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マメ柴のシバ
信頼あるいは気の迷い
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優しい気持ちになれば、多少とも冷静に物事が考えられる。
泡だらけのビールとカットフルーツが添えられたジュースの格差なんて些末に思えた。
これだけ容姿に突出していれば、そもそも見える世界も背負う運命も他とは全く違ってもおかしく無いんでしょう。多分ね。
外見主義に生きづらさや敗北を感じる人間は、間違いなくこの世に五万といるだろうが、美は事実証明できる物理現象だ。
(1+√5)÷2や、1:√2や、1,3,5,8の並びが示すように、 美しさは根拠がある具象で、人間が望もうが望むまいが生体に科学的に作用してしまう。
高いところから落ちたら死ぬというこちらの都合が、重力さんにしてみたら全く知ったこっちゃないのと同じである。
ルッキズムのもたらす人の苦しみと、美がもたらす物理作用の折り合わせ方になんの策も思いつけそうにないので、さゆりは静かに雑炊を啜り続けることを選択した。
「それおいしいでしょ。」
えりかがさゆりに聞いてくる。
彼女は5杯目のハイボールに軽くレモンをしぼって、果汁のついた手をおしぼりでぬぐった。
「はい。うまいですねこれ。注文した中では1番おいしい。」
でしょ?と言ってえりかが笑う。
「えりかも頼む?」
きみやがすかさず尋ねるが、
「そんなお腹空いてないからいらない。」
と言ってハイボールを含んだ。
先程からあまり箸を進めないあたり、食より酒のタイプなのだろう。
その様子にふと、えりかも実は無策なのかもしれないと思った。
しかも10年間筋金入りの無策で、そのあげくがあのマイク入りペンだとしたら。
つまりえりかは無策の大先輩ということになる。
そんな共感が1%、血中のアルコールが判断力を阻害したのが残り1000%で、気づけばさゆりは兄が現れてからの一部始終をえりかに話してしまっていた。
「ええっと……大変だったね。」
一通りの話を受けてそう労うえりかが、さゆりを刺激しないように合わせているのは明らかだった。
おそらく信じたわけではないだろう。ただ、やべえ奴だと思われているだけだ。この2人にそうラベリングされるのは心外である。少なくともシバが人の会話を盗み聞きしたり、自分がそれを黙認したりはしていない。
「到底信じられないですよね……。だから私も誰にも言えなくて滅入ってたんです。でも、えりかさんに声掛けてもらって少し元気が出ました。ありがとうございました。」
それはさゆりの本心だった。えりかに言った所でなんの解決にもならないことは分かっていたが、情けに誠実で報いた事実がさゆりには大事だった。
「そろそろシバが心配なので帰ります。駅まで送ってもらっていいですか?」
そう言って五千円札をえりかに渡したが、今日は奢る約束だからと丁重に返された。
食事はあらかた終わっていたので、間も無くさゆりたちは会計を済ませて店を後にした。
帰り際、今までさゆりに一瞥もくれなかった店員たちが珍獣でも見るような目でさゆりを伺っていたので、多分話を聞かれていたのだろう。うっとおしいくらいテーブルにまとわりついていた店員が話の最中はぱったり来なかった理由を理解した。
ネットにやべえ奴来たって晒されんのかな、とか思いながら車に乗り込んだ。
泡だらけのビールとカットフルーツが添えられたジュースの格差なんて些末に思えた。
これだけ容姿に突出していれば、そもそも見える世界も背負う運命も他とは全く違ってもおかしく無いんでしょう。多分ね。
外見主義に生きづらさや敗北を感じる人間は、間違いなくこの世に五万といるだろうが、美は事実証明できる物理現象だ。
(1+√5)÷2や、1:√2や、1,3,5,8の並びが示すように、 美しさは根拠がある具象で、人間が望もうが望むまいが生体に科学的に作用してしまう。
高いところから落ちたら死ぬというこちらの都合が、重力さんにしてみたら全く知ったこっちゃないのと同じである。
ルッキズムのもたらす人の苦しみと、美がもたらす物理作用の折り合わせ方になんの策も思いつけそうにないので、さゆりは静かに雑炊を啜り続けることを選択した。
「それおいしいでしょ。」
えりかがさゆりに聞いてくる。
彼女は5杯目のハイボールに軽くレモンをしぼって、果汁のついた手をおしぼりでぬぐった。
「はい。うまいですねこれ。注文した中では1番おいしい。」
でしょ?と言ってえりかが笑う。
「えりかも頼む?」
きみやがすかさず尋ねるが、
「そんなお腹空いてないからいらない。」
と言ってハイボールを含んだ。
先程からあまり箸を進めないあたり、食より酒のタイプなのだろう。
その様子にふと、えりかも実は無策なのかもしれないと思った。
しかも10年間筋金入りの無策で、そのあげくがあのマイク入りペンだとしたら。
つまりえりかは無策の大先輩ということになる。
そんな共感が1%、血中のアルコールが判断力を阻害したのが残り1000%で、気づけばさゆりは兄が現れてからの一部始終をえりかに話してしまっていた。
「ええっと……大変だったね。」
一通りの話を受けてそう労うえりかが、さゆりを刺激しないように合わせているのは明らかだった。
おそらく信じたわけではないだろう。ただ、やべえ奴だと思われているだけだ。この2人にそうラベリングされるのは心外である。少なくともシバが人の会話を盗み聞きしたり、自分がそれを黙認したりはしていない。
「到底信じられないですよね……。だから私も誰にも言えなくて滅入ってたんです。でも、えりかさんに声掛けてもらって少し元気が出ました。ありがとうございました。」
それはさゆりの本心だった。えりかに言った所でなんの解決にもならないことは分かっていたが、情けに誠実で報いた事実がさゆりには大事だった。
「そろそろシバが心配なので帰ります。駅まで送ってもらっていいですか?」
そう言って五千円札をえりかに渡したが、今日は奢る約束だからと丁重に返された。
食事はあらかた終わっていたので、間も無くさゆりたちは会計を済ませて店を後にした。
帰り際、今までさゆりに一瞥もくれなかった店員たちが珍獣でも見るような目でさゆりを伺っていたので、多分話を聞かれていたのだろう。うっとおしいくらいテーブルにまとわりついていた店員が話の最中はぱったり来なかった理由を理解した。
ネットにやべえ奴来たって晒されんのかな、とか思いながら車に乗り込んだ。
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