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翌朝、裸の史彦と抱き合ったまま目が覚めたとき、雄高はうろたえた。いつもよりもまぶしい日差しと外から聞こえてくるざわめき……普段の起床時間をとうに過ぎている。
「史彦、史彦、やばいぞ。もう八時になる!」
「えっ……」
長い髪をシーツにはわせながら、史彦が寝ぼけたまま体を起こした。けれど、ベッドからおりかけた雄高を抱き寄せることだけは忘れなかった。
「雄高、サイコーだった……昨夜」
史彦の両腕が背中からまわされると、昨夜の行為をすみずみまで思い出して、雄高の肌がわずかばかり紅色になる。確かに、最高……それは雄高も同じだった。けれど、今は昨夜の余韻を楽しんでいる間もない。
雄高は史彦に同意を示すために、振り返って口づけた。
「うん、俺も。……でも、とにかく急がないとヤバイって。おまえもどっかの会社と打ち合わせするって言ってたよな。しかも朝イチで」
「やっべー! あそこの課長、時間にメチャ厳しい奴だ!」
さすがに史彦もベッドから飛び降りると、隣の自室へ入っていった。雄高も急いで着替えながら考えた。
いいよな、と。ごく普通の生活。朝目が覚めると、隣には愛しい人がいる。健康で、仕事があって、平凡だけど平穏。
きっとこういうのを幸福というのかもしれない。雄高は妙に年寄りじみたことを思った自分に苦笑した。ネクタイを選び取ると、雄高は史彦に声をかけた。
「洗面所、先に使うからな」
結局、朝食をとる暇はなかった。史彦の打ち合わせ先の会社が大学と同じ方向だった。自家用車で雄高を校門まで送ってくれたおかげで、幸い遅刻は免れた。
降りぎわ、雄高は路上の人影が途絶えたわずかな隙を狙って、ハンドルを握る史彦に口づけた。
「事故るなよ!」
雄高の声に、頬を染めた史彦が何度も頷く。よけいなことをしてしまったかな、と雄高は反省したけれど、今朝の幸福感はこうもしないと史彦に伝わらないような気がして、珍しく行動を起こしたのだ。史彦も嬉しそうにしていたから、いいかと自分を納得させる。
研究室へ入ると、正面のテーブルにまた本の小山が出来ていた。
「おはよう。研究室に残っていたのと、ゼミ生をつっついたら出てきたやつ」
相馬教授は、院生の奥津がお茶を入れる手つきを見守りながら、雄高に声をかけた。奥津は真剣な眼差しで、白磁のティーポットを見つめていた。
「奥津くん、そんなに睨まなくてもおいしいお茶になるよ」
「はっはい。そうですよね」
院生の奥津は、ふっくらとした頬に恥ずかしげに手をあてた。そしてあらためて雄高に気づいて挨拶した。
「おはようございます。なんだかゴキゲンですね、碓氷先生」
「そうかな?」
言われて壁にかかっている縁の欠けた鏡をのぞき込んだ。自分では、どこが違っているかまったくわからないが。
「珍しい。今にもスキップしそうに見えますよ」
「恋人といいことでもあったんだろう。愛しの君は元気かね」
教授の言葉に雄高は耳が熱くなるのが分かった。しまりのない顔を見られたくなくて、後ろ向で頷き、コートを脱ぐ。教授の意味深な発言に、奥津が色めき立った。
「あっ、教授は会ったことがあるんですね。碓氷先生の恋人ってどんな人ですか? 教えてください」
教授はべっ甲のフレームに手をかけて、いかにも熟考するようなポーズを取った。雄高は教授が何を言い出すのか、はらはらした。
「んー……、美人だね。そんじょそこらの女性では太刀打ち出来ないな。しかも性格は愉快豪快。奥津くん、気になるの?」
「気にならないほうが変です。先生のファンて、学内にたくさんいるんですよ。それでなくたって、先生と教授の仲を疑われてるって知らなかったでしょ。新学期が本格的に始まったら、絶対にあの新聞を信じ込んで大騒ぎする学生がいるに決まってます!」
妙にきっぱりと断言する奥津に、さしもの教授も口を挟む余地がなかったようだ。ごほん、とひとつ咳をしてから奥津にアドバイスした。
「そろそろ蒸らしもよさそうだから、みんなでお茶にしよう」
一抱えの本を両手で持って図書館の自動ドアを抜けるとき、開ききらない強化ガラスの扉に本がぶつかった。とたんに足元に何冊か本が散らばる。しゃがむこともままならず、思わず舌打ちすると、たまたま居合わせた女子学生が拾い上げ声をかけてくれた。
