19 / 79
2人の距離
宣言
しおりを挟むロメリアは馬鹿ではない。
ガブリエルに指摘されたことの意味を、彼女はちゃんと理解していた。
ロメリアは、彼にそう言われるまで、訓練の邪魔をしてしまう可能性を露ほども考えていなかった自分に対して恥じ入る気持ちと、素直に「ごめんなさい」と言えない自分に参っていた。
そんな複雑な感情の行き着く先は、彼女が最も得意とする涙だった。ただそれだけのことなのである。
しかし傍から見れば、自らの我儘が婚約者に受け入れられずに泣く自分勝手な令嬢だ。
「……おいおい、ガブリエル。それは言い過ぎじゃないのか?この子はお前の顔が見たくてほんの少し会いに来ただけじゃないか。それにここまで来れば、ガブリエルの顔が見えるかもしれないって言って連れてきたのは俺なんだ。婚約者殿ばかり責めるなよ」
口を挟んだリュダは、眉間の皺を揉んでいた。
「お前には関わりのないことだ」
「いや、そりゃ、そうだけど。女の子泣かすのは騎士道に反することじゃねぇの」
「……」
ガブリエルは押し黙る。
そして次に口を開きかけた時、ロメリアはバッと顔を上げて、令嬢にあるまじき仕草で顔を拭った。
すんすんと鼻を鳴らし、なお、ボロボロと涙を流し続けながらも、ロメリアはドレスの裾を握ったまま、大きく口を開く。
「じゃあ、あなたが立派な騎士になったらたくさん会いに来てもいいのね!?」
少し怒った風にそう問いかけるロメリアに、ガブリエルは答えに窮したのか口を閉じる。
一方で、ロメリアは元々答えなんて期待していなかったために言葉を続けた。
「……どんなにあなたに嫌われていようと私はあなたのこと、ずっと好きよ。大好きよ」
足をガクガク震わせながら支離滅裂なことを叫ぶロメリアに、ガブリエルは今度こそ絶句したのか、目を見開いて固まった。
「……」
「だからって、邪魔だと思われたいわけじゃない。だからもう、あなたが騎士になるまでここには来ない。手紙も出さない」
「……」
「今度会うまでに、ちゃんと「ごめんなさい」って言える立派なレディになるから……だから……だから、それまでわたくしのこと忘れちゃ駄目よ」
それだけ言って、ロメリアはバタバタと忙しくその場を走り去ってしまった。
その場には男、2人が残される。
「……あの子、お前のことものすごく好きなんだなあ」
そう呟くリュダの横で、ガブリエルはロメリアの去った方向をじっと見つめ続けている。
その視線の意味を考えあぐねて、リュダは「そんなに怒らなくても」と声をかけたが、どうやら意味を捉え間違えたらしく、ガブリエルは無表情からさらに色を無くして、踵を返した。
「あ、ちょっと待ってくれよ~」
その背をリュダが追いかける。
これ以来、ロメリアが宣言通り、ガブリエルの元を尋ねることはなくなった。
200
あなたにおすすめの小説
もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~
桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜
★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました!
10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。
現在コミカライズも進行中です。
「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」
コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。
しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。
愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。
だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。
どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。
もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。
※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!)
独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。
※誤字脱字報告もありがとうございます!
こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
この度改編した(ストーリーは変わらず)をなろうさんに投稿しました。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
私のことを愛していなかった貴方へ
矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。
でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。
でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。
だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。
夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。
*設定はゆるいです。
陛下を捨てた理由
甘糖むい
恋愛
美しく才能あふれる侯爵令嬢ジェニエルは、幼い頃から王子セオドールの婚約者として約束され、完璧な王妃教育を受けてきた。20歳で結婚した二人だったが、3年経っても子供に恵まれず、彼女には「問題がある」という噂が広がりはじめる始末。
そんな中、セオドールが「オリヴィア」という女性を王宮に連れてきたことで、夫婦の関係は一変し始める。
※改定、追加や修正を予告なくする場合がございます。ご了承ください。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる