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【夜釣り1】
しおりを挟む「時に、諸君らはサークルなどには入らないのか? この大学には多種多様なものがあると聞く。こうして毎日私の部屋を訪ねて来なくとも、有意義な学生生活は送れるのじゃないかね」
鬼ケ原先輩は部屋で読書に勤しんでいる私達に向かって言い放った。
「そうですけど、ここほど学内で学内らしからぬ場所は無さそうで。それに、ほら彼女だって気の置けない姿でいられますし」
机を挟んで対面している彼女は尻尾をふわりと動かして見せた。
「ほう、いつの間にそんな反骨的な態度になったのか。まあ、騒ぐわけでも無いので構いやしないがな。そんなにすることもないほど暇なら、そうだ、あれは何処にやったか」
そう言って彼はふらりと部屋の奥へと入っていった。部屋の奥ではがたがたと物を漁るような音や時々何かが割れるような音がしていたが気にせず私達は読書に耽った。
「何かお探しなのでしょうか?」
暫く経ってもなお鳴り止まぬ騒音に彼女が口を開いた。
「そうみたいだね。いい加減手伝いに行こうか」
そう言って二人が立ち上がった時にちょうど彼が戻ってきた。手には細長い棒のような物を持っていた。
「あったぞ。一本予備があったからこれでちょうど三本だ」
「それは何でしょうか?」
得意げな表情を浮かべている。
「自由気儘な学生だというのに、私の部屋に籠っている諸君らにこれを貸してやろうと思ってな」
腕を差し出してその棒わこちらに見せてきた。
「これは、釣り竿、ですか?」
「ご名答。まさに釣り竿だ」
彼女は不思議そうにそれを受け取った。
「いや、ちょっと待ってください。ここら辺に釣りなんてできる所なんてありましたっけ?」
いつものように机の上の椅子に腰掛け、煙管を吸い始めた。
「魚が釣れるのは何も海や川だけではないぞ。まあ行けばわかるさ。諸君らは今日の晩は空いているかな?」
二人ともいつも通り予定は無かったため、頷いた。
「では決まりだな。日付が変わる頃になったらまたこの部屋に来ると良い。そしたら夜釣りに出かけよう」
話はよく分からなかったが、とりあえず私たちの為に成してくれる事だということは分かっだため、感謝の言葉を述べて私たちはとりあえず部屋を出されるように出た。
「もう、何が何だか」
「ですね、とりあえず一度帰るというのも面倒ですし、何処かでお茶でもしませんか」
彼女に誘われるがまま、私たちは夜が更けるのを待ったのだった。
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