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50年後の勇者と魔王
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エルダー暦2080年。
剣と魔法の争いが終わって20年。魔物と人類たちの戦いの爪痕もすっかりとなくなり、世界は平和そのものだった。
ボルダー公国某所にてー。
鳩の飛び交う公園の釣り堀に一人、釣りを嗜む老人がいた。その老人にもう一人の老人が近づいて来た。
「隣、よろしいですかな?」
「ああ…。これはこれは。どうぞ。」
後から来た老人は会釈し、隣に座って同じく釣りを始めた。
「お久しぶりですな。魔王さん。20年ぶり…ですかな?」
「ええ、勇者さん。正確には20年と5ヶ月ぶりです。」
魔王と呼ばれた老人は、釣り針に海老を刺している。
「あの和平会議から20年…。早いものですな。」
「まったくです。あの頃の争いが嘘のようだ…。世界は平和そのものになった。」
「覚えていますか?我々が初めて戦った日を…。」
「ええ。もちろんですとも。」
ー50年前。魔王城。
「とうとうここまで来たか!勇者よ!」
「魔王!貴様の野望もここまでだ!」
幾多の試練をかいくぐり、魔王の元に単身乗り込んだ勇者。多くの敵との戦いのために、剣はひび割れ、盾は欠け、鎧はほころび、されどその眼は強い闘志に燃えていた。
「そんな傷だらけで、我に勝つつもりか。」
「勝つ!絶対に俺は負けない!例えこの身が四散しようと、血の一滴になるまで戦ってやる!」
「ふん…。大した闘志だ。ならば…。」
魔王は勇者に向かい、呪文を唱えた。すると勇者の身につけているものがみるみる元に戻っていった。
「これは…!どういうつもりだ!貴様の助けなど借りん!」
「勘違いするな。そんなズタボロの姿のお前を嬲り殺しても面白くない。万全の貴様を殺してこそ、人類に絶望を与えられるというもの。」
「後悔するなよ…!貴様の思い通りにはならん!」
「来るがいい!勇者!勝つのは私だ!」
「絶対に負けん!」
魔王と勇者の戦いがこの時始まった…!
「お互い、若かったですな。」
「まったくです。いくら何でも、一人で城に乗り込むなんて無茶をするとは…。」
「あなたの方こそ、そんな男を全快させるなんて無謀なことを。」
はっはっは…。
二人の笑い声が公園に響き渡る。二人の釣り糸にはまだ獲物がかからないようだ。
「その時の戦いの結果は私の敗北。今振り返っても見事でした。勇者さん。」
「いや、あの時はどちらが倒れてもおかしくなかった。私が勝てたのは奇跡ですよ。」
「ご謙遜を。」
ーーと。魔王の釣り糸に手応えがあった。
「お…!」
バシャバシャと水面が跳ね上がった。
「どうやら、私が先に当たったようですな…!」
必死に釣り上げようとする魔王。が、勇者はその釣り糸に向かって気を放った。
「ふん!」
たちまちその周囲に真空波がおき、釣り糸は切れてしまった。
「いや~、残念でしたな。魔王さん。」
ホッホッホ、と嗤う勇者をジト目で見上げる魔王。
「…いやなんのこれしき。まだまだこれからですよ。覚えていますか?二度目の戦いのことを。」
「ああ…。」
最初の戦いから、10年。エルダー城。
勇者との戦いに敗れた魔王は奇跡の復活を遂げ、魔王軍を結成。勇者への復讐を誓い、進軍していた。
対する勇者側も、仲間達と共に各地の魔王軍の侵攻を阻止し続けていた。
だが、抵抗むなしく魔王軍の侵攻は止められず、とうとう人類最後の砦、勇者の元へとやってきた。
「ご機嫌いかがかな?勇者諸君。」
「魔王…!やはり生きていたのか…!」
「おかげさまでな。さあ、あとは貴様を倒してフィナーレだ!」
「待て!」
勇者は魔王に薬瓶を投げ渡した。
「貴様…。どういうつもりだ?」
「勘違いするな。10年前の借りを返しただけだ。」
「ふん…。フェアプレー気取りか。」
「貴様に世界は渡さん!」
「ほざけぇ!」
「…あの時は私の負けでしたな。魔王さん。」
「またご謙遜を。あの時は私も深手を負って、退却せざるを得なかった。」
昔を懐かしむ二人。語り合う二人が座る釣り堀にはしばらく静寂が訪れていた。
ーーと。今度は勇者の釣り糸に手応えがあった!
