Sランク冒険者はお姫様!?今さら淑女になんてなれません!

氷菓

文字の大きさ
42 / 81
第一章 無知な少女の成長記

従者の修行①

しおりを挟む
僕とラトレイアの主となったルクレツィアが魔物の森に飛ばされて数日経った。


「いい加減ラトたちもルクレツィアの所に飛ばしやれなのですクソ爺!あの森に何の説明も準備もなく放り出すなんて死ねといっているようなものなのです!」


そうあの森は高濃度の魔素が森全体に溜り並大抵の強さでは一瞬で魔物の餌食となる。また森の木々や水、岩などにまで魔素が浸透し非常に高価な素材として市場に出回っているのだ。それもそのはずで高濃度の魔素は人の負の感情が大量に交わることで瘴気に変わるため純粋な魔素のまま維持している場所は限られる。また多量の魔素に耐えられる物質は少なく人間もその例外ではない。ある程度魔力操作に長けたものでないと最悪命を落とすこともあり素材の回収は困難を極める。加えて魔素の濃いところでは魔物の出現率が高くその強さも濃度に比例するのだ。ゆえにたっぷりと魔素を含んだ素材というのは市場では滅多にお目にかかれないほど高価で珍しく、闇ルートや高ランクの冒険者を頼るしかない。

だがそれならルクレツィアには何の問題もないのだ。既にゴルバチョフとやり合えるほどの強さと知識を持っているなら、いくらこの森が生きては戻れない死の森だと言われていても生き残ることは容易だろう。しかしそれはあくまで素材採取や短期の冒険の場合だ。三か月間SSSランクも蔓延り常人であれば確実に死に至る濃度の魔素の中で生きのこるのは困難を極める。まして植物から水に至るまで全てが高濃度の魔素を含みその効果は魔物を食うのと大差ないのだ。今まで魔物の肉すら食ったことのないルクレツィアが万が一それを受け入れられなければ飢えて弱ったところを狙われてしまう。


「何度も言いますがルクレツィア集団戦はおろかそもそも魔物を見たことも戦ったこともないのです!この森はいきなり放り出していいような難易度じゃないのは分かっているのにどうしてラトたちを話したのです!?ルクレツィアはまだ刃に魔力を均等に通すことすらまともに出来ていないのです、体内にはいてくる魔素を中和するために魔力を大量消費する中魔法で戦うのはあまりにも酷いのです。」


だが僕たちはルクレツィアが強いことを知っている。だから何よりも恐れていることは一つ


「何よりもあのバカは生活力皆無ねのですぅぅぅぅ!!」

「何じゃってぇぇぇ!まぁルークならサバイバルについての方法が書かれた本を読んで…「そんな本が無かったから言ってるのです!」そうじゃそもそもワシそんな本必要ないから集めておらんわ!」

「だから言ったのです。食べるための魔物の肉の処理の仕方も水のろ過から魔力を含んだ木の扱い方まで何の準備もなく知識もなく…っこのままじゃっ」


急にわざとらしい口調で茶番が始まったがラトレイアの心配は僕にとっても一番危惧すべき問題なのだ。正直に言って魔素が濃こうが強力な魔物がいくら来ようがルクレツィアは素手で撃破するだろうから心配はない。むしろそこらの魔物の牙では魔人であるルクレツィアの肉を引き裂くなど不可能だろう。ただいくら強かろうが衣食住の知識がなければ3カ月なんて生きていけない。全て高濃度の魔素を含むしかない中で何を飲み食いする?魔物の習性は?肉の捌き方は、処理は?体を休ませる寝床は?過保護かもしれないが最低でもそれくらいの知識がなくては…


「このままじゃ野生に返っちゃうのです!!!」


そうルクレツィア規格外の問題児は出来なければ力ずくでやる。アイツは絶対肉を獣のように生で貪り貰った短剣を使う間もなくぶっ壊しサルよりも頭を使わず行動している。雨風を防げる洞窟とかは実力で強奪し最悪森の食物連鎖の頂点に君臨し言葉すら忘れていたり…


「流石にそこまで考えておらんかったわい!じゃが…自分でいうのもなんじゃがルークはワシの弟子じゃし上手くいくんじゃ…「「そこが一番心配な要素なんだよ(なのです)!」」ぐぉぉぉ否めない!」


頭を抱えしゃがみ込んだゴルバチョフはラトレイアにポカポカ殴られながもその顔は焦っていない。まぁ流石に僕もルクレツィアが魔物の王になるなんて本気で思っちゃいない。…いや……なんかこういうの言っちゃダメなんだって言ってたな。フラグを立ててしまった感は否めないが忘れよう。考えたらあの広大な森の主全員に遭遇するなんてありえない。そう結論付け目の前の不機嫌な片割れと茶を入れ始めた老人をみる。おい僕にその不味い茶を飲ませようとするな。


「まぁルークが例え野生に帰ろうが土に還ろうがお前たちがフォローしてやればいいんじゃよ」

「野生に帰ったルクレツィアを人間に戻せる自信がないのです」

「大丈夫そのためにワシが特別講師を用意した」

「いやサラッと流したが土に還ったらダメだろ」


ゴルバチョフの入れた絶望の紅茶を拒否しながら二人の会話にツッコミを入れる。問題児ルクレツィアが居ないとラトレイアがボケに回るから結局労力は変わらないな。というかこの爺いまなんて言った?


「講師って何のです?」

「そりゃ従者としての教育に決まっておるじゃろう」

「ラトたちは家事やお茶を入れるのは得意なのですけど。髪も服も魔法でちょちょいなのですから他に何を学べばいいのです?」

「甘いのぉ、従者といえば主人を支えるために…なんか色々やるんじゃよ」

「全く説明になっていないのです」

「まあとにかくお前たちもレベルアップするために修行頑張ってくるんじゃな」

「「え”、は!?」」


ニヤリと笑い他人事をいうゴルバチョフを最後に僕たちは光に包まれ飛ばされた。























ーーーーーーーーーーーーー
時系列にそってルクレツィアのサバイバル生活も混ぜようと思います

次回 従者の修行②
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

悪役令息の婚約者になりまして

どくりんご
恋愛
 婚約者に出逢って一秒。  前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。  その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。  彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。  この思い、どうすれば良いの?

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました

ララ
恋愛
3話完結です。 大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。 それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。 そこで見たのはまさにゲームの世界。 主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。 そしてゲームは終盤へ。 最後のイベントといえば断罪。 悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。 でもおかしいじゃない? このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。 ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。 納得いかない。 それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...