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アヴェントゥリーニス竜王国

目を覚ますとそこには

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心地よい眠りから目覚めると、黒髪の少年が目の前にいた。

『綺麗な人だな』

そうぼんやり見て見ていた。暫くして頭が働き出すとこの状況に着いていけず、もう一度寝たフリをした。

ダメだ。視線が痛い。寝たフリがバレているのか頭を撫でて話しかけてくる。

「まだ眠たいのか?まるで眠り姫だな」

何この人。何この人。何この人。そんないい声で喋らないで。てか耳元で話しかけないでゾクゾクしてしまうでしょ。
仕方なく目を開けるとそこには、美しく微笑む天使がいた。人の頬をつまみながら楽しそうに微笑んでいる。くっ意地悪な天使だ!

「もう寝なくていいのか?」

「だ…だい…ゴホッゴホッ」

渡された水を飲む。冷たくて美味しい。話を聞くと私はあれから3日ほど眠っていたそうだ。そりゃまだ寝ようとしたら眠り姫って言われるわ…姫じゃないけど。

「あの…ここは」

「あぁごめんね。ここはアヴェントゥリーニス竜王国。ここは城の医務室の1つだね。君の兄妹もここの隣の部屋にいるよ。」

「そうですか…。それと…えっと…」

「ん?なぁに?」

何この人。何この人。めっちゃ惚けるような笑顔でこっち見ながら手を繋いでくるよ。片手はずっと私の頬撫でてるんですが…。死ぬ…胸きゅんの最上級で死ぬ。間違いなく心筋梗塞が起こるわ。

「ぅ…えっと兄に会いたいのですが…」

「あぁ今彼は眠っていて、まだ数日は目覚めないらしい。どうやら魂に傷を負い、10年分の成長が一気に来たせいで身体が回復を優先させてるそうだよ。」

「そうなんですか。それと…あの…なぜ私たちは手を繋いでいるのでしょうか。なぜ私にその…様な笑顔を向けて下さるのでしょうか」

うぅ…顔を直視出来ない…今顔をあげれば赤くなっているのがバレる。ほぼ初対面だよね?あの戦場が初対面だよね?

「あぁ、つい触れてしまいたくなってしまうんだ。顔は…君を見ているだけで幸せ…だからかな」

そんな照れた顔しないでください。自分の顔の破壊力を理解してください。うううぅぅぅ…。同年代の男性と話なんてした事ないから、どう話せばいいか分からない。ただ彼は絶対普通じゃない。普通の人はこんな笑顔見せない!

「そう言えばまだ何も食べてないでしょ。ほら口開けて」

そう言って彼は私に嬉しそうな笑顔で、口にスープを近づける。そうです。あーんです。ふおぁぁぁ…。燃える顔が。

「じじじ自分で食べられますから!」

「ダメ。俺が食べさせてあげたいの。ほら口開けて。開けないと無理やり開けさせるよ?」

ニヤリと金色の瞳を細めて笑う。竜人なのに猫のようだと思ってしまった。そして凄い色気。

「ほら…」

だが私は赤ん坊のように食べさせてもらうなど、淑女からかけ離れたことはしないのだ。そうだ私は淑女だ!忘れてた!彼と反対側を向きスープを拒む。

「はぁ…仕方ないな」

そう言うと彼は何故か私が飲むはずのスープを自分が飲み始めた。何故!?と思った瞬間、顎を無理やり彼の方へ向けさせられ、空いた口に彼の唇が重なりスープを流し込まれる。

「んぅ!?…ん…ふ…ぅん」

後頭部を固定され、仕方なくスープを飲見込むのを確認すると、彼の舌が口内を蹂躙する。
ピチャピャチャと音がして顔が熱い。歯の根元や舌の付け根をなぞられゾクゾクしてしまう。
苦しくなって彼にしがみつくと、彼は嬉しそうに顔を綻ばせ私の頭を撫でる。その間も舌を絡まれ、吸われ、唾液を交換しながら彼とキスをする。

「は…ん……んぅぅ…んぅ」

クラクラしてきた。訴えようと彼の胸を叩いても竜人の彼はビクともしない。

「はっ…はぁはぁ…」

彼の唇が離れていき、ようやく息が出来る。お互いの舌と舌を銀色の糸が繋ぎ、プツリと切れる。それを名残惜しそうに見つめた瞳が、私の瞳とぶつかる。その瞬間また唇を塞がれた。
今度は触れるだけのキス。正直腰が抜けてしまったから助かった…。

「ごめんね。君が可愛い過ぎてつい抑えられなくなってしまった」

そう言って、私を抱きしめ頭を撫でる。なんだかいい匂いがして落ち着く…。ずっとこうしていて欲しい。

はっ…!何絆されてるんだ私!?ほぼ初対面の人にいきなりファーストキス奪われたんだぞ!しかも…あ…あんな激し…ぁぁぁ

「ん?どうかした?」

だから耳元で話しかけないでください!そんな甘々の声で囁かれると抜けた腰が元に戻らないでしょ!言うんだロゼリア!ベタベタすんじゃねぇって訴えるんだ!

「え…っと…貴方のお名前は…」

はい私の意気地無し!だって仕方ないじゃん!こっちが話す度に蕩けた笑顔を向けて来るんだよ!やめてくださいなんて…そんな事…言えるわけないでしょう!!