「おっとっと…!」
さっきよりも強い引きだ。またしてもバシャバシャと水面が波立つ。
「今度は私の番ですな!しかもさっきよりも大物だ!」
そう言うと勇者は、勢い良く釣竿を持ち上げた。すると、魔王はピンと張った釣り糸に向かって気を放った。
「むん!」
魔王の指先から火の玉が放たれ、釣り糸は焼き切られてしまった。
「残念でしたな~。勇者さん。」
はっはっは、と嗤う魔王。ジト目で見上げる勇者。
「…いえいえ、なんのこれしき。まだまだこれからですよ。」
またしばらくの静寂。二人とも、未だ釣果はゼロだ。
「…思えば私たちは敵として争ってばかりだった。いつからこの関係が変わったのでしょう?」
「…お互いに息子が産まれてからでは無いですか?」
「…ああ。」
勇者は空を見上げ、初めて息子が産まれた日のことを想った。
ー30年前。ボルダー峡谷。
「貴様と戦うのもこれで何度目となるかな。懲りぬやつめ!」
「貴様もな!」
何年もの間続いた、魔王と勇者の戦い。回を重ねるごとに、二人の間には奇妙な友情が芽生えていた。
「そういえば、いつもの女はどうした?確か神官の娘が一人いたはずだが…。」
「…彼女は今回は訳あって来れない。」
「…死んだのか?」
「いや、そうじゃない。彼女は、この戦いには今回参加していないんだ。」
「何故?」
「そ、それは…。」
言葉を濁す勇者の元に伝書鳩がやって来た。勇者は、早速鳩から伝言を受け取る。
「…あ。……産まれた。俺の…俺の子が!」
「なんと!」
魔王はそれで全てを察した。
「そうかそうか。お前達デキていたんだな?」
「な、何がおかしい!」
「別に恥じることはない。美しい娘だったからな。無理もない。」
そう言って、魔王は空を見上げた。
「俺もつい先日息子が産まれたという報せを受けたよ。母子共に健康だそうだ。」
「本当に?」
「ああ。」
「おめでとう。」
「ありがとう。…だがお前達にとってはめでたくはないだろう?」
「まったくだな。」
はははは、と談笑する二人。
「ほれ。出産祝いだ。受け取れ。」
魔王は勇者に向かって何かを投げた。
鮮やかに光るルビーだった。
「…ありがとう。」
気づけばお互い、剣を収めていた。
「なあ、あんたは一体何のために戦ってるんだ?」
「うん?」
「俺は人類を魔物達から守るため、戦ってきた。あんたは何の為に。」
「魔物達の繁栄の為だ。人類たちによって、我々の住処はどんどん追いやられてしまった。それをまた取り戻すのが私の使命だ。」
「…そうか。じゃあ魔物達にとっては、あんたが勇者で俺が魔王になるわけか。」
「まあ、そうなるな。」
「お互い似たようなものだったわけか。それぞれの世界を守るため、戦い続けてきたんだな…。」
「…そうだな。」
そう言って、魔王は懐から手紙を取り出した。自分に息子が産まれた報せの手紙だった。
「一体いつまでこの戦いは続くのだろう…。」
「魔物と人類が争い続ける限り、ずっと続くのだろう。」
「せめて息子が大きくなる頃には、戦いを終わらせたいものだ。息子達には、平和に暮らしてもらいたい…。」
「ああ…。」
お互いに、祖国にいる家族のこと、産まれたであろう息子のことを想った…。
「なあ、今度の戦いは主旨を変えてみないか?」
「どう変えるんだ?」
「そうだな…。魔物と人類が手を取り合う世界に変える戦い、なんてどうだ?」
勇者の提案に魔王は戸惑った。
「それはおもしろそうだが…。だが無理だ。我々は手を取り合うには、人類から傷を負いすぎた。この傷はなまなかなことでは癒えはしない。」
「それは人類にだって同じこと。俺も両親を魔物に殺された…。お前達魔物と戦ってきたのも、半ば私怨だ。だが、自分の子供には、俺の勝手な恨みを背負わせたくない。こんな戦いは俺の代で終わらせたい。」
「同感だ。」
「だからさ、勝負をしよう。お互いが手を取りあえるようになる世界にするまで何年かかるか、勝負だ。」
「…いいだろう。今度は私が勝つぞ。」
「いいや、俺が勝つ。」
「あれから、もう30年。長かったですな…。」
「ええ…。しかし、我々が望んだ通り、戦いを終わらせることができた。」
「和平には息子達も協力してくれた。」
「今や、彼らこそが平和の象徴となった…。何と誇らしいことか…。」
しみじみと語り合う二人。両者の目には涙が見えた。
「もう…、我々の為すべきことは果たした。」
「ええ…。あとはゆっくりと余生を過ごすのみ。」
ーーと。ここで両方の釣竿に手応えが!
「おおっ!?」
「やややっ!?」
夢中で釣竿を持ち上げる両者。
「わしが先に釣り上げる!」
「いいや!わしじゃ!わしが先に釣り上げる!」
ーープツン。
釣り糸が切れた…。獲物が釣り糸を引きちぎってしまったようだ。
「…こうなればどちらが先に釣り上げるか勝負じゃ!」
「おう!やるか、老いぼれ!わしが勝つぞ!」
「黙れ!クソジジイ!勝つのはわしじゃ!」
喚き合う二人の老人をよそに、公園では戯れ合う魔物と人類の姿があった。球技をする者。チェスを楽しむ者。談笑する者ーー。
もうこの世界ではこれが日常の風景となっていた。
剣と魔法の争いが終わって20年。魔物と人類たちの戦いの爪痕もすっかりとなくなり、世界は平和そのものだった。
ボルダー公国某所にてー。
鳩の飛び交う公園の釣り堀に一人、釣りを嗜む老人がいた。その老人にもう一人の老人が近づいて来た。
「隣、よろしいですかな?」
「ああ…。これはこれは。どうぞ。」
後から来た老人は会釈し、隣に座って同じく釣りを始めた。
「お久しぶりですな。魔王さん。20年ぶり…ですかな?」
「ええ、勇者さん。正確には20年と5ヶ月ぶりです。」
魔王と呼ばれた老人は、釣り針に海老を刺している。
「あの和平会議から20年…。早いものですな。」
「まったくです。あの頃の争いが嘘のようだ…。世界は平和そのものになった。」
「覚えていますか?我々が初めて戦った日を…。」
「ええ。もちろんですとも。」
ー50年前。魔王城。
「とうとうここまで来たか!勇者よ!」
「魔王!貴様の野望もここまでだ!」
幾多の試練をかいくぐり、魔王の元に単身乗り込んだ勇者。多くの敵との戦いのために、剣はひび割れ、盾は欠け、鎧はほころび、されどその眼は強い闘志に燃えていた。
「そんな傷だらけで、我に勝つつもりか。」
「勝つ!絶対に俺は負けない!例えこの身が四散しようと、血の一滴になるまで戦ってやる!」
「ふん…。大した闘志だ。ならば…。」
魔王は勇者に向かい、呪文を唱えた。すると勇者の身につけているものがみるみる元に戻っていった。
「これは…!どういうつもりだ!貴様の助けなど借りん!」
「勘違いするな。そんなズタボロの姿のお前を嬲り殺しても面白くない。万全の貴様を殺してこそ、人類に絶望を与えられるというもの。」
「後悔するなよ…!貴様の思い通りにはならん!」
「来るがいい!勇者!勝つのは私だ!」
「絶対に負けん!」
魔王と勇者の戦いがこの時始まった…!
