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第一章 無知な少女の成長記

思っていたのと違います

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師匠に着いていった先はほぼ毎日来ている薬剤室でした。何か道具を取りに来たのかと思っていると、部屋に入るように言われてしまいました。


「これが錬金術を行うために使う錬成鍋じゃ」


そういう師匠はこの部屋の中央にある大きな鍋を指し申し訳なさそうに眉を下げました。


「こ…これは…薬剤室なのでは?これだは作るものは回復薬ポーションだと思います」

「そうじゃ回復薬ポーションも錬金術で作るからのぉ。他にも毒や金属、武器に服なども錬成することが出来る。ここにある大きな鍋は大抵のものは何でも作れるが……分かっておる。『これじゃない』じゃろ」


師匠流石私の言いたいことが分かるんですね。おおよそお婆様もそうだったのでしょう。そう……



錬成じゃないの!?



いや私も流石に手を合わせるだけで出来るとは思ってはいませんでしたよ?そりゃ真理覗いてませんから!でも…でも鍋だなんて思ってもいませんでした!魔法やら魔術やら非科学的な現象があるくせに何故ここで鍋!?その鍋でどうして錬成出来るんですかシチューでも作っててくださいよいっそのことぉぉぉ!

私の心の叫びを共有した聞いたのかピスティスとラトレイアは肩をプルプルと震わせ無表情を貫いて…いませんね、今もの凄い顔してますよ。


「もうこの際鍋でも構えません、ですが師匠…口に含むものと金属や毒を一緒の鍋で錬成するのはまずいのでは?」

「その為の【浄化】じゃろう?何のために今まで練習してきたと思っておる。お前の【浄化】は100%完璧に汚れや邪気を払える!どんな猛毒でも【解毒魔法】をせず【浄化魔法】で一瞬じゃよ。」

「えぇ…いや【浄化】の練習なんて…あれもしかして訓練の後の血しぶきや服の汚れとかを落としていたことだったりします?」

「そうじゃ一石二鳥じゃろ」


なるほど…師匠がこまめに【浄化】するよう言っていたわけがここで繋がりました。そりゃそうですよ四年間、精霊界の時間も合わせるとどれだけ【浄化】してると思ってるんですか。存在するか分かりませんが《聖女》並みに浄化してる自信ありますよ。下級から最上級まで自棄になってかけまくりましたからね!


「なるほどそれで…この鍋に素材を入れるだけいいんですか?書庫の本には錬金術関係がなくて全く知識がないのですが」

「おぉそうじゃった!ほれこれをやろう」


そういって師匠は亜空間からアンティーク調の鍵をくれました。くすんだ金のウォード錠の鍵は繊細な竜の細工が美しい芸術品のような鍵で、書庫にある扉を開くことが出来るのだそうです。なんでも魔法で隠しているそうで魔眼を開眼してから渡す予定だったのだとか。


「では今日はワシのお手本を見てからとするか」


そういって師匠は材料を並べ説明し、鍋を使空中で上級回復薬ハイポーションを作ってしまいました。…は?


いやそんな「ほれ簡単じゃろ?」みたいな顔しないでください馬鹿師匠。錬金術と錬成鍋の使い方を知りたいんですよ、なんですっ飛ばして魔法とを併用してやってるんですか!?初心者は基礎からがセオリーでしょうってこれ何度言わせるんですか!」

私は最初から精霊を見ることが出来ましたが、師匠は魔眼を使い精霊とコンタクトをとることが出来ます。【精霊術】とは精霊の力である自然エネルギーを借り行使する術のことを言います。精霊を見ることのできる人は例外を除くと【魔眼】か【精霊眼】を持つ人が大半です。

【精霊眼】とは私が初めから精霊を見れていたように、先天性の精霊や魂などの目に見えないを見ることのできる目のことを言います。《愛し子》はその素養があり見えなくても精霊自ら力を貸してくれますが、これを持たない人は師匠のように魔眼で精霊を目視し、契約することで詠唱なしで力を借りることが出来ます。

そしてそのどれにも当てはまらない人は《賛美歌》という精霊を自然を称える歌を詠唱することで、精霊を呼び出し力を借りることが出来るそうです。《歌》といっても句を詠む感じで魔力をのせると術の効果が上がったり、ある程度省略できるようです。


そしてどうやらこの天才肌の師は見て覚えろ、応用が出来れば基礎も出来るなんてほざきやがるので私は早速書庫に行って本を見てくることにします。













「一体ここのどこに扉があるっていうんですか!?」


私は現在書庫に転移し魔眼で隠された扉を探しています。が…これが全く見つからないのです。

魔眼は目を瞑っていても何の支障もないので今私は目を閉じたまま使っています。師匠曰くその方がなんかカッコいいらしいからだそうです。自分や仲間がピンチの時だけ目を開けるのがグッとくるそうですが、平和主義者な私はそんな展開一生来ないでほしいですね。ん?どの口が言うんだって?嫌ですねぇ聖人じゃないんですから時にはも必要なんです。


――と、そんなこと考えている場合ではありません!一体どういうことですか、魔眼で見えるから鍵をくれたんでしょう師匠!? ――


そんなことを考えながら書庫を回ること2周。空間拡張された広い書庫は魔眼で見ると本の題名が変わっていたり、仕掛け扉があったりとワクワクが止まりませんが今はそれどころではありません。


「ぷぷぷっルクレツィア馬鹿みたいに探して笑えるのです。誰が書庫のにあるだなんていったのです?馬鹿みたいに部屋を歩き回ってまるで死霊アンデッドなのですぷぷぷー」

「ははっ確かに肩を落として歩く姿は死霊アンデッドのようだな」

「二人とも酷すぎる!どこか知ってるなら教えてくれてもいいじゃない!」

「「いや自力で探すって興奮してたのは誰だよ(なのですか)」」


そう…娯楽のないこの屋敷で宝探しのようなワクワク感に私はつい自分で見つけると言ってしまったのです。いやぁ最初は魔眼で見る書庫は発見がいっぱいで楽しかったんですよ…でもそれも全部見つけ本命が見つからないという壁にぶつかってしまったのです。ただうちの子たちは本当に優しいです…


「あーもうはい!確かに師匠は書庫のにあるとも、そもそもだとも言ってないですね!完璧に私の勘違いですねぇもう!」


くそぉ滅茶苦茶馬鹿にしてきますこの兄弟!むくれながら書庫を出ます。二人はヤレヤレといった様子で後をついてきますがその顔はニヤニヤと面白がっているようで、私はアッカンベーとそっぽを向いてやりました。

書庫を出てその扉を観察します。そして魔眼でみると木製のシンプルな扉に繊細なユリの彫刻が現れました。そして…


「あっ鍵穴がある!」


興奮しドアノブの下にある鍵穴に貰った鍵穴を差し込み回すと、ガチャッと音がし鍵が扉が開きました。


「えっ!?ちょ、待ってついていけない」

「何してるんだ、さっさと登録しに行くぞ」

「え、登録って、いや待って鍵は!?あー待ってよ!」


鍵が消えてしまったことに混乱している私をしり目に二人は扉の奥へと進んでいきます。私は登録という言葉を不思議に思いながらも、すたすたと歩く二人を追いかけました。
























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錬金術→兄弟→賢者の石→名前を呼んではいけないあの人、連想していくと作品が変わってしまうのは何故だろう。

次回 司書はドッペルゲンガー
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