僕の彼女は、男子高校生

ぱるゆう

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番外編

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僕の交友関係は、高校生の頃から変わっていない。基本的に、同じ建物の店と家を往復する毎日だから、まぁ、仕方がないのだが。

それなのに、どうして、こうも誘惑が多いのだろう。

夏ちゃんからは、たまにデートの誘いが来る。一番休みが自由になるから、僕の休みに合わせてくれる。

何より子育ての経験があるので、僕の赤ちゃんを連れて行っても、何も困らない。茜もたまには羽根を伸ばしたいだろうから、夏ちゃんとデートに行くというと、喜ぶようになった。

デートと言っても相手の身体は男であることを知っているから、茜も安心なのだろう。



ということで、僕の公式の第一子である歩美を連れて、待ち合わせ場所に来ている。

ちなみに名前は、茜、優斗の頭文字をとって付けた。

改札から夏ちゃんが来た。相変わらず周りから注目される。

僕は、シェフから服装に気をつけるように言われている。
「うちの店を一流かどうか決めるのは、一番は味だが、次は作っている人間だ。きちんとできない人間だと分かれば、客もそう見る」
だから、それなりの服だ。まぁ、夏ちゃんのセンスとバランスが取れているかは、考えても仕方がない。


今日は初めてアキノを連れていた。
「こんにちは、アキノちゃん、大きくなったね」まずは僕から声をかける。

「こんちには。パパ」

僕は衝撃の言葉に後ろに倒れそうになった。

「パッ、パパ!夏ちゃん!なんてこと子供に教えてるんだよ!」

「ハハハッ、だって私のことは、夏ちゃんって呼ばせてるから、ア~ちゃんが、パパと呼ぶ相手がいないんだもん」

「それにしても、止めてよ、もう!」

「パパ、イヤ?」とアキノが上目遣い(小さいからしょうがないのだが)で言う。

可愛い!(変な意味じゃなくて)

「うぅっ、他の人がいない時だけだよ」
と僕はすぐに降参する。

「うん。パパ、大好き!』

「あぁ、パパもアキノちゃんのこと、大好きだよ」

隣で夏ちゃんが笑っている。
「相変わらずやさしいね。優くん、あっ、パパか。フフフッ」

「はぁ~、本当に他の人の前ではダメだからね」

「はいはい。歩美ちゃん、抱っこさせて」

僕は、抱っこ紐から歩美を出して渡した。
「2人目は、いつだっけ?」

「もうすぐ」夏ちゃんは、いないいないバァをしている。何度も会ってるから全然問題ない。

「一人にして大丈夫なの?」

「今日は、お母さん来てるから」

あっ、言われてみれば、昨日そんなことを言ってたな。

「そうだったね」

僕はアキノと手を繋ぐ。

「じゃぁ、行こうか?」

「うん」

歩き出そうとしたが、
「あっ!」

「どうしたの?」

「夏ちゃん、今日も可愛いよ」

「もう~、ありがとう」

僕はしゃがんだ。
「アキノちゃんもお洋服も、とっても可愛いよ」

「パパ、ありがとう」

僕達は歩き出した。
「アキノちゃんの服も夏ちゃんが作ったの?」

「そう。ア~ちゃんはモデルよ」

「あぁ、そうだよね。宣伝しないとね」

アキノが背負っているリュックには、サイト名とQRコードがしっかりと貼られている。

今日の目的の店に来た。
フルーツタルトが評判の店だ。

列に並ぶ。
すると、後で待っていた女の子、多分高校生くらいの2人組が夏ちゃんに声をかけてきた。

「写真いいですか?」

「うん、いいわよ」

僕は歩美を受け取った。

「誰がいい?」

「2人で」と一人が言う。

夏ちゃんとアキノは、列を外れて道路を背にする。

アキノのポーズも慣れているのか、サマになっている。

「私は、この子一人でいいですか?」

「うん」夏ちゃんは戻ってきた。

2人は、「可愛い!」と言いながら、写真を撮っている。

「ありがとうございました」
2人は後ろに戻った。

すると、前のカップルの彼女の方が、アキノご指名で声をかけてきた。

アキノは、嫌がらずにポーズを続けている。

「最近は2人でいると、アキノばっかりよ。私はオマケね」

「そんな時代が来るとは。世代交代かな?」

「私はそれでもいいんだけど」
夏ちゃんが腕を組んだきた。僕は注意しようと顔を向けると、上目遣いで僕を見返す。毎度のことだ。

夏ちゃんが、どんなに可愛い格好をして、女の子達から可愛いと言われても、それは自分の女の部分である。家に帰れば、春ちゃんに男の部分を求められる。春ちゃんは夏ちゃんの女の部分は、どうでもいいはずだ。
だから、本当の夏ちゃん、男なのに可愛いものが好きという部分は、結局、僕しか満たしてあげることはできない。もし僕が女でも、夏ちゃんは同じことをすると思う。

多分、由紀でもいいのだ。ただ、由紀は身長が低く、そんなにベタベタされるのは好きではない。元カレの僕が言うんだから間違いない。それに春ちゃんが許さないだろう。だから、結局、僕しか残らない。