「半分お持ちしましょうか」
「ありがとう。申し訳ないけど、そうしてくれると助かるよ」
本はまた雄高が図書館へ戻す役目を買って出た。佐野に史彦とのことを話してしまったら、逆にすっきりして佐野への苦手意識が薄らいだような気がしたからだ。それに、雄高自身も調べたい文献が図書館にある。
雄高がほほ笑むと、彼女ははにかむような笑顔を返してくれた。肩までのワンレングスの髪に、眼鏡が知的にさえている感じの良い学生だ。好意に甘えて、扉からすぐのカウンターまで一緒に運んでもらう。
カウンターでは佐野が学生となにやらもめていた。佐野の低く押さえた声がかすかに聞こえてくる。
「だから、そんなことは出来ないと言ってるんだ」
「ちょっとでいいんだよ。たいしたことないじゃない、少しぐらい教えてくれても……」
堅い声で拒否する佐野に、学生は食い下がっている。雄高はその背中ごしに声をかけた。
「あの、心理学研究室ですが」
青白い上背だけある学生が雄高の声に振り返り、その隣に立つ彼女を見るやいなや、横を向いて口をつぐんだ。
「じゃあ、これ置きますね」
「ありがとう、助かりました」
雄高が礼を述べると、彼女はお辞儀をしてきびすを返しそのまま扉へと向かって行った。学生はその後ろ姿を切なげな瞳で追っていたが、やがて見えなくなるとわずかに肩を落としため息をついた.
雄高は事情が分からず、そのまま所在をなくして困った。
「本人に聞けばいいだろ、目の前にいたのに」
学生は内気そうな薄い眉をしかめ、唇をかんで足元を見つめている。斜めにかけた大きなカバンが重そうで、折れてしまいそうなほど痩せて背の高い学生だ。その彼より頭ひとつ分は小さい佐野の物言いに押され気味だ。佐野は腕組みして学生をぎろりと睨んだ。
「図書館はな、誰が何を借りたか記録が残らないようになってるんだ。もちろん、俺は彼女がどんな本を借りたか覚えている。でも、それは利用者のプライバシーにかかわることだから、一切口外してはいけないんだ。たとえ、警察に問われてもな」
学生は不満そうに顔を歪めて佐野を見た。そのまま何も言わずに、足音も荒々しく図書館から出て行った。
「まったく、好きだったら自分から動けっての。こんなとこで彼女の好みをリサーチしてる場合じゃないだろ、ったく……」
佐野はぼさぼさの髪をかくと、ようやく雄高を見た。昨夜の酒が残っているらしく、目が少し赤い。そして今日のシャツも赤のチェックだ。
「ああ、さっきの子に気があるんですね」
得心がいって雄高は独りごちして彼らの消えた方を見た。確かに、魅力的な学生だった。好意を寄せる彼のような人物がいてもおかしくはない。
「覇気がない、覇気が。さっさと告白して玉砕しろ」
佐野が口のなかで、しょうがねぇなとつぶやいたのが聞こえた。言葉はきついけれど、まるで出来の悪い弟を気遣う兄のような態度だ。意外と面倒見がいいのかも知れない。雄高は佐野の新しい一面をかいま見たような気がした。
「昨夜は……その、お騒がせしました」
口ごもりながら言うと、佐野は組んでいた腕をほどいて雄高の顔をじっと見た。
「いや。とても楽しかったですよ、俺は。灰智さんとはやっぱり話が合ったしね。それに碓氷さんへの認識も少し改まったし」
「認識?」
「I need you.って、強烈ですよ。意外と情熱家なんだな」
I need you.雄高は英語で反復すると頭のなかに昨夜の自分のせりふがこだました。
……必要だったんだ、史彦のことが……誰より。
思い出して雄高はあまりの恥ずかしさに冷や汗が出た。酔った勢いとはいえ、よりによって佐野の前で史彦に告白したわけだ。けれど、あのときはそうするのが最善だと思ったのだ。
そんな雄高をよそに、佐野は持ち運ばれて来た本を処理している。ハンドスキャナの赤い光がバーコードを次々と読み取っていく。
「俺、碓氷さんは冷たい人だと思ってた。いつだって冷静でさ。外ヅラだけよくて、ホントは嫌な奴だろうって勝手に想像して……」
佐野は雄高を見ずに、話を始めた。雄高は佐野が語る批評に苦笑した。よく観察している、外れてはいないと。
