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第一章 無知な少女の成長記

私と師匠とそれから魔法

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さてさてこんにちは。名無しの赤ん坊は師匠に名前を付けてもらい、ルクレツィアと申します。

いやぁ生きているって素晴らしいですね!ご飯が食べられて、安心な寝床がある。これがどれほど素晴らしく貴いものか、理解…いや叩き込まれました。







~3年前~


「それでは修行を始めようかのう。」


そう言うお爺さん…いえ師匠の手には綺麗な懐中時計があります。1歳児の不安定な足に地を踏む能力は低く、私はお尻を地面に付き師匠を見上げています。椅子が恋しいです師匠…。

元々着ていた服は動き辛く今は師匠が木の繊維から織ってくれた白布のワンピースと、ふわっと膨らみ膝上で萎んだブルマーを履いています。私の魔力から出来たらしい特殊な糸も使っていて特別な効果が得られるらしいですよ。


「それではルークよまずは魔法について基本的な事を学ぼう。ただ座学だけでは時間が勿体ないからのぉ。ほれ、これに魔力を溜め込んでいきなさい。」


受け取ったのはリンゴくらいの透明な水晶玉2つでした。と言っても魔力を集めるとは…とりあえず前世のアニメとかで見たように、心臓から血が全身に巡るイメージで水晶玉に魔力を貯めます。魔法を使う時は感じなかったんですけど、魔力を意識するとなんだか体がポカポカします。
水晶玉に魔力を貯め続けると徐々に紫色に光始めました。あ、これなんだか前世でやったら本格的な占い店開けそうな雰囲気ですね。「見える~見える~」とか言いたいです。


「よしよし、ちゃんと魔力を感じ取れて偉いのぉルーク。ではそのまま座学を始めるとしようかのぉ。」


頭を撫でてもらってご機嫌な私は魔力を注いだまま、師匠の話に耳を傾けました。そう…注いだまま。


「さてと、ルークは川で流されておった時魔法を使っておったの?」

「あい!ちにかけまちた死にかけました!」

「ふむ。この年で魔法を使えるとは才能があるんじゃろうな。では魔法と魔術の違いは分かるか?」


……ウインナーとソーセージくらいの違いだと思います。なんて冗談を心の中でつぶやきます。んー多分あれです、魔法はイメージで魔術は杖使って詠唱して~くらいの差とかな気がします。


「うー。ウインナーとしょーせーじれす!」


違いますポンコツ!それは心の中に留めとく予定の冗談なんですよ!考えていたことが口に出ていたみたいです…。


「んぉ?」

「いえ、ししょー!わかんないれす!なんにもわかんないれす!!しぇつめいしてほしーれす!」


誤魔化します。このむにゃむにゃなお口で必死に説明をお願いするのです!


「そうかそうか。では説明しようかのぉ。
魔法と魔術の大きな違いは、魔法陣の有無じゃろうな。ルーク、手のひらに火を出してみなさい。」


左手を水晶玉に乗せたまま、右手に拳大の炎を出します。炎といっても私は暑く感じません。すると師匠は私の前にしゃがみこみ、手のひらに紫色の魔法陣を出しました。その瞬間ボウッと音と共に青い炎がと立ち上がっています。


「これが魔法と魔術じゃ。己の魔力をイメージで直接変化させるのが魔法。己の魔力で魔法陣を生み出し効果を得るのが魔術じゃな。まぁ効果の総称を魔法と呼ぶから魔法陣と呼ぶんじゃ。」

れもまじゅちゅこうりちゅわりゅくないれすかでも魔術効率悪くないですか?」


くぅ…この滑舌の悪さが恨めしい…。


「ふぉふぉふぉっ。流石に修行に支障がでるからのぉ…ほれこれで喋りやすくなったじゃろ」


するとなんだか顔が少し暖かくなりました。では言ってみましょうか!すーっと息を吸い込み…


「生麦生米生卵ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
っ!凄いです師匠!一体何をしたんですか!?」

「喜んで貰えて良かったわい。これは身体強化を少しかけたんじゃよ。自分の体のポテンシャル以上のことをすると、逆に身体強化で体がバキバキになる者もおるからの。勝手に1人でやってはいけんぞ。」


なるほど…某ヒーロー学校の主人公のようになるわけですね。顎粉砕骨折とか絶対嫌です!!もう一度あの人に合わせる顔がありませんよ!


