちで言葉を紡ぐ
だが、ここから何を言われるのかは大方予想がついている
「……分かってるよ美羽、俺は、もう……ミホで……貞操を、失って……」
「そ、そうじゃないの、ギリギリの所で家に押し入って……何とか性行為自体は未遂に終わらせる事ができたの」
「そうだったんだ、じゃあ……」
「うん、検査でも悟はまだ貞操を失ってはいなかったけど……問題は、先日実用化された最新機器を使った二重検査で見つかった事なんだけど……悟の体には……その、なかったの……」
「何……が?」
「アスクル細胞……別名、経験人数が二人を超えた男を殺す細胞……それが悟の体にだけはない事が分かったの」
美羽から聞かされたそれは、俺にとって想像もしていなかった事態だった
「それは、つまり……俺だけは……」
「そう……悟はこの世界でただ一人、ハーレムを作る事ができる特別な存在である事が分かったの……」
「ハーレム……」
そのワードを聞いた時、俺の脳裏には美羽や朱莉姉さん、由梨と結衣や美月の顔が浮かぶのと同時に、激しく胸が高鳴るのを感じたが、俺はそんな感情を打ち消すように首を横に振る
「まさか……冗談だろ?そんな事があるはずが……」
「私も最初はそう思った、だけど……これを見て……」
美羽はそう言うとある検査結果の書かれたプリントを取り出して見せてきた
そのプリントには様々なデータが書かれていたが、俺の目はひと際大きな文字で書かれた一文目に留まる
――『この青年にアスクル細胞が存在していない事を証明する』
「……そっか、じゃあ、俺は……何人と性行為をしても問題なく生きられるんだな……」
「うん、とは言っても悟は今まで通りの生活を続けることが出来る……その為のサポートは私達も全力でするから」
「……ありがとな、美羽」
俺はそう言って再び美羽の頭を優しく撫でた
目が覚めると俺は見覚えのある病院にいた
「悟!」
「美羽……よかった、無事だったか」
俺はそう言いながら抱き着いてきた美羽の頭を撫でる
すると美羽は一瞬、嬉しそうに目を細めた
「ごめん……な、さい……ちゃんと、守ってあげられなくって……ごめんなさい……ごめんなさい……」
美羽は涙を流しながら、再び強く俺を抱きしめる
俺は何度も謝罪の言葉を繰り返す美羽を抱きしめ返した
病室を見渡すと朱莉姉さんと由梨と結衣と美月もいた
美月以外は泣いていたのか目を赤く腫れあがらせながら俺を見つめていた
「お兄ちゃん、ごめんねっ……由梨がもっと、ちゃんとしていれば……」
俺は泣きながらそう謝ってくる由梨の頭を撫でる
「いや、悪いのは頼りない俺だ……由梨は何も悪くないから気にしないでくれ」
俺が由梨の頭を撫でながらそう言うと由梨は更に泣き出してしまった
朱莉姉さんが寄り添って由梨の背中を優しく擦って落ち着かせている
暫くすると、由梨は普通に呼吸ができるくらいに安定した
「弟くん、ごめんなさい……私の監視が甘かったせいで、弟くんにこんな大怪我をさせてしまうなんて……」
朱莉姉さんは申し訳なさそうに頭を下げた後、自分の唇を強く嚙んでから意を決したように顔を上げ、潤んだ目で俺を見てくる
「姉さん、俺のことを大切に思ってくれるのは嬉しいけど、監視は程々にしてくれ」
「本当にごめんなさい、こっそりと後ろから着いて行ってでも、私は悟くんが無事に家に帰るまで護衛するべきだった」
結衣はそう言いながら悔しそうに顔を歪めた
「いや、結衣もそんなに責任を感じる必要は無いからな?一人で帰ったのは俺の責任だし、それに……俺はこうして無事に生きている訳だし」
俺がそう言うと皆の表情が少し和らいだ気がした
「それでね、悟……幸いにも体に残る傷とか、後遺症の心配はなかったし、ミホあいつはその場で逮捕されたんだけど……実は……」
美羽が神妙な面持ちで言葉を紡ぐ
だが、ここから何を言われるのかは大方予想がついている
「……分かってるよ美羽、俺は、もう……ミホで……貞操を、失って……」
「そ、そうじゃないの、ギリギリの所で家に押し入って……何とか性行為自体は未遂に終わらせる事ができたの」
「そうだったんだ、じゃあ……」
「うん、検査でも悟はまだ貞操を失ってはいなかったけど……問題は、先日実用化された最新機器を使った二重検査で見つかった事なんだけど……悟の体には……その、なかったの……」
「何……が?」
「アスクル細胞……別名、経験人数が二人を超えた男を殺す細胞……それが悟の体にだけはない事が分かったの」
美羽から聞かされたそれは、俺にとって想像もしていなかった事態だった
「それは、つまり……俺だけは……」
「そう……悟はこの世界でただ一人、ハーレムを作る事ができる特別な存在である事が分かったの……」
「ハーレム……」
そのワードを聞いた時、俺の脳裏には美羽や朱莉姉さん、由梨と結衣や美月の顔が浮かぶのと同時に、激しく胸が高鳴るのを感じたが、俺はそんな感情を打ち消すように首を横に振る
「まさか……冗談だろ?そんな事があるはずが……」
「私も最初はそう思った、だけど……これを見て……」
美羽はそう言うとある検査結果の書かれたプリントを取り出して見せてきた
そのプリントには様々なデータが書かれていたが、俺の目はひと際大きな文字で書かれた一文目に留まる
――『この青年にアスクル細胞が存在していない事を証明する』
「……そっか、じゃあ、俺は……何人と性行為をしても問題なく生きられるんだな……」
「うん、とは言っても悟は今まで通りの生活を続けることが出来る……その為のサポートは私達も全力でするから」
「……ありがとな、美羽」
俺はそう言って再び美羽の頭を優しく撫でた
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