侯爵令息の数奇な運命

野咲

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第二章

平穏の終わり

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 僕は自分の部屋に戻る前に、身体を清めようと井戸に向かった。しかし、井戸の周りには使用人が何人かいて、近づけなかった。僕が近づいていけば向こうが退くとは思うが、なんとなくそうしたくなかった。時間をずらせば井戸も空くだろう。このままでいるのは気持ち悪いが、いったん小屋に戻ることにした。

 小屋に戻ると、なぜかヘンリーが僕を待っていた。扉を開くと中から笑顔のヘンリーが飛び出てきて、僕は固まってしまった。彼は公爵家のお仕着せを着ていた。
「ねえ見て。僕も明日からこのお屋敷で働かせてもらうことになったんだよ! どう、似合うかな?」
 くるっと回って、僕の反応を待つ。そして、僕が凍り付いているのに気づいて、ヘンリーは僕に近づいてきた。僕は逃げたくなって、後ろに二、三歩下がった。
「どうしたの?」
 ヘンリーは僕の異変を感じ取って、慎重に距離を詰めてきた。
「あ……」
 ヘンリーが僕に観察の目を走らせる。
「アルファのにおいがする……どうしたの?」
 ぐいっと服の裾を掴まれて、僕はもう逃げられなくなった。
「エドワード、まさか……」
「ち、違うんだ……」
 ヘンリーは怒りの形相を浮かべて、グラニフ公の部屋に押しかけていく勢いだった。僕は慌てて彼を止めた。
「これは、同意だから……」
「同意?」
 荒々しく僕を振り返り、ヘンリーは言った。
「こんなのが同意なわけない! たとえ同意だったとしても、こんな状態で部屋の外に放り出すなんてありえない!」
「だからといって、どうしようもないじゃないか!」
 ヘンリーが心配してくれているのはわかっているのに、僕はたまらなくなって叫んだ。
「しょうがないことだと、納得するしかないじゃないか!」
 ヘンリーは黙った。そして悔しそうにうなった。
「お湯をもらってくるよ」
 そう言って、ヘンリーは母屋の方へ行った。僕は自分の部屋に戻って、座ってヘンリーを待った。お湯を持ってきたヘンリーは僕の湯あみを手伝ってくれた。彼が小さくごめんねとつぶやいてくれて、胸が詰まった。



 それからしばらくは、おだやかな日々が続いた。ヘンリーは使用人としてよくやっているようだった。裁縫が得意だから、奥方のいないこのお屋敷では重宝されているらしい。ヘンリーは仕事終わりの夕方に僕の部屋に来て、他愛のない話をして、日が暮れたころに帰っていく。彼と過ごす時間は本当に楽しかった。いつまでもこんな日々が続けばいいと思っていたけど、やっぱりそうはいかないのだ。
 ヘンリーの彼氏から手紙の返事が来て、すぐにも戻ってくるということらしい。つまり、ヘンリーはこの屋敷から出て行ってしまう。その話をヘンリーから聞いたとき、僕はうまく笑えていただろうか? ヘンリーの幸せを一緒に喜んであげたいのに、これからの彼がいない日々を思うと、心からは笑えないのだった。
 ヘンリーの彼氏はいつこちらへ着くのだろう。着いたらすぐにでも、ここから出て行ってしまうんだろうか。そんなことを考えて、僕の心は曇った。
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感想 7

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みんなの感想(7件)

ゆゆゆ
2026.01.05 ゆゆゆ

明けましておめでとうございます!
新年から続きを読めて幸せいっぱいの一年確定しました!
ヘンリーにはずっとエドワードの味方でいて欲しい……!

ご無理のない範囲でまたこちらのお話を読めたら嬉しいです!

2026.01.06 野咲

ゆゆゆさん、あけましておめでとうございます!
いつもありがとうございます!!!
ヘンリーまだ活躍予定…なのでどうぞよろしくお願いします✨✨

解除
きんちゃん
2025.10.05 きんちゃん

最近更新多くて嬉しいです!
無理せず楽しんでください!

2025.10.06 野咲

ありがとうございます!
なかなか進まなくてすみません…
見捨てずよろしくお願いします!!><

解除
えんちっち
2025.09.01 えんちっち

めっちゃ好きですー!更新楽しみにしてます!!

2025.09.06 野咲

ありがとうございます!!
がんばります・・・・・・!!

解除

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