「覚えてないかもしれないけど、俺が二年の奨学金の選考ディスカッションのとき、碓氷さんに打ち負かされたんだよ」
「えっ? そうだったかな」
そう、と佐野は笑いを含んだ声で答えた。雄高はあまり明確には思い出せなかった。
「試験官の前で緊張して、なんとか取り繕うようにして言った意見を、碓氷さんはあっさりと論破……もう、駄目だと思ったね。目のまえ真っ暗」
言われて、なんとなく思い出した。とかく、ディスカッションでは自分の意見をはっきりと述べなくては評価されないから、多少厳しい話し方をしたかも知れない。
「それで、通りましたか」
「なんとかね。でも、あのとき落ちてたらもっと碓氷さんのこと恨んでいただろうな。俺も経済的に逼迫してたから」
むろん、今の言葉に悪意は感じられなかった。先日までの態度が嘘のようだ。雄高も佐野に対するわだかまりが消え、自然に話すことができた。
「僕はむしろ、佐野さんが本について熱弁をふるったことを覚えてますよ。博識だなって、感心しましたから」
しかし佐野の熱弁は当時の老朽化した図書館やその運営体質にまで意見が及び、ディスカッション後に教授会で物議をかもしたことには、あえて触れなかったが。
佐野はそこまで思い出したのか、決まり悪そうに頬をかいた。
「だって、公立に抜かれて悔しかったんだ。むこうは最新施設だし、開放的で自由な空気が感じられてさ」
公立大学は、史彦の母校だ。雄高たちが学生だったころは創立されてまだ間もなく、高度情報社会に対応した近代的な施設や授業内容が話題を呼んだ。
「あのとき、さんざん非難した場所で働いているんですね」
「そう、皮肉なもんでしょ?」
佐野は処理がすんだ本をカートに移すと、A3判のバインダーをひらいた。返却された本と、不明図書のリストを突き合わせているらしい。
「碓氷さん、今日は?」
言われて雄高は自分の目的について思い出した。
「ああ、資料を探しに。午後からはクリニックに出勤しなきゃならないから」
「手伝いますよ。心理学なら、一類? それとも、社会科学関係なら三類」
佐野は本のジャンルの分類番号を口にした。さらりと言えるあたりに、専門職の頼もしさを感じる。佐野は本が積まれた別のカートを押しながら、雄高と一緒にフロアーに出た。
今日は花曇りだ。吹き抜けのガラス窓から見える空にはうっすらと雲がかかっている。雄高は館の一番奥まった場所にある書架へと足を向けた。
「さっき、学生に面白いことを話してましたね」
「なに?」
「たとえ警察が来ても、教えない。本当ですか?」
誰が、何を借りたかデータは残らない。覚えていても、プライバシーの保護のため誰にも教えない、と佐野は学生を突っぱねたのだ。
「ホント。意外と知られていないかな。よくドラマや映画で、爆弾犯や殺人犯の容疑者がどんな本を借りていたか図書館に調べに来て、職員が教える……なんてシーンがあったりするけど。そんなのが放映された時は、図書館協会から抗議や内容の訂正の申し入れをするんだ」
犯罪捜査に協力するのは、市民の努めと雄高は思っていた。けれど、ことによると図書館は違うらしい。凛とした佐野の声には、司書としてのプライドがにじんでいるような気がした。
「どんな本を読もうと、どんな考えを持とうと、それは個人の自由。その自由を守るのが、図書館の役目なんだ。俺にとって、図書館は自由の象徴だ」
仕事に熱心……雄高は史彦の言葉を思い出した。図書館と自由。雄高のなかでは全く結びつかないイメージを佐野は熱く語る。皮肉屋だと思っていた佐野に、てらいもなく語れる言葉があるとは思わなかった。雄高のほうこそ、佐野への認識を改めた。
「なんてね、でも俺の本業は書誌学だけど」
「書誌学?」
耳慣れない言葉に雄高は聞き返した。佐野はカートを止め、乗せてある本を分類番号順に整理しながら説明した。窓際から、十進分類法のゼロ類がスタートしている。雄高が普段よく活用するのは、心理学が含まれる一類と社会科学の三類、そして医療関係の四類。それぐらいは、門外漢の雄高も覚えた。恐らく佐野の頭の中には、ゼロから九までの分類番号と内容が一致して収まっているのだろう。
「詳しくは、列挙的書誌。俺は、その中でも著者別書誌の作成に携わっていた。簡単に言うと、特定の著者の著作を中心にして、その人の書いたものや、その著作に関する論考をつけて仕上げる学問」
立て板に水の解説を雄高は一度では理解出来なかった。恐らく鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたのだろう。佐野は雄高を見ると吹き出した。
「碓氷さんでも、そんな顔するんだな。男前がダイナシだよ」
屈託なく笑う佐野のほうこそ、雄高には物珍しく思えた。雄高は頭をかくと、そのままそそくさと書架の前に進んだ。
資料の本を探す。天井とを金属のパイプでしっかりと固定された本棚には、長身の雄高でさえ手が届かないような位置から、床まで本が詰まっている。雄高は上部を書架に繋げられている移動式の梯子をずらし、目的のあたりに持って来るとタラップに足をかけ、本のタイトルを目で追った。
本と本棚の透き間から、佐野が本を所定の場所に戻している作業風景が見えた。雄高よりいくらか背が低めの佐野は、器用に梯子とカートを移動させながら手際よく本を戻して行く。
雄高は気づくと佐野の姿をいつまでも目で追っていた。大学はまだ本格的に始動していないとはいえ、図書館を利用する学生は少なくない。実際、自習スペースで学習している学生が何人か見える。佐野はせっせと働いているが、他の職員は何をしているのだろうか。一番下っ端の佐野が先輩たちに気を利かせて、というよりも、仕事自体が楽しくてしょうがない、といった風情だ。歌でも口ずさみそうな佐野の仕事ぶりを雄高は感心して眺めた。
空のカートを押して佐野がやって来るのに気づいて、雄高は慌てて視線を書架に戻した。
「見つかった?」
「ええ」
雄高はやっと見つけた心理学の本を書架から抜き取ると、梯子から降りた。佐野は、窓際に並べられた椅子の一つに腰かけると雄高を見上げた。
「灰智さんとは、つき合が長いっていってたね」
「まあ、三歳か四歳あたりからかな。覚えているのは」
佐野は少し笑ってうつむいた。
「そうじゃない、恋人同士になってからって意味で」
再び雄高を見上げた佐野の眼鏡の奥の目は笑っていなかった。雄高は瞬間、背筋が凍った。ついさっきまでの、『気さくで愛想のよい佐野』は姿を消していた。
「十年……」
雄高の答えに佐野は感嘆の声をあげると、膝を打った。大仰に足を組み、ひじ掛けに頬杖をつくと雄高をはすに見据えた。
「めずらしい。ふつう同性のカップルはそんなに長続きしないよ」
「どういうこと」
雄高は背筋を伸ばし、顎を引くと佐野を睨み返した。雄高より小柄な佐野は、今や雄高の凄みもものともせず泰然としている。
「男性の性衝動を司る脳の器官は女性の二倍。こらえ性がない、とでも言えばいいかな? ひとりに操を立てたりせず、好みのタイプなら、いやタイプじゃなくても衝動に駆られるとあっさり関係を持ってしまう。よって、おなじパートナーとは長続きしない」
「……いろいろご存じで」
雄高は頬のあたりを、冷たい手でなでられたような気がした。雄高は身に覚えがあるだけに、なにも反論せず、ただ佐野の言葉を聞いていた。
「二度目に渡米したときに、前回恋人同士だった『彼ら』は例外なく新しいパートナーと一緒だったから。まあ、灰智さんは碓氷さん一筋らしいね。昨夜、女の子たちに碓氷さんを紹介したのだって、自分の宝物を見せたがる子どものようだった」
バーでの様子を思い出したのか、佐野はおかしそうに笑った。佐野は、史彦のことを口にするときには柔和な顔つきになる……。雄高は眉根をよせて、そんな佐野の様子をつぶさに観察した。
「ほんとに昨夜はいいものを見させてもらったな。冷たいと思っていた碓氷さんは、灰智さんにむちゃくちゃ優しい」
そこで佐野はいったん言葉を切った。雄高は頬がかっと熱くなった。あきらかにからかうような口調だったからだ。
「すごく、優しい。……なにか後ろめたいことでもした?」
ちらりと横目で雄高を見る佐野の射るような視線に、正直体がすくむ。雄高は本を持つ手にじっとりと汗が浮かぶのを感じていた。動揺した態度は、佐野につけいる隙を与えるだけだ。雄高は、何も答えず佐野に背をむけ、出口に向かった。
