子猫と踊るはラプソディー

ビター

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子猫はいつだって突然にあらわれる

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「猫欲しいヒト、知りませんかー」
 と、ごく軽い感じで高校の後輩から電話が来たのは、五月の土曜日のことだった。
「どうかなあ、いたようないないような」
 など、とぼけた答えをかえして事情を詳しく聞くと、前日の金曜日に後輩の職場に子猫が捨てられていたという。その数、五匹。後輩の職場は人の集まる施設だが、そこへ捨てるとは。「誰か拾ってくれるはず」という魂胆が透けて見えて、腹が立つ。
「まあ、あちこち聞いてみるから」
 と、電話を切って事の次第を一緒に働いている兄に伝えた。

 我が実家は猫好きだ。わたしが子供のころからほぼ猫を切らすことなく飼っていた。家を新築する前に、推定18才の三毛猫を見送ってからは飼っていないが、兄が拾ってきて実家の事務所と我が家とを通勤するキジトラがときどきお邪魔している。
 我が家では現在、推定三歳のハチワレと三毛の兄妹がいる。キジトラは普段の夜はわたしの仕事場に寝泊まりしている。そんなわけで、大人猫は計三匹だ。
 友人知人にも猫好きが多くて、いつの間にやら、なんとなく猫のネットワークみたいなのができていて、もらい手探しは何度もやっている。だから、後輩が電話をしてきたんだろう。
 ※後輩は猫アレルギーのため、一時保護もできない。

 子猫、しかも五匹。これはたいへんだろうな、と予測がついた。ただ、大人猫より子猫のほうが貰い手が付きやすいから、まだいいのかも知れない。
 とりあえず、画像があればいいと後輩に連絡すると、ちょっと雲行きが怪しくなっていく。実は後輩は前日の金曜日がお休みで、子猫の話を聞いたのは本日土曜日。実際子猫を見たわけではい。送ってもらった画像は、同僚が昨日撮ったもの、という。
 とりあえず画像を見れば小さな箱の中にバスタオルが敷かれ、団子のように固まる五匹の子猫たち。とても小さく、まだ離乳もしていない様子だったと教えられた。
 今現在、子猫は後輩の職場にはいないという。でははどこにいるのかというとすでに警察に渡してしまっていた。後輩の説明では、警察で預かって持ち主が見つからなければ、保健所へいくし、保健所へ行ったら数日で……。
 と、恐ろしいことを言うので、すでに胃がきゅーっとなる。
 離乳前に子猫たち。きちんとお世話されているんだろうか。五匹の中には、元気のないのもいたと聞いた。
 猫の貰い手がつくなら、早い段階で引き取ってきたほうがいいのではないか。
 そういえば、と、ここでようやく思い出した。みうみさんが新しい猫をお迎えすることも考える……みたいな話をしていた。
 みうみさんは、SNSで知り合った方だ。美麗なイラストと素敵な小説を書かれるマルチな方で、わたしの本の表紙を何作も描いていただている。文学フリマへ等で参加しているし、お住まいが隣県という近さもあり、直接交流がある。
 ダメ元で連絡を入れてみた。すると偶然にも諸事情でご家族が全員そろっていて家族会議の結果、子猫さんを受け入れましょうと決まりました、と早々にお返事があり、ほっとした。

 同時に、母方の親戚の子(今年獣医師になるための学校に入学)の知り合いが欲しいとのこと。
 おお、これで二匹決まり。
 五匹中二匹が決まるなんてすごいな、と思った。
 とにかく子猫の確保が最重要課題では。とりあえず、我が家で預かって、里親を捜した方がいいのではないか。警察署で子猫の世話ができるたろうか、いやできはしない、という結論に達し子猫の保護へと動き出す。
「どこの警察へ預けたんだ」と後輩に聞くと
「○○駐在所だよー」
 とこれまた軽い調子だ。○○駐在所は後輩の職場の地域にある交番だが、電話をかけたら不在で本署へと電話は転送された。
 事情を話すと、
「猫たちは、保健所へ移されましたよ」
 んなーっっ、ほ、保健所(←もう殺処分されるのか)。うろたえて保健所へ電話をかけるも、土曜日はお休みだからつながるわけがない。
 そわそわと生きた心地がしないまま、土曜と日曜をすごした。
 月曜日に朝イチで電話をかけよう、とにかく子猫たちを救わなければ、妙な正義感に突き動かされて月曜日を待った。
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