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未来予想図

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どうしようかしら。あの浮気野郎が学生時代の甘い考えで、最初にあの子に声をかけたことは知っている。あの子が思いの外純粋だったばかりに、浮気野郎の思惑に乗らず、逆にミイラとりがミイラになってしまった。情けないったらありゃしないけれどまあ初恋って厄介なものよね。それも権力者の遅くきた初恋なんて手に負えないわ。クズに付ける薬ってないものかしら。

アレと結婚なんて面倒くさすぎるわ。時間は、鏡を見た感じおそらく学園に入学する前辺り。もうとっくに婚約しているのよね。

アレとの仲は可もなく不可もなくと言ったところ。私はアレが好きだったけれど、盲目になっていたわけではなくて、アレが私をどうとも思ってないことくらい察していた。それに関して何かを言った覚えはない。だから私はアレの婚約者であり得たのだ。アレは私の気持ちくらい察していたのだろうけど。

『お嬢さま、明日の学園の入学式に関して、ご主人様からお話があるそうです。』

ああ、入学前夜なのね。私付きの侍女のアリアに返事をして、立ち上がった。記憶の端にこびりつく程度に覚えていたお父様の話を聞き流しながら考える。この先どうしていくのが良いのだろう、と。

勉強は好きだけど専門家や教授になるほど突き詰められはしないだろう。家庭教師くらいはありだけれど、私の身分だと逆に難しいかもしれないわね。家庭教師の方が身分が上すぎるなんて面倒よね。
官僚も心惹かれるけれど、お父様の反対を押し切ってまでやりたいとは思えないし。外交官はとても興味はあるけれど、小娘にやれるとは思えない。外交をしたかったから王妃になりたかったのよね。他所の国をたくさん見て回りたかった。隣国の教育制度にも興味もあるし、その国にどうにか導入できないかしら。まあいきなり国レベルは無理よね。領地になら、まだ可能かしら?

それなら領内の経営に関わらせてもらえないかしら。学園内に良い思い出もないし、もう学ぶことはないから、留学でもさせていただいて。後継のお兄さまの邪魔にならないようにこっそりお手伝いさせていただきたいけれど。

そうなれば1年次に優秀な成績を修めて、交換留学に推薦してもらいましょう。一応前回も話だけはあったのよね。わざわざ国を出る必要性を感じなかったし、アレのそばにいたかったから断ったけれど。反対されてもそれらしい言い訳はいくつも思いつくことだし、それでいいわね。
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