31 / 54
マメ柴のシバ
いつき
しおりを挟む
買い物は順調で、大体のものが2時間足らずで揃った。
いつ道路に飛び出すかとヒヤヒヤしていたシバも、外界の様子が知っている町並みと違う事に警戒したのか、怯えはしないがさゆりから不用意に離れる事もなかった。
目が醒めるような異国の美少女と、そうでもない日本人女性が手を繋いで歩いている様はもちろん衆目を集めた。
でもそれは遠巻きなもので、途中から視線に慣れてしまったさゆりは、特に気負うこともなくカトレアまでたどり着いたのだった。
シバの手を引きながらいつものドアを開けた時、いらっしゃいませと声をかけて来たのは女将やかなではなく、いつきだった。
いつきはかなの弟で、高校2年の男子学生である。
特別に美形というわけではないが、とても親しみがある風貌の少年であり、彼が店の手伝いをしている時は決まって彼の同級生の女子が数人のグループで来店している。
どうやらいつきのファンクラブがあるらしい事をかなから教えてもらったことがあるので、多分会員が交代で来ているのだろう。
前に店でファンクラブについて「すごいね。」と称賛したところ、はにかみながら、
「みんなふざけてるだけなんですよ。でも、お店に来てくれたり、応援してくれるのは凄い嬉しくて。頑張っちゃおっかな。」
と、こちらのセロトニン分泌を促進するくらいの笑顔で言われたことがある。
これは推せる、と思ったし、いつきが困った時はさゆりも全力で助けてしまうだろうと確信した。
さゆりの会社の先輩が酔いつぶれて終電を逃し、家に泊めた翌朝この店に連れて来たことがある。
その時もいつきがいた。
先輩はいつきを見て、
「あのタイプの男が実は1番女を狂わせるんだ。」
と不穏な事を言いながらちゃっかり連絡先を聞き出していた。
貞操観念がブラックホール化している彼女からいつきを守らんと、その時さゆりは必死になって連絡先を削除するように食い下がったのを記憶している。
その様子が普段のさゆりと明らかに違う事にビビった先輩は無事連絡先を削除した。
それくらいに、いつきは不思議な魅力のある少年だった。
女の庇護欲をそそると言うか、つい構いたくなるというか、太宰治からひねくれと闇を切除したというか。
それはもうOSAMUとか別の何かかもしれないが、とにかくそんな感じだ。
「コウ!!」
それはいつきがさゆりに声をかけてすぐだった。
さゆりが店舗奥のいつきに気を取られていた隙に左手が振りほどかれ、視界脇の姿が勢いよく前方に発射していく。
ドタンと鈍い音がして、シバがいつきに飛びかかった事をさゆりが理解する頃には、シバはすでにいつきをフロアの通路に押し倒し、顔を舐め回していた。
いつ道路に飛び出すかとヒヤヒヤしていたシバも、外界の様子が知っている町並みと違う事に警戒したのか、怯えはしないがさゆりから不用意に離れる事もなかった。
目が醒めるような異国の美少女と、そうでもない日本人女性が手を繋いで歩いている様はもちろん衆目を集めた。
でもそれは遠巻きなもので、途中から視線に慣れてしまったさゆりは、特に気負うこともなくカトレアまでたどり着いたのだった。
シバの手を引きながらいつものドアを開けた時、いらっしゃいませと声をかけて来たのは女将やかなではなく、いつきだった。
いつきはかなの弟で、高校2年の男子学生である。
特別に美形というわけではないが、とても親しみがある風貌の少年であり、彼が店の手伝いをしている時は決まって彼の同級生の女子が数人のグループで来店している。
どうやらいつきのファンクラブがあるらしい事をかなから教えてもらったことがあるので、多分会員が交代で来ているのだろう。
前に店でファンクラブについて「すごいね。」と称賛したところ、はにかみながら、
「みんなふざけてるだけなんですよ。でも、お店に来てくれたり、応援してくれるのは凄い嬉しくて。頑張っちゃおっかな。」
と、こちらのセロトニン分泌を促進するくらいの笑顔で言われたことがある。
これは推せる、と思ったし、いつきが困った時はさゆりも全力で助けてしまうだろうと確信した。
さゆりの会社の先輩が酔いつぶれて終電を逃し、家に泊めた翌朝この店に連れて来たことがある。
その時もいつきがいた。
先輩はいつきを見て、
「あのタイプの男が実は1番女を狂わせるんだ。」
と不穏な事を言いながらちゃっかり連絡先を聞き出していた。
貞操観念がブラックホール化している彼女からいつきを守らんと、その時さゆりは必死になって連絡先を削除するように食い下がったのを記憶している。
その様子が普段のさゆりと明らかに違う事にビビった先輩は無事連絡先を削除した。
それくらいに、いつきは不思議な魅力のある少年だった。
女の庇護欲をそそると言うか、つい構いたくなるというか、太宰治からひねくれと闇を切除したというか。
それはもうOSAMUとか別の何かかもしれないが、とにかくそんな感じだ。
「コウ!!」
それはいつきがさゆりに声をかけてすぐだった。
さゆりが店舗奥のいつきに気を取られていた隙に左手が振りほどかれ、視界脇の姿が勢いよく前方に発射していく。
ドタンと鈍い音がして、シバがいつきに飛びかかった事をさゆりが理解する頃には、シバはすでにいつきをフロアの通路に押し倒し、顔を舐め回していた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる