13 / 13
ずっとのおうちへ
しおりを挟む
六月十二日の朝は小雨だった。みうみさんの住む町をネットで検索したらば、一日中雨。
天気は良くない。ちょっと寒いかな。
子猫たちは元気にこの日を迎え、朝もご飯を食べた。そのあとは、二匹して追いかけっこをしたり、さんざん遊んで体をくたくたにした。
ようやく素直になった夫が、「もう最後だよ」というわたしの声に、子猫を抱き上げる。
もっと早くから、子猫たちとたくさんふれあえばよかったのに。ろくに撫でることもせずに最後の日になってしまった。
時間に余裕をもって新幹線の駅に行こうと思っていたのに、道路が混んでいて思うように進まなかった。雨のせいだろうか。
ようやく新幹線駅の駐車場に着く。わりと時間ギリギリ。よっこらしょと猫たちのケージを持った。背中には、娘が高校時代に使っていたディパック(一部ファスナーが壊れている)、右手にはお土産の入った紙袋。もう行商人のオバちゃんみたいな格好だ。
車から出て駐車場の端に来て、マスクを忘れているのに気づき、もう一度車に戻ってマスクをする。わりと時間がギリギリ。速足で、駅舎へ入り猫たちのケージ用の切符を窓口で買う。
「見えるところに貼っておいてくださいね」と言われたので、ケージの出入り口のところへペタリ。さてさて、急がねばと階段を上る(わりと長い階段です)。ホームに書かれた新幹線の絵で自由席を確かめて、目的のところまでいて、ほっと一息をついたとき!
(お土産の紙袋を忘れたーーーーっっ)
そう、猫たちの切符を買う時に下におろした紙袋を忘れたのだ。慌てて、階段を下る。もう時間がない。
下について駅員さんに息も切れ切れに「あ、あの、お、お土産のっ」と言ったあたりで、駅員さんがすぐにくだんの紙袋を手渡してくださった。
お礼もそこそこ、再び階段を登る。もう汗だくだし、時間ギリギリだし、ああああっ。
ホームの自由席乗車口の前に来てほどなく、新幹線が来た。
各駅停車の新幹線には、あまり人は乗っておらず三人掛けのところに一人で座れた。
猫たちの様子はどうだろう。車内であまり鳴くようならデッキに移動しよう、とかいろいろ考えていたが、朝あそんで疲れたせいか、二匹とも眠っていた。
助かった。
駅に到着すると、みうみさんが待っていて下った。車での移動中に雨が強くなったり弱くなったり。
子猫たちはみうみさんのお家に到着するまで、ぐっすり眠っていた。
みうみさんのお宅に到着。ご家族にご挨拶して、猫たちをケージの中に放す。
たくさんのご飯にかぶりついて、トイレも使って、すぐ環境になじめそうだった。先住猫さんたちも顔を見せ、子猫を遠巻きに見ていたけど、威嚇されないから大丈夫大丈夫。きっとみうみさんが先住猫さんの匂いをつけられるようにと持ってきたピンクの袋のおかげだろう。
みうさん、ありがとうございます。二匹一緒になんて、ほんとに理想的で嬉しいです。
しまちゃんは、テルちゃんに。
もふちゃんは、ノルちゃんに。
二匹は新しい名前がついた。
みうみさん宅でご馳走になり、コーヒーまでいただいて帰宅した。
みうみさんにまた車で送っていただいた。
駅に着くまでに雨は上がり、雲間から青空がのぞいていた。
帰宅してすぐ、子猫たちが使っていた和室を片付けた。小さなトイレも、折り畳みケージもお皿も湯たんぽも何もかも。
ハチワレと三毛が和室を覗きに来る。今朝までそこに何かがいたはずと覚えているのか、部屋の中を嗅ぎまわっていた。
夜、久しぶりに最初から布団で休む。三毛とハチワレはいつもより甘えるように一緒の布団で体をくっつけるようにしてきた。
大人猫たちにも、ながいあいだ我慢をさせた。
おやすみ、猫たち。子猫はもういないよ。
さよなら、子猫たち。
そこは幸せになれる、ずっとのおうちだよ。
天気は良くない。ちょっと寒いかな。
子猫たちは元気にこの日を迎え、朝もご飯を食べた。そのあとは、二匹して追いかけっこをしたり、さんざん遊んで体をくたくたにした。
ようやく素直になった夫が、「もう最後だよ」というわたしの声に、子猫を抱き上げる。
もっと早くから、子猫たちとたくさんふれあえばよかったのに。ろくに撫でることもせずに最後の日になってしまった。
時間に余裕をもって新幹線の駅に行こうと思っていたのに、道路が混んでいて思うように進まなかった。雨のせいだろうか。
ようやく新幹線駅の駐車場に着く。わりと時間ギリギリ。よっこらしょと猫たちのケージを持った。背中には、娘が高校時代に使っていたディパック(一部ファスナーが壊れている)、右手にはお土産の入った紙袋。もう行商人のオバちゃんみたいな格好だ。
車から出て駐車場の端に来て、マスクを忘れているのに気づき、もう一度車に戻ってマスクをする。わりと時間がギリギリ。速足で、駅舎へ入り猫たちのケージ用の切符を窓口で買う。
「見えるところに貼っておいてくださいね」と言われたので、ケージの出入り口のところへペタリ。さてさて、急がねばと階段を上る(わりと長い階段です)。ホームに書かれた新幹線の絵で自由席を確かめて、目的のところまでいて、ほっと一息をついたとき!
(お土産の紙袋を忘れたーーーーっっ)
そう、猫たちの切符を買う時に下におろした紙袋を忘れたのだ。慌てて、階段を下る。もう時間がない。
下について駅員さんに息も切れ切れに「あ、あの、お、お土産のっ」と言ったあたりで、駅員さんがすぐにくだんの紙袋を手渡してくださった。
お礼もそこそこ、再び階段を登る。もう汗だくだし、時間ギリギリだし、ああああっ。
ホームの自由席乗車口の前に来てほどなく、新幹線が来た。
各駅停車の新幹線には、あまり人は乗っておらず三人掛けのところに一人で座れた。
猫たちの様子はどうだろう。車内であまり鳴くようならデッキに移動しよう、とかいろいろ考えていたが、朝あそんで疲れたせいか、二匹とも眠っていた。
助かった。
駅に到着すると、みうみさんが待っていて下った。車での移動中に雨が強くなったり弱くなったり。
子猫たちはみうみさんのお家に到着するまで、ぐっすり眠っていた。
みうみさんのお宅に到着。ご家族にご挨拶して、猫たちをケージの中に放す。
たくさんのご飯にかぶりついて、トイレも使って、すぐ環境になじめそうだった。先住猫さんたちも顔を見せ、子猫を遠巻きに見ていたけど、威嚇されないから大丈夫大丈夫。きっとみうみさんが先住猫さんの匂いをつけられるようにと持ってきたピンクの袋のおかげだろう。
みうさん、ありがとうございます。二匹一緒になんて、ほんとに理想的で嬉しいです。
しまちゃんは、テルちゃんに。
もふちゃんは、ノルちゃんに。
二匹は新しい名前がついた。
みうみさん宅でご馳走になり、コーヒーまでいただいて帰宅した。
みうみさんにまた車で送っていただいた。
駅に着くまでに雨は上がり、雲間から青空がのぞいていた。
帰宅してすぐ、子猫たちが使っていた和室を片付けた。小さなトイレも、折り畳みケージもお皿も湯たんぽも何もかも。
ハチワレと三毛が和室を覗きに来る。今朝までそこに何かがいたはずと覚えているのか、部屋の中を嗅ぎまわっていた。
夜、久しぶりに最初から布団で休む。三毛とハチワレはいつもより甘えるように一緒の布団で体をくっつけるようにしてきた。
大人猫たちにも、ながいあいだ我慢をさせた。
おやすみ、猫たち。子猫はもういないよ。
さよなら、子猫たち。
そこは幸せになれる、ずっとのおうちだよ。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!
翠月るるな
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。
侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。
そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。
私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。
この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。
それでは次の結婚は望めない。
その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる