遊ばれる男

ぱるゆう

文字の大きさ
9 / 43

思いがけない再会

しおりを挟む
 私は、無事に出産を終えて、3ヶ月が過ぎようとしていた。

 妊娠中、お腹が大きくなってくると、旦那は真っ直ぐ家に帰ってきて、私のお腹を触るのが日課になっていた。

 私はビックリして、
「そんなに子供欲しかったの?結婚前は要らないって言ってたのに」

「結婚前はね。周りで次々と産まれて、それを見てたら、実は欲しくなってたんだ。でも、今さら言えないよ」

「早く言ってくれればよかったのに」

「ホントに?言ったら同意してくれた?」

 私は口籠った。
「多分、嫌って言ったかも・・・」

「そうでしょ。だから、なんとなく心が離れちゃったのかな」

「えっ、まさか!」

「大丈夫だよ。他で作ってない。今は相手も面倒なことにならないよう、ちゃんとしてるから」

「それなら、いいけど。あっ、忘れてた。見せないとね」

「何?」

 私は封筒を渡した。
「あなたも心配だと思って、調べたのよ」

 旦那は封筒の中身を出した。
 そこには、旦那の名前と確率99%と書かれている。
「間違いなくあなたの子供よ」

「良かった。でも、こんなことしなくても良かったのに」

「けじめよ」

「そうかぁ、本当に僕の子供なんだね」
 旦那はまたお腹に耳を当てた。

「ねぇ、キスして」私は言った。

「うん」私達は舌を絡めた。

「ズボン脱いで、してあげる」

「うん、お願い」

 私は肉棒を咥えた。そして口の中に射精した。

 そうして、出産を終え、旦那は産まれてきた娘にメロメロの状態だ。こんな顔をする人だとは夢にも思わなかったけど。フフフッ。




 今日は3人で主に娘のものを買うために、ショッピングモールに来ている。旦那が娘を抱っこ紐で抱え、のんびりと店の中を歩いていた。

 すると、大きな人だかりの中に、大声が聞こえた。
「行ってくる」と私は走った。

「すいません。医者です。通してください」と人混みをかき分ける。

 すると、そこに倒れていたのは、あの子だった。2人の女性が脇で名前を呼んでいて、もう1人の女性が少し離れて号泣していた。

 なんだ、この状況と一瞬怯んだが、そんなことをしてる場合じゃない。

「医者です。どうかしましたか?」と駆け寄る。

「急に倒れたんです」若い方の女性が言った。

 私は頷いて、脈を取り、口に耳当てる。脈は早いけど、呼吸はそうでもない。

「今まで、こういうことは?」

「何度かありました」と年上の女性が言った。

「医者には?」

「しばらくすると、何事もなかったようになるんです。だから、医者には、まだかかっていません」

「過呼吸ではないようなので、強い精神的なストレスで、脳が考えることを止めた、シャットダウンしたように見えます。倒れた時に頭は打ってませんか?」

 2人は、号泣している女性の方を見た。しかし、こっちが見えていないようだ。

 若い女性は
「ねぇ、倒れた時、ジュンは頭を打った?」

「とっさに手を出してぇ、私も一緒に倒れたからぁ、頭は私のお腹の上だった」

 若い女性は私に顔を向けて、
「頭は打ってないみたいです」と言った。

「良かった。でも救急車を呼びますか?検査することをオススメしますが」

 2人は目を合わせた。
「いえ、後日、受診します」と年上の方が言った。

 そこに
「どうかしましたか?」と店員が来た。

「医務室はありますか?それと担架をお願いします」と私は言った。

「分かりました。お待ち下さい」店員は走って行った。

 すぐに男の店員4人と担架が来た。

 頭をなるべく動かさないように私は支えた。掛け声とともに担架に乗せ、医務室のベッドに下ろした。

 再度脈を取った。だいぶ落ち着いたようだ。私はホッとした。

「脈が安定してきたので、もう大丈夫だと思いますが、油断はできません。夜中は、大きなイビキをかいていないか気をつけてください」

「分かりました。本当にありがとうございます」2人とも頭を下げた。

 改めて見ると、2人ともかなりの美人だ。
 えっ、まさか!私は声を上げそうになるのを堪えた。顔が似ている。職業柄、顔の特徴を見てしまう。

「いえいえ、お互い様ですから。最期に厳しいことを言うようですが、精神的なストレスから脳に異常をきたす可能性は低くありません。必ず受診することをオススメします」

「はい、分かりました」年上の女性が言って、赤ん坊を若い方に渡した。私が外に出るのを見送りに来た。
