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恋人期間
育む愛
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「愛は育むものである」なんて、そんなことはないとずっと思っていた。
なにせミレーユは、アランに出会った瞬間、熱く焼かれた宝石のようなものが心に生まれたことを知っていたから。だから愛なんてものは、そんな風に唐突に生まれてくるものだと思っていた。それを話すとエドモンドは「なるほどなあ」と納得するような素振りを見せながらも、まるで子供に接するようにミレーユの頭を撫でた。
「もちろん、そういう愛もあるさ」
「全部、そういうものではないの?」
「それは違うなあ。形のないものだから断定するのは難しいけど……育む愛もあれば、突然生まれる愛もある」
「ふーん」
「先日からずっと愛についてばっかりだね、お嬢さん」
からかうように言われて、ミレーユは少しムッとした。エドモンドは、大人だ。それはもう恋人になってから一月で十分に分かった。今こうして公爵邸の庭でお茶を飲んでいる時も、ミレーユが欲しいと思うお菓子に視線を向けるたびに、エドモンドは自ら菓子を取って皿に分けてくれる。ふざけた態度を取っていることが多いため気づきにくいが、アランという酷い比較対象がいるおかげで、余計に恐ろしいほど気遣いの出来る大人なのだと実感する。
(同時に彼を大人だと思うたびに……自分が子供だってことを実感させられる)
ミレーユは、今まで自分が情けないだなんて思ったことは一度もない。
公爵家で大切に、大切に育てられてきたこともあって、自分への負の感情なんてアランに浮気された時以前にはなかった。それ以降、卑下することはないが、ミレーユは少し卑屈になっている。今こうして自分とエドモンドの歳の差を考えてため息をつきたくなるくらいには。
「ため息を吐くなんて」
「幸せが逃げるとでもいいたいの?」
「まさか、そんなことを言おうとしていたんじゃないさ」
「じゃあ、なによ」
「ため息を吐くなんて、いい女になる前兆だと思ってね」
「私はもういい女だわ」
「ははは、そうかい。そうだったね」
快活に笑うエドモンドを恨めしそうに睨みつけながらミレーユは、ぎゅっとドレスの裾を握りしめた。
エドモンドはとても優しい。アランのように甘い言葉に漬けこもうとするわけでもなく、素直な言葉と共に大人としての余裕を垣間見せる。そういう瞬間、ミレーユは胸がトクリと甘く鳴るのを感じていた。ただ同時に喉の奥が痛くなる。
(彼を大人だと思うたびに……背伸びをしたくなる)
ただ、背伸びをしようとすると、爪先が痛くなるようなそんな感覚を覚えもする。
なにせミレーユは、アランに出会った瞬間、熱く焼かれた宝石のようなものが心に生まれたことを知っていたから。だから愛なんてものは、そんな風に唐突に生まれてくるものだと思っていた。それを話すとエドモンドは「なるほどなあ」と納得するような素振りを見せながらも、まるで子供に接するようにミレーユの頭を撫でた。
「もちろん、そういう愛もあるさ」
「全部、そういうものではないの?」
「それは違うなあ。形のないものだから断定するのは難しいけど……育む愛もあれば、突然生まれる愛もある」
「ふーん」
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からかうように言われて、ミレーユは少しムッとした。エドモンドは、大人だ。それはもう恋人になってから一月で十分に分かった。今こうして公爵邸の庭でお茶を飲んでいる時も、ミレーユが欲しいと思うお菓子に視線を向けるたびに、エドモンドは自ら菓子を取って皿に分けてくれる。ふざけた態度を取っていることが多いため気づきにくいが、アランという酷い比較対象がいるおかげで、余計に恐ろしいほど気遣いの出来る大人なのだと実感する。
(同時に彼を大人だと思うたびに……自分が子供だってことを実感させられる)
ミレーユは、今まで自分が情けないだなんて思ったことは一度もない。
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「ため息を吐くなんて」
「幸せが逃げるとでもいいたいの?」
「まさか、そんなことを言おうとしていたんじゃないさ」
「じゃあ、なによ」
「ため息を吐くなんて、いい女になる前兆だと思ってね」
「私はもういい女だわ」
「ははは、そうかい。そうだったね」
快活に笑うエドモンドを恨めしそうに睨みつけながらミレーユは、ぎゅっとドレスの裾を握りしめた。
エドモンドはとても優しい。アランのように甘い言葉に漬けこもうとするわけでもなく、素直な言葉と共に大人としての余裕を垣間見せる。そういう瞬間、ミレーユは胸がトクリと甘く鳴るのを感じていた。ただ同時に喉の奥が痛くなる。
(彼を大人だと思うたびに……背伸びをしたくなる)
ただ、背伸びをしようとすると、爪先が痛くなるようなそんな感覚を覚えもする。
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