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学園生活
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僕はユウタ、10歳になったので、学校に通うことになり、今日は初めての登校の日である。
僕の家は、学校のある町からは少し離れたところで農業と畜産業を営んている。作った野菜や肉は、このモルガンの町や更に離れた王国に買ってもらっているので、そこそこ裕福な方だと思う。
学校に来るのは義務ではないので、僕は来たくはなかったのだが、親は僕のことを心配し、学校に行くことを勧めた。
なぜ来たくなかったと言うと、みんな3歳になると受ける魔力検査で、僕はFランクという数千年に1人と言われる逆奇跡みたいな記録を残したからだ。
それから両親は、僕に医術や、魔術の偉い人に見てもらったりして、なんとかできないか試したが、結果的に無駄に終わってしまった。
ちなみにFランクとは、学校に入るまでに最低限できるようになっておいてくださいね、という勉強で言うと、文字が読めるというレベルだ。
だから、僕は基礎中の基礎の魔法しか使えない。
それでも僕は何も心配していない。
なぜかって?僕はちゃんと魔物を倒すことができるから。
スライムクラスだろって?
いや、そうじゃない。その気になれば、S級冒険者じゃないと倒せない魔物も倒せるはずだ。
はず?実際はないの?と聞きたいだろうが、そもそも、そんな魔物はここには現れない。
もし現れても、僕には誰にも言えない特殊な能力があるんだ。
なぜ誰にも言えないか?って。
その力は魔族の力と言われてもおかしくない、と僕は思っているからだ。ある種、呪いと言ってもいいかもしれない。
僕は、人間の両親から生まれたはず。誰だって、一緒に生活している大人が、間違いなく親だと言えるのかい?
普通はそんなこと考えないって?
僕は、ある女性を何度も夢に見る。その女性は、この世界には存在しない僕と同じことをする。
その女性は、この世界では見かけない服を着て、見たことがない景色の中にいる。
夢だろって?
あぁ、その通り。でも、根拠はないが、いつか会えそうな気がしている。
話は逸れたが、僕には誰にも負けない特別な力がある。
剣技か?って。
いや、僕の体力は、このクラスにいる中でも、下から数えた方が早いだろうし、剣は嫌いじゃないけど、剣技でも、やはり下から数えた方が早いだろう。
でも、能力を使えば、誰にでも勝てる自信はあるけど、知られるわけにはいかない。
だから、目立たないようにしようと思っている。弱いとバカにされることには、十分に慣れている。
「ユウタ、おはよう」机で一人ぼうっとしている僕に声がかかった。
僕は我に返り、顔を上がる。
「おはよう、サユリ」
サユリは、この町で商業を仕切っているギルド長の娘だ。小さい頃から親に連れられて商業ギルドに来ているので、同い年ということが分かってから仲良くしている。
それにしても、相変わらず、可愛い上にスタイルもいい。身長は僕をゆうに超えている。
同い年と知らない人には、一緒にいると弟だと思われたこともあるくらいだ。
「ユウタも、みんなのところ行こうよ」
「えっ、僕はいいよ。一人でいる方が楽だし」
「せっかく学校に来たんだから」
「サユリは、みんなと顔なじみだろ。僕はサユリ以外知らないんだから」
「だから、一緒にって言ってるじゃないの」
「どうせFランクってバカにされるだけだよ」
「そんな人がいたら、私が怒るから大丈夫」
「分かったよ」僕は渋々、サユリの後をついて行った。そして、何人かが集まっているグループのところに来た。
「タカシ、ユウタよ」
タカシと呼ばれた男が振り向いて、
「初めまして、タカシだ」と手を伸ばしてきた。
僕も手を出し握る。他のグループの人がヒソヒソと話した。僕はやっぱりと思い、
「有名なFランクのユウタです」
と自虐的に言った。
「ハッハッハッ、君、面白いね」とタカシは言った。
「だけど、自分の知られたくないことを堂々という勇気は好きだな」とニッコリと微笑んだ。