「こんど講義して欲しいな。『強敵』について」
睨み返した雄高に、佐野は手を振って見せた。
「史彦、史彦、やばいぞ。もう八時になる!」
「えっ……」
長い髪をシーツにはわせながら、史彦が寝ぼけたまま体を起こした。けれど、ベッドからおりかけた雄高を抱き寄せることだけは忘れなかった。
「雄高、サイコーだった……昨夜」
史彦の両腕が背中からまわされると、昨夜の行為をすみずみまで思い出して、雄高の肌がわずかばかり紅色になる。確かに、最高……それは雄高も同じだった。けれど、今は昨夜の余韻を楽しんでいる間もない。
雄高は史彦に同意を示すために、振り返って口づけた。
「うん、俺も。……でも、とにかく急がないとヤバイって。おまえもどっかの会社と打ち合わせするって言ってたよな。しかも朝イチで」
「やっべー! あそこの課長、時間にメチャ厳しい奴だ!」
さすがに史彦もベッドから飛び降りると、隣の自室へ入っていった。雄高も急いで着替えながら考えた。
いいよな、と。ごく普通の生活。朝目が覚めると、隣には愛しい人がいる。健康で、仕事があって、平凡だけど平穏。
きっとこういうのを幸福というのかもしれない。雄高は妙に年寄りじみたことを思った自分に苦笑した。ネクタイを選び取ると、雄高は史彦に声をかけた。
「洗面所、先に使うからな」
結局、朝食をとる暇はなかった。史彦の打ち合わせ先の会社が大学と同じ方向だった。自家用車で雄高を校門まで送ってくれたおかげで、幸い遅刻は免れた。
降りぎわ、雄高は路上の人影が途絶えたわずかな隙を狙って、ハンドルを握る史彦に口づけた。
「事故るなよ!」
雄高の声に、頬を染めた史彦が何度も頷く。よけいなことをしてしまったかな、と雄高は反省したけれど、今朝の幸福感はこうもしないと史彦に伝わらないような気がして、珍しく行動を起こしたのだ。史彦も嬉しそうにしていたから、いいかと自分を納得させる。
研究室へ入ると、正面のテーブルにまた本の小山が出来ていた。
「おはよう。研究室に残っていたのと、ゼミ生をつっついたら出てきたやつ」
相馬教授は、院生の奥津がお茶を入れる手つきを見守りながら、雄高に声をかけた。奥津は真剣な眼差しで、白磁のティーポットを見つめていた。
「奥津くん、そんなに睨まなくてもおいしいお茶になるよ」
「はっはい。そうですよね」
院生の奥津は、ふっくらとした頬に恥ずかしげに手をあてた。そしてあらためて雄高に気づいて挨拶した。
「おはようございます。なんだかゴキゲンですね、碓氷先生」
「そうかな?」
言われて壁にかかっている縁の欠けた鏡をのぞき込んだ。自分では、どこが違っているかまったくわからないが。
「珍しい。今にもスキップしそうに見えますよ」
「恋人といいことでもあったんだろう。愛しの君は元気かね」
教授の言葉に雄高は耳が熱くなるのが分かった。しまりのない顔を見られたくなくて、後ろ向で頷き、コートを脱ぐ。教授の意味深な発言に、奥津が色めき立った。
「あっ、教授は会ったことがあるんですね。碓氷先生の恋人ってどんな人ですか? 教えてください」
教授はべっ甲のフレームに手をかけて、いかにも熟考するようなポーズを取った。雄高は教授が何を言い出すのか、はらはらした。
「んー……、美人だね。そんじょそこらの女性では太刀打ち出来ないな。しかも性格は愉快豪快。奥津くん、気になるの?」
「気にならないほうが変です。先生のファンて、学内にたくさんいるんですよ。それでなくたって、先生と教授の仲を疑われてるって知らなかったでしょ。新学期が本格的に始まったら、絶対にあの新聞を信じ込んで大騒ぎする学生がいるに決まってます!」
妙にきっぱりと断言する奥津に、さしもの教授も口を挟む余地がなかったようだ。ごほん、とひとつ咳をしてから奥津にアドバイスした。
「そろそろ蒸らしもよさそうだから、みんなでお茶にしよう」
一抱えの本を両手で持って図書館の自動ドアを抜けるとき、開ききらない強化ガラスの扉に本がぶつかった。とたんに足元に何冊か本が散らばる。しゃがむこともままならず、思わず舌打ちすると、たまたま居合わせた女子学生が拾い上げ声をかけてくれた。
「半分お持ちしましょうか」
「ありがとう。申し訳ないけど、そうしてくれると助かるよ」