「あぁ…そう言えばそうだね。それじゃあ、お互い自己紹介しよっか。俺はジルバート、ジルバート=オルキス。今回の作戦に参加した騎士団の第1部隊に所属しているよ。ジルって呼んでくれたら嬉しいな。」

「えっと…ジルバート様で…。私の名前はロゼリアです。戦場で私の暴走を止めて頂いてありがとうございました。下にいる人達に被害が無かったのは貴方のお陰です。本当にありがとうございました。」

「ふふ。どういたしまして、でも俺だけじゃなくて他の人達も【防御】や避難誘導で君を止める手伝いをしてくれたんだ。だから皆のお陰が正しいかな。これから事情聴取やらがあると思うから、まずは身体を万全の状態にしないとね。じゃあご飯食べようか」

そして私は彼に…あーんして貰いながら食事をとった。恥ずか死ぬ。淑女の仮面を被る隙さえ与えて貰えなかった…。

しかもこの人…ジルバート様は常に私の横に居てお世話をしてくれる。流石にお風呂は自分で入ったけど、それ以外全てやろうとしてきて困る。




ー数日後ー




沢山食べて、動いて、寝て、身体は健康な15歳と変わらない状態になった。クリストファーはまだ眠っているようで、私が今回の事の事情聴取を受けることになった。

ジルバート様の膝の上で

何故だ。他の大人達も止めろよ。そんな真面目な顔してもこの状況じゃあ台無しだぞ!あとジルバート様!頭にキスしないでください、照れてしまうでしょう!

「えっと…。今から事情聴取をする。俺は《騎士団団長》ギディオン=ヘーリアンテスだ。今回の作戦はここに居る4人が指揮をとっていた。」

「私は《騎士団副団長》シシル=ウィオラよ。」

「私はネフリーティス森王国の《魔法師団団長》クルル=ティナ=カリディアと申します。姫様の無事を心より…お慶び申し上げます。」

「私は同じく《魔法師団副団長》ラゲッタ=ティオと申します。ロゼリア姫の無事を祖国の者も皆喜んでおります。」

「ありがとうございます。では、私の名前はロゼリアと申します。今回の作戦で私達を救って下さりありがとうございました。兄の名前はクリストファーです。また私の暴走の際、エルフの方々の【絶対防御】や竜騎士の方々が避難誘導して下さったお陰で尋常な被害を出さずに済みました。本当にありがとうございました。」

「頭を上げてください姫様…。姫様が無事で本当に良かった。貴方様とクリストファー王子が生きて私たちの前に…いらっしゃる自体が奇跡なのです…。15年も助け出す事が出来ず申し訳ございません。」

クルル様とラゲッタ様は涙を流し謝罪した。

「気にしないでください。私もクリスも母も貴方たちを責めようなど思いませんよ。それに今回私達は貴方のお陰であの地獄から抜け出すことが出来たのです。感謝すれども恨むなんて事はありません。」


私がそう笑いかけると彼らは泣いて笑ってくれた。


「それじゃあ事情聴取を始めるか。まずはそうだな、ロゼリア嬢、君達の父親に着いてラシェル姫から何か聞いていたか?」

「いえ何も。というか…先程から何故私の事を《姫》と…?。それにラシェル姫とは?確かに母の名前は『ラシェル』ですけど…。
父の事は私とクリスの髪や瞳の色、身体的特徴から【銀竜】ではないかと思っています。ただ私もクリスも書物以外の情報はなく、父の名前までは知りません。」

「あぁ、聞いていなかったのか。君達の母君、ラシェル姫はエルフの国【ネフリーティス森王国】の第2王女ラシェル=ティナ=ネフリーティス姫だ。
彼女はまぁ熱狂的なファンが多くってな、その子供である君を《姫》と呼んでしまうんだろ。」


ギディオンは楽しそうに笑ったかと思えば真剣な顔でロゼリアを見つめた。


「君達は…顔も知らない父親に会いたいか?権力や制約が多い【始祖の竜人】に君達の幸せはあるのか?」

「そうですね…でも私は父に会って話をしてみたいと思っていますの。母の最後の言葉に私とクリスが父を支えて欲しいと、そして愛してもらいなさい、とありました。
それに、身体に流れる血がある限り私達は【始祖の竜人】ですわ。それなら例え縛られる事があっても、私は家族と共に過ごす事が幸せだと思うのです。」

「そうか。ではクリストファー殿が目覚め回復次第で会えるよう調整しておこう。」

「ありがとうございます。」


それからは私はこれまでの15年を彼らに全て話した。今回の作戦の詳細は、用心深いクリストファーが情報漏洩を危惧して態と少ない指示しか与えなかった事も話した。
私の話を聞いて彼らは帝国に対して泣いて怒ってくれた。母の穏やかな最後を話すとクルル様とラゲッタ様は泣きながら安心したと言っていた。
辛い事もあったがジルバート様に後ろから抱きしめられると安心して話す事ができた。とても心地よい不思議な人だ。





そしてこの翌日クリストファーが目覚めた。




ーーーーーーーーーーーーー

エルフの2人はラシェル姫の子供であるロゼリアとクリストファーを《姫》《王子》と親しみを込めて呼んでます。
竜人らは敬う【始祖の竜人】ですが普通の公爵令嬢、子息として2人を呼んでいます。
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