僕が顔を戻すと、OKしたというルールだと思っているらしい。夏ちゃんが更に体を寄せてくる。

男と分かっているんだけど、毎回ドキドキする。何かを期待しているわけではないんだが。

その後、何人かが来て、写真を撮り、アキノが眠そうにしたので、歩美を夏ちゃんに渡して抱っこした。
「もう私には無理。そんなことできない」

「全然大丈夫だよ」

アキノは嬉しそうだ。僕の胸に頭をつけている。

間もなく店に入ることができた。アキノを下ろそうとしたが、
「イヤ、イヤ」
と首に手を回してぶら下がった。

「店を出たら、またしてあげるから」
僕はしゃがんで、アキノの足を地面につけた。

「絶対だよ!」

「はいはい。ちゃんとするから」

テーブルに座り、歩美を膝の上に座らせた。いちおうメニューで確認して、夏ちゃんに注文を頼む。

僕はリュックからオムツを取り出して、トイレに行った。ベビーベッドがあり、オムツを交換した。

席に戻り、リュックからマグカップを取り出すと、歩美は、すぐにゴクゴクと飲み始めた。

その間に、離乳食を準備する。
「自分で作ったの?」

「そうだよ。最近のお気に入りはカボチャかな」

「結構大変だよね。うちは売ってるのに頼ってたわ」

「まぁ、別にいいと思うよ。僕は勉強のためにやってるだけだから」

「ホント、料理は、よそ見せずに真面目ね」

「なんだよ。料理はって」

「恋愛はフラフラしてたじゃない」

「そんなこと言うなら、接触禁止にするよ」

「えっ!イヤだ!もう言わないから」

「今はちゃんと茜一筋だよ」

「歩美ちゃんは?」 

「歩美は別格だよ」

ふと、父親同士が、それぞれ娘を連れてスイーツを食べようとしていることに可笑しくなって、ニヤニヤしてしまった。

「どうしたの?」

「男同士って、僕達だけかなって思ってね」

「えっ?」夏ちゃんが見回す。

「確かに」

「でも、傍から見れば、家族に見えてるかもね」

「若くして2人目を作った夫婦ね。女の子ばっかりで、十年後には蚊帳の外に追いやられる可哀想なお父さん」

「やっぱりそうなるかな?」 

「フフフッ、どうかしらね?」

スイーツが来た。でも2人分だった。
「あれ?」

「私はア~ちゃんの残りを食べるから」

「じゃぁ、僕が歩美にご飯を上げてる間、僕の食べてていいよ。アキノちゃんの残りを僕も食べるから」 

「いいの?」

「どうぞ」

なっちゃんはスイーツと、アキノの写真を撮った。
「僕も撮ってあげる」と言って、夏ちゃん1人、アキノと2人を撮った。

「いただきます」

僕は歩美に離乳食を食べさせた。

夏ちゃん達は、美味しいと言いながら、食べている。  

すると、
「パパ、あ~ん」と夏ちゃんがフォークで刺して、出してきた。

なんか懐かしいなと思いながら、口に入れた。

「うん、美味しい」

「私もやる!」とアキのも真似た。僕は食べて、  

「んっ、美味しい!アキノちゃん、ありがとう」と言った。

次は、夏ちゃん達が交換した。

「アキノちゃん、学校は楽しい?」

「うん、楽しいよ」 

「なんかモテモテらしいわ」

「血筋だね」

「私は告白できなかったのに、今の子は、好きなものは好きってはっきり言ってくるらしいの」

「アキノちゃんは好きな子いるの?」

「いないよ」

「誰かを選ぶと喧嘩になるからって言うのよ」

「服は、どうしてるの?」

「さすがに普通の格好させてるわ。私が作ってるけど」

「そうなんだ。うちの歩美もママに似てくれればいいんだけど。僕似じゃ、一生恨まれるよ」

「それはそうね。フフフッ」

「夏ちゃん!」

「ごめん、ごめん。はい、あ~ん」

結局、食べさせてもらった。

アキちゃんは、すぐに飽きて、食べるのを止めてしまった。

「少食なのよ」

「家のご飯も?」

「家では食べるんだけど、給食もあんまり食べないって、先生に言われて」

「家では何作ってるの?」

「基本的には野菜かな。基本的に煮たり炒めたりして、コンソメとかで軽く味付けしてるだけ」

「濃い味が苦手なんじゃないの?」

僕はアキちゃんに
「食べ物は何が好き?」

「お野菜」

「夏ちゃんのご飯、好き?」

「うん、美味しいよ」

嘘はないようだ。

「まぁ、家で食べてるならいいんじゃない。アレルギーは?」

「検査したけど、なかった」

「お菓子は?」

「あんまり食べないかな」

「もしかしたら化学調味料が苦手なのかな?」

「そうなのかな?」 

「普段は家にいるの?」

「そうね。あんまり外に出ない方かも」

「春ちゃん、運動は?」

「朝早く起きて、1人で走ってる」

「運動不足かもね。だから、お腹が減ってない」

「あっ、なるほど」

「よし、このあと、公園に行こう」

「うん」

店を出て、アキノを抱っこして、途中でレジャーシートや飲み物をコンビニで買い、公園に行った。

夏ちゃんは歩美とレジャーシートに座っている。

僕は、アキノと鬼ごっこをした。全然捕まらない。あっという間に僕は音を上げた。

僕のほうが、運動不足だったことが判明した。情けない。

「子供の体力、なめない方がいいわよ」

「はぁはぁ、ダメだ」

「パパ、頑張って」

「行くよ!アキちゃん」

キャハハハッと声を上げながら、逃げ回る。

今度はなんとか捕まえて、高い高いをした。

「もっと!もっと!高い高いやって!」

走るよりは楽だと思ったが、徐々に持ち上がらなくなる。最後の力を振り絞って、肩車をした。

どっちのための運動か、分からない。

「歩いて」とアキちゃんが言うので、ウロウロとする。

「すご~い、たか~い」

楽しんでもらえているようだ。歩美も1年後には走り回っているだろう。少し体力をつけねば。茜に任せるのも酷だ。

後は、公園をブラブラと歩いた。すると、「眠い」とアキノが言ったので、僕が抱っこして帰ることにした。

「家まで送るよ」まだそんなに遅くはない。

夏ちゃんの家につくと、まだ小百合はいた。


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