本はまた雄高が図書館へ戻す役目を買って出た。佐野に史彦とのことを話してしまったら、逆にすっきりして佐野への苦手意識が薄らいだような気がしたからだ。それに、雄高自身も調べたい文献が図書館にある。
雄高がほほ笑むと、彼女ははにかむような笑顔を返してくれた。肩までのワンレングスの髪に、眼鏡が知的にさえている感じの良い学生だ。好意に甘えて、扉からすぐのカウンターまで一緒に運んでもらう。
カウンターでは佐野が学生となにやらもめていた。佐野の低く押さえた声がかすかに聞こえてくる。
「だから、そんなことは出来ないと言ってるんだ」
「ちょっとでいいんだよ。たいしたことないじゃない、少しぐらい教えてくれても……」
堅い声で拒否する佐野に、学生は食い下がっている。雄高はその背中ごしに声をかけた。
「あの、心理学研究室ですが」
青白い上背だけある学生が雄高の声に振り返り、その隣に立つ彼女を見るやいなや、横を向いて口をつぐんだ。
「じゃあ、これ置きますね」
「ありがとう、助かりました」
雄高が礼を述べると、彼女はお辞儀をしてきびすを返しそのまま扉へと向かって行った。学生はその後ろ姿を切なげな瞳で追っていたが、やがて見えなくなるとわずかに肩を落としため息をついた.
雄高は事情が分からず、そのまま所在をなくして困った。
「本人に聞けばいいだろ、目の前にいたのに」
学生は内気そうな薄い眉をしかめ、唇をかんで足元を見つめている。斜めにかけた大きなカバンが重そうで、折れてしまいそうなほど痩せて背の高い学生だ。その彼より頭ひとつ分は小さい佐野の物言いに押され気味だ。佐野は腕組みして学生をぎろりと睨んだ。
「図書館はな、誰が何を借りたか記録が残らないようになってるんだ。もちろん、俺は彼女がどんな本を借りたか覚えている。でも、それは利用者のプライバシーにかかわることだから、一切口外してはいけないんだ。たとえ、警察に問われてもな」
学生は不満そうに顔を歪めて佐野を見た。そのまま何も言わずに、足音も荒々しく図書館から出て行った。
「まったく、好きだったら自分から動けっての。こんなとこで彼女の好みをリサーチしてる場合じゃないだろ、ったく……」
佐野はぼさぼさの髪をかくと、ようやく雄高を見た。昨夜の酒が残っているらしく、目が少し赤い。そして今日のシャツも赤のチェックだ。
「ああ、さっきの子に気があるんですね」
得心がいって雄高は独りごちして彼らの消えた方を見た。確かに、魅力的な学生だった。好意を寄せる彼のような人物がいてもおかしくはない。
「覇気がない、覇気が。さっさと告白して玉砕しろ」
佐野が口のなかで、しょうがねぇなとつぶやいたのが聞こえた。言葉はきついけれど、まるで出来の悪い弟を気遣う兄のような態度だ。意外と面倒見がいいのかも知れない。雄高は佐野の新しい一面をかいま見たような気がした。
「昨夜は……その、お騒がせしました」
口ごもりながら言うと、佐野は組んでいた腕をほどいて雄高の顔をじっと見た。
「いや。とても楽しかったですよ、俺は。灰智さんとはやっぱり話が合ったしね。それに碓氷さんへの認識も少し改まったし」
「認識?」
「I need you.って、強烈ですよ。意外と情熱家なんだな」
I need you.雄高は英語で反復すると頭のなかに昨夜の自分のせりふがこだました。
……必要だったんだ、史彦のことが……誰より。
思い出して雄高はあまりの恥ずかしさに冷や汗が出た。酔った勢いとはいえ、よりによって佐野の前で史彦に告白したわけだ。けれど、あのときはそうするのが最善だと思ったのだ。
そんな雄高をよそに、佐野は持ち運ばれて来た本を処理している。ハンドスキャナの赤い光がバーコードを次々と読み取っていく。
「俺、碓氷さんは冷たい人だと思ってた。いつだって冷静でさ。外ヅラだけよくて、ホントは嫌な奴だろうって勝手に想像して……」
佐野は雄高を見ずに、話を始めた。雄高は佐野が語る批評に苦笑した。よく観察している、外れてはいないと。
「覚えてないかもしれないけど、俺が二年の奨学金の選考ディスカッションのとき、碓氷さんに打ち負かされたんだよ」
「えっ? そうだったかな」
