天秤の絆 ~ベル・オブ・ウォッキング魔法学園~

LEKI

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本編

本編ー3

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「治癒魔法士は居るか!教師でも職員でも誰でもいい!」
「おい道開けろ!!邪魔だ!!」
「重傷者が居るの!すぐに来て!!」
「毒を受けてる!解毒薬を!三人分早く!!」
「しっかりしなさい!ほら!学園に着いたわよ!!」

 怒声交じりの鋭い声。切羽詰まった声。指示を飛ばす声。誰かを励ます声。いくつもの声が重なって、医務室に響く。室内に居たほぼ全員の視線が、声が響いて来た方――今まさにナギト達が向かおうとしていた出入口へと一点集中。
 見ればそこには、白い制服を真っ赤に染め、苦しそうにしている生徒が三人、大人に抱えられたり背負われたり、肩を借りたり、めいめいの状態で居て。
 中には、なぜか動けないように縛り上げられた状態で奇声を上げている生徒まで居るのだから、これで驚かない者は居なかった。ほとんど。
 生徒達を連れて来た大人達は、その装備から見て外部の冒険者達だ。
 瞬時に医務室に居た治癒魔法士が駆け寄り、生徒達の状態を確認。薬局カウンター内でも、すぐさま何人もの薬師や薬師見習いとして手伝っていた生徒達が駆け回る。つい先程まで受付窓口でナギト達の対応をしていたルカも、また同じく。

「治癒魔法士は、ケガの治療を優先!薬師達はポーションを持ってきてくれ!!」
「毒の種類は?!」
シエゴ・ヴァイパー盲目ヘビの毒だ!こっちの縛ってあるやつはアルフィナフィオン・バット幻覚コウモリに幻見せられて混乱してる!そこの一番ぐったりしてるやつは毒と混乱のダブルパンチ!」
「ウチらがモンスターに見えてんだよ!この子ら、まともにポーション持ってなかったの!!」
「ポイズンポーションと一緒にパラライズポーションも持って来い!」

 あっと言う間に騒がしくなった医務室の出入り口付近に、なんだなんだと戸惑うユヅキ、ミナギ、アルバのすぐ隣。ぽつり、ナギトは低く呟いた。
 心底うんざりした様子で、呆れ果てた様子で。

「あー……典型的なクソパターンっぽ」

 その言葉に、戸惑っていたユヅキとミナギはハッとしながら見上げるナギトの顔。
 自分に刺さる二人分の視線を感じながら、ハァやれやれとナギトは吐き出すため息は重い。ナギトの記憶が正しければ、パーティランクCが対象の討伐クエストの中に、アルフィナフィオン・バット合計十体の討伐クエストがあった――と、思う。
 最初は採取クエストで良いからとすぐに目を離したせいで、あまり内容を覚えていない。

「ナギト、あのさ」
「わたしの出番かしらねぇ?」
「ん?あ、お前等ココが医務室なの忘れてないか?治癒魔法士も薬師居るのに、わざわざ精霊術で治す必要なし。待機」

 何か言いたそうな顔で名前を呼ぶユヅキと、そわそわしているアルバに、一瞬首を傾げつつもナギトはバッサリ一刀両断。ガックリと肩を落とす一人と一匹を横目に、またもナギトが零すため息。
 しかし実際問題、治癒魔法士や薬師が沢山集まっている医務室で、わざわざ精霊術を使って人を治療する必要はないか。
 ナギトの言っている事は頭ではわかっているのだが、心で納得いかない。そんな表情。落ち込んだ様子のユヅキの顔を見下ろして、だがしかしナギトは前言撤回をしない。待機命令、いまだ継続中。
 そんなユヅキを見下ろして、数秒。何を思ったのか、ナギトは思い切りユヅキの頭を掴んだ。文字通りの鷲掴みである。

「いったたたた!ナギト、力つっよい!」
「ちょっ!何やってんの!?」
「ミナギ覚えとけ。コイツはやろうと思えば精霊術で一瞬であんなケガも毒も混乱も治療出来るが、好きにやらせるととんでもない大ケガだろうと負傷者多数だろうと無茶して治療しようとするから、ストッパーかける必要があんだよ」

