愛する婚約者は、今日も王女様の手にキスをする。

古堂すいう

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運命の再会より

階段

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「私、虫は大嫌いよ。でも、こういう場所は好き」
「矛盾してないか?こういう場所の方が虫がたくさんいるじゃん。どうしたって、嫌いになると思うけど」
「それはそうだけど。じゃああなたは、好きな人の周りに自分の嫌いな人がいるからって、その人のこと嫌いになるの?」
「えー、そう言われるとなあ。よっぽど好きな人だったら、考える」
「でしょう?私は考えた結果、それでもこういう場所が好きなのよ。例え、虫がたくさんいようとね!」

ロメリアは朗らかに笑ってみせた。水色の繊細な髪が陽光を映して、輝きを帯びる。

緑あふれる場所が好き。虫がいるのは嫌だけど、空気が澄んでいるところとか、空が広いとこだとか。小さなことが好き。

爛々と輝き、弓なりに細まるその瞳を覗いて、リュダは照れくさそうに首元を掻いた。


「なんか、イメージと違ったなあ」

ぽつりと呟いたリュダの言葉を、ロメリアは聞き逃さなかった。

「あら、あなたは私のこと、誰かから聞いたことがあるの?」
「いや、ただあいつ‥‥‥ガブリエルに婚約者がいることは知ってたから。たびたび婚約者はどんな人なのかって聞くんだけど、なーんも教えてくんないから、てっきりもっとつまらない感じの‥‥‥あー、いやいや、なんていうのか、特別何も言う事のないような‥‥‥駄目だ!全然いい感じの言葉が浮かばない!」

頭を抱えだすリュダに、ロメリアは苦笑を零して、ドレスの裾をぎゅぅと握りしめた。

(そりゃあ、そうでしょうね。ガブリエルは、私のことなんかぜーんぜん好きじゃないもの)

元々、寡黙でものすごく真面目な性格をしているガブリエルだから、別段リュダの質問に対して何も答えなかったのに対して驚くべきことはなにもない。

ただ、不安なだけ。

彼が言葉にしない人だから、せめて表情や纏う空気感からでも、彼の考えていることが分かればいいと考えているけれど。

共にいられる時間さえないに等しいから。

彼の気持ちを伺い知ることは難しい。

「あ、ありましたよ!あそこを登れば王女様のお庭が見えます」

リュダの指さしたところには緑の蔦が絡まった、とても頑丈とは言い難い崩れかけの階段があった。数十年の間に人が登って、石段が削れてしまったんだろう。ほぼ急な坂と言っても過言ではない階段だった。

「はい、お手をどうぞ」

差し出された手をロメリアは素直に取って、急な階段を登った。

あやうく転けそうになったところもあったが、以外にも絡まった蔦が足の支えになってくれて、予想よりは早く登ることが出来た。

「こうまでして、ガブリエルの顔が見たいなんて。令嬢はすごく一途なんですねえ」 

と、からかうような口調で声をかけてくるリュダを無視して、ロメリアは眼下に広がる景色に、目を見開いた。
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