そう、と佐野は笑いを含んだ声で答えた。雄高はあまり明確には思い出せなかった。
「試験官の前で緊張して、なんとか取り繕うようにして言った意見を、碓氷さんはあっさりと論破……もう、駄目だと思ったね。目のまえ真っ暗」
言われて、なんとなく思い出した。とかく、ディスカッションでは自分の意見をはっきりと述べなくては評価されないから、多少厳しい話し方をしたかも知れない。
「それで、通りましたか」
「なんとかね。でも、あのとき落ちてたらもっと碓氷さんのこと恨んでいただろうな。俺も経済的に逼迫してたから」
むろん、今の言葉に悪意は感じられなかった。先日までの態度が嘘のようだ。雄高も佐野に対するわだかまりが消え、自然に話すことができた。
「僕はむしろ、佐野さんが本について熱弁をふるったことを覚えてますよ。博識だなって、感心しましたから」
しかし佐野の熱弁は当時の老朽化した図書館やその運営体質にまで意見が及び、ディスカッション後に教授会で物議をかもしたことには、あえて触れなかったが。
佐野はそこまで思い出したのか、決まり悪そうに頬をかいた。
「だって、公立に抜かれて悔しかったんだ。むこうは最新施設だし、開放的で自由な空気が感じられてさ」
公立大学は、史彦の母校だ。雄高たちが学生だったころは創立されてまだ間もなく、高度情報社会に対応した近代的な施設や授業内容が話題を呼んだ。
「あのとき、さんざん非難した場所で働いているんですね」
「そう、皮肉なもんでしょ?」
佐野は処理がすんだ本をカートに移すと、A3判のバインダーをひらいた。返却された本と、不明図書のリストを突き合わせているらしい。
「碓氷さん、今日は?」
言われて雄高は自分の目的について思い出した。
「ああ、資料を探しに。午後からはクリニックに出勤しなきゃならないから」
「手伝いますよ。心理学なら、一類? それとも、社会科学関係なら三類」
佐野は本のジャンルの分類番号を口にした。さらりと言えるあたりに、専門職の頼もしさを感じる。佐野は本が積まれた別のカートを押しながら、雄高と一緒にフロアーに出た。
今日は花曇りだ。吹き抜けのガラス窓から見える空にはうっすらと雲がかかっている。雄高は館の一番奥まった場所にある書架へと足を向けた。
「さっき、学生に面白いことを話してましたね」
「なに?」
「たとえ警察が来ても、教えない。本当ですか?」
誰が、何を借りたかデータは残らない。覚えていても、プライバシーの保護のため誰にも教えない、と佐野は学生を突っぱねたのだ。
「ホント。意外と知られていないかな。よくドラマや映画で、爆弾犯や殺人犯の容疑者がどんな本を借りていたか図書館に調べに来て、職員が教える……なんてシーンがあったりするけど。そんなのが放映された時は、図書館協会から抗議や内容の訂正の申し入れをするんだ」
犯罪捜査に協力するのは、市民の努めと雄高は思っていた。けれど、ことによると図書館は違うらしい。凛とした佐野の声には、司書としてのプライドがにじんでいるような気がした。
「どんな本を読もうと、どんな考えを持とうと、それは個人の自由。その自由を守るのが、図書館の役目なんだ。俺にとって、図書館は自由の象徴だ」
仕事に熱心……雄高は史彦の言葉を思い出した。図書館と自由。雄高のなかでは全く結びつかないイメージを佐野は熱く語る。皮肉屋だと思っていた佐野に、てらいもなく語れる言葉があるとは思わなかった。雄高のほうこそ、佐野への認識を改めた。
「なんてね、でも俺の本業は書誌学だけど」
「書誌学?」
耳慣れない言葉に雄高は聞き返した。佐野はカートを止め、乗せてある本を分類番号順に整理しながら説明した。窓際から、十進分類法のゼロ類がスタートしている。雄高が普段よく活用するのは、心理学が含まれる一類と社会科学の三類、そして医療関係の四類。それぐらいは、門外漢の雄高も覚えた。恐らく佐野の頭の中には、ゼロから九までの分類番号と内容が一致して収まっているのだろう。
「詳しくは、列挙的書誌。俺は、その中でも著者別書誌の作成に携わっていた。簡単に言うと、特定の著者の著作を中心にして、その人の書いたものや、その著作に関する論考をつけて仕上げる学問」
