遊ばれる男

ぱるゆう

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本当の再会

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待ち合わせのファミレスに行くと、白石は既に来ていた。

私が来たと分かると、白石は入口まで来て、
「久しぶり」とお互いに短い挨拶をしてから、私は赤ちゃんを抱き上げた。白石は手提げを抱えて、ベビーカーを慣れた手つきで折りたたんだ。

そのまま白石が先に店の中を進んでいく。

席に座った。無言で白石がメニューを広げる。甘いものが食べたいような気もしたが、本当に欲しいのは、向かいに座っている脚の間にあるものだ。
顔を見ると、期待感でまた濡れてきてしまった。
ここは気を紛らわせるために、小さめのパフェとドリンクバーを頼んだ。

「何飲みますか?」

「冷たい紅茶かな」

「分かりました」自分のコップを持ち、歩いていく。さっきは気にならなかったのだが、今は前に身体が倒れている。  

もう固くしてるのかしら。パブロフの犬ね。フフフッ。

白石が戻ってくると、パフェはテーブルに来ていた。

「赤ちゃん、預かりましょうか?」

「ううん、大丈夫」スミレは、紅茶を一口飲み、次にパフェを口に入れた。
「うん、間違いない。美味しい」

「そういうの食べるんですね?」

「おばさんだって、スイーツは欲しいの」

「スミレさん、全然おばさんなんかじゃないです。若くて綺麗な女性です」

あぁ、そうだ。この子には、この病気もあったんだ。

「フフフッ」私は吹き出した。

「えっ、どうしたんですか?僕、変なこと言いました?」

「相変わらず病気は治ってないのね」

「えっ!やっぱり変なこと言ったんだ。えっ!どこだ。スミレさんはおばさんじゃないし、久しぶりに見ても、肌は若いし、スタイルもいいし、顔のどのパーツも整ってる。全部、当たり前のことなんだけどな」白石はブツブツと言った。

「もうお腹いっぱいよ。止めて」

「どこが変なんですか?」

「彼女より綺麗?」指摘しても治らないと思い、私は意地悪をした。

「えっ!」白石は明らかに動揺した。

私はパフェを口に運びながら待った。
「彼女は、僕には勿体ないくらい美人なんですけど、見た目だけなら、同じくらいだと思います」

ふむふむ。安易に私と言わずに真面目に答えるところが、可愛らしい。ご褒美に、今すぐホテルに行くと言ってあげようかと思ってしまう。

「見た目だけ?それ以外は?」更に追い込む。

白石はしばらく口籠った。

「別に答えなくていいわ」

「彼女の性格は自由奔放なんですけど、僕のことちゃんと見てくれて、好きでいてくれて。比べられないです。僕には、彼女もスミレさんも必要なんです」下を向いて、ボソボソと話した。

あぁ、そんな顔されると、どんどん濡れてきちゃうよ。
「必要も何も、これで会うのは最後よ。電話でも言ったでしょ。それに、そんなにあなたを大切にしてくれる彼女に悪いと思わないの?」

「それは思いますよ。もちろん。でも、理屈じゃないんです。身体と心がスミレさんを求めてるんです」

「それって、私が離婚したら、私と再婚するってこと?まぁ、あなたの子供には時々会いに行って、父親としての役目は果たすとして」更に追い込む。

「えっ!こっそり2人に会ったりは?」

「もちろんダメよ」自分を棚に上げて、何を偉そうに言ってるんだ。私は?
吹き出しそうになる。しかし、医者のポーカーフェイスで乗り切る。

「・・・・」白石は下を向いた。

「私とはそんなものなのよ。だから、彼女と子供のために、もう止めよう。ねっ」

こんな修羅場の中、パフェを食べ終え、丸くなったレシートをとろうと手を伸ばす。

「分かりました。全部、2人に話します。そしてスミレさんと会い続けたいって言います」

ん?ちょっと、引っかかった。
「それって2人に判断を丸投げするってこと?」少し強い口調になる。

「多分、2人とも別れてくれないと思います」

私は絶句した。きっとあの2人は、ずっとこの子にストレスを与えていたのだろう。身体の快楽を餌にして、引き寄せ、逃げられないようにした。

マズイ、これ以上のストレスは、マズイことになる可能性が高い。

2人の年上の女性の人生と一人の子供、普通なら、これだけでも背負い切れるものではない。それに加えて、きっと、あの号泣していた女性の人生も背負おうとしたのだ。

これでは、脳が耐えられるわけがない。この子は、一人一人に対して真剣なんだから。

「分かったわ。安心して、私も離婚するつもりはないから」

「いや、でも、ちゃんと話すべきなんです。スミレさんのこと」

私は旦那との人生がある。だから、私の人生を、この子が背負うことはない。だから、この子にとっても、私は好都合なのだろう。

「ねぇ、一つ聞いていい?」

「何ですか?」

「何で私なの?身体が気持ちよくなればいいなら、いくらでもいるでしょ」

「スミレさんとは、別に身体だけだとは思ってません。スミレさんといると、心も身体も満たされるんです」

「前の時も言ったけど、私はあなたの身体以外は興味なかったのよ」

「スミレさんは、それでいいです。僕が勝手に思ってるだけですから。だから、お願いします。またスミレさんの中に入りたい」
私の目をじっと見てくる。
はぁん、どんどん濡れてしまう。

「この子いるでしょ。無理よ」

「家でも寝てる最中にしてます。だから、お願いします」

はぁ、もう濡れすぎて、下着に付いていないか心配になってきた。私も我慢できない。

「分かったわ。トイレでおっぱいあげてくるから、待ってて」

「ホントですか、やった!」小さくガッツポーズをしている。

私はトイレに行き、おっぱいを吸わせた。
「あん」身体がゾクゾクしてくる。

結局のところ、あの子は逃げ場を欲している。ただ、それだけだ。何も考えずに射精できる相手が欲しいのだ。それでしか、あの子はストレスの発散方法を知らない。

おっさんの性奴隷になるような女の子も、依存症が強い。目の前のことから逃げてばかりで、いつか白馬の王子様か救いに来てくれると信じている。それが、得体の知らないおっさんであっても、別にいいのだ。

おっぱいをあげ終わり、おむつを替えた。

スミレがテーブルに戻ると、白石は頭がつきそうなほど、前かがみになっていた。

私は向かいに座る。

「歩けるの?」

「近くにホテルありました」

「違うでしょ。近くにホテルがあるから、この店にしたんでしょ」

「すいません。そうです」

「変質者とは行けないわ。通報される」

「ちょっと待ってて下さい」白石はコップから氷を取り出し、周りをキョロキョロしてから、ズボンの中に手を入れた。

白石の顔が耐えている。

「ホントに、しっかりしてるんだか、してないんだか。フフフッ」

しばらくして、
「だいぶ収まりました。行きましょう」

「変態とは行けません」

白石は悲しそうな顔をした。

「分かったわ。行けばいいんでしょ」スミレは立ち上がった。

「あのぉ、ベビーカー押してもいいですか?」

スミレが見たら、全然おさまっていなかった。
「本当に変態ね。いいわよ」

白石はベビーカーを広げ、取っ手にかけたオムツの入った手提げ袋で股間を隠した。

レジに行く。
「僕が払います」

「いいわよ」

「今日は無理矢理誘ったんだから、ホテル代も僕が払います」

「あなた、その姿でフロントに行くつもり?通報されるわよ」

「あぁ」白石の顔が絶望する。

「分かった。ここは払って、ホテルは払うから」

「なんか、すいません」

「恥ずかしいから、早くして」

「はい」




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