私は殿下の学生時代の契約恋人(セフレ)を務めていました

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期待ほどお腹がふくれないものはない

学園に通い、いくつかのアルバイトを掛け持ちしながら、あの人の都合の良い日に体を差し出すだけでいい。

学園は辞めるつもりだった。お金もないし、もう意味もない学園生活に時間を使うくらいなら働きたかった。しかし、男は会いに行く時間が面倒だから学園にいろと命じた。学費は出す、と。今となっては感謝しても余りある。あの学園を卒業したという学歴だけで、何度救われただろう。

学園を去る日は、あの男との別れでもあった。私の神様。最高の顔で、最低な契約を持ちかけて来た上級の男。

きっと御伽噺なら恋をするのだろう。秘めたる思いを打ち明けて、2人の未来のために奔走するのだ。お父様を嵌めた政敵に下克上して爵位を取り戻すのかもしれないし、王子が身分を捨てて平民として幸せになるのかもしれない。愛があれば何でもできると、そんな曖昧な理想でうまく行くのだ。しかし、それはあくまでファンタジーなのである。現実はそんなに甘くない。

まあ、元々恋愛感情なんてないのだけど。神様に恋なんて、罰当たりすぎて出来ないわよね。向こうもただの玩具に過ぎなかったのでしょう。期待なんて、しない。そんなお腹もたまらないものは不要なのだ。私の錯覚でなければ確かに思い合っていたはずの元婚約者に無いものと扱われた時から、他者への期待は崩れ落ちた。