愛する婚約者は、今日も王女様の手にキスをする。

古堂すいう

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2人の距離

根気

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この国では、騎士見習いから、騎士になるまでには少なくとも2年かかる。

少なくともなので、長いと5年、はたまたそれ以上の月日がかかることも珍しくはない。大半の者はその中間である3年から4年をかけて騎士になる。

と言ってもその大半の者というのは、騎士を目指し、騎士見習いとなった人間の3分1にも満たない。

皆、あまりの鍛錬の厳しさに志を折ってしまうのだ。

しかし、理由はその他にもある。

騎士という身分は、この国では貴族に準ずると定められているため、教養を身につけなければならない。つまり、世襲制の貴族と同等の教養を短期間で身に着けなければならないということだ。

武芸に秀でた者は多くいる。しかし、武芸に秀でていることを鼻にかけ、弱者を虐げる者が騎士であってはならない。


故に、騎士の称号は栄誉なのである。


と、厳粛な態度で講義するのは、ロメリアの教師だった。


顎のツンと尖った、一見して近寄りがたいオーラのある女史だが、その講義内容は、勉強が嫌いなロメリアも理解できるほど分かりやすく噛み砕かれて説明される。

今日は、騎士について。

すでに、知った内容ではあるが、ロメリアはもう1年は会っていない婚約者のことを思い、真剣に講義を聞いていた。


──……あなたにふさわしいレディになる


宣言したロメリアは、まずは勉学に励むことにした。


ガブリエルにふさわしいレディとはどんなレディなのか。美しい顔立ちから生まれ持った地位まで、何もかもが完璧である自分に、強いて補わなければならないものとはなんなのか。

と、ロメリアは本気で悩んだ。

ロメリアは今まで劣等感というものを抱いたことがなかった。つまり、自分と誰かを比べるような経験などなかったのである。

しかし、マリエンヌと対面してからというもの、ロメリアの中にはそれに近しいものが生まれていた。


マリエンヌの聡明さに、ロメリアは始めて自らの無学が当然でないことを知った。


マリエンヌの美しさに、始めて自らと比べて、なんら遜色のない美貌がこの世にあることを知った。


ロメリアは、マリエンヌという存在に大きく揺さぶられていた。


それでも彼女がひどい劣等感に苛まれないのは、彼女自身気がついてはいないが、一途で根性があるからだ。


例え、自分より優れた人間がいようとも、それで不貞腐れるだけで終わるのなら、ガブリエルの婚約者など続けられるはずもない。


あの生真面目で無口で愛想のないガブリエルと根気よく婚約者であり続けられのは、ロメリアの素質に寄るところが大きいのだ。
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