 思い切り頭を鷲掴みされ、悲鳴を上げるユヅキを見て、反射的にミナギは助けようとするが、ナギトはどこまでも冷静だった。
 話はわかった。話はわかったけれど、ちょっと本気で痛そうで心配になる。
 なんとかしてナギトの手から抜け出すべく、ナギトの腕を叩いたり足を蹴ったりしてユヅキは抵抗するのだが、そこは魔法剣士として剣を握るナギトが相手。必死の抵抗も、全く効果なし。むしろギリギリと頭を鷲掴みにしている手の指に入る力が強まり、ついにはその場にへたり込んでしまう。
 ユヅキが頭を掴まれた時点で方から離れていたアルバは、その場で羽ばたきながら、「あらあらぁ」なんて声を上げている。少し、呑気にも聞こえる声である。

「ゆ、づ?わかったな?た、い、き」
「う゛ー……っ!」
「返事はどうしたゆづぅ……っ!」

 へたり込んだユヅキを追い駆け、ナギトもその場にしゃがみ込む。頭を鷲掴みにした手はそのままで、手加減のての字もない。本当に「わかった」と返事をするまで、手を離すつもりはないらしい。ユヅキも長い付き合いからそれを理解しているだろうに、それでも「わかった」と言わないのは、精霊術を使って治療したい気持ちがあるからだろうか。
 これだけでも十分わかる。ユヅキは頑固だ。それも、相当の。
 頭を掴まれて悲鳴を上げているのに、それでも意思を曲げようとしないのだから、頑固だと評しても問題ないだろう。
 まあそれでも、結局最後はナギトの勝ち。痛かったと半泣きになりながら頭をさするユヅキを、冷たい視線で見下ろすだけ。
 あのナギトがここまで厳しくすると言う事は、それすなわち、過去にも無茶をした事があるわけで。

「ポイズンポーションです!こちらは傷口に直接、こちらは経口摂取でお願いします!こっちはパラライズポーション!飲ませる事が難しかったら、顔にかけてください!」
「え、ポイズンポーションが二種類?どっちか一つにしてよ!」
「っ!でっ、ですが!シエゴ・ヴァイパーの毒は体内に侵入してから時間が経つと、血流を悪くさせる効果があると聞きました!なので、経口摂取でもポーションの効果が遅くなる場合がありますっ!でっ、ですので……っ!!」
「あ、ナナラフェルさんだ」

 冒険者達の鋭い声に肩をびくつかせながらも、必死に真正面からポイズンポーションを二種類用意した理由を語っているルカの姿が、目に留まる。さっき薬局カウンターの受付で向かい合っている時には見られなかった姿に、軽くミナギは目を見張る。
 見習いと言えども薬師。治療に対しては、引かない、引けない部分は一歩も譲らないらしい。少し見直したなんて、失礼だろうか。
 治癒魔法士達の魔法と、薬師達の薬によって、治療が進む。それを見ながら、ミナギの中に浮かぶ疑問。

 なぜここに、外部の冒険者が居るのだろう。
 否、学生達を助けたのはわかるけれど。外部の人間は生徒の家族でも敷地内進入禁止の筈なのに。

「あー…………ナギトさん?」
「ん、質問か?」

 ついに根負けしたユヅキが「わかった」と声を上げたのに満足したナギトが、ゆっくり体を起こす。
 ただ名前を呼んだだけなのに、すぐに質問があるのだと察してくれるのは、少しありがたい。

「うん……。訊いてばっかでうるさいとかない?」
「思って欲しいんなら次から思っとくけど?」
「なんでそこでわざわざひねくれた言い方するわけ?」
「ナギトだから?」

 最後のユヅキの言葉に、それはそうか、と納得してしまった自分がミナギは悲しかった。すっかりこの二人のテンポに慣れてしまっているのを、実感して。まだ自分は振り回されている側だ、なんて。妙な言い訳を。
 とりあえずと気を取り直して、質問を。

「なんで外部の冒険者の人達がここにいるの?助けてくれたのはわかるけど……外部の人は校内に入るの禁止なんじゃ?」
「有事の際は別。特に今回みたいなケースは、まあよくあるパターンだな」
「よくあるパターンって?」
「生徒がぁ、助けられる事が多いのぉ?」

 ミナギの疑問に、やっと頭を鷲掴みされていた痛みから解放されたユヅキや、ユヅキの肩の上に戻ったアルバが続く。残るセラータは、ミナギの肩の上で昼寝開始。相変わらずのマイペース。
 手を伸ばし、ユヅキの頭をよしよしと撫でつつ、ナギトは説明開始。
 すっかり説明担当になった自分に、まあ仕方ないかと内心ため息を吐きつつ。これがユヅキやミナギ、精霊コンビ相手でなければ絶対に答えないけれど、とも零す。面倒な事は徹底的に回避。それがナギトだから。

「じゃあお前等に問題。なんでアイツ等は、外部の人間なのにココの生徒だとわかったと思う?」
「制服着てるから?」
「ん。じゃあ、どうして俺等は学内クエスト受けて外に出る時も制服なんだと思う?」
「え?……それは、この制服は服飾系の魔研技師が作った特別製で、普通の服より防御力あるし、魔法にも強い、から?そこらへんのヘタな装備使うより強い、みたいな話聞いた事ある」

 正解、偉い偉い。そう言いながらナギトは、ユヅキとミナギの頭を同時に撫でる。ユヅキは嬉しそうにしているが、ミナギは慣れないせいか、びくっと肩を震わせ反射的に逃げようとする。まあ、逃げられなかったけれど。
 しかし、制服を着てる事がどうして外部の人間と繋がるのだろう。
 ベル・オブ・ウォッキング魔法学園の制服は特別製で強いから。だからこそ、学内クエストで学園外に出る時も着用が義務付けられている。だからこそ制服を見れば、誰だってすぐにベル・オブ・ウォッキング魔法学園の生徒だとわかる。
 色々な大陸や周辺の島々から、出自に関係なく素質のある者を生徒として招待して来た、二百年の歴史がある学園だからこそ、その制服も広く知られている。

「今回アイツ等が受けたのは、アルフィナフィオン・バット十体の討伐だと思う。で、思ったより楽に倒せて調子乗ってやらかしたパターンだ。全滅仕掛けてるか、パーティの一部が逃げて、近くに居たあっちの冒険者達に助けられたんだろ。で、学園に連れてきてもらった流れ」
「アルフィナフィオン・バット……毒あったっけ?」
「ううん。毒はシエゴ・ヴァイパーの方だよ、さっき冒険者の人達も言ってたけど。シエゴ・ヴァイパーは、アルフィナフィオン・バットと共存して巣を共有してるから、多分巣に突っ込んだんじゃないかなぁ、生徒のパーティが」

 成る程、今回で言うやらかしは、調子に乗った生徒達が学内クエストで受けた分よりも多くのアルフィナフィオン・バットを倒そうと、巣に突っ込んだ結果、共存しているシエゴ・ヴァイパーの毒を受けて全滅しかけているところを発見されて今に至る、と。
 モンスター同士が共存している話に驚くミナギだが、人間だってモンスターを飼い慣らしていると切り替えされ、閉口。共存と言う意味では、ある意味人間も同じか。
 どんな利害が一致して共存しているかの質問は、とりあえず今は脇に置いておこう。

「二人はまだ知らんと思うけど、外部の人間がうちの生徒を助けて学園に連れ帰ると、学園から一定の報酬が出るんだよ。今回で言うなら、冒険者側が手持ちのポーション使った場合、それも補填される。更には、学園から証明書が出て、それをギルドに提出すれば、その冒険者パーティの評価にも繋がる」
「へぇ……!意外としっかりしてるんだ」
「あぁらぁ、使ったポーションも補填してくれるなんて、ありがたいわねぇ?」

 ソキウス、学内ランク、学内クエスト。色々な学園特有の制度はあるが、この学園外の冒険者達への対応システムも、独特なものだと思う。
 勿論、新人パーティをベテランパーティが助けるのは、学園外でもよくある当然の話なのだけれど。報告すれば報酬も出て、更には消費した分のポーションも補填して、更には発行される証明書をギルドに提出すれば評価に繋がるとなると、冒険者達にとっては良い事ばかりだ。
 美味しい話過ぎて、逆にちょっと出来過ぎている気もする。
 実際、この制度を施行した時は、わざと良い評価を得ようと生徒を脅して助けてもらったと証言させようとする悪辣な冒険者パーティも少なくなかったとか。

「脅したってどうしてわかるの?後から脅された生徒が証言して来たとか?」
「生徒からの証言出るよりも早く、正確に『現場を見てるヤツ』から証言してもらうんだよ」
「誰に、そんな都合よく現場見てる人なんて」
「ミナギくんミナギくん、ナギトは『人』だなんて一言も言ってないよ?」

 ナギトを挟んだ向こう側から、ぴょこっと顔を出して言うユヅキ。
 少し悪戯っ子ぽく笑い、何か含んだような言い回しとその表情に、ミナギが顔を顰めたのは数秒。ついさっきのナギトの言葉とユヅキの言葉を頭の中で並べて、考える。
 考えて、考えて、存在を主張するように羽根を広げるアルバや、ミナギの視界の隅で揺れるセラータの尻尾に、理解した。

 精霊だ。

 答えに辿り着いたのを表情から察したらしいナギトが、左目を眇めて笑う。マリーゴールドの色をした瞳が、楽しそうに光っているのが見えた。相変わらず、お世辞にも良い笑顔とは言い難い。目付きが悪いせいで、ユヅキの笑顔と比べると凶悪さすら滲む。ちょっとだけ、だけども。
 しかし、ナギト達の言う通り、現場を見ている精霊が居たとして、彼等に証言を取るのは理に適っているかもしれない。
 精霊は人間の評価なんて気にしないし、嘘を語る理由もなければ、必要もない。仮に近くに現場を見ていた精霊が居なくても、精霊同士で現場を見ている精霊が居ないか捜して、連れて来てくれる。そうすれば、客観的な証言が得られる訳で。
 勿論、証言を取るのは精霊術師であって。そう言うところも精霊術師の仕事らしい。

「精霊術師って、精霊に力を借りてすっごい奇跡起こすーって思われてるけど、精霊達に話を聞いて、人間との橋渡しするのが主な仕事なんだよ。こう、雨が降らなくて困ってる時は水の精霊に、農作物が育ちにくくて困ってる時は地の精霊に、みたいな。そう言う感じ?」
「だから、各大陸を統治してる大陸王の側近には必ず一人は精霊術師が居るんだよ」
「うん、その話は今初めて聞いたかな」

 各大陸にそれぞれ王が居て、大陸を統治している事は、当然ミナギでも知っている。知っていたけれど、側近に必ず一人は精霊術師が居ると言うのは、今初めて知った。
 さも当然とばかりに、ナギトは語っていたけれど。
 一応実家が魔力を持って生まれる者ばかりで、城にも出入りしている血縁者が居るセニオル家に生まれたミナギではあるが、家族関係が希薄な為、まともに会話した事がない。結果、王城は勿論だが、王家の話に触れる事もなく。
 なんと言うか、ナギトとユヅキと出逢ってから、色々な情報が入って来る。中にはそれまでの常識を根底から覆す話もあって、新鮮を越えて衝撃的だ。

「でも、凄いしっかりしてるんだね、そう言うところ」
「まー、この学園が出来て二百年……正確には二二〇年目前だし、学園長も来年には二九〇歳なるし。長くやってる間、色々あって確立した制度だろ」

 そっかぁ、と頷こうとして。あれ、ちょっと待て。
 今さらっとナギトは衝撃的な話をしなかっただろうか。

「待って?え、学園長がすっごい長生きって……あれ噂とかじゃないの?」
「あれ、知らなかった?ミナギくん」
「そうよぉ?ここの学園長はぁ、地の精霊にすぅっごい愛されちゃってぇ、長生きになっちゃってるのよぉ?」
「愛されてるってか、執着だろ、アレ」

 ベル・オブ・ウォッキング魔法学園の中で囁かれている噂話。その一つで最も語られているものは、このベル・オブ・ウォッキング魔法学園の学園長の話だろう。
 入学してまだ間もないミナギでも知っているくらい、よく聞く話。

 このベル・オブ・ウォッキング魔法学園の学園長、セシリア・ファストレア。
 クレティアの中でも五本の指に入る、攻撃魔法士の一人。
 彼女は今は三十代後半くらいの見た目で若く見えるが、精霊に気に入られて強い加護を与えられて長命となり、学園長に就任、三〇〇歳近い、と言う話。

 だが、噂はあくまでも噂。それは流石に冗談だろうと思っていたのに、まさか事実なのか。
 ナギトが嘘を言っている可能性も一瞬考えたが、嘘を教える意味がないし、ユヅキの表情から見ても嘘を言っているようには見えない。

 詳しく訊けば、精霊は地の精霊で、名前はベル・オブ・ウォッキング。学園の名前はそのまま、地の精霊の名前らしい。しかも、学園の敷地全部がその精霊の統括地域で、学園の敷地内であれば、学園長であるセシリアはその見た目の若さと生命を維持出来るそうだ。逆を言えば、敷地外から一歩でも出れば、即セシリア学園長は死ぬ、と言う訳で。
 なぜそうなったのか、原因としては、ベル・オブ・ウォッキングがセシリアに一目惚れしたのがきっかけだとか。
 地の精霊術で体半分を土で固めて動けないようにした上で、自分の側に居ろと強引に迫るベル・オブ・ウォッキングに対して、セシリアは既に旦那も子供いた為、子供が独り立ちして旦那が死ぬまでは傍に居られないと言い返したらしい。
 人間は嘘を吐くからと、ベル・オブ・ウォッキングとしてはすぐにでも自分の側に置きたかったが、当のセシリア自身が交換条件を守らないなら許さないと迫り、約束を守らないなら今ここで死ぬとまで宣言したそうで、精霊であるベル・オブ・ウォッキングが折れた流れ。
 約束通り子供が独り立ちして旦那が死んだ頃には、既に御年七〇を越えていたセシリアだが、ベル・オブ・ウォッキングが自分の力を加護として注いで、初めて逢った時の三〇代後半の見た目を維持しているとの事。

 セシリアの強さに感心するべきか、ベル・オブ・ウォッキングの異常なまでの強引さや執着心に寒気を覚えるべきか、悩む。

「……自分が惚れて傍に置きたいからって、そこまでする……?精霊の加護?ってそんなんもあるの?」
「人間の常識を精霊に当てはめるなー?精霊の加護は、精霊本人?の力の強さに関係するけど」
「まあ、ベル・オブ・ウォッキングは……その、色々凄い?から?」

 かなり言葉を選んで語るユヅキだが、精霊術師であるユヅキが語るからこそ、重さのある言葉で。返す言葉に迷い、見上げるナギトの顔。
 当のナギトとしては、なぜ自分を見るのかと疑問だが、事実は事実。
 言葉で返す代わりに軽く肩を竦めて返しておいた。

「そもそも、『精霊の加護』って」
「本人の意思に関係なく、精霊が勝手にかけるもんだな。押し売りみたいに」
「押し売り加護……?それってどう言う」
「詳しい話はまた今度。ゆづ、そろそろ出番だろ、行ってこい」
「はーい!」

 ミナギの言葉を遮り、ナギトはユヅキの背を叩く。
 今回生徒を助けてくれたパーティの話の裏付けに、精霊達の話を聞きに行ったのだろう。精霊術師は居るかと、治癒魔法士が声を上げていたから。どうやらあれこれと話している間に、粗方の治療が終わったらしい。
 助けられた生徒達がベッドに運ばれるのを見送りながら、ミナギは首に巻き付いているセラータの頭を撫でる。傍に居る五人の小さな精霊達も、順々に。
 パーティの仲間がどれだけの強さでどんな魔法を使うかわからなくて、学内ランクだけしか知らない状態で最初から討伐クエストを選んでいたら、もしかしたら自分達がああなっていたのかもと思うと、少し怖い。
 まあ、両親に厳しく鍛え上げられているナギトは、そんな失敗をする事はないだろうけれど。

「……精霊って色々なんだね」
「ベル・オブ・ウォッキングが異常に執着してるだけだから、他の精霊と一緒にしてやるなよ、嫌がるから。ま、精霊ってひとくくりに言っても個々の性格とか好みとかあるのは当然だな。そこは人間と同じ。実際、お前の側に居る五人のチビ精霊達だって、ゆづと契約してないだろ」
「え?…………ああー……」

 言われてみれば、確かに。
 ナギト達のパーティに勧誘されたあの日から、ミナギの傍に居るようになった五人の小さな精霊達。未契約のままでは言葉が通じない為、精霊術師であるユヅキと契約してみてはどうかと話が持ち上がった。
 しかし、五人の小さな精霊達は、これを拒否。なぜと戸惑うミナギに対して、「ミナギ以外と契約したくないから」と五人揃って宣言した過去がある。
 この言葉にユヅキはニコニコと笑い、ナギトにはニヤニヤと笑われ、「愛されてるじゃん」なんてからかわれたものだ。

「まあでも、『精霊術師以外とも精霊が契約出来るようにしてくれ』なんて言われるとは思わんかったけどな……。今でも研究ばちくそわやなんだぞ……」

 ぽつり、小さくナギトが呟いた声は、隣に立っているミナギの耳に届く事もなく消えて行った。
 若干うんざりした様子ではあるが、それでも精霊術師以外と精霊が契約出来るようにする研究をしない、とは言わないのだから、ある意味ナギトらしい。
 次に学内クエストを受ける時は、少しランクが高いものを選ぶ必要が出て来るかもしれない。出来るだけ多くの単位を取って、必須授業のみ参加すれば大丈夫なようにしておこう。時間が足りなさ過ぎる。
 あーぁとため息を吐いて天井に視線を投げるナギトの横では、セラータ達の頭を撫でながら、精霊達に話を聞いているユヅキを見守るミナギが居る。話を聞き、それを教師陣に伝えて、そして話に嘘がないとわかったからか、生徒達を助けてくれた冒険者パーティへの報酬の話に移っている。

 今回助けられた生徒達のパーティのリーダーは、毒と混乱のダブルパンチを受けていた生徒らしい。ナギトの予想通り、アルフィナフィオン・バット十体の討伐クエストを受けていたが、そこまで苦戦せずに倒せた事で調子に乗り、アルフィナフィオン・バットの巣に乗り込み、共存しているシエゴ・ヴァイパー数体の襲撃を受けて全滅寸前。同じダンジョンに居た事で危険を察知した冒険者パーティが助けてくれたらしい。
 調子に乗るのも問題だが、ポーションやパラライズポーションは持っていたが、ポイズンポーションも持っていないと言う、準備不足も今回の問題だった。
 治癒魔法士学科の生徒がパーティに居る為、持って行かなくても良いだろうと判断したそうで。
 学内クエストとしては成功しているが、その後に大きな失敗があった為、助けられた生徒達の報酬は少し減るらしい。

 聞こえて来る話に、改めてパーティの連携やお互いの強さを知るのは大切だと、思い知る。
 治癒魔法士学科の生徒が居るからポーションは不要、なんて。討伐クエストはまだ未経験のミナギでも、流石にそれは駄目だろうと思うくらいには、甘過ぎる判断だ。

「討伐クエスト受けるまでに、闇魔法の勉強しないとな……。結界も、もっとしっかり作れるようにしたいし」
「最初からBランクの討伐クエスト受けるつもりはないから、そこまで考えなくてもイイ。練習とか個人訓練が必要なら、いつでも声かけろ」
「えぇ……?ナギトさんだって授業あるんじゃ」
「必須授業以外はサボるから」

 断言。気持ちが良いくらいきっぱりと、ナギトは断言していた。否、それはそれでどうなんだろう。
 思わずミナギが真顔でナギトを見上げてしまうくらいには、その発言はおかしかった。

「オレに『俺等はまだ子どもで学生なんだからベンキョーが一番』とか言ってたの誰だっけ?」
「忘れた」

 真顔で堂々と必須授業以外はサボると宣言するナギトから言われた言葉を、ミナギは忘れていない。
 おかしいだろうとミナギはツッコミを入れるが、あからさまに目をそらして知らないと答えるナギト。自分の発言を忘れていないのは、その反応を見れば一目瞭然。なんなんだこの人、本当に。
 まあそもそも四回目の一年生をやっているのだから、学生らしさはない、の、かもしれない。来年には二十歳になるらしいし。
 そんなミナギの心中を察してか、またセラータの尻尾がミナギの視界の隅で踊る。五人の小さな精霊達も、心配そうな顔でミナギを見上げている。うん、そんな顔はする必要ないんだけどね。
 とりあえず、今日の薬草採取クエストの報告をクエストカウンターにした後の事を考えよう。闇魔法の勉強をするか、結界の実技練習をするか、モンスターの習性や特性の勉強をするか。ミナギの前にある選択肢は多い。
 幼い頃から鍛えられているナギトやユヅキとは違って、知識も実戦経験もほぼほぼない状態だから、ミナギは。

「まあ、実戦でやらなきゃわからんとこもあるしからなぁ……。んじゃ、来週には討伐クエ行ってみるか」
「待って、来週?それは流石に早くない?そう言うのって、もっと時間かけて」
「それ言ってたらいつ討伐クエスト行くかわからんだろ。危険度の低い低ランクの討伐クエにするから、まずミナギは実戦に慣れる練習な。状況見て、冷静に結界張れるか。それが実戦での課題で」

 しれっと爆弾発言をするのはナギトの趣味なのだろうか。
 まさか来週突然討伐クエストを受けるなんて言い出すとは思わなかった。急展開過ぎるし、何よりも実際にやらかして冒険者パーティに救出された生徒パーティ見た今なら、尚更不安と恐怖が浮かぶ。
 学内ランク認定試験でSランク評価を得て、なおかつ幼い頃から鍛えられているナギトとユヅキに対して、不安はない。あるとしたら、自分自身に。
 実力不足に経験不足。そんな自分が二人の足を引っ張ってしまう未来は、簡単に想像出来る。

「…………なんかハードル高い気がする」
「無理はすんな。ヤだったら参加しなくていいんだから。言ったろ、参加は任意って」

 ナギトの言葉に、閉口。押し黙って俯くミナギを横目で盗み見て、次にナギトが見るのは、ミナギの首に巻き付いているセラータだ。ナギトから見てミナギの頭を挟んだ向こう側に居る為、少しだけ上半身を前に傾ける必要があったけれど、視線に気付いたセラータがナギトを見つめ返していた。
 真っ直ぐに自分を見詰め返す瞳に、軽く肩を竦めて首を傾げる。すると、セラータはダークブルーの瞳をすぅっと細める。一度ゆっくり瞬いて、それから口を開いて閉じる。
 何も聞こえなかった。が、恐らくあれは人間の耳には聞こえない音でにゃぁと鳴いたのだろう。サイレントニャーだ。
 それはセラータの答え。討伐クエストを受ける事に対しての、肯定の。

 同時に――ミナギは討伐クエストに参加するよ、と言う

「あ、ねえナギトさん、もう一つ」
「んー?」
「さっきの、生徒を助けてくれた冒険者パーティへの報酬とかの話。あれだと学園側にメリットなくない?生徒がやらかす度に報酬払って損するじゃん」

 外部からポーションを買わずに節約する為に、薬草採取の学内クエストを出したり、薬師見習いにポーションを作る練習とさせたりと、色々しているのに。こうして毎回助けると、折角の節約が水の泡になってしまう気がする。
 メリットよりもデメリットが多いのが、この制度の穴なのではないか。
 だが、しかし。自分を見下ろすナギトが楽しそうにニヤリと笑っているのを見て、どうやら違うらしいとミナギが察するには十分。

「いーや?実はこの制度、一番学園側にメリットがあるんだよ。使用した分のポーションとか、報酬出すくらい、どうって事ないくらいにな」
「詳しく教えてくれる?」

 その言葉に、ナギトはまた左目を眇めて笑う。意地悪な笑顔とは違い、どこか頼もしさの中に優しさが滲む。よくユヅキに対して見せる笑顔に、近い。
 じぃっと自分を見上げるミナギに、再度短く微笑んで。ぽんとその背中をたたいてからナギトは語る。

「うちは五年制の学園で、生徒数もそれなりに多い。そうなると、生徒のパーティも数が多くなってくるだろ?最少人数は二人から、だからな」
「ああ……ソキウス組んだ二人でもパーティとしてみなすってあるもんね。確かに、それならパーティも多いか」
「そっそ。で、経験積んだパーティの中には、危険度の高いクエ受けるトコも出て来る。もしそれで今回のアイツ等みたいにやらかしたら?最悪死ぬ。もし生徒が死ねば、学園の評判にも関わるだろ?」

 確かにそうだ。学内クエストを受けて、そのクエスト中にモンスターに襲われて生徒が一人でも死んだとあっては、学園の評判に関わる。親からの苦情は勿論、世間からの風当たりは強いものになる。
 しかし、ミナギが知る限りでは、少なくともベル・オブ・ウォッキング魔法学園で死者が出た話は聞いた事がない。あくまでも、知る限りでは、だけど。
 今回助けられた生徒達は、偶然冒険者パーティが居たから助かっただけで、もし居なかったら――と、そこまで考えて。ふと、ミナギは首を傾げる。

 偶然。偶然、彼等のパーティが全滅しそうな場所に、偶然冒険者パーティが居た。
 そんな偶然が、都合良く起きるものだろうか。

 首を傾げるミナギを横目で見下ろしつつ、ナギトは笑う。さっきよりも楽しそうなその笑顔は、見方によっては意地悪な笑顔にも見えてしまうけれど。
 きっとユヅキが見れば、楽しそうな笑顔と評する、そんな笑顔。

「生徒に死者を出さないようにするには、どうすればイイか。簡単だ、『見守り役』を用意すればイイ。実際、俺等の薬草採取にも、今日担当授業がなかった教師が一人こっそり付いて来てたしな」
「えっ!居たのっ?」
「ん。でも、全部のパーティにそれは出来ない。どれだけ教師やある程度実力のあるスタッフ集めたとしても、パーティの見守り役に学園出れば、授業も出来なくなるし、そもそも学園として機能しなくなる」
「…………でも、その心配も、『冒険者パーティが居る場所なら、危険な時は助けてもらえる』……て、事?」

 ぐしゃぐしゃと、ミナギの頭をかき混ぜるようにナギトが撫でる。どうやら正解のようだ。
 まあ当のミナギは、頭を撫でられる事自体慣れていない為、すぐに止めろと叫んでナギトの手から逃れていた。両手で必死にぐしゃぐしゃになった髪を直すミナギの顔が紅いのはきっと、恥ずかしいから。
 そんな反応が楽しいのだろう。ニヤリ、ナギトは笑う。人の悪い笑顔だ。

「ある程度の範囲なら教師達が、それ以外なら冒険者パーティが、生徒達を助ける。それなら生徒達は多少無茶やっても助けてもらえるし、生還出来る。制服着てるから、相当の世間知らずじゃない限り、ベル・オブ・ウォッキング魔法学園の生徒だってわかるからな」
「一番高く掛かりそうな人件費を、そこで節約出来てるって事か……」

 話を聞けば聞くほど、驚くくらいよく出来た制度だ。しかも、生徒の時にその制度を知っていれば、ベル・オブ・ウォッキング魔法学園を卒業した後も、自分達がそうしてもらった時のように、後輩を助ける事が出来る。
 仮にその制度を知らない冒険者が居ても、どこかで卒業生やその制度を知っている冒険者が話せば、話は広まっていく。
 わざわざベル・オブ・ウォッキング魔法学園が制度の説明をする必要もなく、学園の生徒が窮地に陥っている時に助ければ、一定の報酬に使用した分のポーションも補填された上で、ギルドに報告すればパーティの評価も上がるとなれば、口コミで勝手に制度の話は広がって行く。
 生徒達を見守る為の人件費も削れる上に、制度の宣伝をする必要もない。学園側にメリットが大きい話だ。

「ホント、よく考えられてる……」
「まー、二〇〇年も学園長やってりゃ、ねぇ?」

 入学式の時に見た、学園長の姿を思い出す。本当に見た目は三十代後半と言った感じで、シャトルローズイエローの髪は地面に届くのではと思う程に長くたっぷりとしたウェーブヘア。太陽の光を浴びてキラキラと髪自体が光っているようにも見えた。
 瞳は確か、ナギトとよく似たマリーゴールド。否、よく似たと言うよりもほぼ同じではなかっただろうか。
 もう一度、見上げるナギトの左目。入学式で見た学園長の瞳の色と並べて見ると――ほぼほぼ同じ、の、ように見える。
 とは言っても、入学式以降学園長には逢う事はなくて、ただそう思うだけかもしれない。記憶力に自信がないわけではないが、一度見ただけの人の髪の色や瞳の色まで事細かに覚えていられる程の記憶力はないと思うから。

「じゃあ、来週の討伐クエストにも、教師の誰かが見守り役になるのかな」
「かもなー。Sランクが二人いるパーティでもまだ一年だ。見守り役は来るだろーな」

 たいぎいから勘弁して欲しいけど。そう続いたナギトの声を、ミナギは聞かなかった事に流しておいた。
 精霊達への事情聴取を終え、その分の報酬に関する書類を受け取るユヅキの姿を見ながら、ミナギは短く息を吐く。初めての討伐クエストは、もう目前に迫っていた。
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