「お互い、若かったですな。」
「まったくです。いくら何でも、一人で城に乗り込むなんて無茶をするとは…。」
「あなたの方こそ、そんな男を全快させるなんて無謀なことを。」
はっはっは…。
二人の笑い声が公園に響き渡る。二人の釣り糸にはまだ獲物がかからないようだ。
「その時の戦いの結果は私の敗北。今振り返っても見事でした。勇者さん。」
「いや、あの時はどちらが倒れてもおかしくなかった。私が勝てたのは奇跡ですよ。」
「ご謙遜を。」
ーーと。魔王の釣り糸に手応えがあった。
「お…!」
バシャバシャと水面が跳ね上がった。
「どうやら、私が先に当たったようですな…!」
必死に釣り上げようとする魔王。が、勇者はその釣り糸に向かって気を放った。
「ふん!」
たちまちその周囲に真空波がおき、釣り糸は切れてしまった。
「いや~、残念でしたな。魔王さん。」
ホッホッホ、と嗤う勇者をジト目で見上げる魔王。
「…いやなんのこれしき。まだまだこれからですよ。覚えていますか?二度目の戦いのことを。」
「ああ…。」
最初の戦いから、10年。エルダー城。
勇者との戦いに敗れた魔王は奇跡の復活を遂げ、魔王軍を結成。勇者への復讐を誓い、進軍していた。
対する勇者側も、仲間達と共に各地の魔王軍の侵攻を阻止し続けていた。
だが、抵抗むなしく魔王軍の侵攻は止められず、とうとう人類最後の砦、勇者の元へとやってきた。
「ご機嫌いかがかな?勇者諸君。」
「魔王…!やはり生きていたのか…!」
「おかげさまでな。さあ、あとは貴様を倒してフィナーレだ!」
「待て!」
勇者は魔王に薬瓶を投げ渡した。
「貴様…。どういうつもりだ?」
「勘違いするな。10年前の借りを返しただけだ。」
「ふん…。フェアプレー気取りか。」
「貴様に世界は渡さん!」
「ほざけぇ!」
「…あの時は私の負けでしたな。魔王さん。」
「またご謙遜を。あの時は私も深手を負って、退却せざるを得なかった。」
昔を懐かしむ二人。語り合う二人が座る釣り堀にはしばらく静寂が訪れていた。
ーーと。今度は勇者の釣り糸に手応えがあった!
「おっとっと…!」
さっきよりも強い引きだ。またしてもバシャバシャと水面が波立つ。
「今度は私の番ですな!しかもさっきよりも大物だ!」
そう言うと勇者は、勢い良く釣竿を持ち上げた。すると、魔王はピンと張った釣り糸に向かって気を放った。
「むん!」
魔王の指先から火の玉が放たれ、釣り糸は焼き切られてしまった。
「残念でしたな~。勇者さん。」
はっはっは、と嗤う魔王。ジト目で見上げる勇者。
「…いえいえ、なんのこれしき。まだまだこれからですよ。」
またしばらくの静寂。二人とも、未だ釣果はゼロだ。
「…思えば私たちは敵として争ってばかりだった。いつからこの関係が変わったのでしょう?」
「…お互いに息子が産まれてからでは無いですか?」
「…ああ。」
勇者は空を見上げ、初めて息子が産まれた日のことを想った。
ー30年前。ボルダー峡谷。
「貴様と戦うのもこれで何度目となるかな。懲りぬやつめ!」
「貴様もな!」
何年もの間続いた、魔王と勇者の戦い。回を重ねるごとに、二人の間には奇妙な友情が芽生えていた。
「そういえば、いつもの女はどうした?確か神官の娘が一人いたはずだが…。」
「…彼女は今回は訳あって来れない。」
「…死んだのか?」
「いや、そうじゃない。彼女は、この戦いには今回参加していないんだ。」
「何故?」
「そ、それは…。」
言葉を濁す勇者の元に伝書鳩がやって来た。勇者は、早速鳩から伝言を受け取る。
「…あ。……産まれた。俺の…俺の子が!」
「なんと!」
