1 / 13
子猫はいつだって突然にあらわれる
しおりを挟む
「猫欲しいヒト、知りませんかー」
と、ごく軽い感じで高校の後輩から電話が来たのは、五月の土曜日のことだった。
「どうかなあ、いたようないないような」
など、とぼけた答えをかえして事情を詳しく聞くと、前日の金曜日に後輩の職場に子猫が捨てられていたという。その数、五匹。後輩の職場は人の集まる施設だが、そこへ捨てるとは。「誰か拾ってくれるはず」という魂胆が透けて見えて、腹が立つ。
「まあ、あちこち聞いてみるから」
と、電話を切って事の次第を一緒に働いている兄に伝えた。
我が実家は猫好きだ。わたしが子供のころからほぼ猫を切らすことなく飼っていた。家を新築する前に、推定18才の三毛猫を見送ってからは飼っていないが、兄が拾ってきて実家の事務所と我が家とを通勤するキジトラがときどきお邪魔している。
我が家では現在、推定三歳のハチワレと三毛の兄妹がいる。キジトラは普段の夜はわたしの仕事場に寝泊まりしている。そんなわけで、大人猫は計三匹だ。
友人知人にも猫好きが多くて、いつの間にやら、なんとなく猫のネットワークみたいなのができていて、もらい手探しは何度もやっている。だから、後輩が電話をしてきたんだろう。
※後輩は猫アレルギーのため、一時保護もできない。
子猫、しかも五匹。これはたいへんだろうな、と予測がついた。ただ、大人猫より子猫のほうが貰い手が付きやすいから、まだいいのかも知れない。
とりあえず、画像があればいいと後輩に連絡すると、ちょっと雲行きが怪しくなっていく。実は後輩は前日の金曜日がお休みで、子猫の話を聞いたのは本日土曜日。実際子猫を見たわけではい。送ってもらった画像は、同僚が昨日撮ったもの、という。
とりあえず画像を見れば小さな箱の中にバスタオルが敷かれ、団子のように固まる五匹の子猫たち。とても小さく、まだ離乳もしていない様子だったと教えられた。
今現在、子猫は後輩の職場にはいないという。でははどこにいるのかというとすでに警察に渡してしまっていた。後輩の説明では、警察で預かって持ち主が見つからなければ、保健所へいくし、保健所へ行ったら数日で……。
と、恐ろしいことを言うので、すでに胃がきゅーっとなる。
離乳前に子猫たち。きちんとお世話されているんだろうか。五匹の中には、元気のないのもいたと聞いた。
猫の貰い手がつくなら、早い段階で引き取ってきたほうがいいのではないか。
そういえば、と、ここでようやく思い出した。みうみさんが新しい猫をお迎えすることも考える……みたいな話をしていた。
みうみさんは、SNSで知り合った方だ。美麗なイラストと素敵な小説を書かれるマルチな方で、わたしの本の表紙を何作も描いていただている。文学フリマへ等で参加しているし、お住まいが隣県という近さもあり、直接交流がある。
ダメ元で連絡を入れてみた。すると偶然にも諸事情でご家族が全員そろっていて家族会議の結果、子猫さんを受け入れましょうと決まりました、と早々にお返事があり、ほっとした。
同時に、母方の親戚の子(今年獣医師になるための学校に入学)の知り合いが欲しいとのこと。
おお、これで二匹決まり。
五匹中二匹が決まるなんてすごいな、と思った。
とにかく子猫の確保が最重要課題では。とりあえず、我が家で預かって、里親を捜した方がいいのではないか。警察署で子猫の世話ができるたろうか、いやできはしない、という結論に達し子猫の保護へと動き出す。
「どこの警察へ預けたんだ」と後輩に聞くと
「○○駐在所だよー」
とこれまた軽い調子だ。○○駐在所は後輩の職場の地域にある交番だが、電話をかけたら不在で本署へと電話は転送された。
事情を話すと、
「猫たちは、保健所へ移されましたよ」
んなーっっ、ほ、保健所(←もう殺処分されるのか)。うろたえて保健所へ電話をかけるも、土曜日はお休みだからつながるわけがない。
そわそわと生きた心地がしないまま、土曜と日曜をすごした。
月曜日に朝イチで電話をかけよう、とにかく子猫たちを救わなければ、妙な正義感に突き動かされて月曜日を待った。
と、ごく軽い感じで高校の後輩から電話が来たのは、五月の土曜日のことだった。
「どうかなあ、いたようないないような」
など、とぼけた答えをかえして事情を詳しく聞くと、前日の金曜日に後輩の職場に子猫が捨てられていたという。その数、五匹。後輩の職場は人の集まる施設だが、そこへ捨てるとは。「誰か拾ってくれるはず」という魂胆が透けて見えて、腹が立つ。
「まあ、あちこち聞いてみるから」
と、電話を切って事の次第を一緒に働いている兄に伝えた。
我が実家は猫好きだ。わたしが子供のころからほぼ猫を切らすことなく飼っていた。家を新築する前に、推定18才の三毛猫を見送ってからは飼っていないが、兄が拾ってきて実家の事務所と我が家とを通勤するキジトラがときどきお邪魔している。
我が家では現在、推定三歳のハチワレと三毛の兄妹がいる。キジトラは普段の夜はわたしの仕事場に寝泊まりしている。そんなわけで、大人猫は計三匹だ。
友人知人にも猫好きが多くて、いつの間にやら、なんとなく猫のネットワークみたいなのができていて、もらい手探しは何度もやっている。だから、後輩が電話をしてきたんだろう。
※後輩は猫アレルギーのため、一時保護もできない。
子猫、しかも五匹。これはたいへんだろうな、と予測がついた。ただ、大人猫より子猫のほうが貰い手が付きやすいから、まだいいのかも知れない。
とりあえず、画像があればいいと後輩に連絡すると、ちょっと雲行きが怪しくなっていく。実は後輩は前日の金曜日がお休みで、子猫の話を聞いたのは本日土曜日。実際子猫を見たわけではい。送ってもらった画像は、同僚が昨日撮ったもの、という。
とりあえず画像を見れば小さな箱の中にバスタオルが敷かれ、団子のように固まる五匹の子猫たち。とても小さく、まだ離乳もしていない様子だったと教えられた。
今現在、子猫は後輩の職場にはいないという。でははどこにいるのかというとすでに警察に渡してしまっていた。後輩の説明では、警察で預かって持ち主が見つからなければ、保健所へいくし、保健所へ行ったら数日で……。
と、恐ろしいことを言うので、すでに胃がきゅーっとなる。
離乳前に子猫たち。きちんとお世話されているんだろうか。五匹の中には、元気のないのもいたと聞いた。
猫の貰い手がつくなら、早い段階で引き取ってきたほうがいいのではないか。
そういえば、と、ここでようやく思い出した。みうみさんが新しい猫をお迎えすることも考える……みたいな話をしていた。
みうみさんは、SNSで知り合った方だ。美麗なイラストと素敵な小説を書かれるマルチな方で、わたしの本の表紙を何作も描いていただている。文学フリマへ等で参加しているし、お住まいが隣県という近さもあり、直接交流がある。
ダメ元で連絡を入れてみた。すると偶然にも諸事情でご家族が全員そろっていて家族会議の結果、子猫さんを受け入れましょうと決まりました、と早々にお返事があり、ほっとした。
同時に、母方の親戚の子(今年獣医師になるための学校に入学)の知り合いが欲しいとのこと。
おお、これで二匹決まり。
五匹中二匹が決まるなんてすごいな、と思った。
とにかく子猫の確保が最重要課題では。とりあえず、我が家で預かって、里親を捜した方がいいのではないか。警察署で子猫の世話ができるたろうか、いやできはしない、という結論に達し子猫の保護へと動き出す。
「どこの警察へ預けたんだ」と後輩に聞くと
「○○駐在所だよー」
とこれまた軽い調子だ。○○駐在所は後輩の職場の地域にある交番だが、電話をかけたら不在で本署へと電話は転送された。
事情を話すと、
「猫たちは、保健所へ移されましたよ」
んなーっっ、ほ、保健所(←もう殺処分されるのか)。うろたえて保健所へ電話をかけるも、土曜日はお休みだからつながるわけがない。
そわそわと生きた心地がしないまま、土曜と日曜をすごした。
月曜日に朝イチで電話をかけよう、とにかく子猫たちを救わなければ、妙な正義感に突き動かされて月曜日を待った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる