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一
繭 四話
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前日と違い、幸雄は寝坊せずに起きていた。
それぞれ単独で小学校と中学校へ行く予定だったが、陽一は幸雄を思ってくれたのか、二人で中学校へ行く事を提案してくれた。
それならばと幸雄も陽一の提案に甘え、二人で先に中学校へ、その後に小学校へと向かう事にした。
ザーザザーザザザー
空家を出ると、不意にノイズ音が聞こえてきた。
陽一は何の音かと一瞬思いはしたが、幸雄が先へと歩いて行った為、そのまま追いかけ中学校へと向かった。
十五分程昔話をしながら歩いた所で目的地へと到着した。
先に幸雄の【繭】を探す為、幸雄が一階の一年生、陽一が三階の三年生を探す事にし、二人は早速単独行動へと移った。
授業は基本国語、それ以外の教科なら女子生徒の名前を全て見る事にした。
【繭】の漢字に恐らく名字はなく、女性に使われる漢字だろうと踏んでいた。
一年生は五組まで有り、幸雄は一組から順に探していった。
一組は英語の授業の最中だった。
幸雄はならばと生徒の名前を探していったが、探しているものが見つかる事はなかった。
次に二組へ入ると、目当ての国語の授業をしていた。
教師が課題を配り終わった所で、幸雄は一人の生徒の用紙を隈なく覗いたが、【繭】の字を探す事は出来ずにいた。
女子生徒の方も名前はなく、次の教室へと向かおうとした所、校舎中に響く大声が聞こえた。
「幸雄!急げ!三年生だ!」
それは陽一の声だった。
その声は当然死人以外には聞こえず、教室は静寂なままであった。
幸雄はすぐに三階へと向かった。
陽一が教室の外で手招きをしてくれたお陰で、探す手間が省けすぐにその教室へと入っていった。
そこには黒板にシルクロードとだけ書かれ、教科書を読んでいる教師の姿が見えた。
「シルクロードなら、【繭】が出るはずだ!」
陽一がそう言った所で幸雄は記憶を遡った。
シルクの和名は絹で、その絹は蚕の【繭】から取って出来る事を思い出した。
幸雄は考えが陽一に追いついた所で、生前にはする程がなかった力で抱擁し、礼を言った。
早速二人は生徒達の帳面をそれぞれ順に覗いていった。
すると、今度は幸雄が反応した。
「おぉ!!」
その帳簿にはハッキリと【繭】の字が書かれていた。
だが、勿論それだけでは認められる事はなかった。
見届ける事が出来れば、幸雄がそう思っていた所、陽一が言った。
「周りを見たが、その子は教科書の写しが早い方だ。この中に一番写しが遅い子が居れば、まだ間に合うかもしれない」
陽一はそう言い辺りを見渡した。
同じ様に幸雄も辺りを見渡していると、何処か見覚えのある顔が見えていた。
それは、幸雄が若僧と罵った少年だった。
すぐに幸雄は少年の方へと向かった。
そして、帳簿を確認してみると、そこには期待通りの真っ白なページがそこにあった。
幸雄は前回よりも、そして誰よりも少年に対して鼓舞していた。
鼓舞がやっと実ったのか、歓喜の瞬間は訪れた。
少年は画数の多い【繭】の字を、教科書を何度も見ながら書き終えていた。
幸雄の頭にはその一と、それを囲む◯が書かれた。
すぐに幸雄は少年に対し、
「少年よ、大志を抱け」と言い人差し指を上げた。
なんとも調子の良い言葉だった。
そして陽一は包み込む様な笑顔で幸雄を迎えた。
二人は抱擁を交わした後、まだ終わりではない事を再確認し、授業が終わるまでは待つ事にした。
千載一遇の機会であったのは間違いないだろう。
だが、結局そこで聞き取る事は出来ずに授業は終わった。
幸雄は三日目にしてやっと、一つ終わらせた安堵と、ひょっとしたら今日中に達成の可能性もあると、自らの士気を高めていた。
少なくとも、後四日有れば十分だと、この時は思っていた。
地獄への音が止まらず鳴っているとも知らず。
それぞれ単独で小学校と中学校へ行く予定だったが、陽一は幸雄を思ってくれたのか、二人で中学校へ行く事を提案してくれた。
それならばと幸雄も陽一の提案に甘え、二人で先に中学校へ、その後に小学校へと向かう事にした。
ザーザザーザザザー
空家を出ると、不意にノイズ音が聞こえてきた。
陽一は何の音かと一瞬思いはしたが、幸雄が先へと歩いて行った為、そのまま追いかけ中学校へと向かった。
十五分程昔話をしながら歩いた所で目的地へと到着した。
先に幸雄の【繭】を探す為、幸雄が一階の一年生、陽一が三階の三年生を探す事にし、二人は早速単独行動へと移った。
授業は基本国語、それ以外の教科なら女子生徒の名前を全て見る事にした。
【繭】の漢字に恐らく名字はなく、女性に使われる漢字だろうと踏んでいた。
一年生は五組まで有り、幸雄は一組から順に探していった。
一組は英語の授業の最中だった。
幸雄はならばと生徒の名前を探していったが、探しているものが見つかる事はなかった。
次に二組へ入ると、目当ての国語の授業をしていた。
教師が課題を配り終わった所で、幸雄は一人の生徒の用紙を隈なく覗いたが、【繭】の字を探す事は出来ずにいた。
女子生徒の方も名前はなく、次の教室へと向かおうとした所、校舎中に響く大声が聞こえた。
「幸雄!急げ!三年生だ!」
それは陽一の声だった。
その声は当然死人以外には聞こえず、教室は静寂なままであった。
幸雄はすぐに三階へと向かった。
陽一が教室の外で手招きをしてくれたお陰で、探す手間が省けすぐにその教室へと入っていった。
そこには黒板にシルクロードとだけ書かれ、教科書を読んでいる教師の姿が見えた。
「シルクロードなら、【繭】が出るはずだ!」
陽一がそう言った所で幸雄は記憶を遡った。
シルクの和名は絹で、その絹は蚕の【繭】から取って出来る事を思い出した。
幸雄は考えが陽一に追いついた所で、生前にはする程がなかった力で抱擁し、礼を言った。
早速二人は生徒達の帳面をそれぞれ順に覗いていった。
すると、今度は幸雄が反応した。
「おぉ!!」
その帳簿にはハッキリと【繭】の字が書かれていた。
だが、勿論それだけでは認められる事はなかった。
見届ける事が出来れば、幸雄がそう思っていた所、陽一が言った。
「周りを見たが、その子は教科書の写しが早い方だ。この中に一番写しが遅い子が居れば、まだ間に合うかもしれない」
陽一はそう言い辺りを見渡した。
同じ様に幸雄も辺りを見渡していると、何処か見覚えのある顔が見えていた。
それは、幸雄が若僧と罵った少年だった。
すぐに幸雄は少年の方へと向かった。
そして、帳簿を確認してみると、そこには期待通りの真っ白なページがそこにあった。
幸雄は前回よりも、そして誰よりも少年に対して鼓舞していた。
鼓舞がやっと実ったのか、歓喜の瞬間は訪れた。
少年は画数の多い【繭】の字を、教科書を何度も見ながら書き終えていた。
幸雄の頭にはその一と、それを囲む◯が書かれた。
すぐに幸雄は少年に対し、
「少年よ、大志を抱け」と言い人差し指を上げた。
なんとも調子の良い言葉だった。
そして陽一は包み込む様な笑顔で幸雄を迎えた。
二人は抱擁を交わした後、まだ終わりではない事を再確認し、授業が終わるまでは待つ事にした。
千載一遇の機会であったのは間違いないだろう。
だが、結局そこで聞き取る事は出来ずに授業は終わった。
幸雄は三日目にしてやっと、一つ終わらせた安堵と、ひょっとしたら今日中に達成の可能性もあると、自らの士気を高めていた。
少なくとも、後四日有れば十分だと、この時は思っていた。
地獄への音が止まらず鳴っているとも知らず。
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