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マメ柴のシバ
いつき
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買い物は順調で、大体のものが2時間足らずで揃った。
いつ道路に飛び出すかとヒヤヒヤしていたシバも、外界の様子が知っている町並みと違う事に警戒したのか、怯えはしないがさゆりから不用意に離れる事もなかった。
目が醒めるような異国の美少女と、そうでもない日本人女性が手を繋いで歩いている様はもちろん衆目を集めた。
でもそれは遠巻きなもので、途中から視線に慣れてしまったさゆりは、特に気負うこともなくカトレアまでたどり着いたのだった。
シバの手を引きながらいつものドアを開けた時、いらっしゃいませと声をかけて来たのは女将やかなではなく、いつきだった。
いつきはかなの弟で、高校2年の男子学生である。
特別に美形というわけではないが、とても親しみがある風貌の少年であり、彼が店の手伝いをしている時は決まって彼の同級生の女子が数人のグループで来店している。
どうやらいつきのファンクラブがあるらしい事をかなから教えてもらったことがあるので、多分会員が交代で来ているのだろう。
前に店でファンクラブについて「すごいね。」と称賛したところ、はにかみながら、
「みんなふざけてるだけなんですよ。でも、お店に来てくれたり、応援してくれるのは凄い嬉しくて。頑張っちゃおっかな。」
と、こちらのセロトニン分泌を促進するくらいの笑顔で言われたことがある。
これは推せる、と思ったし、いつきが困った時はさゆりも全力で助けてしまうだろうと確信した。
さゆりの会社の先輩が酔いつぶれて終電を逃し、家に泊めた翌朝この店に連れて来たことがある。
その時もいつきがいた。
先輩はいつきを見て、
「あのタイプの男が実は1番女を狂わせるんだ。」
と不穏な事を言いながらちゃっかり連絡先を聞き出していた。
貞操観念がブラックホール化している彼女からいつきを守らんと、その時さゆりは必死になって連絡先を削除するように食い下がったのを記憶している。
その様子が普段のさゆりと明らかに違う事にビビった先輩は無事連絡先を削除した。
それくらいに、いつきは不思議な魅力のある少年だった。
女の庇護欲をそそると言うか、つい構いたくなるというか、太宰治からひねくれと闇を切除したというか。
それはもうOSAMUとか別の何かかもしれないが、とにかくそんな感じだ。
「コウ!!」
それはいつきがさゆりに声をかけてすぐだった。
さゆりが店舗奥のいつきに気を取られていた隙に左手が振りほどかれ、視界脇の姿が勢いよく前方に発射していく。
ドタンと鈍い音がして、シバがいつきに飛びかかった事をさゆりが理解する頃には、シバはすでにいつきをフロアの通路に押し倒し、顔を舐め回していた。
いつ道路に飛び出すかとヒヤヒヤしていたシバも、外界の様子が知っている町並みと違う事に警戒したのか、怯えはしないがさゆりから不用意に離れる事もなかった。
目が醒めるような異国の美少女と、そうでもない日本人女性が手を繋いで歩いている様はもちろん衆目を集めた。
でもそれは遠巻きなもので、途中から視線に慣れてしまったさゆりは、特に気負うこともなくカトレアまでたどり着いたのだった。
シバの手を引きながらいつものドアを開けた時、いらっしゃいませと声をかけて来たのは女将やかなではなく、いつきだった。
いつきはかなの弟で、高校2年の男子学生である。
特別に美形というわけではないが、とても親しみがある風貌の少年であり、彼が店の手伝いをしている時は決まって彼の同級生の女子が数人のグループで来店している。
どうやらいつきのファンクラブがあるらしい事をかなから教えてもらったことがあるので、多分会員が交代で来ているのだろう。
前に店でファンクラブについて「すごいね。」と称賛したところ、はにかみながら、
「みんなふざけてるだけなんですよ。でも、お店に来てくれたり、応援してくれるのは凄い嬉しくて。頑張っちゃおっかな。」
と、こちらのセロトニン分泌を促進するくらいの笑顔で言われたことがある。
これは推せる、と思ったし、いつきが困った時はさゆりも全力で助けてしまうだろうと確信した。
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その時もいつきがいた。
先輩はいつきを見て、
「あのタイプの男が実は1番女を狂わせるんだ。」
と不穏な事を言いながらちゃっかり連絡先を聞き出していた。
貞操観念がブラックホール化している彼女からいつきを守らんと、その時さゆりは必死になって連絡先を削除するように食い下がったのを記憶している。
その様子が普段のさゆりと明らかに違う事にビビった先輩は無事連絡先を削除した。
それくらいに、いつきは不思議な魅力のある少年だった。
女の庇護欲をそそると言うか、つい構いたくなるというか、太宰治からひねくれと闇を切除したというか。
それはもうOSAMUとか別の何かかもしれないが、とにかくそんな感じだ。
「コウ!!」
それはいつきがさゆりに声をかけてすぐだった。
さゆりが店舗奥のいつきに気を取られていた隙に左手が振りほどかれ、視界脇の姿が勢いよく前方に発射していく。
ドタンと鈍い音がして、シバがいつきに飛びかかった事をさゆりが理解する頃には、シバはすでにいつきをフロアの通路に押し倒し、顔を舐め回していた。
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