「それでは話を戻そうかの。確かに魔術は一見効率が悪く見える。がイメージがわかない魔法や規模の大きい大魔法は、魔法陣ひとつで効果が得られるという利点があるんじゃ。じゃが勿論問題もあってな。魔法陣を完璧に暗記し、状況によって規模や威力などを変える応用力と、センスが必要なんじゃよ。」

「センスですか?」

「そうじゃ。暗記や訓練で魔法陣の展開時間は短縮できるが、展開して効果が得られるまでの時間がそのセンスとやらで決まるんじゃ。陣の種類は沢山あってのぉ、効果を得るための陣もひとつじゃないんじゃ。
氷を的に飛ばそうと思ったら、水を収束→氷結→飛ばすの3段階が必要じゃな。それを一気に出来る陣を展開できるかがセンスじゃな。咄嗟に陣を組み合わせ魔術を行使出来ることが重要じゃ。
魔法陣はその場の物質を使うからの。簡単に言うと火山の近くで水を生み出そうとしても出来んから、火炎系の魔術にしようと考えるとかじゃな。」

「なるほど…暗記だけしても応用など実戦で使えなくては意味が無いということですね!」

「そうじゃ。じゃが魔法と魔術どちらかだけでいいとは思ってはならんぞ。魔法の利点は自分に被害が無い事と、相手にキャンセルさせられないということじゃ。魔術は展開中の魔法陣に少しでも異常が生じると思った効果が得られなかったり発動しなかったりするからのぉ。」

「自分に被害が無いというのは実感しました!でもさっき師匠は手のひらに魔法陣を展開し炎を出してましたよ?我慢してたんですか?」


師匠の手を見てみると火傷の後などはなく安心します。「心配してくれとるのか」といって頭を撫でてもらいました。ふへへ、ニヤケちゃいます。


「それは魔法陣に炎を出す方向を指定していたからじゃ。故に下方…儂の手には熱が来なかったんじゃよ。してルークよ。魔術には魔法とは効果に決定的な違いがあるんじゃが何かわかるか?」


先程の師匠と私の炎を思い出してみます。色は…私もイメージすれば青い炎に出来ます。イメージ…イメージの違い…あっ


「魔術は本物の炎ってことですか?」

「ふぉふぉっ正解じゃ!それではその考えを説明してみなさい。」

「はい!私は炎としてゆらゆらと揺れるものを想像しました!。なのに師匠の魔術はイメージなんて関係ないのにゆらゆらと…風を受けて変化していました。その事から魔術はただ本物の炎を生み出し、魔法は使用者の意思に依存しているのだと考えます。」

「うむ、その通りじゃ。故に魔法で生み出された炎を消すためには、同じ魔力量の魔法で相殺するしかないんじゃ。一見魔法の方がいいように思えるが、炎だと魔術なら火種ひとつで広がっていくからのぉ。魔法より魔力の消費量が節約できるんじゃよ。」

「なるほど…両方を上手く使わないといけないんでね。」

「そうじゃな。そして魔法と魔術を行う上で大切な事は魔力操作じゃ。魔法は簡単なものならすぐに使えるが、魔術は魔力で魔法陣を展開する場合そうはいかん。均等にかつ、精密さが求められるからのぉ。さてルークまずは……ふぉっふぉっふぉっこの歳でここまで魔力の高い子供は居らんじゃろうな。よく頑張ったのぉ。」


そう言ってゴルバチョフは魔力切れで倒れたルクレツィアを抱え、ベットに寝かせた。


















おはようございます。いつの間にか寝ていたルクレツィアです。
5時に起床し、薬草たっぷりのクソマズ朝食を取ったあとは午後まで図書室で知識を吸収します!1歳児の脳が凄いのか、私のスペックが凄いのか文字を教えてもらったあとは、5時間ずっと本を読んでいました。



午後は外での修行です!
昨日は魔力を限界まで使って総量を増やすという訓練だったようです。それは毎日行う予定なんですが、どれくらいあるのか好奇心旺盛な師匠のせいで、水晶玉に魔力を溜めることとなったようです。


「さてと今日は魔力操作と制御についてじゃな。ルークよ魔眼についてちゃんと読んだか?」

「いえまだ読んでな「それではやってごらん。」い…」


ちょ…師匠、今聞く意味ありましたか?
とりあえず某忍者の赤い瞳をイメージします。某東京に住む人を喰う人達のように白目が黒くならないようにします!なんだかワクワクしますね!愛する者を失ってすらない、心身ともに健康な1歳児ですが、魔力を眼球に集めてみます。


「あれ?師匠何も見えなくなっちゃたです。」


途中まで上手くいっていたんですが、急に視界が真っ暗になって「おや失明してしまったか」

…うぇ?

え?は?いやいやとんでもねぇ師匠です。サラッと失明したかとか言われました!!え?私これからお先真っ暗なんですか?まだなんの技も使ってないですよ!涙が出てきちゃいました…許せとか言っておでこツンってされたとしても許さないですよ。


「ほれ、もう1回やってみなさい。」

「わぁ!見えるぅぅぅぅぅ!」


師匠の回復魔法によって視力が元通りです。
あぁ世界が色鮮やかです…残酷で美しいです…今なら巨人から1本ホームランとれそうです…。


「何やっとるんじゃ。ほれもう1回!」


このクソジジイは人の皮を被った鬼か何かですかね…。えぇい幼女は度胸です!

そして…







「目がぁぁぁぁぁぁ!!」

「ふぉっふぉっふぉっ。ルークは元気じゃのぉ~」
























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この話がわかった人は私と話が合いそうですね。
ちなみにルクレツィアの愛称がルーシーじゃないのはわざとです。

次回 ルクレツィアのハンバーグ
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