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第40話 日本に帰ろう?
しおりを挟む夜、閉店間際のアイスクリーム屋に一人で入った僕。そこで巨体の3人組に襲われてしまった。
健全そうなドライブインに見えたんだけど、甘かったな。ジェフもここいらは治安がいいはずなのに。って言ってた。
リサーチ不足だったって謝ってたけど、ジェフの責任じゃないよ。それに、助けてくれた。
「もう……日本に帰ろう」
問題は今、僕に寄り添うように抱いてるこいつだ。いの一番に助けに入れなかったことでいつまでもグジグジしてるし、ずぶ濡れの猫みたいにしぼんでる。
「馬鹿なこと言うなよ。こんなことぐらいで……」
「こんなことっ!? あんたを守れなかったことがこんなことって……」
「守ってくれたじゃないか。てか、おまえは僕の保護者か? 子供じゃないんだ。これでもそういう意味では対等だと思ってる。今回のことはあくまでも僕の責任だよ」
なんだか腹が立ってきた。僕はあいつの腕の中から抜け出した。
「倫……それは、そうだけど」
「おまえが言ったように、スタンガン買ったろ? 役に立ったじゃないか。それだけでなく、ちゃんと助けに来てくれた。護身術だって役に立ってる。これで十分だよ」
そりゃ、おまえの方が体もでかいし、多分力も強いだろう。だけど僕の方が素早いし、足も速いよ。カラテだってセンスがいいって言われてるんだ。
おまえが心配してくれるのは嬉しいけど、だからって日本に帰るとか言うなよ……。
「もし僕がおまえを守れなかったら、おまえはそれを当然だと思うのか? そうなら心外だな」
佐山は茫然として僕の表情をうかがってる。こんなに怒ったのは初めてかもしれない。おまえに守られてるのは僕だってわかってる。その温もりも愛も嬉しいけど、一人で全部背負わないで欲しいんだ。
「疲れたから、もう寝る」
何も答えない佐山に背を向けて、僕は一人で布団に潜り込んだ。言い過ぎたかな……。でも、僕の迂闊な行動でこの仕事を諦めて欲しくない。そうだな、僕も、もっと気を付けなきゃな。
アドレナリンがまた湧き出て、なかなか眠れなかった。それでもウトウトしていた夜遅く、気付くと背中にぬくもりを感じた。
「良かった……」
「ん? 起こしたか?」
僕がぽつりと漏らした言葉に佐山が反応した。
「いや……言い過ぎたと思って」
「そんなことはない。あんたの言う通りだ」
僕は体をくるりと反転してあいつの表情を覗き見る。黒曜石みたいな瞳が優しい光を湛えている。
「けど、俺を守るつもりなら、もっと鍛えてもらわないとな」
「筋肉だけが武器じゃないよ。でも、そうだな。いくら不意打ちでも、簡単に連れ込まれては説得力ないよな」
「倫、俺はあんたを子ども扱いしてるつもりはないんだ。仕事や生活では、俺の方が頼ってるし。だから力勝負ではどうしても俺が守らなきゃって思っちゃって……」
「わかってる。わかってるよ。僕もだから言い過ぎた……」
「俺、もっとあんたを信頼しないとな……」
僕はあいつの胸に頭をくっつける。心臓の音が聞こえて僕を安心させる。対等だって息巻いたけど、僕はおまえにやっぱり頼ってるんだよな。
「キス……してもいいか? もう、痛まない?」
僕の顎をくっと上を向かせる。未だに心配そうな表情を顔にくっつけてる。
「痛いよ、まだ」
「え、じゃ、じゃあ……」
「痛いから、癒してよ。おまえのキスで」
あいつの唇をめがけて僕はさらに上を向く。あいつは少し驚いたふうで、でも、後頭部に大きな手をあてがい唇を寄せた。ゆっくりと、深く。それは僕を存分に癒してくれた。
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