嫌味なくらい顔もいいし、背も高い。それで、性格も悪くないらしい。
「珍獣扱いには慣れてるから」と僕はニヤリとした。
「ここでは、みんな平等な学生だ。ユウタらしくしていればいい」
確か、冒険者ギルドのギルド長の息子だ。正義感の塊なんだろう。
「ありがとう」と僕は言った。
しかし、この輪に、更にデカくてガタイのいい男が乱入したきた。
「お前がFランクか。よく学校なんて来れたな」
「おい、ケンタ、止めろよ」とタカシは言った。
「タカシ、俺のオヤジが一言言えば、お前のオヤジの代わりなんて、いくらでも用意できるんだぞ」
「ほう。面白い。いくら町長の息子とはいえ、冒険者ギルドに喧嘩売るつもりなのか?」
「2人とも止めなさい」サユリが間に入る。
「サユリ、今回入学した2人だけのAランク同士だ。仲良くしようぜ」
「はぁ?あんたなんかより、タカシやユウタの方が何万倍もマシよ」
「おい、タカシはBランクだから分からなくもないが、そのFランクもか?」
「ねぇ、ユウタ。あなたなら、こんなヤツに負けないもんね」
「サユリ、ちょっといい?」
「何よ」僕達はケンタ達に背中を向けた。
「僕の力は秘密なんだよね」僕は小さい声で、何度も秘密だって言ってるだろという気持ちを込めて言った。
「あっ、そうだったわね」サユリは悪びれた様子もなく言う。
「はぁ、全く」僕は頭を振った。親も知らない僕の能力を唯一知る人、それがサユリ。決して自慢げに話したわけじゃない。あの時は、どうしようもなかったんだ。
「どういうことだ?Aランクの俺がFランク負けるだと?」
「まぁ、何事もやってみないと分からないってことよ」サユリは何とかはぐらかそうとしたようだが、
「何!まだ俺がFランクに負けると思ってるのか!いくら同じAランクといえど、許さないぞ」火に油を注ぐだけだったようだ。
そこで教室のドアが開いた。
「ほら、何やってるの!早く席に着きなさい!」
長い髪を靡かせながら、ボンキュッボンの体にフィットした膝丈のスーツを着た女性が現れた。
「ちっ!」ケンタは舌打ちして、自分の席へと向かった。他の生徒達も慌てて席に着いた。
女性は教壇から生徒を見渡した。
「ようこそ、マグタニア学園へ。担任のハルカ・ウィステリアよ」
「おぉ」と感嘆の声が生徒全員から上がる。もちろん僕も。
この町で、いや世界でその名は知れ渡っている。
さる10年前、僕達が産まれた年にあった魔王との戦争。そして、魔王を倒したパーティにいた10代の天才魔法使い、それがハルカ・ウィステリア。
「ありがとう」先生は苦笑いした。
「早いものね。あの戦争の年に産まれたみんながこうして学校に通う歳になったなんて」
「先生!」サユリは手を挙げた。
「はい、サユリさん」
サユリは僕の隣で立ち上がり、
「魔王との戦いは怖くなかったですか?」
「そうねぇ。怖くなかったと言えば嘘になるかな。でも、それ以上に、世界を守らなくちゃという思いが強かったし、周りには頼りになるパーティメンバーもいたしね。とにかく必死だったわ」
「ありがとうございます」サユリは席に座ると、僕の方に向いて、
「やった!話しちゃった」と小声で言った。
それが聞こえたのかは分からないが、
「みんなが私のことを伝説みたいに思っているのは分かってるわ。でも、見ての通り、私はそんなに年も違わないし、何より、みんなと同じ、この町で産まれた女の子よ。だから、あんまり遠い存在のように感じないで。これから一緒に学園生活を送るんだから」
「女の子?」僕はぼそっと言っしまった。
教壇から、厳しい眼差しが飛んでくるとともに、
「何?何か言いたいことでもあるのかしら?え~と、ユウタ君?」
「いえ、あ~、なんで先生みたいな美人が、まだ独身なのかなぁって思いまして」
教室が凍りつく。僕もしまったと思った。
『命が惜しかったら、ハルカ・ウィステリアの前で結婚の話はするな』そういう噂があることは知っていたのに。
「へ~、ユウタ君。なかなか面白いことを言うのね」
気のせいなのか、先生の手が光っているように感じた。どんどん光が大きくなっていく。
「あ~まずいまずい登校初日で、僕は死ぬのか?」
僕は立ち上がった。
