【R18】僕とあいつのいちゃラブな日々@U.S.A.

紫紺

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第55話 全米配信

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 ある日の早朝。僕はリビングのテーブルに置いたPCの前にいた。時差のある日本とのテレビ会議。いつもはこっちが夜で向こうが朝なんだけど今日は逆だ。

「それじゃあ、配信はこっちでもするんですね?」
『ええ。マップルやアマソンで配信決定です』

 画面の向こうの水口さんは誇らしげにそう宣言した。いやあ、マジで世界のサヤマだよ。
 ま、買ってもらえるかは別にしても、そのニーズはあったってことだよね?

「良かった。メンバーにも聴いてもらえるし。早速伝えます」
『はい。7月20日配信ですからね。この間送ってもらったPVももうすぐ完成します。出来次第送ります』
「ありがとうございます! じゃあファンサイトの方にはもう載せていいですよね」
『もちろん』

 朝早くて眠かったけど、一気に目が覚めた。僕はアドレナリンが放出されて興奮状態のまま、一時間ほどのミーティングを終えた。

「おはようー。なんか凄い興奮してるけど、なんかあったのか?」

 PCの蓋を閉じ、立ち上がったところで佐山が一階に降りてきた。起きたばかりなのだろう、上半身裸で緩いパンツ一枚で登場だ。

「おはようっ。起こしたかな」
「いや、もう起きるとこだから構わんけど……えらい嬉しそうだな? レコ大にはまだ早いよな」

 レコ大。そんな島国の音楽賞なんてどうでもいいんだよ(凄い言いようだな)。

「今度のミニアルバム、こっちでも配信するんだよ! 全米配信っ」
「え? いや、それはそうだろ。俺はそれ有りきでやってたんだけどな」

 うう。佐山って自信があるのかないのか、時々わからなくなる。確かにそれも目論んで、こっちのアーティストをわざわざオーディションしたんだ。
 佐山は歌詞がない分、どの国でも勝負できる。有利なんだよね。

「でも、嬉しいな。そうは言っても、弱小事務所が思い切ってくれたんだから」
「そうだよ。これはやっぱり快挙だよっ」

 僕はぴょんと跳ねるようにして佐山に飛びついた。

「僕はおまえが誇らしいよ」
「うふふうん、あんたが嬉しいなら俺は満足」

 佐山は僕を抱き上げ、くるくると回った。僕は振り落とされないよう、足をあいつの腰に巻き付けてしがみつく。

「目が回るぅ!」

 だけどテンションはマックス。そのまま二人して、ソファーに転がった。ついでに甘いキスをする。あいつの切れ長の目に宿る瞳は黒曜石のようにキラキラと輝いていた。

「ジェフ達にも連絡しないと……きっと喜ぶよ」
「こっちでもライブとかできるといいな。配信記念ライブみたいなヤツ」
「あー、そうだよね……問題はスケジュールと需要があるか……か」

 配信は7月。まだ映画音楽の仕事の真っ最中だ。あと、メンバーも暇な奴ばかりじゃない。そして最も重要なのは、こっちでのライブの需要。

「水口さんに話してくれるか。可能かどうかだけでも知りたい」

 そうか。佐山は本気でやりたいんだ。それなら、僕は何としてでも出来るよう尽力するよ。

「わかった。任せて」

 僕は寝転んだまま、あいつの誘ってやまない唇を人差し指で触れた。噴き出したアドレナリンが規則正しい動悸に変わる。佐山は僕の手に指を絡ませる。
 お互いが磁石になって引き寄せられるように、もう一度甘いキスをした。



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