永遠の伴侶(改定前)

白藤桜空

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華は根に、鳥は古巣に帰る

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 ある晴れた日の昼下がり。今や日常となった血みどろの戦いの最中さなか美琳メイリンの目の前で異変が起こった。
「何……? なんであいつら急に方向転換してるの……?」
 戦の真っ只中であるというのに、土煙を立てて去っていくガン兵。しかも移動に手間取る投石機まで運びながら。
 突然のことにシュウ兵たちは面食らう。こちらのことを振り返ることなくまっすぐに撤退して行く彼らを、美琳らは呆然と見守るしかなかった。
「ちょ、ちょっと、護衛長。何が起きたの?」
 美琳は困惑しながら浩源ハオヤンの馬車に近付く。が、浩源も答えを持ち合わせていなかった。
「私にも何がなんだか…………」
 そこまで言ったところでふと気づき、浩源は兵たちに向かって叫ぶ。
「皆さん! このまま待機してください! 罠の可能性もありますので、各々休憩を取りながら警戒しなさい!」
「はッ!」
 兵たちは大声で応える。そして周囲を警戒しつつも、その場で体を休めるのであった。



 ――――それから夕焼けで空が真っ赤に染まる頃になっても、剛軍が戻ってくることはなかった。
 この時間まで何も起こらないのであれば流石に大丈夫だろう、ということになり、修軍は陣営に戻ることにした。
「一体なんだったの?」
 撤退する道中、美琳は訝し気に剛軍が消えた方向を見つめる。
「まだ何とも言えませんが……あれ程の慌てぶりは只事ではないでしょうね」
「ふぅん」
 と、美琳は聞いておきながら大して興味はなさそうである。
「ねえ、このまま戻って来なかったらどうなるの?」
「それもまだ分かりませんね。ただ、間諜ジァンディエからの情報次第では終結したと考える可能性も出てきますが」
「どうして?」
「前にお話しした雪峰シェンフォン殿なのですが……あれからめっきり姿を見せず、都城とじょうで何か兵が必要なことが起きたのではないかと…………いや、もしくは……」
 浩源が言葉を濁したのを、美琳は小首を傾げて聞く。
「もしくは、何?」
「何かをのではないか、と」
「起こした……」
 二人の言葉は薄暗い夜に吸い込まれていった。
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