「先生、違うんです。先生みたいな美人をほっとくなんて、なんて世の中の男は見る目がないし、だらしないんだ、と思ったんです!」無我夢中で叫んだ。
少しずつ光が収まっていく。
「そうよね。本当に世の中の男どもは、何も分かってないわよね」
「はい!僕はそんな男にはならないように、頑張ります!」と背筋を伸ばしてまた叫んだ。
「はい…期待してるわよ」先生はニッコリと笑ったが、
「帰る前に、私の研究室に来なさい」と優しい声で付け加えた。
「はい!分かりました!」僕はまた叫び、席に座った。
はぁ、危ない、死ぬところだった、と肩の力を抜いた。
まぁ、先生の最大魔法でも、能力を使えば、ほとんど無傷で済むのは分かっているのだが、能力がバレて社会的に抹殺されるのはゴメンだ。
「これから講堂で、先輩達から部活の案内があるから、移動して」と先生が言った。
「はい」僕達は立ち上がった。先生は先に歩いていく。
「もう、ユウタ、ダメじゃない。初日から目をつけられるなんて」
「ごめん、先生が自分のこと女の子なんて言うから」
「もう!大人になりなさい。そういうことを我慢することも大切なことよ」
「あぁ、分かった」僕はゆっくりと立ち上がった。
タカシが近づいてきた。
「本当にユウタって、面白いね」とニヤニヤした。
「勘弁してくれ。もう問題は起こさないよ。ただでさえ、居づらいのに!」
「ランクのことかい?」
「あぁ、そうだよ」
「ユウタは冒険者になりたいの?」
「憧れた時期は少しはあるけど、諦めた。親の仕事を継ぐつもりだよ」
「だったら、ランクなんて関係ないじゃないか?」
「それは分かってるよ」
「僕なんかBランクのギルドマスターなんて、カッコつかないよ」
「お父さんはAランクなの?」
「うん。昔は有名な冒険者だったらしいんだ。僕がちゃんと理解できる前に引退したけど」
「ふ~ん。タカシはタカシで大変そうだね」
「少しでも強くなりたい。みんなを守れるように」
「みんなの安全はタカシに任せたよ」
「うん、ユウタ、任せて」
「あらら、もう仲良くなったの?」サユリは隣で呆れた声を出した。
「サユリは何になるの?」
「私?私は普通にお嫁さんになりたい」
「えっ!Aランクなのに?」
「別になりたくてなったわけじゃないわよ」
「うわっ!僕の前で、それ言うの?」
「いいでしょ、別に。それともFランクで、可愛そうって言って欲しいの?」
「いや、更に滅入るから止めて。お願い」
「分かってるわよ」
「ユウタとサユリは仲いいね」
「だって、私を守ってくれたんだもんねぇ」
「こら!サユリ!」
「ごめんごめん」サユリは走っていった。その後を僕は追いかける。
「ユウタがサユリを守った?逆じゃなくて?」置いていかれたタカシは首を捻った。
講堂では、生徒会を中心に部活動の説明が行われた。先輩達が趣向を凝らして、なかなか面白かったが、僕はこの後、先生の研究室に呼び出されていることが頭から離れずに、気が重かった。
どっちみち、魔法が前提となったこの世界で、僕ができる部活動など存在するわけがない。
僕の隣では、サユリとタカシが、どこに入るか楽しそうに話していた。
魔力の心配をしなくていい人達には、僕の気持ちなんて分かってもらえるはずはない。
僕の家は、学校のある町からは少し離れたところで農業と畜産業を営んている。作った野菜や肉は、このモルガンの町や更に離れた王国に買ってもらっているので、そこそこ裕福な方だと思う。
学校に来るのは義務ではないので、僕は来たくはなかったのだが、親は僕のことを心配し、学校に行くことを勧めた。
なぜ来たくなかったと言うと、みんな3歳になると受ける魔力検査で、僕はFランクという数千年に1人と言われる逆奇跡みたいな記録を残したからだ。
それから両親は、僕に医術や、魔術の偉い人に見てもらったりして、なんとかできないか試したが、結果的に無駄に終わってしまった。
ちなみにFランクとは、学校に入るまでに最低限できるようになっておいてくださいね、という勉強で言うと、文字が読めるというレベルだ。
だから、僕は基礎中の基礎の魔法しか使えない。
それでも僕は何も心配していない。
なぜかって?僕はちゃんと魔物を倒すことができるから。
スライムクラスだろって?
いや、そうじゃない。その気になれば、S級冒険者じゃないと倒せない魔物も倒せるはずだ。
はず?実際はないの?と聞きたいだろうが、そもそも、そんな魔物はここには現れない。
もし現れても、僕には誰にも言えない特殊な能力があるんだ。
なぜ誰にも言えないか?って。
その力は魔族の力と言われてもおかしくない、と僕は思っているからだ。ある種、呪いと言ってもいいかもしれない。
僕は、人間の両親から生まれたはず。誰だって、一緒に生活している大人が、間違いなく親だと言えるのかい?
普通はそんなこと考えないって?
僕は、ある女性を何度も夢に見る。その女性は、この世界には存在しない僕と同じことをする。
その女性は、この世界では見かけない服を着て、見たことがない景色の中にいる。
夢だろって?
あぁ、その通り。でも、根拠はないが、いつか会えそうな気がしている。
話は逸れたが、僕には誰にも負けない特別な力がある。
剣技か?って。
いや、僕の体力は、このクラスにいる中でも、下から数えた方が早いだろうし、剣は嫌いじゃないけど、剣技でも、やはり下から数えた方が早いだろう。
でも、能力を使えば、誰にでも勝てる自信はあるけど、知られるわけにはいかない。
だから、目立たないようにしようと思っている。弱いとバカにされることには、十分に慣れている。
「ユウタ、おはよう」机で一人ぼうっとしている僕に声がかかった。
僕は我に返り、顔を上がる。
「おはよう、サユリ」
サユリは、この町で商業を仕切っているギルド長の娘だ。小さい頃から親に連れられて商業ギルドに来ているので、同い年ということが分かってから仲良くしている。
それにしても、相変わらず、可愛い上にスタイルもいい。身長は僕をゆうに超えている。
同い年と知らない人には、一緒にいると弟だと思われたこともあるくらいだ。
「ユウタも、みんなのところ行こうよ」
「えっ、僕はいいよ。一人でいる方が楽だし」
「せっかく学校に来たんだから」
「サユリは、みんなと顔なじみだろ。僕はサユリ以外知らないんだから」
「だから、一緒にって言ってるじゃないの」
「どうせFランクってバカにされるだけだよ」
「そんな人がいたら、私が怒るから大丈夫」
「分かったよ」僕は渋々、サユリの後をついて行った。そして、何人かが集まっているグループのところに来た。
「タカシ、ユウタよ」
タカシと呼ばれた男が振り向いて、
「初めまして、タカシだ」と手を伸ばしてきた。
僕も手を出し握る。他のグループの人がヒソヒソと話した。僕はやっぱりと思い、
「有名なFランクのユウタです」
と自虐的に言った。
「ハッハッハッ、君、面白いね」とタカシは言った。
「だけど、自分の知られたくないことを堂々という勇気は好きだな」とニッコリと微笑んだ。
嫌味なくらい顔もいいし、背も高い。それで、性格も悪くないらしい。
「珍獣扱いには慣れてるから」と僕はニヤリとした。
「ここでは、みんな平等な学生だ。ユウタらしくしていればいい」
確か、冒険者ギルドのギルド長の息子だ。正義感の塊なんだろう。
「ありがとう」と僕は言った。
しかし、この輪に、更にデカくてガタイのいい男が乱入したきた。
「お前がFランクか。よく学校なんて来れたな」
「おい、ケンタ、止めろよ」とタカシは言った。
「タカシ、俺のオヤジが一言言えば、お前のオヤジの代わりなんて、いくらでも用意できるんだぞ」