立て板に水の解説を雄高は一度では理解出来なかった。恐らく鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたのだろう。佐野は雄高を見ると吹き出した。
「碓氷さんでも、そんな顔するんだな。男前がダイナシだよ」
屈託なく笑う佐野のほうこそ、雄高には物珍しく思えた。雄高は頭をかくと、そのままそそくさと書架の前に進んだ。
資料の本を探す。天井とを金属のパイプでしっかりと固定された本棚には、長身の雄高でさえ手が届かないような位置から、床まで本が詰まっている。雄高は上部を書架に繋げられている移動式の梯子をずらし、目的のあたりに持って来るとタラップに足をかけ、本のタイトルを目で追った。
本と本棚の透き間から、佐野が本を所定の場所に戻している作業風景が見えた。雄高よりいくらか背が低めの佐野は、器用に梯子とカートを移動させながら手際よく本を戻して行く。
雄高は気づくと佐野の姿をいつまでも目で追っていた。大学はまだ本格的に始動していないとはいえ、図書館を利用する学生は少なくない。実際、自習スペースで学習している学生が何人か見える。佐野はせっせと働いているが、他の職員は何をしているのだろうか。一番下っ端の佐野が先輩たちに気を利かせて、というよりも、仕事自体が楽しくてしょうがない、といった風情だ。歌でも口ずさみそうな佐野の仕事ぶりを雄高は感心して眺めた。
空のカートを押して佐野がやって来るのに気づいて、雄高は慌てて視線を書架に戻した。
「見つかった?」
「ええ」
雄高はやっと見つけた心理学の本を書架から抜き取ると、梯子から降りた。佐野は、窓際に並べられた椅子の一つに腰かけると雄高を見上げた。
「灰智さんとは、つき合が長いっていってたね」
「まあ、三歳か四歳あたりからかな。覚えているのは」
佐野は少し笑ってうつむいた。
「そうじゃない、恋人同士になってからって意味で」
再び雄高を見上げた佐野の眼鏡の奥の目は笑っていなかった。雄高は瞬間、背筋が凍った。ついさっきまでの、『気さくで愛想のよい佐野』は姿を消していた。
「十年……」
雄高の答えに佐野は感嘆の声をあげると、膝を打った。大仰に足を組み、ひじ掛けに頬杖をつくと雄高をはすに見据えた。
「めずらしい。ふつう同性のカップルはそんなに長続きしないよ」
「どういうこと」
雄高は背筋を伸ばし、顎を引くと佐野を睨み返した。雄高より小柄な佐野は、今や雄高の凄みもものともせず泰然としている。
「男性の性衝動を司る脳の器官は女性の二倍。こらえ性がない、とでも言えばいいかな? ひとりに操を立てたりせず、好みのタイプなら、いやタイプじゃなくても衝動に駆られるとあっさり関係を持ってしまう。よって、おなじパートナーとは長続きしない」
「……いろいろご存じで」
雄高は頬のあたりを、冷たい手でなでられたような気がした。雄高は身に覚えがあるだけに、なにも反論せず、ただ佐野の言葉を聞いていた。
「二度目に渡米したときに、前回恋人同士だった『彼ら』は例外なく新しいパートナーと一緒だったから。まあ、灰智さんは碓氷さん一筋らしいね。昨夜、女の子たちに碓氷さんを紹介したのだって、自分の宝物を見せたがる子どものようだった」
バーでの様子を思い出したのか、佐野はおかしそうに笑った。佐野は、史彦のことを口にするときには柔和な顔つきになる……。雄高は眉根をよせて、そんな佐野の様子をつぶさに観察した。
「ほんとに昨夜はいいものを見させてもらったな。冷たいと思っていた碓氷さんは、灰智さんにむちゃくちゃ優しい」
そこで佐野はいったん言葉を切った。雄高は頬がかっと熱くなった。あきらかにからかうような口調だったからだ。
「すごく、優しい。……なにか後ろめたいことでもした?」
ちらりと横目で雄高を見る佐野の射るような視線に、正直体がすくむ。雄高は本を持つ手にじっとりと汗が浮かぶのを感じていた。動揺した態度は、佐野につけいる隙を与えるだけだ。雄高は、何も答えず佐野に背をむけ、出口に向かった。
「こんど講義して欲しいな。『強敵』について」
睨み返した雄高に、佐野は手を振って見せた。
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