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彼女の仁義

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深窓のお嬢様とは思えない声を上げてしまったせいで屋敷中大騒ぎになってしまった。

そのせいで確認が遅くなったけど私は確かに未来に婚約破棄されてうっかり死んでしまうマリアベル本人で間違えない。というか澄ました美形家族の癖に末っ子の娘にはデロデロの甘々な人たちが他にいたら見てみたいわ。

私よくアレに囲まれてまともに育ったわね。

え?子爵令嬢を虐め抜く奴はまともじゃないって?まあそう言われたら間違いはないんだけど。同義に反することは一切やっていない。

1.怪我させない
2.本人の素質以外でどうにもならないことを貶しめない
3.権力を使わない
4.窃盗、恐喝など行わない
5.どんなときでも1対1
6.やったことに対して責任を持つ

これは絶対に守ってきた。

実は、一回私のうっかりで、階段でお話し合いをしていたら足を滑らせてしまったことがある。彼女は私を咄嗟に庇い、一緒に階段から落下してしまった。私は擦り傷、打撲なのに彼女は足を捻挫してしまって、本当に申し訳なかった。すぐさま医者に連れて行き、精密検査まで受けさせた。結果的には致命的な怪我はなかったけど、それだけじゃ済まされない。

だからご家族への謝罪と当座の治療の費用、階段から落ちた際に破損した物品の補填はさせて貰った。うちの馬車での送り迎えも提案はしたのだけど断られてしまった。目立ってしまうものね。しかし、彼女の家は毎日娘のために出す馬車はないはずだった。毎日歩いて登校していたのは知っているから。市内の馬車を借り入れて怪我が治るまでの契約をさせてもらった。

誠心誠意謝罪する私に、彼女のご両親は不思議に思われているようだった。なぜかと問われて返す言葉は決まっている。

「私は確かに娘さんに対して、良い感情は抱いておりません。だから忠告もさせていただいています。少々行き過ぎたものであると自覚もしております。ですが、怪我をさせることは本意ではありません。私の個人の感情により彼女の将来が閉ざされてしまうなんて、あってはならないことです。本当に申し訳ありませんでした。」

塩を投げられてもおかしくないって言うのに菓子折りも持たせて帰らせるって本当に彼女の一族はお人好しの集まりよね。
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