「ほう。面白い。いくら町長の息子とはいえ、冒険者ギルドに喧嘩売るつもりなのか?」
「2人とも止めなさい」サユリが間に入る。
「サユリ、今回入学した2人だけのAランク同士だ。仲良くしようぜ」
「はぁ?あんたなんかより、タカシやユウタの方が何万倍もマシよ」
「おい、タカシはBランクだから分からなくもないが、そのFランクもか?」
「ねぇ、ユウタ。あなたなら、こんなヤツに負けないもんね」
「サユリ、ちょっといい?」
「何よ」僕達はケンタ達に背中を向けた。
「僕の力は秘密なんだよね」僕は小さい声で、何度も秘密だって言ってるだろという気持ちを込めて言った。
「あっ、そうだったわね」サユリは悪びれた様子もなく言う。
「はぁ、全く」僕は頭を振った。親も知らない僕の能力を唯一知る人、それがサユリ。決して自慢げに話したわけじゃない。あの時は、どうしようもなかったんだ。
「どういうことだ?Aランクの俺がFランク負けるだと?」
「まぁ、何事もやってみないと分からないってことよ」サユリは何とかはぐらかそうとしたようだが、
「何!まだ俺がFランクに負けると思ってるのか!いくら同じAランクといえど、許さないぞ」火に油を注ぐだけだったようだ。
そこで教室のドアが開いた。
「ほら、何やってるの!早く席に着きなさい!」
長い髪を靡かせながら、ボンキュッボンの体にフィットした膝丈のスーツを着た女性が現れた。
「ちっ!」ケンタは舌打ちして、自分の席へと向かった。他の生徒達も慌てて席に着いた。
女性は教壇から生徒を見渡した。
「ようこそ、マグタニア学園へ。担任のハルカ・ウィステリアよ」
「おぉ」と感嘆の声が生徒全員から上がる。もちろん僕も。
この町で、いや世界でその名は知れ渡っている。
さる10年前、僕達が産まれた年にあった魔王との戦争。そして、魔王を倒したパーティにいた10代の天才魔法使い、それがハルカ・ウィステリア。
「ありがとう」先生は苦笑いした。
「早いものね。あの戦争の年に産まれたみんながこうして学校に通う歳になったなんて」
「先生!」サユリは手を挙げた。
「はい、サユリさん」
サユリは僕の隣で立ち上がり、
「魔王との戦いは怖くなかったですか?」
「そうねぇ。怖くなかったと言えば嘘になるかな。でも、それ以上に、世界を守らなくちゃという思いが強かったし、周りには頼りになるパーティメンバーもいたしね。とにかく必死だったわ」
「ありがとうございます」サユリは席に座ると、僕の方に向いて、
「やった!話しちゃった」と小声で言った。
それが聞こえたのかは分からないが、
「みんなが私のことを伝説みたいに思っているのは分かってるわ。でも、見ての通り、私はそんなに年も違わないし、何より、みんなと同じ、この町で産まれた女の子よ。だから、あんまり遠い存在のように感じないで。これから一緒に学園生活を送るんだから」
「女の子?」僕はぼそっと言っしまった。
教壇から、厳しい眼差しが飛んでくるとともに、
「何?何か言いたいことでもあるのかしら?え~と、ユウタ君?」
「いえ、あ~、なんで先生みたいな美人が、まだ独身なのかなぁって思いまして」
教室が凍りつく。僕もしまったと思った。
『命が惜しかったら、ハルカ・ウィステリアの前で結婚の話はするな』そういう噂があることは知っていたのに。
「へ~、ユウタ君。なかなか面白いことを言うのね」
