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第一章 無知な少女の成長記
無償の愛
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「貴方名前は何というの?」
女王様と呼ばれていたお姉さんは優しそうな声でしゃがみ、同じ目線になってそう言いました。周りにはたくさんの動物や小人さんがいて同じようなことを聞いてきます。
「わたしは……」
そう口を開いて気づきました。何も覚えていないのです。自分の名前もどこから来たかも何もかも。あるのは魔法や
歴史、植物やマナーなどの知識だけ。空っぽの自分に驚いていると、頭に何か触れいつの間にか下がっていた視線が隣に座るお姉さんと合いました。
「ならルーシーと呼びましょう!私はクロエ!今からお茶会を始めようと思っていたの、そこで沢山お話をしましょう」
そういうとお姉さんは私を抱き上げて額にキスを落とし優しく微笑みました。私はこういう時何をすればいいのかわからず、ただ無表情で見つめるしかありませんでした。それでもお姉さんは「可愛いわ!この子が天使なのね!」とニコニコと歩き出しました。湖の上を滑るように進み神殿に入っていくと、何故かそこは建物の中ではなく色鮮やかな花が咲き乱れる花畑でした。
「まぁ!クロエ様その子が!」
「フローリア落ち着け、そのテンションでは委縮してしまうぞ。」
「クロエ様その子の名前は何というのです?」
「もうみんな落ち着いて。この子の名前はルーシー。今は記憶喪失になっているみたいなの、混乱しているようだからゆっくりお茶を楽しみましょう。」
花畑の中にあるガゼホでは三人のお兄さんとお姉さんがテーブルを囲んでいました。クロエお姉さんに抱えられたまま近づくと、三人は飛び入り参加した私を快く迎えてくれました。クロエお姉さんの提案で自己紹介をすることになり、私はそのままお姉さんのお膝の上に座りお茶をいただきます。
頂いたお茶はラベンダーの香りが口いっぱいに広がって、次に食べた蜂蜜入りのラングドシャと合わせるととても美味しいです。余りのおいしさに夢中で食べていると皆の視線が私に向いていることに気が付きました。
「くっ…天使が…なんて愛らしいのっ!ほらルーシーこれも食べてみて」
「ぐ…かわい…コホンッ!クロエ様ちょっと今から自己紹介するんですから餌付けしないでください。ルーシーは俺が預かります」
「いやジェドお前は目つきが悪い。ここは私が」
「おい今サラッと悪口を「はい!クロエ様私が変わりますわ!」
何だか言い争っているようですが大丈夫なのでしょうか…私の様子に気が付いたのかクロエお姉さんは穏やかな笑みで頭を撫でてくれました。私はなんだかムズムズして自然に口角が上がってしまうのを感じました。その瞬間お姉さんたちが顔を真っ赤にして叫び、お兄さんは苦しそうに胸を抑えてしまいました。でもクロエお姉さんがギュっと包み込んでくれて、不安は無くなってとても安心してまた笑ってしまいました。クロエお姉さんから花のいい匂いがして何だかうっとりしてしまいます。
「さささあ自己紹介を始めよう!さっさと始めよう!」
「そ、そうだそうだ自己紹介は大切だしな!」
「でででは私から!」
何だかみんな顔色が悪いのですが大丈夫なのでしょうか?心配になってクロエお姉さんを見上げるとあの安心する笑顔でスフレを口に入れられてしまいました。これもすごくおいしいです。
「私は《光の最高精霊》フローリアと申します。私のことは気軽にフローと!これから仲良くしてくださいましルーシー!」
「よろしくお願いします。えっと…フロー…お姉ちゃん?」
「はうっ!」
気軽にと言われたのでお姉ちゃんと呼ぶことにしました。フローお姉ちゃんは蜂蜜のような金色のフワフワな髪を肩まで伸ばし、同色の猫のような金色の瞳をしています。ひらひらフリフリの桃色のドレスが印象的でお人形のようです。ですが私が挨拶をすると頬を染めて口元を手で覆ってしまいました。
「ずるいわ!ルーシー私のこともクロエお姉ちゃんと!いえお母さんと呼んでいいのよ!あ、そういえば私は《精霊女王》をやっているの。困ったことがあれば何でも言って、頼って頂戴ね!ルーシーのためなら天変地異なんておちゃのこさいさいよ!」
「ルーシー今のクロエ様は少し頭が弱くなっているだけだから気にするな。俺は《水の最高精霊》ジェドだ。ジェドお兄ちゃんと「ルーシー私は《火の最高精霊》スーリヤだ。スーリヤお姉ちゃんと呼んで欲しいな可愛い天使。私がどんな奴からも君を守るよお姫様」おいスーリヤ被せてくるな」