 若い方はあの子に付き添っている。

 私は扉を開け、外に出た。
 外には子供を抱いた旦那がいた。

「あら、ご主人?申し訳ないです」とまた頭を下げた。

「いえいえ、お互い様ですから」と旦那も言う。

「あら?女の子?」

「そうです」

「やっぱり男の子はずっしりとしますね。娘はそんなことなかったのに」

「男の子って、そうですね」

「ごめんね。ママいなくて寂しかったわね」赤ちゃんは顔を反らせた。

「あら?嫌われちゃったかしら。フフフッ。本当にありがとうございました」再び頭を下げた。

「本当にお気になさらずに」私達は会釈をして、その場を離れた。

 角を曲がると、号泣していた女性がいた。
 私だと分かると近づいてきた。
「純太は、大丈夫なんですか?」

「ごめんなさい。家族以外には教えられないわ」

私はそう言い残して、離れた。
旦那は
「大丈夫くらい教えてあげればいいのに」

「何かありそうだから、あの方がいいのよ」





それから翌日になった。

全く会うつもりがなかったから、すっかり忘れていた。旦那とは、もう子作りの必要はないが、子作り中と同じようにしている。それで満足だった。

もう1年くらいか・・・

思い出してしまうと、膣の奥が疼いてくる。

あの子の容態を確認するためよ、スマホを手に取った。

多分、一緒にいた2人は、あの子に失神したことを知らせたくないのだろう。だから、救急車を呼ばなかった。

だから、私が定期期に確認しなくちゃ・・・

私は着信拒否を解除し、発信ボタンを押した。

コール音が響く。

5コール目くらいで切った。電話をかけた理由を話せないことが分かったからだ。

また着信拒否の設定をしようとしたら、着信があった。

あの子からだ。

どうしよう?

でも、体の疼きが止まらない。
受信ボタンを押した。

「スミレさん!良かった。やっと繋がった」元気そうな声だ。

「元気だった?」

「はい、風邪も引かずに元気でした」

「昨日とかは?」

「昨日?あぁ、昨日はショッピングモールで買い物して。あっ!途中で疲れて寝ちゃったんですけど。ハハハッ」

「あぁ、そうなの」話していた通り、何事もなかったように・・・えっ!もしかして、あの号泣していた女性のことを忘れてる?記憶が失われてるの?それほど、あの女性のことを思い出したくないってことね。脳が拒絶するほど。でも、私には関係ないことだ。

「スミレさん、もう一度だけ会えませんか?ちゃんと話したいんです」

「私は話すことはないわ。ただホテルに置き去りにしたことを謝りたかっただけだから」咄嗟に嘘が思いついた。まぁ、これからが勝負だ。

「そんなこと気にしてないです。スミレさんから電話してくれたことが嬉しいんです」

「だから、子供も産まれたし、少し落ち着いたから、思い出して、謝りたかっただけだから。じゃあね」

「ちょっ、ちょっと待ってください。切らないで」

順調過ぎてニヤけてしまう。

「何よ。私の用は終わったの」

「お願いです。会うだけですから」

嘘つき!と大声で罵りたかったが、笑顔で止めた。

「赤ちゃんいるからね」

「分かってます。今からでもいいですか?」

「今から?」大学生なのだろうか?と思ったが、興味があると思われても嫌なので

「いいわよ」思いどおりだ。笑いそうになるのを必死に堪えた。

時間と場所を決めて、電話を切る。

「ハハハハッ」我慢していた笑いが起こった。

シャワーを浴びようと思ったが、気が付かれたら、やる気満々だと思われるので、止めた。

全裸になって下着のタンスを開く、
う~ん?白かな?色付きは、見られた時に、やっぱりやる気満々だと思われるだろう。

下着に両足を通した。太腿のところで止め、股間を触ってみると、もう濡れ始めている。指を入れたくて仕方がない。しかし、今入れたら、いくまでしてしまいそうだ。ぐっと我慢する。テッシュで股間を拭いて、下着を付ける。

短めのキュロットを出して、足だけは出す。産婦人科医として、出産後に太るわけにはいかない。太ってしまったら、患者の妊婦達に示しがつかない。出産後の短期間が勝負なので一生懸命頑張った。だから、出産前よりもスタイルは良くなっているはずだ。
メイクもナチュラル目にする。

赤ちゃん用のお出かけグッズを手提げに入れる。

母親に買い物に行くと告げて、ベビーカーに手提げをぶら下げ、押しながら歩いた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...