気のせいなのか、先生の手が光っているように感じた。どんどん光が大きくなっていく。
「あ~まずいまずい登校初日で、僕は死ぬのか?」
僕は立ち上がった。
「先生、違うんです。先生みたいな美人をほっとくなんて、なんて世の中の男は見る目がないし、だらしないんだ、と思ったんです!」無我夢中で叫んだ。
少しずつ光が収まっていく。
「そうよね。本当に世の中の男どもは、何も分かってないわよね」
「はい!僕はそんな男にはならないように、頑張ります!」と背筋を伸ばしてまた叫んだ。
「はい…期待してるわよ」先生はニッコリと笑ったが、
「帰る前に、私の研究室に来なさい」と優しい声で付け加えた。
「はい!分かりました!」僕はまた叫び、席に座った。
はぁ、危ない、死ぬところだった、と肩の力を抜いた。
まぁ、先生の最大魔法でも、能力を使えば、ほとんど無傷で済むのは分かっているのだが、能力がバレて社会的に抹殺されるのはゴメンだ。
「これから講堂で、先輩達から部活の案内があるから、移動して」と先生が言った。
「はい」僕達は立ち上がった。先生は先に歩いていく。
「もう、ユウタ、ダメじゃない。初日から目をつけられるなんて」
「ごめん、先生が自分のこと女の子なんて言うから」
「もう!大人になりなさい。そういうことを我慢することも大切なことよ」
「あぁ、分かった」僕はゆっくりと立ち上がった。
タカシが近づいてきた。
「本当にユウタって、面白いね」とニヤニヤした。
「勘弁してくれ。もう問題は起こさないよ。ただでさえ、居づらいのに!」
「ランクのことかい?」
「あぁ、そうだよ」
「ユウタは冒険者になりたいの?」
「憧れた時期は少しはあるけど、諦めた。親の仕事を継ぐつもりだよ」
「だったら、ランクなんて関係ないじゃないか?」
「それは分かってるよ」
「僕なんかBランクのギルドマスターなんて、カッコつかないよ」
「お父さんはAランクなの?」
「うん。昔は有名な冒険者だったらしいんだ。僕がちゃんと理解できる前に引退したけど」
「ふ~ん。タカシはタカシで大変そうだね」
「少しでも強くなりたい。みんなを守れるように」
「みんなの安全はタカシに任せたよ」
「うん、ユウタ、任せて」
「あらら、もう仲良くなったの?」サユリは隣で呆れた声を出した。
「サユリは何になるの?」
「私?私は普通にお嫁さんになりたい」
「えっ!Aランクなのに?」
「別になりたくてなったわけじゃないわよ」
「うわっ!僕の前で、それ言うの?」
「いいでしょ、別に。それともFランクで、可愛そうって言って欲しいの?」
「いや、更に滅入るから止めて。お願い」
「分かってるわよ」
「ユウタとサユリは仲いいね」
「だって、私を守ってくれたんだもんねぇ」
「こら!サユリ!」
「ごめんごめん」サユリは走っていった。その後を僕は追いかける。
「ユウタがサユリを守った?逆じゃなくて?」置いていかれたタカシは首を捻った。
講堂では、生徒会を中心に部活動の説明が行われた。先輩達が趣向を凝らして、なかなか面白かったが、僕はこの後、先生の研究室に呼び出されていることが頭から離れずに、気が重かった。
どっちみち、魔法が前提となったこの世界で、僕ができる部活動など存在するわけがない。
僕の隣では、サユリとタカシが、どこに入るか楽しそうに話していた。
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