魔王はそれで全てを察した。
「そうかそうか。お前達デキていたんだな?」
「な、何がおかしい!」
「別に恥じることはない。美しい娘だったからな。無理もない。」
そう言って、魔王は空を見上げた。
「俺もつい先日息子が産まれたという報せを受けたよ。母子共に健康だそうだ。」
「本当に?」
「ああ。」
「おめでとう。」
「ありがとう。…だがお前達にとってはめでたくはないだろう?」
「まったくだな。」
はははは、と談笑する二人。
「ほれ。出産祝いだ。受け取れ。」
魔王は勇者に向かって何かを投げた。
鮮やかに光るルビーだった。
「…ありがとう。」
気づけばお互い、剣を収めていた。
「なあ、あんたは一体何のために戦ってるんだ?」
「うん?」
「俺は人類を魔物達から守るため、戦ってきた。あんたは何の為に。」
「魔物達の繁栄の為だ。人類たちによって、我々の住処はどんどん追いやられてしまった。それをまた取り戻すのが私の使命だ。」
「…そうか。じゃあ魔物達にとっては、あんたが勇者で俺が魔王になるわけか。」
「まあ、そうなるな。」
「お互い似たようなものだったわけか。それぞれの世界を守るため、戦い続けてきたんだな…。」
「…そうだな。」
そう言って、魔王は懐から手紙を取り出した。自分に息子が産まれた報せの手紙だった。
「一体いつまでこの戦いは続くのだろう…。」
「魔物と人類が争い続ける限り、ずっと続くのだろう。」
「せめて息子が大きくなる頃には、戦いを終わらせたいものだ。息子達には、平和に暮らしてもらいたい…。」
「ああ…。」
お互いに、祖国にいる家族のこと、産まれたであろう息子のことを想った…。
「なあ、今度の戦いは主旨を変えてみないか?」
「どう変えるんだ?」
「そうだな…。魔物と人類が手を取り合う世界に変える戦い、なんてどうだ?」
勇者の提案に魔王は戸惑った。
「それはおもしろそうだが…。だが無理だ。我々は手を取り合うには、人類から傷を負いすぎた。この傷はなまなかなことでは癒えはしない。」
「それは人類にだって同じこと。俺も両親を魔物に殺された…。お前達魔物と戦ってきたのも、半ば私怨だ。だが、自分の子供には、俺の勝手な恨みを背負わせたくない。こんな戦いは俺の代で終わらせたい。」
「同感だ。」
「だからさ、勝負をしよう。お互いが手を取りあえるようになる世界にするまで何年かかるか、勝負だ。」
「…いいだろう。今度は私が勝つぞ。」
「いいや、俺が勝つ。」
「あれから、もう30年。長かったですな…。」
「ええ…。しかし、我々が望んだ通り、戦いを終わらせることができた。」
「和平には息子達も協力してくれた。」
「今や、彼らこそが平和の象徴となった…。何と誇らしいことか…。」
しみじみと語り合う二人。両者の目には涙が見えた。
「もう…、我々の為すべきことは果たした。」
「ええ…。あとはゆっくりと余生を過ごすのみ。」
ーーと。ここで両方の釣竿に手応えが!
「おおっ!?」
「やややっ!?」
夢中で釣竿を持ち上げる両者。
「わしが先に釣り上げる!」
「いいや!わしじゃ!わしが先に釣り上げる!」
ーープツン。
釣り糸が切れた…。獲物が釣り糸を引きちぎってしまったようだ。
「…こうなればどちらが先に釣り上げるか勝負じゃ!」
「おう!やるか、老いぼれ!わしが勝つぞ!」
「黙れ!クソジジイ!勝つのはわしじゃ!」
喚き合う二人の老人をよそに、公園では戯れ合う魔物と人類の姿があった。球技をする者。チェスを楽しむ者。談笑する者ーー。
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