混乱する間もなくクロエお姉さんと他の二人に詰め寄られてしまいました。ジェドお兄ちゃんはネモフィラのような優しい青色のサラサラと流れる髪を緩く三つ編みで後ろにくくり、同色の切れ長の瞳をしています。冷たい印象を受けますが、そうではないことをその瞳の青が雄弁に語っているように思います。
スーリヤお姉ちゃんはバラのような情熱的な赤色の髪のショートカットで、同色のアーモンド型の瞳とキリッとした凛々しい顔をしています。ですがフッと笑った時、バラの蕾が綻ぶような印象をうけ女性らしい美しさも併せ持っています。
「ふふふっ!ルーシーが嬉しそうで私もうれしいわ!」
「私は嬉しそうに見えますか?」
「ええ!さっきからこのお口がムニュムニュ動いているもの。ふふふ、ねぇルーシーここでは何も考えずただ思うままにしていいの。誰もそれを咎めるようなことはしないし、貴方を悪く思う者なんていないわ。」
「思うまま…?」
「そうよ。嬉しい時は声を上げて笑えばいいの。悲しい時は大声を出して泣けばいいの。辛いことも嫌なことも我儘だって言って?私たちはそれを喜びはすれど嫌がることなんてしない。貴方を嫌うことなんてないし失望することも、離れることもないわ。だから…貴方のままで居ていいのよ愛しい子」
そういってクロエお姉ちゃんは私を抱き締めて頭を撫でてくれました。フローお姉ちゃんもジェドお兄ちゃんもスーリヤお姉ちゃんもその言葉に、優しい瞳で微笑み頷いています。
「どうして…なんでそんなこと言ってくれるの?」
「貴方を愛しているからよ。ふふ信じられないって顔してる。でも本当よ?好きになるのも愛するのもコレだっていう明確な理由なんて必要ないの。だってそれがなくなればその人を好きじゃなくなるなんてことないもの。私たちの愛しい子、親が子に無償の愛を与えるように私たちはどんな貴方も愛しているわ。だから自分に嘘をついて泣かないで。どんなに汚い感情を持っていてもどんなに醜い姿になっても私たちは絶対に貴方の見方で居るから」
ポタッ
手の甲に熱を感じ俯くとそこは群れていて、さらに雫がぽたぽたと落ちてきました。これが私の涙だと気が付いた時には顔を歪ませ声を出して啼いていました。
どこか遠くに感じる声をあげクロエお姉ちゃんに抱き着きただただ啼きました。悲しいとも嬉しいとも思わずただ涙がこぼれ、喉から声が漏れ、優しい香りに包まれ私は息をしたのです。
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ルクレツィア最強の見方をゲットだぜ!
次回 貴方の幸せを願ってはいけませんか
女王様と呼ばれていたお姉さんは優しそうな声でしゃがみ、同じ目線になってそう言いました。周りにはたくさんの動物や小人さんがいて同じようなことを聞いてきます。
「わたしは……」
そう口を開いて気づきました。何も覚えていないのです。自分の名前もどこから来たかも何もかも。あるのは魔法や
歴史、植物やマナーなどの知識だけ。空っぽの自分に驚いていると、頭に何か触れいつの間にか下がっていた視線が隣に座るお姉さんと合いました。
「ならルーシーと呼びましょう!私はクロエ!今からお茶会を始めようと思っていたの、そこで沢山お話をしましょう」
そういうとお姉さんは私を抱き上げて額にキスを落とし優しく微笑みました。私はこういう時何をすればいいのかわからず、ただ無表情で見つめるしかありませんでした。それでもお姉さんは「可愛いわ!この子が天使なのね!」とニコニコと歩き出しました。湖の上を滑るように進み神殿に入っていくと、何故かそこは建物の中ではなく色鮮やかな花が咲き乱れる花畑でした。
「まぁ!クロエ様その子が!」
「フローリア落ち着け、そのテンションでは委縮してしまうぞ。」
「クロエ様その子の名前は何というのです?」
「もうみんな落ち着いて。この子の名前はルーシー。今は記憶喪失になっているみたいなの、混乱しているようだからゆっくりお茶を楽しみましょう。」
花畑の中にあるガゼホでは三人のお兄さんとお姉さんがテーブルを囲んでいました。クロエお姉さんに抱えられたまま近づくと、三人は飛び入り参加した私を快く迎えてくれました。クロエお姉さんの提案で自己紹介をすることになり、私はそのままお姉さんのお膝の上に座りお茶をいただきます。
頂いたお茶はラベンダーの香りが口いっぱいに広がって、次に食べた蜂蜜入りのラングドシャと合わせるととても美味しいです。余りのおいしさに夢中で食べていると皆の視線が私に向いていることに気が付きました。
「くっ…天使が…なんて愛らしいのっ!ほらルーシーこれも食べてみて」
「ぐ…かわい…コホンッ!クロエ様ちょっと今から自己紹介するんですから餌付けしないでください。ルーシーは俺が預かります」
「いやジェドお前は目つきが悪い。ここは私が」
「おい今サラッと悪口を「はい!クロエ様私が変わりますわ!」
何だか言い争っているようですが大丈夫なのでしょうか…私の様子に気が付いたのかクロエお姉さんは穏やかな笑みで頭を撫でてくれました。私はなんだかムズムズして自然に口角が上がってしまうのを感じました。その瞬間お姉さんたちが顔を真っ赤にして叫び、お兄さんは苦しそうに胸を抑えてしまいました。でもクロエお姉さんがギュっと包み込んでくれて、不安は無くなってとても安心してまた笑ってしまいました。クロエお姉さんから花のいい匂いがして何だかうっとりしてしまいます。
「さささあ自己紹介を始めよう!さっさと始めよう!」
「そ、そうだそうだ自己紹介は大切だしな!」
「でででは私から!」
何だかみんな顔色が悪いのですが大丈夫なのでしょうか?心配になってクロエお姉さんを見上げるとあの安心する笑顔でスフレを口に入れられてしまいました。これもすごくおいしいです。
「私は《光の最高精霊》フローリアと申します。私のことは気軽にフローと!これから仲良くしてくださいましルーシー!」
「よろしくお願いします。えっと…フロー…お姉ちゃん?」
「はうっ!」
気軽にと言われたのでお姉ちゃんと呼ぶことにしました。フローお姉ちゃんは蜂蜜のような金色のフワフワな髪を肩まで伸ばし、同色の猫のような金色の瞳をしています。ひらひらフリフリの桃色のドレスが印象的でお人形のようです。ですが私が挨拶をすると頬を染めて口元を手で覆ってしまいました。
「ずるいわ!ルーシー私のこともクロエお姉ちゃんと!いえお母さんと呼んでいいのよ!あ、そういえば私は《精霊女王》をやっているの。困ったことがあれば何でも言って、頼って頂戴ね!ルーシーのためなら天変地異なんておちゃのこさいさいよ!」
「ルーシー今のクロエ様は少し頭が弱くなっているだけだから気にするな。俺は《水の最高精霊》ジェドだ。ジェドお兄ちゃんと「ルーシー私は《火の最高精霊》スーリヤだ。スーリヤお姉ちゃんと呼んで欲しいな可愛い天使。私がどんな奴からも君を守るよお姫様」おいスーリヤ被せてくるな」
混乱する間もなくクロエお姉さんと他の二人に詰め寄られてしまいました。ジェドお兄ちゃんはネモフィラのような優しい青色のサラサラと流れる髪を緩く三つ編みで後ろにくくり、同色の切れ長の瞳をしています。冷たい印象を受けますが、そうではないことをその瞳の青が雄弁に語っているように思います。
スーリヤお姉ちゃんはバラのような情熱的な赤色の髪のショートカットで、同色のアーモンド型の瞳とキリッとした凛々しい顔をしています。ですがフッと笑った時、バラの蕾が綻ぶような印象をうけ女性らしい美しさも併せ持っています。
「ふふふっ!ルーシーが嬉しそうで私もうれしいわ!」
「私は嬉しそうに見えますか?」
「ええ!さっきからこのお口がムニュムニュ動いているもの。ふふふ、ねぇルーシーここでは何も考えずただ思うままにしていいの。誰もそれを咎めるようなことはしないし、貴方を悪く思う者なんていないわ。」
「思うまま…?」
「そうよ。嬉しい時は声を上げて笑えばいいの。悲しい時は大声を出して泣けばいいの。辛いことも嫌なことも我儘だって言って?私たちはそれを喜びはすれど嫌がることなんてしない。貴方を嫌うことなんてないし失望することも、離れることもないわ。だから…貴方のままで居ていいのよ愛しい子」
そういってクロエお姉ちゃんは私を抱き締めて頭を撫でてくれました。フローお姉ちゃんもジェドお兄ちゃんもスーリヤお姉ちゃんもその言葉に、優しい瞳で微笑み頷いています。
「どうして…なんでそんなこと言ってくれるの?」
「貴方を愛しているからよ。ふふ信じられないって顔してる。でも本当よ?好きになるのも愛するのもコレだっていう明確な理由なんて必要ないの。だってそれがなくなればその人を好きじゃなくなるなんてことないもの。私たちの愛しい子、親が子に無償の愛を与えるように私たちはどんな貴方も愛しているわ。だから自分に嘘をついて泣かないで。どんなに汚い感情を持っていてもどんなに醜い姿になっても私たちは絶対に貴方の見方で居るから」
ポタッ
手の甲に熱を感じ俯くとそこは群れていて、さらに雫がぽたぽたと落ちてきました。これが私の涙だと気が付いた時には顔を歪ませ声を出して啼いていました。
どこか遠くに感じる声をあげクロエお姉ちゃんに抱き着きただただ啼きました。悲しいとも嬉しいとも思わずただ涙がこぼれ、喉から声が漏れ、優しい香りに包まれ私は息をしたのです。
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ルクレツィア最強の見方をゲットだぜ!
次回 貴方の幸せを願ってはいけませんか
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